第730話 悲しみの雨
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気力を無くしたレイシャの元へ、一人の女性が現れる。
それは女王になる前のアルシャナスだった。
レイシャの部屋のドアをノックして
「入りますよ」
アルシャナスとレイシャは顔見知りだ。
衣服も何もかもボロボロのレイシャの前に来てアルシャナスが
「レイシャ…」
と、呼ぶも無反応だ。
レイシャが無反応でいると、その頬を叩いた。
レイシャが驚きを見せた次にアルシャナスを見て
「なんで、貴女様がいるのですか?」
アルシャナスはレイシャの肩を掴み
「何を甘えた事をしているのですか!」
レイシャは暫し戸惑うも、アルシャナスの手を振り払い
「貴女に私の気持ちが分かるわけ」
と言う頃にアルシャナスが涙する顔があった。
「ええ…」
アルシャナスが涙して
「羨ましい。妬ましい。それ程までに彼に思われて、それで…そんな贅沢をできるなんて…」
レイシャが
「私は、もう、彼の、ゲイオルの許嫁じゃあないわ。拒絶されて、それを!」
アルシャナスが
「わたくしは、それさえ無かった!」
その言葉を聞いてレイシャは困惑しつつ
「まさか、アルシャナス様は…」
アルシャナスは頷き
「好きでしたよ。彼の、ゲイオルの事を…。でも、結ばれる事はない。話は聞きましたわ。拒絶された理由が、貴女の自由を思ってだなんて…恨めしい。それだけ、貴女の事が大切だった証でしょう。わたくしには、そのチャンスさえなく、遠くから見ているだけしか…」
レイシャが
「私、でも…どうすれば…」
アルシャナスが
「諦めるのですか?」
レイシャが
「諦めたくないです」
アルシャナスが
「なら、出来る事はあるでしょう」
レイシャが
「出来る事?」
アルシャナスが
「貴女の本気を見せなさい」
レイシャが
「でも、それでも…」
アルシャナスが
「先代ガイラス様のお相手だったセリュア様は、諦めませんでしたよ。ずっと本気でガイラス様を思い続けていましたわ。それを行動で示し続けていましたわ。ガイラス様の為に…口では無く、行動で…。貴女の気持ちはその程度なのですか?」
レイシャがそれを聞いて手に力を込める。
ガイラスの言葉にはウソがあった。
ゲイオルは一人、町中を歩いていた。
いや、正確には…両親に怒鳴られて…。
「なぜ、そんなバカな事をしたんだ!」
と、父ガシュンが怒鳴る。
レイシャの事を聞いて父ガシュンと母ジャクエイが泣きながら
「どうして、そんな酷い事をしたの…レイシャが…かわいそう…」
それにゲイオルは無言だ。
父ガシュンが「ゲイオル」と殴ろうとしたが、それをゲイオルは防ぎ
「殴られる理由がありません」
父ガシュンがゲイオルの首を掴み
「お前は!」
と、言い放った瞬間、ゲイオルが力のバリアで父親を弾き飛ばした。
父ガシュンを起こそうと母ジャクエイが来て「ゲイオル!」とゲイオルを見た瞬間、そこには冷たい眼のゲイオルがいた。
両親を他人のように見下ろすゲイオル。
その眼には威圧が、超越存在としての威圧が籠もっていた。
そこには息子では無い、何かの化け物のような気配を感じて両親が黙ると、ゲイオルが背を向けて
「少し、頭を冷やして来ます」
と、家から出て行った。
何を言っても無駄だ…とゲイオルは両親に呆れていた。
一人、町中を歩くゲイオル。
多種多様な人々が行き交う町、そこには繁栄の明かりがある。
これも、全てはセレソウム時空三千年を支える現体制があってこそだ。
その暖かな光達の中を心が冷めたゲイオルが歩く。
そこへ、母親からの通信が入る。
もう一度、話し合いましょう…と。
それをゲイオルは、無視して町中を歩くと…
「お、ゲイオルくんじゃあないか?」
と、声を掛ける人物がいた。
ゲイオルがそこを向き
「ハンエイ博士…」
と、眼鏡を掛けた男性が立っていた。
ハンエイ博士は、ゲイオルに近づき
「いや…いつぞやの力のコントロール研究以来だね。元気だったかい?」
ゲイオルが渋い顔をすると、ハンエイ博士が
「その…何かあったのかい?」
ゲイオルとハンエイ博士は、昔、ガイラスと共に超越存在の力の研究をしていた。
無論、それにゲイオルも参加していたが…あまり、成果が無かったので解散された。
現在、ハンエイ博士は…セレソウム時空で動力炉の研究をしている。
ゲイオルがハンエイ博士に事情を説明すると、ハンエイ博士は微妙な顔で
「そうか…なら、どうだい? 少し家に来るかい?」
ゲイオルはそれに甘える事にした。
そして、ハンエイ博士は、こっそりとリュウセイにゲイオルを預かっていると連絡した。
ハンエイ博士の家で飲み物を貰って座るゲイオル。
ハンエイ博士が
「ゆっくりとしていきなさいな」
と、微笑む。
ハンエイ博士の家は…相変わらず何かのデータが開示してある立体映像ばかりだ。
ハンエイ博士は少し恥ずかしそうに
「すまないね。すこし片付けるよ」
と、部屋全体に投影された立体映像のデータを閉じる。
そうすると、簡素で綺麗な部屋に戻る。
研究者であるハンエイ博士にとって、日用品は少なくていい。
欲しいのは研究用の資料だけ。
ゲイオルが仕舞われるデータ立体映像の一つに
「さっき、仕舞われたデータに変なモノが…」
ハンエイ博士が首を傾げて
「変なモノ?」
ゲイオルが
「何かの壊れた…」
ハンエイ博士が「ああ…これかい?」とデータのリストを取り出して、それを立体映像で出す。
それは、何かの壊れた装置だった。
ゲイオルがそのデータ立体映像をつかみ
「なんですか? これは…」
ハンエイ博士が
「どこかの時空から、そのセレソウムに流れてきた動力炉だ。多分、アムザクの遺産ってヤツかもしれない」
ゲイオルが疑問の顔で
「アムザクの遺産?」
すれ違う二人、ゲイオルは一人、町中を歩きハンエイ博士と会い。
次回、反乱の前夜