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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
讐怨《シュウエン》
729/1112

第728話 二人の兄、レイシャ

次話を読んでいただきありがとうございます。

 それは、まだ…ゲイオルが十二歳の時だった。

 ゲイオルは自分の持つ力の特性と強大さに自覚があった。

 弟レイシュンと末妹シュンカも持っているが、それの比ではない。

 強大な力の奔流をゲイオルは知覚していた。

 それが、ゲイオルの知性を年齢より上げていた事も、より自覚させる一因だった。


 そんなゲイオルには大好きな伯父がいた。

 ガイラスだ。

「よう、ゲイオル、レイシュン、シュンカ」

と、ガイラスがゲイオル達の元へ遊びに来る事がある。


 ガイラスは何時も三人に笑顔を向けてくれる。

「ゲイオル。あんまり考えすぎるなよ。難しく考えると罠にはまるからな」

と、笑顔で。

 レイシュンには

「レイシュンは、優しすぎるから、悩みを抱え込むなよ。あと…早めに結婚しろ。そうしないと、オレみたいに行きそびれるぞ」

と、笑顔で

 シュンカには

「シュンカは、かわいいからなぁ…変な男に騙されるなよ。悪い男ってすぐに恋人になりたいとか、急に迫ってくるからな。シュンカは慎重に男を見極めろよ」

と、笑顔で。


 ガイラスが遊びに来る事を、三人の父ガシュンは…了承してくれている。


 そして、夜に三人の両親と、ガイラスが話をする時に

「兄さん、いい加減にセリュアと一緒になって欲しい」


 ガイラスの呆れるような声で

「そんな必要は無い。彼女は、義務感でそうなっているだけだ。自由なんだ。好きな相手と」


 ドンとガシュンがテーブルを叩き

「違う、兄さんの事が本当に好きなんだよ。だから…」


 ガイラスが肩をすくめて

「落ち着けよ。子供達が起きるぞ」


 共に話をする母ジャクエイが

「本当よ。彼女は、ガイラス兄さんを愛しているのよ」


 ガイラスが面倒な声で

「一度も彼女から愛の告白なんて聞いていないし、勘違いじゃあないのか? 何時も合えば、セレソウムの為、セレソウムの安念やら、彼女は軍閥の出身だからそれが一番なんだろう。オレの愛じゃなくて、自分の一族である軍閥と、ヴィシャル女王が重要であって」


「兄さん!」とガシュンが声を荒げて

「彼女は、怖がっているんだよ。兄さんに捨てられる事が…だから、それでしか」


 ガイラスの口調が鋭くなる。

「じゃあ、ハッキリ言う。覚悟がないんだよ。オレの事を愛しているなら、その覚悟がある筈だ。それがないから、オレの前で口に出来ない。それが事実だ。オレにとってゲイオルやレイシュン、シュンカは一番大事、愛している。三人に何時もホントの気持ちを伝えている。それは、その覚悟があるからだ。覚悟がないヤツの言葉なんて軽い」


 ガシュンが黙ると、ジャクエイが

「その強さが…セリュアとヴィシャル女王を苦しめているって分からない?」


 ガイラスが

「分からないね。そうやって与えられるだけを待つ卑怯者の言い分なんて…」


 三人の話し合いを隠れてゲイオルが見ていた。


 ゲイオルには許嫁がいるレイシャという少女だ。セリュアと同じ軍閥の出身だ。

 レイシャは気が強く、皆を引っ張っていく。

 父親がセレソウム時空の誇りある将校リュウセイだから、それに相応しくあろうと…強くなっていく。その素養もあった。


 十二歳のゲイオルだが、なんとなくガイラスと似ている…と感じていた。



 

 それはとある日のお祭りだった。

 ヴィシャル女王即位記念として、セレソウム時空がお祭り騒ぎに包まれていた。

 セレソウム時空には様々な種族がいる。人型から、獣人型、亜人型、竜人型、植物人型と多種多様な種族が共存して暮らしている。

 それは一会にセレソウム時空の超越存在を使った治世のお陰だ。

 三千年と続く平穏。

 それを象徴する女王の記念祭に、ゲイオルは家族といた。

 露天や、華やかな記念品が食べ物を売る店の街道を、ゲイオルは父ガシュンと母ジャクエイ、弟レイシュンと末妹シュンカの五人で進んでいた。


 そして広い街道には、ヴィシャル女王を運ぶ巨大な祭事の車両が通る。

 その後ろに、レイシャ達補佐する軍閥の一族が続く。

 まさに、今の平和は、女王達の一族によって保たれているというアピールだ。

 そこにガイラスはいない。

 町の人々は、手を振って女王達に答える。

 それを見上げているゲイオルは鋭い顔だ。

 全てはウソだ…と分かっている。

 本当は、ガイラスおじさんの力で…。

 派手に煌びやかに振る舞う女王達の参列。だが、その裏では…。


 その参列にいるレイシャがゲイオルに気づいた。

 レイシャは、ゲイオルがあまり好きでは無い。親から決められた許嫁。

 自分の方が偉いと思っている。

 だから、生意気なガキと思っていた。

 この時までは…。


 ゲイオルが参列から離れて

「どうしたんだ?」

と、父ガシュンが訪ねる。


 ゲイオルが

「あそこに食べたい物があるから…」


 ガシュンが

「女王陛下の参列が終わるまで」


 爆発が起こった。遠方からの攻撃。

 遙か上空から女王の参列を狙う巨大な人型兵器クガイ。

 このセレソウム時空が使う汎用人型兵器の群類だ。

 人型兵器を全て、セレソウム時空ではクガイと呼び、その姿は鎧武者を模している。


 クガイが三機降り立ち、女王の参列を襲撃する。

 ヴィシャル女王へ攻撃が向けられる。

 クガイの巨大な刀が振り下ろされるが、ヴィシャル女王の後ろから飛び出た一人のクガイ鎧の戦士によって防がれる。

 それは、ガイラスおじさんだった。

 二十メートルの巨体のクガイを超越存在の力で弾き飛ばす。


 別の巨大クガイがリュウセイ達へ迫る。

 レイシャとその家族、そして女王候補の一人であったアルシャナスへその巨刀を振り下ろすが、それを防ぐ者がいた。


 クガイの巨刀が弾かれる。

 十二のレイシャと十六のアルシャナスの前に立つ者がいる。

 ゲイオルだ。

 ゲイオルは、ガイラスと同じ超越存在の力で強力なバリアを展開してクガイからリュウセイ達を守る。


 クガイが何度も破壊しようと攻撃するが、まったく歯形立たない。

 クガイから

「おまえ…ガイラス様の後継者だな。どうして、ソイツらを助ける! 守るソイツらは、将来、貴方様を取り殺す寄生虫だぞ!」


 ゲイオルが

「なら、アンタ達は病原菌だ。なんでもかんでも自分の意思が正しいなんて、おかしい!」

と、バリアを指向性にしてクガイに当てて吹き飛ばす。

 ゲイオルがレイシャとアルシャナスへ

「立てる?」


 レイシャとアルシャナスは頷き、レイシャが

「ありがとう」


 だが、クガイが態勢を直して

「体制に取り込まれた愚か者めぇぇぇぇぇぇぇ」

と、クガイに備わるエネルギー砲を放とうする。


 そこへゲイオルが「うるさいわ!」と声を荒げて力を発動させ、頭上に超越存在の力の門を構築させ、そこから巨大な結晶の槍を構築してエネルギー砲を放とうとするクガイを貫いた。

 無論、操縦者は生きている。

 操縦席である胸部を外して、結晶の槍で巨大人型クガイを貫いて停止させた。


 他の二機のクガイは、ガイラスが安全に破壊していた。

 ゲイオルの元へヴィシャル女王を抱えてガイラスが現れて

「ゲイオル、良くやった。うまく使えるようになったなぁ…」


 ゲイオルが首を横に振り

「まだまだ、だよ。おじさん」


 クガイを停止させた結晶は砕け散り、その破片がゆっくりと降り注ぐ。

 その一つがレイシャのポケットに入った。


 ガイラスがヴィシャル女王を下ろして、ヴィシャル女王が

「ありがとう。ガイラス」


 ガイラスが

「気にするな。オレも…世界の滅びなんて望んでいない」


 ゲイオルも頷き

「そんな事をすれば、悲しむ人達が多くいる」


 だが「ガイラス様!」と叫ぶ人物が現れる。

 ゲイオルが破壊したクガイの操縦席から男性が降りてくる。

 その男が

「ガイラス様! 我々と一緒に立ち上がりましょう! こんな世界で良いのですか! アナタは…その連中に良いように利用されているだけだ!」

と、レイシャとアルシャナス、ヴィシャル女王達を指さす。


 それにヴィシャル女王とアルシャナスは厳しい目をする。


 襲撃した男が更に叫ぶ

「我々と一緒に戦いましょう! この世界を正して、そして…」


 ガイラスが「黙れよ」と殺気を向ける。

 

 男が黙る。


 ガイラスが告げる。

「だから、お前等はテロリストなんだよ。何が世界を正すだ…ふざけるなよ。お前の正しさが世の中の正しさじゃあねぇ。じゃあ、なんだ? キサマは正しさの為に命が奪われても問題ないってか? クソだな。お前みたいなヤツを理想って言葉で人殺しをする極悪人てヤツなんだよ」


 男が苛立ち気味に

「じゃあ、アンタは…何のためにいるんだ。なんの為にソイツらに利用されているんだよ!」


 ガイラスが隣にいるゲイオルの頭を撫で

「この子達の為だ。女王とか色んな派閥とか、権力なんてどうでも良いわ。オレは…この子達が生きられる世界を守る為に、頑張っているだけさ。お前等みたいに大義名分で人殺しをする愚か者とは違う!」


 男がゲイオルを睨むと、ガイラスが

「睨むな! この人殺しが…」


「うあああああ」と男が腰にある銃剣を手にしてゲイオルに向けるが、それをガイラスがバリアの波動で吹き飛ばし、男は転がった。

 そして、男は駆けつけた兵士に連行された。


 ガイラスがゲイオルの頬をなで

「怖い思いをさせたな、すまん」


 ゲイオルが首を横に振り

「いいよ。守ってくれたから」


 

 その日から、レイシャのゲイオルに対する見方が変わった。

 ゲイオルが大人である事に気づいた。

 自分も成長しようと…。

 そして、レイシャはゲイオルの事が…好きになっていった。

 ゲイオルは自覚がある。

 強い力を秘めているという事を分かっているから、考えて行動する。

 それを臆病とレイシャは思っていたが、違っていた。

 強い力があるからこそ、それを間違って振るえば被害を受ける人達がいるのを分かっている。

 自分よりも大人であるゲイオルに惹かれいった。

 

 そして、その時にポケットに入り込んだ結晶が思い出の品になった。


 そして、レイシャが15の時に真実を知った。

 ゲイオルが将来、ガイラスと同じく、このセレソウムでの超越存在となって力を分け与えると…。

 この日から、レイシャはゲイオルの指導に力を入れる。

 それによってゲイオルから嫌われるかもしれないが、それでも…ゲイオルの未来を守る為に鬼となった。

 そして、何時か…ガイラスからゲイオルに代替わりした時に、今までの苦痛の分だけゲイオルを大切にしようと誓った。

 相手から嫌われても相手の為に、それは愛情なのだろうが。

 それは、すれ違えば…悲劇しかない。



セレソウム時空での出来事、レイシャ、ゲイオルの思い出

それは続き


次回、思い出の中、レイシャ

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