第710話 雑な策略
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ヘオスポロス、エグゼクティブ達を話し合うドームで
「はぁ…なんと、お粗末な計画か…」
と、アズサワが呆れ気味に呟く。
アズサワを前にするエグゼクティブ達が
「仕方なかろう。新たなスポンサー達の要望を無下には出来ん」
アズサワが
「その依頼が、聖帝ディオスの暗殺ですか…。出来ると?」
その問いにエグゼクティブ達が
「不可能であろう」
と、告げる。
アズサワが
「それを新たに加わったスポンサーである時空の支配者達に告げたのでしょう?」
エグゼクティブの一人が
「無論、勧告はしたが…」
エグゼクティブの一人が
「それでも、依頼してきた。成功する確率は低い…と」
アズサワが顎を摩りながら
「どのような条件で?」
エグゼクティブの一人が
「ある一定の期間中に聖帝ディオスの暗殺を成し遂げられなければ…終わると…」
アズサワが訝しい顔で
「その為の方法は? 資材は?」
エグゼクティブの一人が
「我らから提供した」
エグゼクティブ887が
「例のゴッドアイズ計画の産物から誕生した彼を使う事にした」
アズサワが顔色を無くして
「例の…赤い宝石ですか…」
エグゼクティブ887が頷き
「そうルビー・ドラゴン。凍炎の宝玉だ」
アズサワが渋い顔で
「フリーズ・フレアは、不安定なのでは?」
エグゼクティブ887が
「王水の多頭龍を解析して我らの技術と、失われたアヌンナキの一柱の力を融合させた最高傑作である故に、その思考力は…我らを遙かに凌駕している。我らの望み通りにはならんのは想定済みだ」
別のエグゼクティブが
「我らと手を組む事の利益の高さを理解している。問題ない。こちらが操作するでなく、補佐するようにすれば、害より実益をもたらすだろう」
アズサワが
「もし、その凍炎の宝玉が失敗したら?」
エグゼクティブ887が怪しく笑み
「それが目的だ。聖帝ディオスの暗殺として聖帝の一団と戦わせる事で、より能力の学習をさせる」
アズサワが呆れ気味に
「暗殺計画を訓練道具にするのですか…」
エグゼクティブ達が笑み
「その通りだ」
と、エグゼクティブの一人が告げる。
アズサワが
「豪勢な訓練プランで…」
と、肩をすくめた後
「で、私の目的は?」
エグゼクティブの一人が
「スポンサー達を刺激しろ。我らの目的を裏で流して、スポンサー達を刺激させて行動を起こさせろ」
アズサワが笑み
「読めた。瓦解するが織り込み済みの計画を知らせる事で、スポンサー達を動かす。そして、ワザと聖帝ディオスへ自らたきつけるようにする…」
エグゼクティブの一人が頷き
「それにより、新たなスポンサー達の時空は、聖帝ディオスという超越の帝によって纏まりつつある超越存在、宇宙王達の一団に睨まれ、更に…その一団の結束が固くなる」
エグゼクティブの一人が
「それによって我らをより必要として、更にアズサワ達、エヴォリューション・インパクターも必要とされるだろう」
アズサワが笑み
「相変わらず、タダじゃあ転びませんなぁ…」
エグゼクティブ887が
「我らは我らの進化が目的、その為ならどんな事象とて利用する。それは、進化の果て、エヴォリューション・インパクターであるお前達も同じであろう」
アズサワが額を面倒くさそうに撫でながら
「私達の目的は、余す事無く全ての時空に進化を及ぼす事。それが我々の目的なのでね」
エグゼクティブ887が怪しい笑みで
「その為に、シンイラとも繋がっているのだろう?」
アズサワが目つきの鋭い笑みをして
「勿論、私が…今、手塩に掛けて編んでいる計画の成果は、お渡ししますよ。協力の対価として…」
エグゼクティブ達が怪しい笑みで、エグゼクティブの一人が
「この事案は、アズサワの計画を更に成功へ導く布石にもなる。励んでくれよ」
アズサワがふ…と笑み
「分かりました。では、後の事はお任せください。後始末は得意なのでね」
と、アズサワは消えた。
エグゼクティブ達がアズサワとの通信を終えて
「という事だ。ルビードラゴンよ」
と、アースガイヤへ到着している凍炎の宝石に呼び掛ける。
アースガイヤのとある大地の上で姿を隠した戦艦のコアにいる凍炎の宝石、ルビードラゴン。
頭からローブを被り、その瞳は赤いルビーのように輝き、額にはルビーの輝きを持つ瞳孔を備えたサードアイがある。
凍炎の宝石である彼は、静かに頷き
「目的通りにする。聖帝ディオスを暗殺しても構わないのだろう」
エグゼクティブの一人が
「それは絶対に不可能だ。お前とてな」
凍炎の宝石は鋭い視線で
「了解した。精々、ここを勉強の場にさせて貰う」
エグゼクティブの一人が
「はげみたまえ…」
凍炎の宝石、ルビードラゴンは通信を終えると、アースガイヤにあるバルストラン王都を望遠する画面を出して
「さて…今頃…」
その画面には、多くのアースガイヤの戦士達が集まっている場景がある。
下りて来る戦艦飛空艇達、そして、その中には時空戦艦も存在している。
今、現在、聖帝ディオスの子が狙われたとして、応援が各方面から駆け付けていた。
ルビードラゴンは笑む
「これで、目的を見当違いしてくれるだろう」
と、呟き座る機械の王座の足下には、無数のヘオスポロスの兵器人の躯体が生え続けている。
その一つ一つに意思の光がない人形だが、それをルビードラゴンは自らの意思を伝播させて意思がある人形に仕上げる。
見えない所で、兵団が出来つつあった。
ヘオスポロスの目的、それにディオス達は巻き込まれていく。
ディオス達はどう、戦うのか?
次回、集結