第721話 紋章の意味 その二
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ディオスは、桜花を引き取る。
アムザクの遺産を管理している天臨丞王とは、月に一度、様子を報告してくれれば良いという事になった。
桜花のようなアムザクの遺産と融合した例はあるらしいので、その場合は…任せられる人には任せて、保護が必要な場合はそうするという、柔軟な姿勢を示してくれた。
今までのディオスの行いも大きい。
聖帝ディオスとして真っ当な事をしている。
それから外れる事もない。
なにより…
「桜花!」
と、ティリアが桜花を抱きしめる。
桜花は、自分より小さな11歳の女の子の抱擁を受けて微笑み頭を優しく撫でる。
記憶喪失の少女にとって精神的な安定は絶対に必要だ。
何らかの事でアムザクの遺産との融合をしている彼女、いや、させられた可能性がある。
その事実を思い出した時に、耐えられる精神力が必要だ。
だからこそ、安定をもたらす作用は必須だ。
なんか、家族とも馴染んでしまうのも早いし…良いかとディオスは、桜花を家族として受け入れた。
家族達は、反対しなかった。
ディオスは、桜花に関しての全てを話したら…妻達もそうするべきだと。
子供達もアリストスの息子娘達が強く押した。
アリストスの息子娘達は、犠牲となって傷ついた人達に優しい。
かつて、自分達も同じ犠牲の被害者だったからだ。
心の傷は無い方がいいが、だが心に痛みを持たない者は冷徹だ。
アリストスの息子娘達もディオスの屋敷に遊びに来ては、桜花の相手をしてくれる。
ディオスはそれを見て深く息子娘達の優しさに敬意を持つ。
そして、ディオスの元へ一人…まあ、派遣されたとされたルビードラゴンが、ミリオンに滞在して、色んな事を…主は、ティリアの補佐をしている。
ティリアと共に他の子供達と一緒にゼウスリオンを建造する。
オルディナイトの庭先で機神の素体に様々な装置や装甲を接続してゼウスリオンを建造していると、ディオスが
「ちょっと良いか?」
と、ルビードラゴンを呼ぶ。
ティリオと一緒に機能装甲を付けているルビードラゴンがティリオを見て
「大丈夫か?」
ティリオは頷き
「問題ない。やって置くよ」
ルビードラゴンがディオスの元へ来て
「なんだ?」
ディオスが「こっちへ来い」と誰もいない部屋で誘う。
ルビードラゴンと二人だけになるディオスが、ルビードラゴンへ
「お前…これ、知っているよな」
と、握れる程のプレートを見せる。
そのプレートには、桜の花とそれを交差して囲む剣の紋章があった。
それをルビードラゴンが見て鋭い顔になる。
ディオスが呆れた顔で
「分かりやすい。今、お前の気配が鋭くなったぞ」
ルビードラゴンが溜息をついて
「ああ…だが、概要しか…」
ディオスがそれを聞いて瞳を大きく開くほどに驚愕して
「ウソだろう…そんな…」
と、頭を抱えた。
ルビードラゴンが渋い顔で
「このまま、彼女は桜花としてここで暮らし続けた方が…幸せかもしれない」
ディオスが頭を抱えたまま
「それに関して詳しいヤツは…アイツか?」
ルビードラゴンが頷き
「察しの通りだ」
ディオスが渋い顔で頭を抱えたまま
「あの時、アズサワが…立ち止まって見ていたのは、そういう事だったのか…」
そう、桜花がいる遺跡に入った時に、アズサワがこの紋章を見ていた。
ルビードラゴンが
「どうする? 関わるのか?」
ディオスが首を横に振り
「いや、関わらない。そこの時空が何とかする問題だ」
ルビードラゴンがフンと嘆息して
「そうだな。その通りだ。呼び出しのはそれだけか?」
ディオスが腕組みをして
「あと…どうして、子供達はお前に馴染んでいるんだ? ティリオなんて、お前に狙われたのに、今、さっきまで普通に一緒に作業をやっていたよなぁ…」
ルビードラゴンが首を傾げて
「分からん。知らない間にそうなっていた。まあ、巻き込まれたと言った方が合っているだろう」
ディオスが父親として鋭い顔で
「もし、家族に手を出したら…」
ルビードラゴンがフン!と鼻息を荒げ
「絶対にしない。ティリアと約束した。絶対に死しても守る。お前達にもう、二度と手を上げない」
ディオスはルビードラゴンを凝視し続け
「まあ、いい。そうなったら…私が全力でお前を潰すと覚悟して置け」
ディオスとルビードラゴンが暫し視線を交差させた後、ルビードラゴンが背を向けて
「ティリオとの作業が残っている。戻るぞ」
ディオスが
「ああ…それと」
ルビードラゴンが苛立ち気味に
「なんだ?」
ディオスが顎に手を置いて
「お前、子供達と何か作っているようだが…」
ルビードラゴンが
「なんだ? 聞いていないのか?」
ディオスが
「何を作っている?」
ルビードラゴンが淡々と
「道だ」
ディオスが首を傾げて
「道? 道路?」
ルビードラゴンが
「アースガイヤ上空に作る国同士をつなげる空中高速移動魔導道路だ」
ディオスが驚きの顔で
「はぁぁあああああああ」
桜花の加わった日々、その時にディオスは、家族と馴染んでしまったルビードラゴンから話を聞き
そして、子供達はとある計画を…
次回、子供達の合作