第740話 激怒する父親 前編
次話を読んでいただきありがとうございます。
ディオスの屋敷の前に時空戦艦が着地する。
そこから現れる兵器人達、ネオデウス・ウェポンの部隊。
その筆頭は、かつてディオスのセイントセイバー達と激戦を繰り広げた者達だ。
ネオデウス・ウェポンのウィングゼロ、アルトロン、デスサイズ、ヘビーウェポン、ロックサウンド、そして…初遭遇のエピオン。
それをセイントセイバー達が見て青ざめる。
ヘオスポロスは、全ての費用を全面的にディオスに提供すると言っていた。
口ではそう言っていても、限定的だろうと…。
だが、本気で戦力提供をしてきた。
かつて、戦った強者を送ってきた。
そして、アースガイヤがある星系、アースガイヤ星系の上に全長六十億キロの巨大な星艦が出現する。
ヘオスポロスが用意したディオスを乗せる星艦だ。
ディオスが屋敷から出てくると…その装備は、漆黒のデウスマギウスの鎧である。
デウスマギウス、ゼウスヘパイトス。
漆黒の全身装甲、背面にはスラスターのような装甲の腕が四対、足には何かの砲撃を放つ砲身が幾つも伸びている。重装備の戦車のような雰囲気があるデウスマギウス。
攻撃専用に特化したデウスマギウスだ。
完全に戦いに向かうディオスに、アーヴィングが
「でぃ、ディオスさん…」
と、呼びかけると、その眼は怒りで鬼のように歪んでいた。
アーヴィングが青ざめて下がる。
怒りで鬼神のようになっているディオスにセイントセイバー達は、何も言えない。
セイントセイバーの洋子がディオスの後ろにいる奥方達を見つめると
クレティアが
「ダーリン、さっさと桜花を連れ帰ってきてね」
クリシュナが
「下手な手加減は、相手を傷つけるから、徹底的に」
ゼリティアが
「妾達の怒りの分までよろしく」
ソフィアが
「完膚なきまで潰して、桜花を連れ戻してね」
完全にディオスの味方だ。
ディオスが
「今日中に桜花を連れ帰る」
と、宣言してヘオスポロスの兵士達が待つ前に向かう。
デウスマギウス・ゼウスヘパイトスの装備で歩いてくるディオスに、ヘオスポロスのネオデウス・ウェポンのエピオンが来て
「これが…ヘオスポロスの全ての兵器システムと繋がる権限です」
と、アースガイヤの魔導端末に適合するようにした端子をディオスに渡すと、ディオスはそれをデウスマギウス・ゼウスヘパイトスに接続させる。
膨大な数のヘオスポロスの兵器群と接続したディオス。
「では、行くぞ…」
と、ディオスを乗せてヘオスポロスの時空戦艦が出発した。
ディオスがヘオスポロスからの軍需支援を受けてセレソウム時空へ侵攻する一報によって黄金創世民のアヌビスと、他の宇宙王達の通信会合が開かれて
アヌビスは額を抱えていた。
ディオスがいる周辺時空の宇宙王達、ナカロフ、ジェイダス、統神、ラズベリア、輝妃羅の五人も俯き沈黙だ。
アヌビスが
「これ程までに…愚かだったとは…」
ナカロフが
「愚者の極みとかこの事か…」
ジェイダスが
「ディオス殿の宇宙、アースガイヤでは…止める者は、いなかったのですか?」
統神が
「ああ…メルディオル殿の話では、誰も止める所か…連れ帰ってこい…と、激励さえ送ったそうです」
ラズベリアが
「家族を奪われたのでしょう。なら…当然でしょう。取り返すのは…」
輝妃羅が
「それよりも、そこまで…セレソウム時空が追い詰められているとは…思いもしませんでした」
アヌビスの隣に同じ黄金創世民の配下の一人が来て耳打ちして、更にアヌビスが頭を抱えて
「今回のディオスの娘が誘拐された事件で、一切、セレソウム時空の上層部は関わっていないと…宣言された。アルシャナス女王及び、軍部のリュウセイ将軍も、ディオスが来た場合、対処に関して一切の邪魔をしないとした」
輝妃羅が
「どれ程の被害が出るのでしょうか…」
その言葉にその通信の場にいる全員が沈黙する。
皆目見当が付かない。
ディオスは、止まらない。娘を取り返すまで徹底的にやるだろう。
普段は、大人しく優しいが、やってはいけない事をやってしまった。
逆鱗どこから、憤怒を越えて嚇怒させてしまった。
しかも、その理由に理解できるから余計に止める算段がない。
もし、最悪な…事になったら…。
アヌビスが
「もし、最悪な結果が訪れた場合は、我ら全員と…メガデウス時空の北斗殿にも応援を頼もう。ディオス殿の力による暴発を止める為に…」
ラズベリアが
「ディオス殿の超越存在としての力の深度は、今や…アヌビス様を越えています。どれ程の力を引き出すか…」
それに一同は、黙るしかなかった。
桜花を連れ去った赤王家のラハンは、桜花を連れて移動する時空戦艦で、父親からの通信を受けて愕然とした。
「そ、そんな…」
ラハンが見る通信画面には、父で赤王家の頭領エジャムが
「我らは…逆賊と成り果てた。アルジャナス女王からもそう宣言された」
ラハンが
「そんなバカな、第一に…ゲイオル様やレイシュン様が消えて」
エジャムが
「アルジャナス女王や、リュウセイ将軍の新王派の上層部は、ゲイオル様やレイシュン様がセレソウム時空から消えた理由を知っていたのだ」
ラハンが息を呑み
「その理由とは…?」
エジャムが
「神人アルダ・メルキオールのデータをヘオスポロスから提供してもらい、ゲイオル様の超越存在の力をトリガーに、神人と超越存在のハイブリット、神越存在を作り、セレソウム時空の超越存在と、新たに誕生した神越存在の二つの力でセレソウム時空の統治を行うと…」
ラハンが
「そんな、それを言って貰えば…」
エジャムが
「それを我らが知って如何にする? 結局は、新王派の統治が続くには変わらない」
ラハンが
「計画の…続行ですか…父上」
エジャムが
「それしか、我ら赤王家と碧王家が助かる道はない。ラハン、なんとしても…シュンカ様と共に双極超越存在へ至り、新たな時空を創造して、そこへ…」
ラハンが頷き
「分かりました」
桜花は、時空戦艦の一室の椅子に座っていた。
そこで、静かに考えていた。
どうして…こんな事になってしまうんだろうか…?
そこへラハンがノックして入り
「シュンカ様…何かお飲み物でも…」
と、飲み物を乗せたドローンの台車を持って来た。
桜花が
「ラハン様、どうして…こんな事になってしまったのでしょうか? 私には考えても…分かりません」
桜花は、十年は眠っていたとはいえ、十五になる寸前の娘だ。
ラハンが跪き
「ラハン・赤王。ずっとアナタを守り続けます。この命に代えても来世でもずっとアナタの為に生き、死にます。ですから…共に…双極超越存在に…」
と、土下座した。
桜花は、そこまで追い込まれるラハンを見て悲しみがこみ上げてしまう。
大切な娘を奪われた父親ディオスの怒りは、とんでもない事態へ
次回 激怒する父親 後編