第738話 求める先 前編
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今日も一人、超常の力を持つ男? いや存在が二人の女の子に振り回される。
ルビードラゴンは、ティリアと桜花のお出かけに振り回されている。
ルビードラゴンは、ティリアと桜花の二人に両手を引っ張られてあっちこっちへ。
バルストラン王都には、様々なお店がある。
洋風のレンガの町並みは、女の子達のオシャレ心くすぐる。
ルビードラゴンは、男性だ。オシャレには無縁だ。
ティリアが
「こっちだよ。ルビードラゴンのおじちゃん!」
と、楽しげに引っ張っていく。
それにルビードラゴンは、黙って従う。
嫌なら断れば良いが、断る理由もないし、それに…。
もう、仕方ないと…ルビードラゴンは、諦めてティリアと桜花の散策に付き合っている。
桜花も楽しそうだ。
ルビードラゴンは、厳つい男性だ。
それが素直に言う事を聞いてくれる。
ルビードラゴンも嫌っている様子もない。
何より…雰囲気が仲の良かった兄ゲイオルと似ている。
どことなく、懐かしい兄をルビードラゴンに感じていた。
二人の天使に振り回されてルビードラゴンはヘトヘトになる。
そんな三人の様子を遠くから見ている視線があった。
それは、気配を消している。
だが、ルビードラゴンは視線に気付いていた。
ルビードラゴン達三人が運河沿いのベンチに腰掛けて、ルビードラゴンが
「すまん。トイレに行ってくる」
と、ティリアと桜花から離れる。
ティリアと桜花は、仲良く買ったアイスを交換して食べ合う。
それを見つめる視線。
その背後に
「おい」
視線の主が背筋を震わせる。
ルビードラゴンが一瞬で普段着にしているアースガイヤに合わせた洋装を深紅の装甲に変貌させる。
視線の主がルビードラゴンへ向く。
ルビードラゴンが両手に武器を握ろうとしたが、それをしまい
「会いに行かないのか?」
ルビードラゴンが視線を合わせる人物、ゲイオルだ。
ゲイオルが首を横に振り
「いや、いい…」
ルビードラゴンが腕組みして
「事情は聞いている。何をやっているんだ?」
ゲイオルは口を渋くさせる。
ルビードラゴンが
「桜花は、記憶を取り戻している。会えば喜ぶぞ」
ゲイオルが悲しい笑みで
「シュンカが幸せそうで…良かった。シュンカの事を頼んでも良いか?」
ルビードラゴンが
「オレに頼まなくても、桜花は…シュンカは、もう聖帝ディオスにとって大切な娘になった。心配するな。聖帝ディオスは、家族が一番大切だ。手を出せば、一個の時空を完全に破壊するくらいに嚇怒する。守ってくれるさ」
ゲイオルが頷き
「もし、シュンカが私達、私とレイシュンの事を聞いたら、こう…答えてくれ。大切な事をしている。それが終わったら…必ず会いに行くと…」
ルビードラゴンが頷き
「受け取った。必ず伝えて置く」
と、告げてゲイオルの隣を去って行く。
ゲイオルがその背にお辞儀を。
それを背にルビードラゴンは二人の元へ戻っていった。
ルビードラゴンが戻って来てティリアが
「長かったね。もしかして」
ルビードラゴンが腹をさすって
「昨日、食べ過ぎたからな。けっこう…出た」
微妙な話題に桜花とティリアは、苦笑いして桜花が
「レディの前で、そういう事はボカした方が良いわよ」
ルビードラゴンがフンと鼻息を荒げて笑い
「それを気にする程のレディが目の前にいるとは思わない」
ティリアがムッと頬を膨らませて
「いいもん、あと十年して…ものすごい美人になって、それを言った事を後悔させてやる」
ルビードラゴンは苦笑いで
「そうだな。美人にはなるが、そのイタズラな部分を知っているから、差し引きゼロだな」
「はぁぁぁぁ!」と怒るティリア、軽くあしらうルビードラゴン、それを見て桜花が笑っている。
優しい風景だ。
三人が屋敷に帰ってくると、ディオスが
「おかえり…」
と、屋敷の広間で魔導技術のデータとにらめっこしていた。
「ただいま!!」
ティリアと桜花が明るく答えて、ディオスが座っていたテーブルから立ち上がり、ルビードラゴンの元へ来ると…
「いや…面倒をありがとう。楽しかったよね!」
と、ルビードラゴンの左肩を掴み、万力のように力を込める。
ディオスは笑顔だが、額に青筋が浮かんでいる。
嫉妬だ。娘達と楽しそうにしてきたルビードラゴンが気に入らない。
それにルビードラゴンは呆れつつも握りしめるディオスの手を除けて
「後で話がある。夜、奥方達とディオスが一緒で頼む」
ディオスが困惑を向け、ティリアが
「あれ、隠し事? ルビードラゴンのおじちゃん…」
と、クレティア譲りのイタズラな笑みをする。
ルビードラゴンが真剣な顔でティリアに
「ヘオスポロスの事でだ。あんまり、聞かせたくない問題だ」
ティリアはそれを聞いて察して
「ああ…分かった。でも、あんまりムリしないでね。ルビードラゴンのおじちゃん」
「うん」とルビードラゴンは頷いた。
そして、夕飯が終わって…ディオス達保護者達五人と、ルビードラゴンが外に漏れない魔法で防護した屋敷の書斎で話をした。
その話とは、桜花の兄ゲイオルが来ていた事、そして…何かが終わった後に桜花に会いに来ると…。
ディオスを中心に両脇に座る妻達四人、ディオスが腕組みして
「そうか…」
と、呟く正面には、ルビードラゴンがいる。
ルビードラゴンが真剣な顔で
「何をしているか…探るか?」
ディオスの右にいるクレティアとクリシュナのクリシュナが
「できるの?」
ルビードラゴンは頷き
「ある程度は…ヘオスポロスのシステム内を検索すれば、分かるかもしれない」
ディオスの左にいるゼリティアとソフィアのゼリティアが
「リスクがあるのでは?」
ルビードラゴンが
「別に分かっても構わんと思う。ヘオスポロスは、自らの進化という目的で動いている。だから、様々な部門が独自で動いている。その衝突を避ける為にも…どういう計画を行っているのかを調べるシステムがある」
ソフィアが腕組みして
「って事は、アンタはそれにアクセスできる権限を持っているって事ね」
ルビードラゴンは頷き
「全ての者がアクセスできる訳ではない。まあ、全体に誰でも分かるレベルでの公開はあるが…それは見出し程度。更に深い部分には、それ相応の資格を持つ者がアクセス可能で、オレはその権限を持っている」
ディオスの両脇にいる妻達がディオスを見つめる。
ディオスが息を吐き
「大切な娘の事だ。知っておきたい」
その言葉に妻達も頷いた。
ルビードラゴンが
「分かった。明日になるが…調べてみる」
ディオスが
「ありがとう。知らせてくれ。それと…」
ルビードラゴンが首を横に振り
「気にするな。桜花がいなくなったらティリアが悲しむ」
クレティアが
「ねぇ…前々から思っていたんだけど…。どうして、そこまでティリアに肩入れしてくれるの」
ルビードラゴンが少し悲しみを浮かべて
「昔の…そう、本当に昔の感傷さ」
桜花の幸福に過ぎていく日々、そして…隠れて姿を確認した兄。
それぞれに誰かの為に動き、それは幸せに過ぎていくはずだったが…
次回、求める先 後編