第73話 ロマリアへの派遣
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あらすじです。
リーレシアから帰って来たディオスは、新たなメイドのココナと顔合わせする。
その後、ソフィアからロマリアへの派遣を要請され、お産を終えて武術訓練を開始した妻達に、リーレシアでの冒険仲間を連れてロマリアへ…
リーレシアでの仕事を全て終えて帰って来たディオス。
その帰りの途中で、直ぐにゼリティアの城邸に行って、ゼリティアにベタベタして、赤ちゃんがいるお腹を触りまくった後、屋敷に帰り、速攻、リリーシャとティリオのいる部屋ダッシュ
「ただいまーーーー オレのベイビー達ーーーー」
と、ドアを喜んで開けたそこに…、見知らぬブロンドの乙女のメイドさんがいた。
その乙女のメイドさんは、ディオスが作った赤ん坊をアシストして抱っこする魔法使ってティリオと、リリーシャを両腕に抱いてあやしている。
「あ…」と乙女のメイドさんが気付き、直ぐにティリオとリリーシャを、ベビーベッドに戻すと…
「初めまして…旦那様…」
と、ディオスの前に来て丁寧にお辞儀する。
「ここで働かせて貰います。ココナ・ブレンナです」
ディオスは記憶を辿る。そこへレベッカが来て
「旦那様。前に話していた新しいメイドです」
「あ!」
と、ディオスはレベッカが出張する前に言っていた事を思い出した。
ディオスは後頭部に手を当て、軽くお辞儀しながら
「いや…ようこそ、こちらこそ、よろしくな…え…ココナだっけ」
「はい!」
と、ココナは微笑んだ。
早速、皆を集めてディオスは屋敷の広間でお土産を広げる。
「はい、これが、レベッカさんで、これがユーリとチズ。そして、この宝石が紫がクリシュナで赤がクレティアね。それと…ココナにも」
ディオスが買ってきたのは、この世界では有り触れた賢者の石をコアにして作られら魔力増幅のアクセサリーだった。
そして、残ったお土産がある。一冊の金属製の本だ。
それをレベッカが手にして
「ああ…魔導書ですか…」
「ああ、そうだよ」
と、ディオスは頷く。
魔導書、それは魔法を発動させる時に使う魔法陣の展開をサポートする本型の装置である。
魔導書にはコンピュータのような演算と記憶能力があり、記憶させた魔法陣を展開してくれる。
さらに、自分が制作した魔法陣がどのように効力を発揮するかの、シミュレーションもしてくれる。
そのお値段は…むちゃくちゃ高い、一番安いので金貨五千枚。円で五千万円。
高い物は、天井知らずで、その値段に応じて機能も素晴らしい。
因みに、構築素材の全てが賢者の石が原料だ。
賢者の石はグラム単価、金貨数枚する。日本円で数万円だ。
レベッカが手にする魔導書の色は黒だ。レベッカが眼鏡を上げて
「確か、魔導書は…一番安い物で表紙の色が橙色、中級で赤色…。上級で青色…。その…黒色という事は…」
そう、特注品だ。
ディオスは顔を引き攣らせ
「その…今回の仕事で…。褒美として貰ったんだ。値段は…考えたくない」
そう、黒色の魔導書の価値は、金貨数万枚以上だろう。
レベッカが
「大切な物ですから、使う時以外は、ファニファールの内部金庫にしまって置きましょう」
「そうだね…」
と、ディオスは了承した。
そして、ディオスの何時もの日々が始まる。
午前中はディオスと共に、クレティアとクリシュナも筋トレをする。
妊娠、出産でなまった体を鍛える為だ。
武術訓練、クレティアとクリシュナは、互いに戦い合う。
剣術のクレティア、ユグラシア中央部の舞いのような変則の動きをするクリシュナ。
そのぶつかり合いにディオスは、
本当に腕が落ちているのか?
そう思うほど、凄い戦いだ。
終わると、二人は首を傾げ
「チィ、ダメね…チョッと動きが落ちている」
と、クレティア
「これは、午後も修練ね」
と、クリシュナ
二人は満足ではないらしい。
いやいや…大概ですよ。アナタ達…
と、ディオスは内心でツッコんだ。
午後は、魔導石の生成と研究、ディフィーレとアルマルが来て、新型の魔導石生成装置のテストをする。
一気に八つ生成出来る魔導石生成装置の、個別魔導石生成ケースの分化用や、エンジン用と、高エネルギー放出型の耐久用と、三つのバージョンのテストをする。
魔導石生成装置の格好は、まるでH2ロケットのようなシャープな形になった。
午後の四時からは、広間で各魔法研究機関の魔法の補足を手伝う魔法の設計
そこにあの黒い魔導書を持って来て活用。
作った魔法がどのように動くか、シミュレーションする横でディオスは、ティリオとリリーシャのいるベビーベッドを置いて、二人を触る。
ティリオとリリーシャは、バブバブとディオスの手で遊ぶ。
そんな中、ティリオのおしめの匂いを察知して交換をしようとするディオス。
「よし、待っていろ…」
広間を見渡して
「おーーーい」
と、誰かを呼ぶ。
「はーーーーい」
と、ココナが一階の部屋の通路から出てくる。
「なんでしょう。旦那様?」
ココナが尋ねる。
「おしめを…それと…ミルクも必要かな」
「はーーい」
ココナがおしめとほ乳瓶のミルクを持って来る。
そうして、ディオスはティリオのおしめを替えると、だいたい、ティリオはお腹が空くので、ミルクを飲ませるが…。
ココナが
「ああ…リリーシャちゃんも、おしめの替え時みたいです」
と、余分に持って来たおしめでリリーシャのおしめを交換した。
ディオスは、リリーシャのおしめを交換するココナを見て
この子は、楽しそうに赤ん坊の世話をするなぁ…
と、ディオスは感心する。
そうしている間に、魔導書のシュミレーションが終わった。
「ああ…ココナ、ティリオを」
「はい…」
と、ココナはディオスからティリオを受け取る。
ココナは赤ちゃん抱っこアシスト魔法を使って二人を抱いて、嬉しそうにあやしている。
その横で、ディオスは魔法のシュミレーションデータと睨めっこして、魔法を再構築していた。
そうして、夕方五時になった時に、ユリシーグが尋ねて来た。
「やあ…ディオス」
隣には、アイナもいた。
「どうもディオスさん」
そして、広間にいたココナが
「ああ…お姉ちゃんいらっしゃい」
そう、アイナとココナは姉妹なのだ。
アイナが照れながら
「ディオスさん。妹が迷惑を掛けていないでしょうか?」
「いや…ティリオとリリーシャの事を良く見てくれるので助かりますよ」
「そうですか…」
アイナは安心した。
ディオスは、ユリシーグとアイナを客間に入れ、二人をソファーに座らせ、ディオスも対面に座って話をする。
「では、例の情報は?」
と、ディオスは切り出す。
例の情報とは…エニグマの事だ。
ユリシーグは持って来たロック付きの頑丈な鞄から、一枚の資料と写真を添付して渡す。
ディオスはそれを受け取って、見ると「チィ…」と顔を顰めて
「やっぱり、そういう事か…」
その見る資料には、エルギアの時に大いに関係したキャロルの事が乗っている。
資料によると、確認されたのは百五十年前からで、その姿は一切変わっていない。
ユリシーグは手を口元に当て
「ディオスの話で、キャロルという人物が、自分を半分精霊で人間と言っていたという事は…エビルの外法という、禁忌の魔法技を使っているかもしれん」
「エビルの外法?」
と、ディオスは顔を鋭くさせ聞く。
ユリシーグは鋭い顔で
「普通、精霊と人間が結ばれた場合は、その子供は精霊の眷属になる。その後、結ばれる相手によって精霊の眷属のままか、結ばれた種族の人間に近くなっていく。それが、普通だ。だが…このエビルの外法は…本当に信じられない方法で、精霊と人間の上手い部分の合いの子になれる方法がある」
ディオスは嫌な予感を過ぎらせながら
「その方法は?」
ユリシーグが嫌な顔をして
「人の命を使う」
「はぁぁぁぁぁぁぁ」とそれを聞いただけでディオスは、盛大に溜息を吐いた。
アイナが嫌な顔をして
「エビルの外法は数千年前に、死刑囚を有効活用しようして生まれた外法の魔法です。多数の人の命…アストラル体を、魔法の力で抽出、結晶化させたアクワ・ウェーターという…生命結晶を使って。様々な事を起こせます」
ユリシーグが怒る顔で
「死んだ人間を生き返らせたり、新たな肉体を構築して、古い肉体から新たな肉体に転移したりといった…転移型不死も行える。そして、精霊に近い存在にもなれる」
ディオスは頭を振って
「まともじゃないなぁ…」
ユリシーグはフッと嘲笑を見せ
「ああ…その通りだ。まともじゃあない。だから…この外法の為に膨大な数の人々が犠牲になった。この外法を使っていた国一つが、アクワ・ウェーターとなる大事件を起こして、エビルの外法に関する魔法技術や記述は全て闇に葬り去られた」
ディオスは気分が悪い顔で
「じゃあ…キャロルって女は、エビルの外法を使って」
ユリシーグは苦しそうな顔で
「ああ…半分精霊の人間と化して、壊れたり古くなった肉体から、新たな肉体へ乗り換え続けているのだろう」
ディオスは嫌な顔で
「じゃあ、それに使うアクワ・ウェーターを作る為に…」
アイナが
「今も何処かで誰かが犠牲になっていると思います」
胸くそ悪い結論が出てしまった。
ディオスは殺気が篭もる鋭い視線でキャロルの資料を睨み
「エニグマ…全く、胸くそ悪い連中だぜ。早めに潰すに限るな」
「同感だね」とユリシーグも同意した。
その後、色々と情報も交換して、三人は会話を終えて、帰る時
「じゃあ…ディオス。今後とも…」
と、ユリシーグは頭を下げる。
「ああ…よろしくな」
と、ディオスも手を振ってユリシーグとアイナを見送った。
数週間後、リリーシャとティリオの首も大分、すわって来た頃…。
ディオスは王宮でソフィアを前に、書状を見ていた。
「すー あのさぁ…」とディオスが「これってどういう事?」
王の執務机に座るソフィアが
「カメリアから聞いているわよ。ロマリアとアーリシア十二国の王達の会談の為に、ロマリアとリーレシアの堺にある都市遺跡地帯が良いって言ったんでしょう。だったら、その下準備をしなさいよ」
ディオスは額を抱え
「ええ…ロマリアの要請で、都市遺跡地帯に大量出現したドラゴン退治を手伝えって…。なんで? そんなのロマリアの軍隊に任せればいいだろうが…」
ソフィアが席を回してディオスに背を向け
「余りにも多すぎて手一杯らしいの。だから、アンタが行ってチョチョイのチョーイって片付けなさいよ。アンタ、ドラゴンを退治する魔法が得意でしょう」
ディオスは右瞳の眉を大きく曲げて
「なぁ…ソフィア…。オレって便利屋になっていないよなぁ…」
ソフィアは沈黙する。
「オレは、バルストランの魔導士で、ソフィアの臣下だよなぁ…」
ディオスの言葉に
ソフィアは頭を掻いて
「ロマリアに恩を売って置けば、後々…楽なのよ」
ディオスは「ふ…ん」と溜息を漏らし
「まあ…そういう王としての判断なら、仕方ない。行ってくるよ」
「クレティアとクリシュナも連れて行ってね。人海戦術になるみたいだから、手が多い方がいいから。それと、ティリオとリリーシャの面倒は、アタシが見てあげるから、無用な心配はしないで、専念してね」
「はいよ。ありがとうなソフィア」
「別にいいわよ」
ディオスは屋敷の戻ってクレティアとクリシュナに事情の説明をする。
クレティアは
「鈍った体を鍛えるには良いかも」
クリシュナも
「ええ…クレティアと同意見ね」
ディオスは顔をひくつかせ
本当に、この二人は武道家肌だなぁ…。まあ…そこが魅力なんだけどね。
「出張は、二週間くらいだと…。後、リーレシアから同行者を連れて行けるから、ナルドさん達に頼んだ」
クレティアが微笑み
「そう、なら…気兼ねなく出来るわ」
ディオスとクレティアにクリシュナ達の三人は、リーレシア王国の王都空港へ到着すると…
「ディオスさーーーーん」
リベルが空港のホールで手を振っている。
その傍に、ナルド、ラチェット、ハンマーの三人もいる。
「どうも…皆さーん」
と、ディオスは呼び掛け、三人は四人の元へ来る。
ナルドがディオスに握手して
「どうも…ディオスさん」
「よろしくお願いします」
ラチェットが右手を挙げ
「よろしく、ディオスさん、奥さん達も」
その手にクレティアがタッチして
「よろしくね!」
気軽に挨拶をする。
ハンマーが
「お子様が産まれて間も無いのに…大変ですなぁ。ディオス殿」
ディオスは呆れ顔で肩を竦め
「これも、宮仕えの宿命ですよ」
ラチェットが
「ロマリアにはどう行くんだ? こっちで勝手に目的地に行っても…」
ディオスが
「ロマリアから使いを出すそうですよ」
「使いですか…」とナルドが首を傾げる。
その話している七人の傍に
「おい、ディオス・グレンテル!」
呼び掛ける懐かしい声、ディオスは振り向いて
「やっぱりアンタか…」
そこには、しかめっ面をするヴィスヴォッチがいた。
ヴィスヴォッチは「ふ…」と溜息を漏らし
「また、オレが案内してやる。はぐれるなよ」
「はいはい」とディオスは楽しげに皮肉な笑みをする。
ヴィスヴォッチの姿に、クレティアとクリシュナも同じ楽しげな皮肉な笑みをした。
ナルドが
「知り合いなんですか?」
ディオスはフフ…と怪しげに笑み
「ええ…ちょっとしたね…」
フン!とヴィスヴォッチは鼻息を荒げた。
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