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第719話 遺跡の少女 その二

次話を読んでいただきありがとうございます。


 ディオスが先頭を行き、広い空間に出る。

 そこは、周囲が何かの作業をするアーム達がつり下がり、多くの操作をする端末の基盤が並んでいる。

 端末の基盤の高さから、ディオスと同じ人型の生命体が使っていたのを予測できる。

 そもそも、入ろうとした入口が人が通るに適したサイズなので、人型の知性体の何かではあるのは直ぐに分かった。


 この空間の中央、球体を持つ十字型の物体。

 大きさ的に五メートルくらい。

 金属と電子回路で構築された球体のコアを持つ十字物体が鎮座されている。

 おそらく周辺の機器は、これを何とかする為に存在している。


 ティリアがその物体に近づき

「声がここから聞こえる」


 ディオスがティリアの隣に来てサードアイで観測透視すると、膨大なエネルギーを回路にした何かだった。

 そこへルビードラゴンが来て

「これは、おそらくアムザクの遺産を改造した装置かもしれない」


 ディオスがその装置のコアである球体を透視すると

「ああ…生命体がいる。この形状、波動…人か?」


 ティリアがそれを聞いて

「パパ、何とかできない?」


 ディオスは困り顔で

「ミリオンへ持ち帰れば…何とか出来るかもしれないが…」


 ルビードラゴンは、二人から離れて端末のそばに行き

「今からデータを抜く。後は好きに」


 ティリアが

「ダメ! ルビードラゴンおじちゃんも来るの!」


 ルビードラゴンは困り顔で

「いや、ここのデータを欲しいだけで…後は…」


 ティリアが

「じゃあ、おじちゃんはこの子を見つけたら放って置くの!」

と、怒っている。


 ルビードラゴンは項垂れて

「いや、しない…救護措置はするだろう」

と、告げつつアズサワを見て

「私はヘオスポロスの…」


 アズサワがふっと笑み端末を操作して通信をしながら背中を向け

「あ、もしもし、ああ…はい。ええ…フリーズ・フレアにご執心なようですよ。はい、ああ…はい、はい。分かりました」

と、連絡して端末を閉じると

「フリーズ・フレア。現時刻をもって、私と共に来たエステル時空の担当者が、是非、君を技術担当官として採用したいと…連絡があったから。ヘオスポロスも快諾した。後は、君次第だが…」


 ルビードラゴンが困惑して

「なぜ? どうして、そうなる?」


 アズサワがティリアに近づき

「ねぇ…お嬢ちゃん。お嬢ちゃんがルビードラゴンを説得して、お嬢ちゃんが親書を渡した時空の技術担当官として赴任させてくれれば、今後…君達の方とルビードラゴンが交流可能にするって言っている人達がいるけど」


 ティリアがルビードラゴンの前に来て

「おじちゃん。何か不満あるの?」


 ルビードラゴンは困惑気味に

「いや…特に…」

 そう、何もない。不満も一切ない。問題もない。どこに行こうが自分の技術と能力を磨けるならヘオスポロスだろうが、どこかの時空だろうが問題ない。


 ティリアが

「じゃあ、いいよね」


 ルビードラゴンが勝手に決まる状況に

「いや、待ってくれ。私の意思が」


 ティリアが腰に手を当て

「特にないって言ったよね」


「う、うむ…」とルビードラゴンは頷く。


 ティリアが

「それにアタシ達と交流する事に問題もないよね」


 ルビードラゴンが

「いや、その…君の父さんを襲った人物なんだぞ」


 ティリアが父ディオスを見て

「パパは、何かある?」


 ディオスは考える。

 コイツの能力は危険だから、見える所にいて欲しい。このままこっちに引っ張られるなら。


 ルビードラゴンが

「いや、待て、ちょっとは」


 ティリアが

「おじちゃんは黙っていて」


「あ、うむ」とルビードラゴンは黙る。


 それにディオスは、妙なデジャブを感じる。

 それはティリアを生んだ母クレティアが自分を叱る時の状況とうり二つだ。

 ルビードラゴンは、先程からティリアに引っ張れている。

 なんで、逆らえないのかは分からないが、ティリアにコントロールされる事を許している。

 だから

「そうだな。父さん達がいる場所で交流してくれるなら…良いかも」

と、告げてアズサワを見る。


 アズサワは怪しげな笑みをしている。


 ヘオスポロスに関する情報源は、王水の多頭龍だけだ。

 それがもう一つ増えるなら…。

 ディオスは、そう思いつつ。

 娘ティリアが好意を向けるヤツを監視したいという願望もあった。


 ティリアがルビードラゴンに

「ルビードラゴンのおじちゃん。いいよね」


 ルビードラゴンが小さくなるように頷き

「ああ…分かった」


 ティリアが小指を差し出し

「約束の証、おじちゃんも同じく小指を出して」


 ルビードラゴンもその意味を分かっているが、同じく小指を出してティリアと切り結ぶ。


 ティリアが

「アタシ達はおじちゃんを傷つけない。だからおじちゃんもアタシ達を傷つけない。約束して」


 ルビードラゴンが息を吐き

「分かった。私はティリア達を傷つけない。ティリア達も私を傷つけない」


 ティリアが頬笑み約束の指切りをした後

「約束だよ」

と、ルビードラゴンに飛び抱きつきホホにキスをした。

 百八十越えのルビードラゴンの飛び抱き付いているティリアを見て、ディオスは嫉妬と殺気の視線をルビードラゴンに向ける。

 

 ルビードラゴンは項垂れ気味にティリアを抱きしめて、その背中を摩る。

 全ての過去の感情を生まれ変わった時に捨てたはずなのに…。

 ティリアは、それをルビードラゴンに思い出させる。

 全く、どうしようもない…。


 それをアズサワは見つめていた。



 その後、ディオス達は作業に取りかかる。

 ルビードラゴンは、アムザクの遺産内部にいる生命の活動のチェックをする。

 その隣にティリアがいて

「動かしても大丈夫かなぁ…」


 ルビードラゴンが

「問題ない。んん…どういう訳か知らないが…遺跡と内部の生命が、彼女が融合しているから、それで」


 ティリアが

「ちょっと待って。女の子なの?」


 ルビードラゴンは頷き

「ああ…そうだが…」


 ティリアが

「どうして、私と同じ女の子が…」


 ルビードラゴンが眉間を寄せて

「それは、回収して調べないと…なんとも言えない」


 ディオスが

「おい、動かしても大丈夫か?」

 ヴァライマスに収容する準備が出来たので戻ってきた。


 ルビードラゴンが頷き

「問題ない」


 ディオスが魔導通信機で

「分かった。じゃあ、回収してくれ」

と、一方を入れると、この遺跡施設全体が微振動して移動する慣性を感じる。



 外では、ヴァライマスから遺跡施設全体を回収する魔導エネルギー光線が放たれてヴァライマスへ入れている。

 数分の間に宇宙圏にいるヴァライマスに遺跡施設が回収された。


 その後、アズサワと分かれて、ディオス達と遺跡施設を乗せたヴァライマスはアースガイヤに帰還、ミリオンに遺跡施設を収容した。


 ミリオンの解析と改造をする施設のドームに、十字型のアムザクの遺産が取り出されて運ばれる。

 そこには「よう」と天臨丞王がいた。


 ディオスがお辞儀して

「すいません。急な呼び出しに応じてもらって…」


 天臨丞王が首を横に振り

「構わんさ。それよりも人命と融合した…アムザクの遺産とはアレかね」

と、その十字型のアムザクの遺産を指さす。


 ディオスが頷き

「はい」


 天臨丞王がディオスの後方にいるルビードラゴンとティリアを見て

「それと…変わったヤツがいるなぁ…」


 ディオスが微妙な顔で

「まあ、諸事情によって…付いてきた野郎なんで…」


 天臨丞王は、ディオスが野郎という失礼な言葉を使ったのに理由を察する。

 娘のティリアが、その野郎とするルビードラゴンと仲良く戯れているのが気に入らないのだろう。

 それはいいとして

「とにかく、人命の方を優先するが…」


 ディオスが頷き

「はい、構いません」



 解析と改造をするドームで、十字型のアムザクの遺産が浮かび上がり天臨丞王とディオスが両端から浮かび、探査の為の力を放出する。

 天臨丞王は幾何学紋様の光の筋、ディオスは様々な魔方陣を、お互いに十字型のアムザクの遺産に照射して天臨丞王が

「これは…マズいな…相当にアムザクの遺産と融合して切り離せないぞ」


 ディオスが厳しい顔で

ソウルボディ(魂魄)アストラル(精神構造体)まで融合しているなんて…」


 天臨丞王が

「なぜ、こんな処置をしたのだ? 意味が分からん」


 それを聞いたルビードラゴンが考える。

 同席しているティリアが

「パパ、助けられないの?」


 ディオスが

「ティリア、最善を尽くしてはみるが…」


 天臨丞王も渋い顔をする。


 ルビードラゴンが

「融合して切り離せないなら、新たに機能を上書きして、人としての姿を戻すのは?」


 ディオスが

「いや、可能かもしれないが…だが…それはリスクが高いぞ」


 天臨丞王が

「上手い事、融合した命とアムザクの遺産の間を取り持たないと崩壊するぞ」


 ルビードラゴンが自分を示して

「私には、その取り持ちをする能力がある。だが…一つ必要とするモノがある」


 ディオスが

「なんだ?」


 ルビードラゴンが

「聖帝ディオスが持つ機神の力が欲しい」


 ディオスが「はぁあああああ!」と驚きを放つ。


 ルビードラゴンが淡々と

「機神の力は、人型を形成しようとする力がある。それを私の融合、合一する権能と合わせて、この少女に投入する。そうなれば、アムザクの遺産を動力として機神の力が融合し、機神の力が持つ人型を固持しようとする作用で、元の人型には成れる筈だ。成功率は九割以上だ」


 ティリアが父ディオスを見つめる。


 ディオスが渋い顔をして

「分かった。だが…お前も彼女の世話をする事が条件だ」


 フンとルビードラゴンは唸り

「乗りかかった船だ。最後まで付き合うさ」


 こうして、ルビードラゴンに機神の力を伝播させるディオス。

 ルビードラゴンが機神の力と自分の権能の一つ、合一させる力と合わせて十字型のアムザクの遺産へ投入した。


 十字型のアムザクの遺産は、機神へ変貌する。

 十字型から中心に全長が二十メートルの機神になり、そして、中心に向かって、彼女へ向かって収納される。

 光を放ち少女が現れて、ディオスはまとっているマントを取り、裸の彼女に被せて抱える。


 ディオスは困惑する。

 年齢的に十四歳、娘の七海と大して変わらない。


 直ぐに、医療ポッドが運ばれてメディカルチェックを受ける。


 ルビードラゴンはそれを見届ける隣にティリアが来て

「ありがとう。ルビードラゴンのおじちゃん」


 ルビードラゴンが厳しい顔して

「いや、礼には及ばん。だが…これからが…」

と、告げて右手に握っている紋章のプレートを見る。

 その紋章のプレートには覚えがあった。

「アズサワのヤツ…」

 アズサワは、この遺跡施設がどこから来たのか…知っていた。

 だから、あの時、やり過ごした。


 ルビードラゴンも資料として目を通した事があった。

 実に厄介な事態に巻き込まれたのだ。

解放された遺跡の少女。

その所在は…


次回、紋章の意味

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