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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
アリストス共和帝国の反乱

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第71話 超魔導兵器エルギア

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


遂に超魔導兵器エルギアが起動した。そして、マリウスの革命が始まると思いきや…エニグマのキャロルの企みが発露する。それにディオスは立ち向かう。

 マリウスを乗せて動き出したエルギアを見つめるディオス。

「さて…」

 何が起こるのか見物だぞ…と腕を組んで事態を待つ。


 エルギアを安置する巨大ドームの天井が開き、空が見える。


「さあ、飛翔しろ。エルギア」

 マギウスは命令を告げる。


 だが…エルギアは反応しない。


「どうした?」とマリウスは戸惑っていると、胸部にある銀色の半球の装置が怪しく虹色に輝く。


 エルギアは両腕を広げ

 ウィィィィィィィィィィ

と、吠えた次に背中に伸びる八つの翼から光線が周囲に放たれ、安置場所を破壊する。


 突然の攻撃に「どうした! エルギア!」と困惑するマリウス。


 安置場所の巨大ドームの桟橋にいるディオスは、エルギアの攻撃によって噴煙が上がるその場で、腕を掲げて自分を守りながら

「まさか…」

 同じ桟橋にいるキャロルを睨む。


 キャロルはクスクスと肩を震わせて笑っている。


「テメェ!」

と、ディオスがキャロルに吠えると


「あはははははははは!」

 キャロルが大きく哄笑した。

「いや…本当にバカだよ。マリウス…お前は、扱い易かったよ」


「なんだと!」

と、エルギアからマリウスの声が放たれる。


 キャロルが嘲笑いを向けて

「お前の胸部にある装置はな…。エルギアに取り込まれないようにするものじゃあない。エルギアを支配して操作する装置なんだよ。全く、おめでたいさ」


 ディオスがベクトで瞬間移動して、キャロルの背後に来ると

”グラビティ・アビス・エンテマイト”

 超重力の固まりを乗せた回し蹴りを放つも、キャロルは振り向き飛翔して避けた。


 避けたキャロルの両手足には、繊維が幾つも集合して出来た鉤爪の装備が填まっている。

「おいおい、レディーに向かって回し蹴りとは…。穏やかじゃあないなぁ…」

と、キャロルは桟橋の別の所へ着地する。


 ディオスは睨みを向けながら

「そうだなぁ…。チャンとしたレディなら、こんな事はしない。お前みたいにふざけた事をするヤツには、キツいお灸で十分だぜ」

 ディオスは両手を構えて徒手の型の戦闘態勢に移行する。

 だが…エルギアの翼から発射する光線の破壊に巻き込まれて、ディオスは「ク…」と身構えた瞬間、キャロルが消えた。

 ディオスの右にキャロルが来て、鉤爪を装備する足蹴りをディオスに放つ。

 それをディオスは、綺麗に防御して受け、超重力の乗った突きをキャロルに放つ。


 キャロルは風に舞う紙の如く避けて、ディオスの突きを放った腕の上に止まり

「これで、キサマの家族は終わりだ。私のように世界を呪え!」

 キャロルが小さな操作板を取り出して、操作する。


 ディオスの屋敷の上空、宇宙に配置された投擲兵器のスイッチを押したが…。

 ピー―――――――――

 投擲兵器の信号が途絶していた。


 キャロルは顔を顰める。

 そう、その兵器が破壊されていたのだ。


 ディオスは、キャロルが乗る腕を振ると、キャロルが別の所へ着地する。

 ディオスは、自分の首にある首輪の装置を握り

「こういう事だよ!」

 首輪の装置を引き千切って破壊した。


 キャロルはそれで察した。

 始めからディオスに対して用意したカードが全て、機能していなかったのだ。


「何が目的だ?」とキャロルは睨む。


「何だと思う?」とディオスは疑問で返した。


 キャロルは「フン!」と鼻息を荒げ

「まあ…いい。目的は達している。後はエルギアが装置に仕組まれた命令通り、そのエネルギーが尽きるまで破壊の限りをするのを高みの見物するまで」


 ゴキゴキとディオスは両手を鳴らして

「逃がすと思うか!」


 キャロルが笑った瞬間、エルギアからディオスの傍に光線が飛んで来た。

 爆発に包まれ、ディオスが身構えた次に、キャロルがいなくなっていた。

「こんな、世界…壊れてしまえ!」

 そう、言い残して。


 ディオスはチィと舌打ちして、暴れるエルギアへ向くと、エルギアが背中の翼から光線を放ちながら、空いた天井の空へ向かって飛翔した。

「全く面倒を掛けさせやがって」

と、ディオスはウィンドの飛翔魔法で追随する。



 エルギアは飛翔しながら、自分を安置していた霊廟の船型人工島を攻撃する。


 エルギアの光線の雨に逃げ惑う人々。

「止めろーーーーー」

 コクピットにいるマギウスは、何とかエルギアを止めようと、エルギアの端末に触れるも全く反応しない。


 そこへ

「おい! 大丈夫かーーーー」

 飛翔魔法で追随するディオスが来る。


「ディオス殿!」

 マリウスの声がエルギアから放たれる。


 声が聞こえるって事は、無事だな…。

 ディオスは呼び掛ける。

「そいつを止めるにはどうすればいい?」


 マリウスの声が

「動きを止めて、システムに介入して止めるか…」


「破壊するしかないのかーーーー」


「破壊してもいいが! 今、エルギアの内部には膨大な量の魔力が封入されている。それが一気に解放されて巨大な爆発が起こるかもしれん。破壊するにしても、ある程度、起動に使っている魔力を消費させて、破壊するしか…」


 要するに、相手をして疲れさせろって事か!

 ディオスは、エルギアの標的を自分に向ける為に攻撃を加える。

”ダウンフォール・バベル”

 ディオスの背に巨大な魔法陣が展開され、そこから、エルギアに向かって巨大光線が放たれる。

 エルギアは反応、強力な空間防壁を構築して、その巨大光線を防ぐ。


 エルギアはディオスを敵と認識して、攻撃を加える。

 膨大な量の光線がエルギアの翼から放たれる。


 それを、ディオスはベクトの瞬間移動を使って回避する。


 その後を、エルギアが追いかける。


 ディオスは、数百メートル、エルギアから距離を取ると次の攻撃魔法を放つ。

”セブンズ・ゲート”

 ディオスは背に六つの巨大魔法陣を背負い、そこから七色の光線の雨がエルギアに向かって噴出する。


 エルギアは構え、その七色光線の雨と同等の光線の攻撃を発射して相殺した。

 次に、両手をディオスに向けて王冠状にすると、その両手から膨大な量の電撃が生じ収束、稲妻の光線がディオスを襲う。


 ディオスは、それをベクトの瞬間移動で避けたが、光線が海の水平線に消えた瞬間、巨大な爆発の火球が誕生した。

「クソ…厄介だぜ」

 強力なグランスヴァイン級の攻撃にディオスは焦燥する。

 そして、次の攻撃は

”ブラックホール・アビス”

 ディオスは正面に魔法陣を展開、そこから黒い超重力の球体が生じて、黒の超重力球は、エルギアに向かって疾走する。


 それに、エルギアは、先程の雷撃の収束光線を発射すると、超重力の球体がそれを呑み込みながらエルギアに迫る。

 エルギアは、押し返そうと、雷撃の収束光線を放ち続ける。


 そんな最中、エルギアのコクピットにいるマリウスは止めようと、必死に手段を探していると、ガクンと意識が揺らぐ。

「まさか…」

 そう、エルギアがマリウスを侵食しているのだ。

「マズイ…」

 マリウスはエルギアとのリンクを切ろうするが、全く言う事を聞かないコンソール。

「はぁはぁはぁ…」

 マリウスは意識が遠のきそうになる中で

「こ…こんな…事で…」

 虚ろになるマリウスの脳裏に過ぎったのは、あの前マギリアス女性当主の優しげな顔だった。

「はは…最後に思い出したのが…これか…」

 マリウスの意識が途絶した。



 ディオスの超重力球体は、エルギアの攻撃を吸収して、エルギアに衝突した瞬間、巨大な閃光の大爆発となった。

 超重力のエネルギー波と、エルギアの吸収した攻撃を、一気に放ったのだ。

 巨大な数キロサイズの大閃光火球。その傍にいるディオスは、空間防壁

”クワイトロール・ホロウ”

 で、自分の身を守って様子を窺う。

 エルギアが、大閃光火球から逃れようと、上空へ昇った。

「逃がすかーーーー」

 ディオスもベクトの瞬間移動で追う。


 上空一万メートルに来ると、エルギアが両手を広げ背面の八つの翼を広げると、両手を王冠状にして雷撃を収束させた現象を周囲に無数に発生させる。


 丁度、上空一万メートルからは、南アンメリカ大陸と北アンメリカ大陸が見える。


 そこに向かって、先程の水平線の向こうで爆ぜた巨大爆発を幾つも放とうする。


 その照準の一キロ先にディオスが静止する。


 エルギアは、ディオス諸共、アンメリカ大陸を攻撃しようとする。


 その意図を察したディオスは

「上等だ!」

と、右手を握り固めてエルギアに向けて威圧する。そして、エルギアの攻撃までも跳ね返してエルギアを破壊する魔法を練る。


 ディオスを中心として、巨大な塔の如き魔法陣が展開される。


 エルギアは、周囲に無数の雷撃を収束させた光線の球体を作る。


 エルギアが発射寸前となる。


 ディオスは、完成した魔法を発動させる。

”レイライン・アース・ワールド”

 ディオスを中心として二十キロの四方の空間が明滅する。


 エルギアが雷撃の収束光線を放った。


 明滅する空間がエルギアの放った強大な力を持つ収束光線を呑み込んだ。


 次に、エルギアの頭上と、遙か下に巨大な十キロサイズの空間湾曲レンズが出現して、挟み込んだ。

 海上にある巨大空間湾曲レンズが、鏡面のようになると、頭上にある透明な巨大空間湾曲レンズ内に膨大な量の光源が発生し、エルギアの頭上から、レンズによって収束して強大になった光線の奔流が降臨する。


 エルギアは光線の奔流に呑み込まれ、更に鏡面と化したレンズに衝突、光線の反射が起こり、上下からの強大光線の奔流に弄ばれる。

 己を守ろうと、空間防壁を張り、更に翼から無数の光線を放って相殺させようとするも、全く追いつかない。

 むしろ、エルギアの放った光線までもレンズは呑み込んで巨大な光線の奔流に呑み込んだ後、天を貫く、巨大光柱が上空五十キロまで伸びた。


 ディオスは、予め空間のベクトルを曲げるレド・ゾルで身を守っているので何もダメージはなかった。


 大爆発の光の世界が消えた後、全魔導エネルギーを使い果たしたエルギアが、無防備に俯きながら海上へ着水した。

 そこは、安置場所の数キロ隣だ。


 ディオスは、直ぐに、海に浮かぶエルギアにベクトの瞬間移動で駆け付ける。

「大丈夫かーーーー」

 エルギアは胸部を上に海に浮かび、魔導エネルギーを使い果たした事で、パイロットを守る補助機構のお陰でコクピットのハッチが開いていた。

「おい、しっかりしろーーー」

と、ディオスは意識がなくコクピットの端末に項垂れるマリウスに呼び掛ける。


 ディオスは、マリウスを担ぎ上げて、ベクトでエルギアの霊廟たる船型人工島へ連続瞬間移動した。

 

 マリウスを肩に担いで現れたディオスに、マリウスの仲間達が駆け付け、直ぐにマリウスを医療室へ運ぶ。

 それを見つめるディオスの耳に、飛空艇のエンジン音が聞こえる。

 その方角は、アンメリカ大陸のある方だ。

 この事態に駆け付けたアリストス共和帝国の北の内政軍の戦艦飛空艇の艦隊が見える。


「さて…どうなるやら…」とディオスは難しい顔をした。





 ディオスはアリストスの大きな病院にいた。

 ディオスは特別治療室という、重傷の患者が入る部屋の前にいた。

 その部屋では、回復装置の中にマリウスが眠っている。

 部屋前の長椅子に座ってディオスは、両手を組んでいた。

「全く…」

と、ブツブツ言うディオス。

 我ながら、甘いとは思う。

 攫って利用した相手の心配をしているのだから…。


 そこへ

「ダーリン…」

 その声を聞いてディオスは驚いて声のした左を見る。

 なんと、通路の方には、クレティアとクリシュナにゼリティアの三人がいるのだ。


 ディオスはイスから立ち上がって三人に近付き

「どうして、ここに? いや…ティリオは? リリーシャは? ってか、ゼリティア…君は身重なんだ。ムリはするな」

 子供と妻達の心配をするディオス。


 クリシュナが

「子供達の事は、お父さんに事情を説明して、屋敷でお父さん達が面倒と守ってくれているわ」


 クレティアが

「そうだよ」


 ゼリティアが

「お主の事が心配で、体も大事に出来んわ」

 ちょっと膨れていた。


「すまない…」

と、ディオスは三人に頭を下げて謝る。


 クレティアが、マリウスのいる特別治療室を見つめ

「あそこにいるの? そのダーリンを…」


「ああ…」とディオスは頷いた。


「そう…」とクリシュナは腕を組む。


 それ以上は、聞かない。


 ディオスは、こういう優しい部分がある。多少の縁でも、関わると放っては置けない。

 ちょっとお節介な部分でもあるが…。

 ディオスは、マリウスが眠る特別治療室を見つめ

「全く、早く目覚めろよ」



 マリウスの意識は、別の場所にいた。

 そこは、そう…マギリアス家の大屋敷だった。

「私は…エルギアに…」

 そう思いつつ、大屋敷に入り、何となく当主が過ごす居室に来ると、そこに彼女がいた。

 マリウスは不快そうな懐かしむ顔で

「そうか…貴女が迎えに来たのか…」


 そう、前当主の彼女は、苦しそうな顔で首を横に振り

「いいえ…。助けに来たわ」


「助けに? 散々、私を苦しめておいて…」

 マリウスは苦しそうな顔をする。


 彼女は頭を下げて

「ごめんなさい。私の所為でマリウスを苦しめた。本当に身勝手だった」


 マリウスは頭を振り

「もういい。どうせ、冥府に行くのだ。関係ない…」


「そんな事はないわ…」


「はぁ?」

と、マリウスは訝しむ顔をすると、唐突に誰かに左手を握られた感覚がくる。


 彼女は涙を流して微笑みながら

「マリウス。生きて…どんな事があっても生き抜いて。その為に私が憎いのなら、心の底まで私を憎んで。それでマリウスが救われるなら、私は本望よ」


 そんな事をいう彼女にマリウスは呆れたような悲しげな顔を見せ

「貴女は…ミリティアは、夜の時以外は、優しく暖かだった。それだけは真実だった。この世にいない相手を憎むなんて、ムリだ」


 彼女、ミリティアはボロボロと涙を零しながら

「ごめんね。マリウス…」


 そこで、グッと左手がマリウスを引っ張り、マリウスの意識が現実へ戻った。

 



 回復装置の顔だけの部分が出る、治療水槽のベッドでマリウスが目を覚ますと、そこには沢山の顔があった。

 そう、マリウスを心配して来た貴族の子弟の部下達だった。

 

 マリウスは、それで状況を察した。

 治療のために病院にいるのだと…。

 そして、自分の左手を回復水槽の中に入れて握っている人物がいた。

 ディオスだった。

 そう…冥府に行く寸前を防いでいたのは、ディオスだったのだ。

「チィ」とマリウスが舌打ちした。


「ああ!」とディオスはそれを聞いて眉間にシワが寄る。


 マリウスは回復水槽のベッドにいながら

「全く、この世に戻したのが、ムサイ顔をしたディオス殿とは…珍妙な気分だ」


 ディオスは「ハァ!」と呆れて

「悪かったな。美女じゃなくて…」


 マリウスの脳裏に、ミリティアとの会話を思い返すと、自然と涙が零れた。





 その後、ディオスはアインデウス皇帝のいる世界樹型の巨大皇帝城へ呼ばれる。

 案内役は、あの…

「どうも…」

 リーレシアで会ったディウゴスだ。


 ディウゴスの導きによって、天まで届きそうな世界樹型の皇帝城を案内され

 巨大な、天空を映し出す皇帝の玉座に来る。


 玉座の前には、皇帝の息子、娘達が並び、その脇を守るように、皇帝直属の部下、ドラゴニックフォース軍団がいる。


 王座の右下、角張った口ひげに黒髪に獣耳の大きな体の男。

 ディウゴスと同じドラゴニックフォース軍団、右翼軍団長ゴルートスだ。

 いかにも快活な武人というゴルートス。


 そして、一同が全て見える高座の皇帝の玉座。

 そこに、黒と金の王冠を被り、黒を基調とした重厚な皇帝衣装に身を包む、アインデウス皇帝が目を光らせる。

 その右の席には、アインデウス皇帝の妻の一人、白姫の魔族の曲がり角を持ったアルディニア。

 左の席には燃えるような赤髪に額の立派なオーガ族の一本角を持つ武人の如き、同じく妻の赤姫ザミエル。

 そのザミエルの左の席に、黒姫とされるアルディルがいる。

 アインデウス皇帝の王座のそばにいられるのは、妻達三人しか許されない。


 ディウゴスが、絶対なる主、アインデウス皇帝に跪き

「皇帝陛下。お望み通り、ディオス・グレンテルをここに」


「うむ…」

と、アインデウス皇帝がディオスと視線を交わす。


 ディオスの中にある特別な感覚が、アインデウス皇帝の気配を察する。

 まるで、そこに巨大な存在を人型に押し込めたような存在がある感覚に囚われるディオス。

 そして、ディオスの内にある、あの存在が、アインデウス皇帝に共鳴している。

 なんだ? 

 ディオスは困惑するも、これは跪いていた方が無難だとして、ディウゴスと同じく跪くディオス。

「アインデウス皇帝陛下…お会い出来て光栄の極みにございます」


 ディオスの丁寧な挨拶に、アインデウス皇帝の周囲にいる者達が、満足げな顔をする。

 この者は、チャンと、我が主に敬意を持って接する事が出来ると…。


 アインデウス皇帝は、王座から立ち上がり、ディオスに近付く。

 跪くディオスの前にアインデウス皇帝が立つ、その周囲には、ゴルートスと三人の妻達、直属のドラゴニックフォース軍団が付きそう。


 アインデウス皇帝が

「この度の事、汝には色々と迷惑を掛けた。なんなりと申せ」


 ディオスは「は…」と肯き

「では、僭越ながら…。アーリシアと、アリストス共和帝国との、平等で円滑な貿易の手助けが欲しいかと…」


 アインデウス皇帝はフッと笑み

「分かった。そう…各員に伝えて置こう」


「は…」とディオスは畏まると「その…マリウス・マギリアスは…どのように…」


 アインデウス皇帝は「ふ…」と深い溜息を漏らし

「マギリアスは大きな南の貴族だ。まずは、お取り潰しになる事は難しいだろう。それに多くの南の貴族の子弟達が付いておる。

 マリウスを下手に処罰すれば…大きな問題が発生するだろう。まあ…監視付きの行動制限が…今の所の処方だ。それでも甘いという連中は多いだろう。

 だが…彼らがそのように行動したのも、我らが原因でもある。

 今後、北と南の不平等を解消するように…時間を掛けるしかあるまい…」


 ディオスは肯き

「お答え頂きありがとうございます」

 

 こうして、アインデウス皇帝との会談を終えて、クレティアにクリシュナとゼリティアの三人と共に、アーリシアに帰るディオス。

 飛空艇内の展望レストランで、ディオスはボーと外の空を流れる雲を見つめ

「はぁ…何とか終わったよ」

 ディオスのいるテーブルには、クレティアとクリシュナにゼリティアがいる。


「ホントよ。心配したんだからねダーリン」とクレティア。


「全く、アナタは…色んな事の巻き込まれるんだから」とクリシュナ。


「それを加味すると何か、誰か同行者が必要かのうぉ」とゼリティア。


 ディオスは頭を掻き

「そうだな…。全くだ」


 クレティアが

「あのさあ…ダーリン。ダーリンだけ、このままバルストランの屋敷に帰れないから…」


「え! どうして?」

と、困惑するディオス。


 ゼリティアが

「お主…リーレシアでの仕事が残っているのを忘れておるのか…」


 ディオスは「あ!」と思い出した。


 そう、リーレシアのグランスヴァイン級魔法運用者達に、ドラゴン退治に使える魔法の体内生成魔法を伝授するのが残っていた。

「クソ…」

と、ディオスはテーブルにうっ伏して、帰れない事を悔やむのであった。


 ああ…早く、ティリオとリリーシャに会いたい。抱っこしたい…。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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