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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
讐怨《シュウエン》
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第737話 兄弟の意思 後編

次話を読んでいただきありがとうございます。


 あの忌まわしい事件から十年が経過した。


 ゲイオルの娘ユエは十歳になり、息子のヨアは五歳になった。

 ユエは、弟のユエを気に掛けてくれる。

 それを父親であるゲイオルと母親のレイシャは微笑ましく見つめる。


 十年が経った。

 レイシュンも立ち直り、許嫁のシュンエイと結婚する事になった。

 全てが穏やかに過ぎる。

 そして、ゲイオル達は家族を連れて再び、あの事件があった現場に来ると碑石が立っていた。

 事件で犠牲になった者達を弔う碑石。

 それに多くの人達が献花をしてくれている。

 ゲイオル達も献花をして、祈っていると…そして、そこに…

「やあ…」

と、アズサワが来た。


 ゲイオルはお辞儀して

「来てくれたんですね」


 アズサワは献花して頷き

「もう十年か…それともまだ…十年か…」


 ゲイオルは、アズサワの隣に来て

「まだ…そちらから提供されたとされる偽装兵器達の概要は…」


 アズサワが渋い顔で

「巧妙に隠されていた。最初はヘオスポロスの物資を使ってセレソウム時空の兵器に偽装して提供された…との証言だったが、ヘオスポロスの記録には無かった。おそらく…どこかの別の時空から…」


 ゲイオルは俯き

「証拠は見つかりますかね?」


 アズサワが

「時間は掛かるが、分かる筈だ」


 あの事件の後、ガラムは、ヘオスポロスに引き渡す当日、収容していた厳重なセキュリティの施設内で死亡していた。

 頭部を完全に粉砕されて…。

 死体でも頭部が残っているなら、その脳内の残ったネットワークを調べて、死者の脳内を演算装置で再現して、記憶の断片を探る事ができるが…頭部を破壊されては不可能。

 体内に残っているネットワークシステムのチェックもしたが、それも焼き切れて壊されていた。

 おそらく、相当な激痛を伴って死亡したと推測される。

 殺し方は、体内にあるネットワークシステムに過負荷のエネルギーを与えつつ脳内を爆発するエネルギー波を浴びせられて…。いわゆる、茹で上がるように焼き殺された。


 ガラムが死亡した事で、事件の概要は不明。

 協力した赤王家と碧王家の者達を匿う為に、色んな隠蔽がされた。

 その隠蔽によって赤王家と碧王家は、完全に沈黙して新王派に従うようになってしまった。

 セレソウム時空での事件概要は、テロ事件。テロリストによって中央のシステムが掌握されて混乱、それによる死者が…。


 そして、月日は流れて今に至る。



 アズサワは、碑石の献花を終えて去って行く。


 その背中にゲイオルとレイシュンがお辞儀する。

 同じく共に来ているレイシャとリュウセイ達は複雑な表情だ。

 アズサワ達の冷静な説得がなければ、ゲイオルとレイシュンはリュウセイ達を恨んでいた筈だ。こうして、セレソウム時空の次世代に繋がる超越存在も産まれた。

 だが、その代わり…ヘオスポロスの一部隊がセレソウム時空に駐留する事になった。

 ヘオスポロスの部隊は事件解明を続けるだけで、それ以外の内政干渉は一切しない。

 ヘオスポロスの事は知っている。

 多くの時空の軍需と技術を乗っ取り掌握する組織だ。

 その手口によって多くの時空がヘオスポロスの傘下にあるのも…。

 

 それでも、セレソウム時空の日々は過ぎていく。


 そんなある日の事だ。


 ゲイオルは、何時ものように調節をしていた。

 一区切りと仕事を終えて、帰宅する為にエレベーターへ向かうと、エレベーターが降りてきた。

 そこには、レイシュンがいた。

 レイシュンはシュンエイとの婚姻式の準備で休みのはずだ。


「どうした? シュンエイとの」

と、ゲイオルが呼びかける。


 レイシュンが兄ゲイオルに近づき

「兄さん、やっぱり…ダメだ」

と、涙を零していた。


 ゲイオルが驚き

「何があったんだ?」



 レイシュンがシュンエイと共に着付けのテストをしていた。

 部屋で、婚姻式に着るお互いの服を着て、着心地と直しのチェックをしていると…

「失礼します」

と、一人の男性が入ってきた。

 その男性の胸には、赤王家の紋章があった。


 レイシュンが戸惑い気味に

「あの…どちら様で?」


 一緒に着付けのチェックをしている作業者達も困惑する。


 その赤王家の男性は跪き

「レイシュン様。少し、お話を…」


 レイシュンは戸惑いつつも

「あの…今日は、婚姻式の準備を…」


 赤王家の男性は立ち上がり

「なればこそです」

と、告げて入ってきたドアを開くと、そこには赤王家と碧王家の頭首である二人がいた。

 赤王家頭首の中年男性エジャム、碧王家の当主の中年女性ルエル。

 その二人がレイシュンと対話を望み、着付けの最中に…。


 エジャムが

「レイシュン様、お願いがございます。我ら赤王家と碧王家の両方から妃を娶って頂きたい」


 それを効いてレイシュンは困惑して固まり、隣にいたシュンエイも驚きで固まる。


 ルエルが

「これは、我らの総意でございます。どうか…納得して受け入れて頂けないでしょうか」


 レイシュンが

「ちょっと、待ってください。どういう」


 ドアを開けた赤王家の男性が

「我らは、貶められた! 新王派の!」


 エジャムが

「黙れ! ラハン」

と、赤王家の男性であり息子ラハンに釘を刺す。


 レイシュンがラハンを見つめて

「どういう事なんですか? どうして…そうなっているんですか?」

と、訪ねる。


 ルエルが

「レイシュン様、こちらで話を」


 レイシュンがルエルとエジャムを凝視して

「黙ってください。僕は、彼と話している」

と、鋭く告げて、ラハンに

「どういう事なんだい?」


 ラハンは告げた。

 あの十年前の事件は、全て新王派の策略で赤王家と碧王家を貶める為に仕組まれた…と声高に。

 ゲイオルが次世代を残した。

 その二人の娘と息子は十分な程の次世代としての資質を持っている。

 そして、その子供達は新王派の繋がりだ。

 ますます、新王派の威光が強まるばかり。

 そこで、レイシュンに白羽の矢が立った。

 兄ゲイオルと比べて資質は低いも、その強さは十分である。

 新王派のこれ以上の強化を防ぐ為に、レイシュンへ赤王家と碧王家の両方から妃を娶らせ、その子を新たなセレソウム時空の超越存在に…。


 それを聞いてレイシュンは愕然とした。

 十年前から何も変わっていない。

 このままでは同じ悲劇を繰り返す所か…多くの超越存在の資質がある者達で、子供達で殺し合いが…。


 その場から、赤王家と碧王家の者達を追い出した後、レイシュンは一人…悩んでしまった。

 そんなレイシュンをシュンエイは抱きしめるだけしかできない。

 そして、兄ゲイオルの元へ来た。



 それを聞いたゲイオルは、同じく愕然とした。

 このままでは…更なる悲劇が…。


 レイシャが料理をしていると、ゲイオルが帰ってきた。

「おかえりなさい」

と、料理をしつつ答える。


 父親の帰ってきて、五歳のヨアが迎えに行く。

「お父さん、おかえりなさい」

 それに娘のユエも続き

「おかえりなさい」


 ゲイオルは娘と息子を抱きしめて

「ただいま…」

と、涙する。


 ユエとヨアは戸惑い。

「どうしたの? お父さん…」


 ゲイオルは娘と息子を抱きしめて

「お父さん、お前達を必ず守るからな…」

と、涙して子供達を抱きしめる。


 それをレイシャが見つけて

「アナタ…何があったの?」



 そして、レイシュンの婚姻式当日。

 そこには、本来の婚約相手であるシュンエイと、他の二名の婚約者がいた。

 その二名とは…赤王家と碧王家から来た嫁だ。


 無論、婚姻式は皇帝宮で行われて、新王派に加えて他の二名の赤王家と碧王家の者達も来ていた。


 強引な入れ込みだった。

 新王派のリュウセイ将軍達は、反対したが…十年前の事件の真実を全て暴露すると脅しつつ、超越存在としての資質を持つ者達が多い方が良いと、押し通した。


 別の場所、婚姻式から離れた広場で、ゲイオルがとある連絡先が入ったプレートを手にして繋げる。

 その相手は…

「ああ…アズサワさん」


 婚姻式当日、ゲイオルとレイシュンが行方をくらました。


 二人の兄弟は、とある決意を胸に…出て行った。

消えた兄弟の二人、そして、今の桜花であるシュンカが…


次回、求める先

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