第733話 奇縁
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そこは人々がごった返す通りだった。
多くの人々が逃げ惑う大通りで、その人々の中にゲイオルの家族達がいた。
必死に、巨大時空戦艦が落ちた町から逃げる人々の波を
「シュンカ、急ぐよ」
と、次兄のレイシュンがシュンカの手を握って引いていく。
その後ろを父ガシュンが母ジャクエイの肩を抱いて進む。
だが、突然に人波の先が爆発する。
大通りに出撃して待機している巨大兵器のクガイ達が攻撃をした。
レイシュンはシュンカを守るように被さり粉塵から妹シュンカを守る。
父ガシュンも母ジャクエイを守り、そしてレイシュン達の所へ来て
「どういう事だ…」
レイシュン達の頭上に一隻の時空戦艦が降臨して空中静止して、そこから人サイズのクガイ達が降り立つ。
クガイ達は、レイシュン達の一団を取り囲む。
父ガシュンが
「何が…起こっているんだ?」
そして頭上の時空戦艦からガラムが降り立ち
「この中に、レイシュン・新王と妹のシュンカ様はいらっしゃいますか?」
と、外道な笑みを浮かべる。
それに父ガシュンは、息子と娘を守るように背に隠す。
ガラムが外道な笑みから苛立った顔に変わり
「いいわ、やれ」
と、取り囲むクガイ達に攻撃命令を伝達する。
無人兵器の人型クガイ達は、両腕にあるエネルギー砲で一団を攻撃する。
大人、子供、老若男女、関係なく撃ち殺されていく。
レイシュンとガシュン、ジャクエイは、一番下のシュンカを守るように被さる。
最初に被さったガシュンとジャクエイの両親が撃ち殺されてる。
そして、その次に被さったレイシュンが撃たれる。
両親と次兄が血まみれのそこに倒れるシュンカ。
シュンカは恐怖に怯える。
倒れ重なった死体達をガラムは探す。
レイシュンは、シュンカを隠そうと抱えるが…。
「見つけた…」
と、ガラムが被さったレイシュンを剥がす。
「来い!」
ガラムがシュンカの桜色の髪を掴み引っ張り上げる。
「い、いや…」
と、怯えるシュンカをガラムが殴り
「おじちゃん。暴力が嫌いだから、大人しく来てくれよ」
と…笑むガラム。
倒れるレイシュンがガラムの足をつかみ
「止めろ…なんで、こんな事…」
ガラムがレイシュンの足を踏んで
「お前は、超越存在になれる適合率が低いからいらんわ」
レイシュンはガラムの足を握り離さない。
「どうして、誰が…こんな事…」
ガラムが
「知らないのかよ。裏切ったぜ。お前の許嫁の連中。お前の兄貴がヤバいってなって、代わりに俺が妹を使って新しい超越存在、王様にさせてくれるってよ」
ウソを吐く。
レイシュンが驚愕を向ける。
ガラムが平然とウソを吐き
「お前の兄貴がヤバいから新しい超越存在を立てようって考えたのよ。お前等…もう、要らねぇだよ。だから」
と、ガラムはレイシュンの掴んでいる右手を銃剣で打ち抜いて切断した。
「じゃあなぁ、まあ、その致命傷じゃあ…直ぐに終わりだろうからよ」
シュンカを連れていくガラム
「いや、レイシュン兄さん! 兄さん!」
と、強引に連れて行かれる。
レイシュンが
「シュンエイ…そんな…」
と、意識が途絶する。
ガラムがシュンカを連れ去った次に、ビルの屋上からゲイオルが降り立つ。
血まみれの現場に青ざめるゲイオル。
そして、両親とレイシュンを見つけて
「父さん! 母さん! レイシュン!」
三人の元へ駆けつけると、両親は死んでいて、レイシュンは息がある。
ゲイオルは急いで、レイシュンを回復の力で包む。
そして、持っている止血素材でちぎれた右手を覆い、回復の力を注ぎ続けると、レイシュンに傷が回復していく。
レイシュンが意識を戻して
「兄さん…」
ゲイオルが横になり回復の力を受けるレイシュンに
「何があった?」
レイシュンが涙して
「兄さん、裏切られた…。オレ達、兄さんが怖いから、別の超越存在を…それにシュンカが…」
ゲイオルが青ざめるそこへ
「大丈夫か?」
一人の男性、アズサワとヘオスポロスの兵器人エピオンの二人が来る。
二人は、この世界の服装に偽装していた。
アズサワとエピオンは、この世界のスーツに身を包んでいる。
アズサワがレイシュンの状態を見て
「こっちに運ぼう。医療ナノマシンポッドがある」
と、エピオンと共にレイシュンを近くに置かれた自分達のトレーラーへ運ぶ。
そこへ共に入ったゲイオルが中の設備を見て警戒の顔をする。
「アンタ達は…一体…何者だ?」
トレーラーの内部は、電子回路模様が広がるシステムの現場で、それは明らかにセレソウム時空の設備とは違っていた。
エピオンが
「我々は、敵ではない。いや、むしろ…この事態を防ごうと動いている」
アズサワがレイシュンを横にさせる治療するナノマシンポッドの調節を終えて
「よし、これで…何とかなるだろう」
と、ナノマシン医療ポッドを見ると、レイシュンが横になるナノマシンポッドには、治療用ナノマシンの液体でレイシュンが包まれて治療が始まる。
止血から、組織再生と、外敵細菌やウィルスの除去と、作業が素早く行われる。
ゲイオルがアズサワとエピオンの二人を見つめ
「どういう事だ。アナタ達は、この事態を防ぎに来たって…」
アズサワが
「君は、どこまで事情を知っている?」
ゲイオルが困惑気味に
「事情を何処まで…とは?」
アズサワとエピオンが視線を交差させた次にエピオンが
「事情を説明する」
エピオンから話を聞く。
エピオンの話は、こうだ。ヘオスポロスという組織が、この世界のテロ組織に、この世界の姿に偽装した兵器を提供した。
だが、それはヘオスポロスにとって重大な違反行為であり、それが起こす問題解決の為にアズサワとエピオンが派遣された…と。
それを聞いてゲイオルは頭を抱えて、その場に座り込んでしまう。
アズサワがその隣に膝をついて
「君の話は?」
ゲイオルは話す。
自分に接触したクラドが告げた新たな超越存在を作る為に行動を起こすという話を…。
それにアズサワとエピオンは、鋭い顔をする。
ゲイオルが
「もしかして…全ての事が関係しているのですか?」
エピオンが冷静に
「落ち着け。まず…状況の整理をしよう」
アズサワが考えながら
「ヘオスポロスから、このセレソウム時空にいるテロ組織へのこのセレソウム時空の武器に偽装した兵器の提供。
そして…君に接触した。ああ…君はこの時空の次期、超越存在であるから、それを良しとしない上層部の者達。
そして…君のここで治療を受ける弟から裏切られた…と」
エピオンが
「アズサワ、落ち着け。確かに揃った事実がそうだが…それだけで…」
ゲイオルが鋭い顔で
「この無人兵器のクガイ達が出撃している事態は…リュウセイ将軍達しか発動できない」
アズサワが
「ヘオスポロスからアムザクの遺産を使った超越存在を作るデータが、ここへ転送された形跡がある。それは…システムとして使う方法だ。君の誘拐された妹さんは…それによって…」
ゲイオルが出て行こうとすると、エピオンが
「どこへ行く?」
ゲイオルが顔を向けるとそこに鬼があった。
「リュウセイ将軍達に話を聞きに行く。どうして、俺の家族を奪ったのか…。妹のシュンカが何処か…も」
アズサワが
「それでは間に合わない」
と、告げてトレーラーのシステムを使ってセレソウム時空のシステムにハッキングしつつ
「君の弟の状態から察するに、誘拐されたのは、少なくとも一時間以内。そして、アムザクの遺産を使った超越存在の作業は、数分で終わる。君が所在を尋ねる頃には…終わってしまう」
と、アズサワはハッキングを続けて
「見つけた。すぐそばだ」
ゲイオルがアズサワの元へ行き、アズサワが展開させる立体映像端末を見て
「どうして、分かるんですか?」
アズサワが
「さっき言ったろう。アムザクの遺産を使った超越存在を作るシステムのデータが流れた…と。アムザクの遺産は独特のエネルギー反応を放っている。つまり、その場所が…全てが行われる場所になる。それをセレソウム時空のシステムで探した」
ゲイオルは、示された場所、あの巨大時空戦艦であるのを見て
「これを…リュウセイ将軍達は作っていました」
アズサワは厳しい顔で
「まずいな…テロ組織だと思っていたが…このセレソウムの統治機関と通じているなら」
エピオンが
「関係ない。我々は、兵器供与されたテロ組織を壊滅させるだけだ」
アズサワが
「という事だ。ええ…ゲイオルくん。良いかね。我々も協力する」
ゲイオルは頷き「はい」と答える。
エピオンが
「ただし、我々は兵器供与したテロ達を殲滅だけで、この後の事は、一切関知しない。後の事は、君達が処理してくれ」
アズサワが懐から一枚の通信連絡データが入ったプレートを取り出して
「これが、私の連絡先だ。もし、何かの知恵や力を借りたいなら…相談に乗る。まあ、報酬次第だがね」
ゲイオルは、受け取り懐にしまって
「すいません。力を貸してください」
奇縁でゲイオルとアズサワ達が共闘する事になった。
そして、シュンカは
ゲイオル兄さん、レイシュン兄さん、お父さんお母さん…
と、思いつつ意識を失う特別な装置のベッドケースにいた。
シュンカは、特殊な端末スーツに着替えさせられ、ベッドケースの棺に収められ、アムザクの遺産へ接続される。
シュンカを収めた棺とドッキングするアムザクの遺産。
それを見て、ガラムが
「これで、俺は…王様だぁぁぁ」
と、嬉しそうに笑っていた。
それを近くで見ている赤王家と碧王家の者達は、項垂れてしまう。
ここまで来てしまった。
後戻りなんて出来ない場所まで来てしまった。
攫われる妹シュンカ、そして…ヘオスポロスの二人がゲイオルに
次回、突撃