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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
アリストス共和帝国の反乱

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第70話 闇のカリスマにある真意

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスは、超魔導兵器エルギアを使って南アンメリカを独立させようとするマリウスの真意を聞くために、話し合いに見せて、隠しマジックアイテムを使う。そこで見えたマリウスの本心とは…

 翌日、ディオスはマリウスの飛空艇の中で、マリウスに言葉を紡ぐ。

「お前に協力する」


 マリウスは驚いた後…怪しむように見つめ

「どうしてだね…? 昨日は、あんなに拒絶していたのに…」


 はぁ…とディオスは溜息を漏らし

「一晩寝て、頭が冷めた。家族を取られては協力するしかない。それだけだ」


「ほぅ…」とマリウスはまだ、疑っている。


「お前等がなんと思うとも。オレは、そんな大した人間じゃあない。妻達や子供達が大切な、タダの夫であり父親だ。それ以外に行動原理はない。今までも偶々、魔法が得意なだけで上手くやってきただけだ」


「成る程…家族を人質に取られれば致し方ないと…」


「ああ…そういう事だ」

 ディオスの言葉は確かに筋が通っている。


 マリウスは、暫し考えた次に

「分かりました。そういう事なら、信じましょう」


「それと…」とディオスが「協力する代わりに、家族と連絡を取らせてくれ。もちろん、アンタ達の望む条件でだ…。心配させたくない」

と、しおらしくするディオス。


 マリウスは、考える。

 ここで、この望みを拒否すると、上手く操れなくなる可能性が高い。

 会話は監視して、連絡する方法もこちらが上手く誤魔化せる探知不能な事をすればいい。

 さらに、家族と会話させる事で、心配をかけまいと従うようになるかも…。

「いいでしょう。それくらいの望みなら叶えましょう」


「すまない」

と、ディオスはお辞儀する。


 マリウスは思った。

 案外、アーリシアの大英雄は普通なのだな…。

 自分の手の上で転がせられる自信が出てきた。

 

 頭を下げるディオスの目は、鋭く殺気が混じっている。

 これで、相手はオレを操り易いと勘違いするだろう…。

 まあ…家族の事は大事なのは、本当だかな…。




 その後、ディオスは屋敷の家族達と連絡が取れた。

「みんな、元気か?」

 ディオスが魔導通信機の受信部に呼び掛ける。


「ダーリン…大丈夫?」

 クレティアの心配する声。


「アア…大丈夫だ。三食、ちゃんとした飯も貰っているし、十分な居住空間にもいるよ」


「お主…こっちで色々と動いている。直ぐに解放されるかなぁ」

 ゼリティアの安心させようとする声。


「ありがとう。だが…ゼリティア。今は、君の体が一番、大事だ。お腹に子供がいるんだ。オレの事は心配するな、ちょっと…ソフィアには迷惑を掛けるかもしれないけど…。終わったら直ぐに帰る」


「どのくらい掛かるの?」

と、クリシュナの問い。


 ディオスは、傍にいるマリウスを見ると、マリウスは「一ヶ月程度…」と

「一ヶ月くらいだ」


「そう…」とクリシュナの暗くなる声。


 マリウスが首を横に振る。ここまでにしろ…と


「じゃあ…また、連絡する。子供達の事、頼んだよ」

 ディオスは終わりを告げると、魔導通信機の隣にいた兵士が、通信機を切った。

「はぁ…」とディオスは、座るソファーに深く背を預け

「ありがとう…ちょっと、気持ちが落ち着いた」


「なに…」とマリウスが「この程度で、こっちの言う事に従って貰えるなら安い事だ」


 ディオスはマリウスを見つめ

「アンタ達の計画の概要を聞きたい」


「分かった」とマリウスは説明する。


 その説明は、アルディルの言っていた通り、エルギアという超魔導兵器を起動させるのに、ディオスの力が必要という事だった。


「つまり、オレはエルギアが起動すれば、用済みという事か…」


「ああ…後は、どのように帰国しても構わない。こちらで飛空艇を出すか、北の方で経由してアーリシアに帰るか…」


 ディオスは口元に手を当て考え

「路銀をくれ。アンメリカの北に行って、そこから飛空艇で帰るさ」


「分かった。終わったら用意させる」

 マリウスが了承した所にキャロルがドアから顔を見せる。


 キャロルはディオスに近付きながら

「急に、気が変わって協力する気になったとか…」

 キャロルは鋭い視線でディオスを見つめる。


 ディオスも同じく鋭い視線で、キャロルと視線を衝突させる。


 ディオスは、キャロルを見ると、その十代の少女のような外観からは、想像出来ない程の、重く深い年月を過ごした感覚を受ける。

 それは、精霊アグニアの時と同じだ。

「お前…その姿からは、想像出来ない程に、歳月を過ごしているな…」

と、ディオスの指摘にキャロルは嘲笑いのような顔で

「ああ…半分精霊で人間だからなぁ…。この体も、もう…何代目だろうなぁ…」

 臆することなくキャロルはディオスの指摘を肯定した。


 ディオスの視線に殺気が篭もる。

 エニグマは、非人道的実験を繰り返している組織だ。

 そのような禁忌に近い実験もしているのだろう…。


「んん…」とマリウスは喉を鳴らして

「まあ…そんな、互いに鋭くしないでくれたまえ。計画を実行するまでは、まあ…協力関係でもあるし」


 ディオスは、キャロルから視線を逸らせる。


 キャロルが

「協力するという事は、その首輪を外すか?」


「そうだな…」とマリウスが同意するも


 ディオスが

「外すな、もしもの時の保険にならんだろう。それに、これでオレの位置も分かる筈だ。オレが現地に到着した時に、はぐれて迷っていた場合に困る」


「そうか…」とマリウスは頷く。




 ディオスを乗せた飛空艇が到着地の南アンメリカ大陸北西部に来る。

 南アンメリカ大陸の基地に、飛空艇は着陸、ディオスはマリウスと共に基地へ降り立つ。

 魔導操車や、戦艦飛空艇が並ぶそこは、まさに軍事基地だ。


「こっちだ」とマリウスはディオスを連れて行く。


 基地の賓客用の部屋にディオスを軟禁する。


 マリウスはディオスのギロチン首輪に触れて、何かのスイッチを操作して

「これで、私から離れても君を傷つける事はしない。位置は知らせるがな」


「はいよ」とディオスは、部屋のソファーに座り

「なぁ…もし、良ければオレと話さないか? 食事の合間でもいい」


 マリウスが首を傾げ

「どうしてだね?」


「その…色々と真意を聞きたいからよ」


「目的は…」


「建前じゃねぇ…アンタの本音をだ」


 マリウスは息を吐き

「考えて置く」



 そして夕方、ディオスはマリウスと共に、基地の将官室で食事を共にする。


「乾杯」とディオスはマリウスとグラスを交わす。


 マリウスは困ったような笑みを浮かべ

「何というか…君は不思議な男だ。こんな事態にも関わらず、暢気の食事が出来るのだから…」


 ディオスはワインで喉を潤し、皿にある料理をナイフとフォークで分けながら

「色々とあると、こういう事に…慣れっこになるのさ」


「そうか…。その何だ。君を誤解していたようだ。アーリシアを纏め、ロマリアの皇帝を説得出来た男だ。余程の難物と思っていたが…」


 ディオスは頭を振って

「本当に、ヒドい誤解だ。オレは普通の人間だ。偶々、色々とやれる場所にいるだけだ」


「だが…君の影響力は凄まじい…。アリストスの上層部も君の一挙一動に振り回されている」


 ディオスは、皿の料理を口にして呑み込んだ後…

「それは、まあ…オレのトラウマの所為だ」


「トラウマの所為?」


「ああ…オレは、昔…勤めていた会社に裏切られて殺されそうになった。その経験があるから、個人に対しては思い入れがあるが…。組織という多数の集団には冷徹になる。だから、やる事なす事にそういう傾向があるから、大きな組織を振り回すのだろうなぁ」


 ディオスの言葉を聞いてマリウスが

「では、私とこういう場を設けたのも…」


「ああ…組織として、それを実行する命令を出すアンタ個人の意思が聞きたくてなぁ。アンタは南アンメリカでも大きな貴族の当主だ。こんな事をしなくても、アリストスの社会に従っていれば、十分な利益がある筈だ。それに逆らうような真似をするって事は…」


 マリウスは、ナイフとフォークを持つ両手をテーブルに置いて

「そうだ。貴殿の言う通り、そんな事をする必要はない。そう…個人的な事だ。苦しい南を見ていると…。どうにもね…」


 ディオスがワインのボトルを持ってマリウスに注ぎ

「言える範囲でいい。教えてくれないか?」


 マリウスが黙ると、ディオスの手が滑ってフォークが床に落ちる。

「ああ…クソ」と悪態をつくディオス。


「待ってくれ。替わりを持ってこさせる」

と、マリウスが席を立って、ドア前にある呼び出しベルに向かう。


 僅かにディオスに背を向けた瞬間、ディオスは右手を懐にいれ、隠し小型魔導収納から小さな十センチサイズの黒い王冠を取り出し、マリウスの背に投げた。

 その小さい黒い王冠は、マリウスの後頭部下の背に密着するかしないかの所で、浮かびマリウスに小判鮫の如く付き従う。

 そう、そのマジックアイテムは、相手の思考をのぞき見る装置の小型版だ。ディオスは装置の小型化を作成して、それを空間魔法を応用したチョットした物がはいる魔導収納に仕舞っていたのだ。


 まさか、これがこんな所で役に立つとは…。

 そんな皮肉をディオスは噛み締める。

 

 ドアが開き、兵士が新しいナイフとフォークを持って来て、それをマリウスに渡す。

 兵士が敬礼してドアから去ると、マリウスはディオスに、ナイフとフォークを渡す。


「ああ…すまない。ありがとう」

 ディオスはお礼を言い、マリウスは席に着く。


 マリウスは暫し、皿を見つめ虚空に意識を飛ばす。


 ディオスの脳裏にマジックアイテムから、マリウスの思考が入ってくる。


 マリウスが語る。

「私は…正当なマギリアス家の当主ではない」


「正当な当主ではないとは?」


「養子なんだよ。当時、跡取りがいなかったマギリアス家は…遠縁の血筋に当たる私を養子として向かい入れて、次期当主にする予定だった。その養子に向かい入れる前は…とても、苦しい生活をしていた。幼少の路上生活は今でも忘れられない」


 ディオスの脳裏にマリウスの記憶が転送される。

 マリウスはマギリアスとは遠い親戚だった。

 当時、マギリアスは後継者争いで、血で血を洗う状態が続き、そのとばっちりがマリウスの両親を襲って殺した。

 マリウスは、辛うじて生き残り、なんとか路上で強盗やスリ、時には…殺人もして、何とか生きていたが…。

 その住んでいた街の犯罪組織に掴まり、少年の陰間として、貴族やそういう趣味のある客の相手をしていた。

 マリウスは、多くの客を取る程の人気があった。

 どことなく、高貴な所があり、そして…今までの路上生活で鋭い雰囲気を纏い。

 まるでそれは、気高いブラックパンサーのように…。

 それが客の気持ちを動かし、上客が良くマリウスを取った。

 だが…それに嫉妬する者もいた。

 同じ陰間の少年達だ。

 マリウスは多数でケンカを売られ、傷だらけになるも、やられたらやりかえさないと、生きていけないという裏社会の掟に順応して、自分を傷つけた少年達に逆襲した。

 かなり、悲惨な少年期だ。

 だが…そんな日々に変化が訪れる。

 何とマギリアス家が、マリウスを見つけ出し保護して受け入れたのだ。

 マギリアス家は、凄惨な後継者争いの為に、その血族者を減らしてしまい、残っていたのは当時、二十歳前後の女性当主とマリウスだけだった。

 悲惨な日々が終わって、マリウスにようやく平和な日々が訪れるかと…思いきや…。

 マリウスは、その当主の女性の慰み者となってしまった。

 度重なる一族の殺し合いに当主の女性の精神は摩耗してしまい。そういう事でした気持ちを安定させる事が出来なかった。

 マリウスに行く場所はない。

 それを受け入れるしかなく、十歳から十四歳までその状態が続いた。

 その中でマリウスは、何時か…こんな状態を打破しようと己を磨いた。

 そうすればする程、マリウスの雰囲気に磨きが掛かり、人を引きつけるようになった。

 そう、白は意外や深さがなく、当たり前ゆえに、引きつける効果はないが…黒は深く底が見えないゆえに、人が引きつけられた。

 特に、陽の部分に沢山ふれている貴族の子弟達には、異質で深いマリウスが魅力的だった。

 そして、十四になったある日、女性当主とマリウスの肉体関係が、関係者に露呈した。

マリウスと女性当主は引き剥がされる事となった当日、女性当主は、マリウスを自室に引っ張り込んで、マリウスに短剣を握らせ堅く握り閉めた後、そのまま、マリウスに握らせた短剣で胸を貫き自殺した。

 その死ぬ間際、マリウスに口づけして、絶命する。

 女性当主は、永遠にマリウスの中で生き続ける事を望み、それをマリウスに刻み付けたのだ。

 それは愛情だったのだろうか? それとも執着だったのだろうか?

 今となっては、死んでしまった女性当主に聞く事も出来ない。

 だが、それは確実にマリウスの心の中で息づいている。

 度々、夢の中でマリウスに迫り、マリウスに溶けていこうとする悪夢として現れる。


 ディオスはそれで理解した。


 マリウスはこの女性の悪夢から自分を救う為に、こんな事をするのだ。

 アリストス共和帝国に反旗を翻し、当主となったマギリアス家を壊し、自分が新たな存在として立ち上がる事で、その悪夢から解放されるのを…。


 そのマリウスの本心を見た時間は一秒にも満たない、コンマの世界だ。

 普通の時間ではマリウスが

「幼少の頃に過ごした厳しい南の生活を知っている身としては、それが…どうも…赦せなくてね…。このままの社会情勢では、変えられないと分かっているから、こういう手段に出たのだ」

と、マリウスが本心としている言葉をディオスに語った。


 ディオスはマリウスの本心を知っていながらも

「そうか…分かった」

と、素直に頷いた。


 マリウスは、ディオスの大人しくなる感じに、説得されたと思った。




 その夜、軟禁される賓客の間の寝室でディオスは、あの夢を見る。

 何処までも広がる草原、ディオスは頭を掻く。

 そう…亡き者達と、対話した夢の世界だ。

「クソ…」とディオスが呟く目の前にから、一人の女性が近付く。

 その女性はマリウスの前の当主。マリウスの心に大きな傷を受け付けた女性だ。


 ディオスは腕を組み女性に

「おい、なんだ? なんでオレの前に来た…」


 女性は頭を下げて

”お願いです。マリウスを救ってください!”


「ムリだね。そのぐらい、アイツの心の傷は深い」


”分かっています。私の身勝手な行いの所為であの子は…”


「心を救うには時間が掛かる。だが…命を守るのは、出来る…。出来るのはそれだけだ」


”はい…。お願いします”

 女性がお願いしたそこで夢を終わった。

 


 ディオスは薄暗がりの中で、ベッドから上半身を起こして

「全く、面倒クサい事を押しつけやがって…」




 次の日、ディオスはマリウス共に、西の大洋にあるエルギア霊廟に来る。

 そこは、巨大な三キロ近い船型の人工島で、白く輝いていた。

 ディオスは、そのエルギア霊廟に乗っている飛空艇が降りてくると…。

 その船型人工島の甲板には、大破して煙を上げる魔導操車と、魔導騎士装甲の姿が見えた。

 その壊れた兵器の隣には、マリウスの革命に賛同した魔導操車及び魔導騎士装甲の部隊がいた。

 どうやら、エルギア霊廟を制圧したようだ。


 ディオスを乗せる飛空艇が着陸、ディオスはマリウスとキャロルと共にその地を踏みしめる。


 ディオスは霊廟と呼ばれる人工島の建物を見上げ

「霊廟って事は、誰か祀られているのか?」


 マリウスが

「エルギアを操縦した者は、エルギアに取り込まれてしまうらしい。そのエルギアに取り込まれた者達をエルギアごと、祀っている」


「そんな、危険な物を誰が操縦するんだ?」


「私が操縦する」


「大丈夫なのか?」


「秘策はある」とマリウスは隣にいるキャロルを見る。


 キャロルはニヤリと笑む。


 ディオスはその様子に、エニグマが関係しているって事は…後々、絶対に大変な事になるぞ…と予感した。



 飛空艇から、ディオスの魔力とディオスの中に魔力を送って増幅、エルギアに送る装置が運ばれ、その後にディオスも続く。


 エルギア霊廟の中心部、エルギアが収まる巨大空間へ続く装甲板が開いた。

 そこは、巨大な白光と輝くドーム空間で、その中心に無重力となって浮かぶ球体の液体の中にエルギアが収まっている。

 エルギアは全身がトリコロールカラーで、背中にフィンのような翼を八つ伸ばし、脚部はつま先が刺さるような形状をしている。

 受ける感じとしては、翼を広げる大天使のような人型兵器である。


 マリウスと、キャロルがエルギアまで続く装甲の道を進み、エルギアの前にある操作板で何をすると、エルギアを包んでいる無重力の液体が重力を取り戻して、下に落ちた。


 そこへ、起動用の魔導エネルギーを送る装置を持って来て、兵士達がエルギアに接続する。


 マリウスが

「さあ…ここへ」

と、エルギアに接続された装置のイスにディオスを導く。


「はいはい」とディオスは近づき、装置のイスに座る。


 マリウスが説明する。

「イスの肘掛けになる球体を握って欲しい。そして、こちらが合図したら、その握っている球体に好きなだけ魔力を送ってくれ」


「はいよ…」とディオスは返事をした。


 マリウスは、装置の操作場所にいるキャロルへ肯き、キャロルが装置を操作する。


 ウィィィィィィィィィィ

と、起動音をして、装置が動くとキャロルがマリウスに頷く。

「魔力を送ってくれ」

 マリウスがディオスに告げると、ディオスは握っている球体に魔力を込める。

 装置が淡く輝く、その輝きが接続されているエルギアに伝達される。

 エルギアの二十メータの機械体が淡い光に包まれて数分後。

 ゴクンとエルギアに何かが入った音をさせ、エルギアの目に光が灯る。

 そして、エルギアの胸部が開き、操縦者を受け入れるコクピットを顕わにする。


「成功だ!」

 マリウスは喜ぶ。


 わーーーーーー

と、傍で付き従っていた兵士達から歓声が上がる。

 これで革命がなされる。

 南に大いなる日々が訪れるぞーー


 喜ぶ兵士を背に、マリウスは纏っている将校服を脱ぐ。

 その下にあったのは、キッチリと密着するスーツだ。

 その胸部には、銀色に輝く半球状のコンピュータチップのような装置が付いている。


「終わったか?」とディオスは尋ねる。


「ああ…もう、そこからどいてくれても構わない」

 マリウスが告げる。


 ディオスは装置の席から立ち上がり、マリウスを見つめ

「その纏っているスーツが…エルギアに取り込まれないようにするのか?」


 その問いにマリウスが胸部にある銀色の半球型の装置に手を触れ

「これは私と繋がっていてね。これが保護機能して働いてエルギアに取り込まれないようにするんだよ」


「へぇ…そうか…」

と、ディオスは興味深そうに見つめる。


 マリウスはディオスに右手を差し向け

「君の協力があったからこそ、出来た。感謝する」


 ディオスは、頭を掻きつつも、握手して

「いいさ。オレは帰るからなぁ」

 ウソである。この後、マリウスをエルギアに乗せて、完膚なきまでに叩き潰す予定だ。

 ディオスは、マリウスの横にいるキャロルを凝視する。

 絶対、こいつ…何かやるぞ…。

 ディオスの怪しむ視線に、ただ…キャロルは笑っていた。



 マリウスは、エルギアに乗り込むと、エルギアのハッチが閉まり、エルギアのコクピットに周囲の場景を全て映す。

 マリウスが、操縦桿を握ると、エルギアはマリウスの思考とリンク、そのリンクの保安装置として胸部の銀色の半球状の装置が動き出す。


 マリウスは鋭い笑みをして

「さあ…今こそ、私の全ての闇を払拭するのだ」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話は完成次第あげます。

ありがとうございました。

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