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第702話 オルディナイト会長

次話を読んでいただきありがとうございます。

その日は、バウワッハがオルディナイト会長を退陣する日だった。


 ゼリティアのオルディナイト邸宅で、バウワッハの会長の送別会が始まっていた。

 邸宅の広い庭先で、多くのテーブルが並ぶ、そこの料理が並んでいる。

 ボーイ達が飲み物を運ぶ魔導テーブル台を後ろに、来賓達へ振る舞い。

 多くの来賓達が談笑していた。


 その来賓とは、フランドイルのヴァルハラ財団の会長エレオノーレ、ウルシアル財団の会長シャルロ、その関係者達。

 ロマリアからは、各種の財団長と会社の会長達。

 アリストスからは、アインデウスの系譜に並ぶ技術企業の長達と、オルディナイトと一緒に商売をした者達の長達。

 無論、オルディナイト関係者が全員いる。

 それは最初のオルディナイトを作った精霊アグニアと眷属達。

 更に、世界中からオルディナイトと商売の関係者達が勢揃いして、経済界ので世界的会議のようだった。


 バウワッハは、邸宅の前にある椅子に座って来賓達の挨拶を受けている。

 その両隣には無論、ディオスとゼリティアがいて、共に受けていた。


 エレオノーレ達が来て

「バウ兄様」

と、バウワッハと抱き合う。


 バウワッハが背中を撫で

「エレオ、よく来てくれたな」


 エレオノーレは離れて

「ええ…もちろんですわ。バウ兄様、本当にお疲れ様でした」


 バウワッハは微笑み

「ああ…本当に激動だったよ。世界が変わっていくのを実感したよ」


 そこへ

「久しいなバウワッハ」

と、ロマリアから来たオルムド財団の会長である魔族の老紳士ルグドがいた。


 バウワッハは席から離れて

「お主が来てくれるとなぁ…」


 ルグドはバウワッハに

「ああ…色々とあったが…。商売敵としては戦ったが、人としては憎んだ事は無い。それに…お前の次を担う男が世界を繋げてくれたお陰で、こうして簡単に顔を合わせられるようになった。感謝せねばな」


 ルグドは、席にいるディオスを見て微笑む。

 ディオスはフフ…と微笑する。


 バウワッハが微笑み

「これからは時間がある。気が済むまで口げんかでもしようか…」


 ルグドが呆れ気味に

「もう、そんな年じゃあないさ。思い出話に花を咲かせよう」


 こうして、世界中から集まった者達がバウワッハと思い出話をする。


 老人達の色んな話が飛び交い、そして…あそこはこうだったとか、あの意図はこうだったとか、あんな事もしたなぁ…と商売で戦った話やら、国家間の裏話とか。

 色んな話を皆で楽しむ。


 それを遠巻きで見詰めるディオスに、ゼルティオナが来て

「ディオス、本当にありがとう」

 

 ディオスはゼルティオナを見て

「え…どういう感謝で?」


 ゼルティオナは微笑み

「アナタが世界を繋げてくれたから、こうして、皆…楽しく話せる世界が来たのよ。アナタは本当に立派な事をしたわ」


 ディオスは肩をすくめて

「どうでしょう…。アースガイヤの歴史を見れば…元からこんな感じだったような気がしますね」


 ゼルティオナがバウワッハ達の話している一団を見て

「いいえ、これはディオスが作った和よ」


 ディオスが溜息を漏らし

「でも、自分にも限界はあります。万能ではありません。これからも皆様のお力を借りるでしょう。今後とも、よろしくお願い致します。ゼルティオナ様…」


 ゼルティオナが頷き

「ええ…力を貸すわ。これからもこの世界の和を護っていきましょう」


 ディオスは頷き

「ええ…その通りです」


 かつて、アースガイヤの国々は分断されていた。

 だが、それが一つに繋がり、大きな流れとなり、循環の輪になった。

 これからも、それが続くだろう。

 いや、続かせる。それが世界を護る力となるのだから…。


 ディオスがオルディナイト邸宅でオルディナイト財団の会長室の椅子に座る。

 その隣には、かつてディオスを試した秘書のオルストルが隣に立ち

「ディオス様、ようこそ、オルディナイト会長へ。皆、首を長くして今か今かと待っておりました」


 ディオスが座る会長席の前に、オルディナイト会長の部下達が並んでいる。


 ディオスは会長席から立ち上がり

「初めまして、若輩者ですが…よろしくお願い致します」

と、全員に頭を下げ

「早速ですが…一つ皆様とお約束をしようと思います。私は、正直…野心や野望がありません。このオルディナイトが守れれば良しとする小心者です。ですから、これはダメだ。違法ではないか? そう思う事がありましたら、正直にお話ください。それが私が会長になった時の約束です」


 堂々と宣言するディオスの態度に、部下達は呆れのようにな驚嘆のような顔をする。

 弱々しい事を言っているのに、真っ直ぐと凜とした王のような風格がある。

 ディオスは、今まで世界がひっくり返るような事態と渡り合ってきた。

 その胆力が見えるのだ。


 部下の一人、副会長の男性アディスが

「こちらこそ、よろしくお願いします。ディオス会長」


 ディオスは微笑み

「会長と呼ばれるのは、こそばゆいですが。歴代のオルディナイト会長達や、オルディナイトの皆様に泥を塗らないように、正々堂々と職務を全うします」

と、堂々とした格好に、部下達は満足する。


 ディオスの会長初の仕事は、挨拶回りだ。

 様々な関係者への挨拶回りだけで相当な時間を要する。

 だが、ディオスは様々な超魔導技術の産物を持っている。

 小型の超光速移動の魔導戦艦に乗ってアースガイヤ各地を回る。


 アースガイヤはディオスの会長挨拶回りで湧いた。

 聖帝ディオスは、何度もアースガイヤや、他の時空、様々な難事件を解決した偉人である。その挨拶は歓迎を持って受け入られる。

 その先で、やはり…というべきか、ディオスが作れる聖帝の結晶とする黄金の魔導石を欲する人達がいて、出会う先で作って渡す。


 挨拶回りが終わり、ディオスの日課に会長職の仕事が加わる。

 午前最初の二時間は、クレティアとクリシュナ、セイントセイバー達の体力作りに付き合い、その後、会長職としてオルディナイト全体や、それに関する仕事の動きと許可の申請を、昼を取って午後の三時まで続き、その後…研究や高純度魔導石の製造を行う。


 主なオルディナイトの営業や戦略は、オルディナイトの戦略担当部門が行う。

 無論、ディオスも意向を伝えるが、あまり口出す事は無い。

 威張るトップほど、嫌がられる者はない。

 会長になると、多くなる仕事は、やはり顔合わせだ。

 接待とした宴会のような事は少ないが、色んな話し合いと交渉決定の場に顔を出す事が多い。

 オルディナイト財団の顔、代表という事を感じる。

 地位を手に入れる程、それに対して重責が加わる。

 だが、得な事がある。


 会長席で、ディオスが色んな書類にサインをしていると…

「オルストル、この開発に関して世界王族会議に通した方が良いような気がする」

と、書類を見せる。


 オルストルが受け取り

「この…新素材の開発に関してですか?」


 ディオスが渋い顔で

「聖帝の威光ネットワークに、これに関する詳しい設計と資料が出ていて、何れ…こっちにも話が通ると分かって待っていたんだ。この技術を応用すると、今は…ゼウスリオンは機神の素体をコアに使っているが…嘗てのゼウスインゴットをコアに使ったゼウスリオンと同等の性能を持つ巨大ゴーレムが建造できる可能性がある」


 オルストルが頷き

「分かりました。関係財団と企業達に、それと…」


 ディオスも頷き

「アインデウス様やライドル様にヴィルヘルム様にも…」


 オルストルは、早速手配へ向かった。


 オルディナイト会長になったディオスは、気軽に世界中へ飛べるようになった。

 今までは、国の許可が必要な場合が多かったが。

 このオルディナイト財団の代表という地位のお陰で、気軽に世界中へ飛び、様々に呼びかける事が出来るようになった。


 オルディナイト会長は、オルディナイト財団の顔ゆえに自身を厳しく律する事が必要だ。

 だが、それによって世界中の様々な代表達と直接に話し合えるという利点がある。

 ディオスの聖帝という地位は、あくまでも名誉的な側面であり、社会的な実質は、王ソフィアの優秀な部下でしかない。

 それが今では聖帝という名誉と、オルディナイトの代表という社会的な事を得て、上手く機能する事になる。

 何とかなったという事だ。


 数日後、バルストラン王城の王執務室でゼリティアがとある資料を見て、隣にいる王秘書のカメリアが

「オルディナイト会長、ディオス様からの案件でございますが…」


 王執務机にいるゼリティアが

「知っておる。妾は聖帝の妻ぞ。とおの前に夫から概要は聞いておる」


 カメリアは溜息をして

「そうですか。ディオス様がオルディナイト会長になって周囲は期待に湧いております。その期待に応えるようにディオス様は、手腕を発揮しております」


 ゼリティアは満足そうに

「夫殿は、元からそういう手腕があった。セイントセイバー達を見れば分かるだろう」


 カメリアが頷き

「アレほどの能力の者達を生かすのですから…当然でしょう」


 ゼリティアは背筋を伸ばして

「妾も夫に恥をかかせないように王として頑張らんとな」




オルディナイト会長となったディオス。

その会長になってから僅かの間に


次回、計略

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