第705話 BROKEN MIRROR
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バルストラン王都に避難命令が発令される。
それと同時に、世界中、別時空から多くの艦隊がバルストラン王都に集結する。
その中心は、オルディナイト邸宅だ。
オルディナイト邸宅のど真ん中に超絶危険人物達が現れているからだ。
ディオス達は殺気を滾らせ、それを静かに見詰めるアズサワ達エヴォリューション・インパクターの一団。
アズサワの一団を怪しんで出迎えたセバスが捕まっている。
セバスが
「ディオス様! 私の事は構わずに!」
その叫ぶ背中にショックを与えて気絶させるエヴォリューション・インパクターのアルファ。倒れそうなセバスを軽々とアルファは肩に抱える。
アズサワが楽しげに
「お話をしましょう。聖帝様…」
ディオスがギリギリと歯軋りしていると、空から多くの部隊が降り立つ、アダムカインとレガリア使い、充人達機神使い、そして…
「アレイナを返して貰うぞ」
と、アズサワの開いている脇に姿を隠したアインデウスと、アインデウスの部隊ドラゴニックフォースの者達が出現し、アインデウスが鋭い手刀をアズサワに放つが。
それを二本指でエヴォリューション・インパクターのベータが止める。
アインデウスから放たれた威力がアズサワを越えて空に届き空の雲を消し飛ばす。
24人のエヴォリューション・インパクターの一人へアインデウスが攻撃を仕掛ける。
同時にドラゴニックフォースの者達も襲いかかるが。
イプシロンが
「少し…黙っていろ」
アインデウス達の光速に達している攻撃の全てを受け流して投げる。
花火の如くアインデウス達が吹き飛ぶ。
アズサワが
「そんなに殺気立たないでくれよ。私は交渉に来たんだよ」
と、告げ終わった頃に、北斗が従僕の神格達を連れてディオスの隣に降り立つ。
北斗の後ろにする四人の従僕の神格達、フブキが
「主さま…」
両手に全てを引き裂く威力を込める。
北斗が「動くな。様子を見る」と静止させるが、従僕の神格達四人は警戒を解いていない。
アズサワがニコニコと笑みながら
「ビックリだろう。私に受け答えしてくれた女性に、私は少し精神を乗っ取らさせて貰ってね。長期の人質に耐えられる男性を寄越すようにしたんだよ」
それを別室の安全な場所で聞いていたゼリティアが
「今すぐ! 受け答えした侍女を保護しろ!」
「はい!」と魔族の執事の男性が走り、みんなで侍女を探すと別室で呆然と立ちすくみ
「ああ…やっと見つけてくれたか…」
と、アズサワの声を放って糸が切れた人形のように倒れて、それを駆け付けた者達が抱える。
その報告をディオスは、耳打ちで聞いた瞬間、握っていた通信機を握りつぶした。
「テメェ…」
ディオスの怒りが頂点に達した。
それを隣にいるナトゥムラが
「落ち着け、ここで下手をしたら…」
ディオスは全身が怒りで赤熱して熱が籠もった息を吐く。
それを見てアズサワが
「二人目の人質も発見してくれて助かったよ。こうでもしないと話を聞いてくれないだろう」
と、告げた後に指を鳴らした。
アースガイヤ星系の上に巨大な時空転移が発生し、そこから宝石がハマった指輪のような超位物体が出現する。
その全長、アースガイヤ星系と同等だ。
アズサワが楽しげに
「このアースガイヤの上に出現したのは、高次元変移爆弾、聖帝様がもたらしてくれた技術から生まれた高次元と現次元の境をなくして爆発させる超位物体さ」
エヴォリューション・インパクターのデルタが
「このハイパーアークの爆発に耐えられるのは、アースガイヤ星系のイージスシールドしかない。つまり、爆発した瞬間、この時空の全てが始まりに戻る。アースガイヤを残してな」
ディオスが殺気の顔で
「どんな交渉に来た…いや、脅迫か?」
アズサワが微笑み肩をすくめて
「脅迫だなんて、拒否権があるんだよ。交渉さ。だから…話だけでも聞いてくれ」
と、アズサワが広そうな庭園の庭先を示し
「あそこで話し合おうじゃあないか…」
と、そこへ歩き出して芝生へ座る。
アズサワがそこに座って空を見上げて
「良い庭だ。空は殺風景だけどね」
と、多時空の時空艦隊に覆われた空を見る。
アズサワだけ動き、エヴォリューション・インパクターとアレイナは動かない。
そこへアインデウスがドラゴニックフォースの者達と戻ってきてアレイナの前に来て
「アレイナ…」
アレイナは顔を背けると、アインデウスは跪いて
「すまなかった。お前の苦しみに気付いてあげられなかった。だから…帰ってくれて。頼む。もう一度、私にお前を救うチャンスをくれ」
と、アレイナに頭を下げる。
アインデウス共に参加したドラゴニックフォースの娘のリュートとヴァハが同じく頭を下げ、リュートが
「帰って来てくれ。私達が悪かった。頼む」
頭を下げているアインデウスは泣いていた。
アレイナは顔を背けて黙っている。
アダムカインが
「君には色々とあるかもしれないが、だが…君を大切に思っている人達がいるのは間違いない。だから…」
その場景を背にディオスがナトゥムラと駆け付けてきたセイントセイバー達を共に庭に座るアズサワに近づく。
アズサワは、涙していた。
「いや…何とも感動する光景だ」
と、涙を拭いていた。
セイントセイバーの愛が
「気持ちが分かるんですか?」
アズサワは頷き
「分かるとも、アレイナくんを本当に大切に思っているのが…痛いほどに分かる」
と、涙を拭いている。
セイントセイバーの悠希が
「じゃあ、帰してくれても…」
アズサワが涙を拭いた目を向け、そこに狂気の笑みがあり
「それとこれとは別問題だ。私はアレイナくんを縛っていない。彼女は彼女の意思で我々といる。強制も束縛もしてない」
セイントセイバーの綾妃が
「アンタは、何の為に生きているんだ?」
アズサワの顔が怪しい笑みに変わって
「進化の為…なんてウソさ。私は…こういう存在だ。これが生存理由なんだよ。どうしようもない事実さ、人は終焉から逃れられない。私は私が終焉なのさ。この…私という存在こそが、私たる理由だ」
エヴォリューション・インパクターのシグマが
「本来なら、我々は快も不快も喜怒哀楽でさえも感情が無駄であると…な。そうなる筈なのに…ソイツは、アズサワは違う」
アズサワは嬉しげに
「私は人間なんだよ。どんなに感情なんて無駄だって理解しても、思考を休めず脳みそを回し続ける。きっと承認欲にレイプされ死んだ花をぶら下げる女のように愛される事を忘れて、惨めな姿で踊り狂っているのだろうね。だから…」
と、アズサワは立ち上がり殺気のディオスに
「この狂ってしまった悪魔が君に伝えに来たよ」
アズサワとディオスは視線を交差させる。
怒りのディオスと、狂気に笑むアズサワ
「我々と手を組まないか?」
全員が驚愕の視線をアズサワに集中させる。
アズサワの狂気の提案。
それにディオスは…
次回、拳