第65話 ゼリティアとディオス その…
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでいってください。
あらすじです。
ディオスの元へ一国の王が孫娘を連れて現れる。
その目的は、孫娘を嫁にして欲しいという驚きの内容だった。
混乱するディオスは…
ディオスはホッとしてクレティアとクリシュナの筋トレを受けていた。
ソフィアやヴィルヘルムが念を押して、自重を促す放送をしてくれた。
これで、突然の訪問はないだろうと…安心していた。
そして、午前の筋トレを終えて昼と取っている。
魔導情報端末を動かして、適当なニュースを流す。
『次のニュースです。
本日の夜、アフーリアより、レオルトス王国のフィリティ陛下と
同じアフーリアのアルバニス王国のウジュラット陛下が
バルストランへ訪問されるそうです』
そう、今日の午後、二人の王を迎える為に、ディオスは王宮へ向かうのだ。
屋敷の姿見の鏡でディオスは、魔導士服のローブにシャツとスラックスの姿を確認して
「どうかなぁ…」
と、近くにいるクレティアとクリシュナに尋ねる。
クレティアは
「う~ん キッチリしていていいかも」
クリシュナが
「アナタは肩幅があるし、背も高いから、そういう礼儀正しい格好が一番に栄えるわね」
二人の十分な感触にディオスは満足して
「そうか…じゃあ…行ってくる。きっと多分、フィリティ陛下も後で、こっちに来るかもしれないから…よろしく」
「うん」とクレティアは肯き
「ええ…準備して置くわ」とクリシュナも了承した。
「さて…行って来ます」とディオスが玄関のハンドルに手を置いた次に
ピンポーンとインターホンが鳴った。
「え…」とディオスが玄関を開けたそこには…。
金糸の模様が編み込んである上質なコートを纏う、下地にスーツの中年の男性が、両脇に簡易魔導鎧を纏った魔導騎士に挟まれている。
ディオスは瞬きさせ
「どちら様でしょうか…?」
中年の男性は軽く会釈して
「初めまして、ディオス・グレンテル殿…アルバニスで王をしております。ウジュラットです」
ディオスは、固まった次に「え…」と驚愕した瞳をウジュラットに向ける。
「グレンテル殿…とても、内密な話があります。少々…お屋敷に上がってもよろしいでしょうか…」
「ああ…」とディオスは戸惑いながらも身を引かせ「ど、どうぞ…」と中を示す。
「では…」
と、ウジュラットは、後ろを向くと、護衛の魔導操車に挟まれている一代の黒塗りの高級で頑丈な魔導車のドアが開き、そこから青髪の麗しい娘が出てきた。
「孫のウルティアナです。どうでしょうか…?」
と、ウジュラットは良きにウルティアナを付かせる。
「ああ…はぁ…まあ、美しいと思いますよ」
と、ディオスはお世辞半分、素直半分の答えをした。
「そうですか…」
ウジュラットは肯く。
ディオスは、屋敷の客間にウジュラットと孫娘のウルティアナを入れてもてなす。
「すいません。簡素な屋敷で…」
「いいえ、構いません…」
ウジュラットは答える。
そこに、レベッカがお茶を持って来て、ウジュラットとウルティアナの前に置き
「どうぞ…」
とレベッカが告げ、ウジュラットとウルティアナがお辞儀した。
ディオスは困惑顔で
「あの…何の事で…自分の屋敷に…。確か…記憶が正しいなら…陛下は…フィリティ陛下と一緒に来るはずでは…?」
ウジュラットは真剣な目を向け
「グレンテル殿…。貴方様のアリストスとの資源交渉の手腕、我が国にも轟いております」
「ああ…どうも…恐縮です」
「我が国はとても小さい国家です。様々な列強の傘下に入らなければ…維持できない。そんな、風見鶏のような情けない国です」
「ああ…」
それで、ディオスは…
ああ…何か、何処かの国の圧力で困っているのかぁ…。
それで、助けて欲しいと…。
と、考えを巡らせる。
ウジュラットは紅茶を口にして次に
「グレンテル殿…いいえ、グレンテル様。どうか…我らの国をお救いください。我が孫娘、ウルティアナを貴方様の妻にしていただき、我が国を…助けて頂きたい」
ディオスは目元が固まり、右頬が痙攣する。
ディオスの右に立つレベッカが、視線だけをディオスに向ける。
ディオスは、硬くなって動きが悪いネジのように頭をレベッカに向け、アイコンタクトする。
ソフィアを呼んで…
レベッカは小さく肯き
「失礼します…」
と、部屋を出て直ぐに魔導通信機の元へ走った。
客間ではディオスが、アルバニス王とその孫娘を前に
「すーー 落ち着いてください。他にも方法があるはずです。もっと考えましょう。自分も協力しますから…」
ウジュラットは首を横に振り
「他に方法はありません。これしか…我が国を列強の力より守る以外ないのです」
「いやいやいやいや…。やり方は幾らでもありますって。だから…」
ウジュラットはディオスの右手を取って握り締め
「グレンテル様…。レオルトス王国は、今やアリストス共和帝国に一目置かれる存在…。その理由は貴方様にある。貴方様がレオルトス王国との強固な繋がりがあるから、アリストス共和帝国も、ロマリア帝国も、他の列強もそのあり方を考え直している。グレンテル様…この世界は、所詮…強大な力があるからこそ成り立っている。貴方様はその、世界と対等に渡り歩く強大な力の一角です。どうか…どうか…我らの国を…。ウルティアナを…妻に…」
ディオスは、ウジュラットの左隣に座るウルティアナを見つめ
「王女様…こんな、不作法で、市井の魔導士など…。王家の末席を汚すだけです。王女様には自分より相応しい方が必ずいます。ですから…」
ウルティアナは首を横に振って
「わたくしは、もう…グレンテル様の…ディオス様の妻となる為にここに来ました。貴方様がそんなに自分を下卑するなど…。それこそ、ディオス様が己の力を知らないのです。ディオス様のお力と影響力は、一国を支えるだけでは有り余るモノ。それに…ディオス様がお優しいという話は、かねがね伺っております。何も不安などありません。ですから…わたくしを妻として向かい入れてください」
ディオスは額を抱える。
もうダメだーーーーーー
どう、説得しても聞き入れてくれない。どうしよう…
絶望的説得状況に、ディオスのストレスがマッハで上がっていく。
やばい、動悸みたいに鼓動が強くて苦しくなってきたぞ…。
ジーとディオスを見つめるウジュラットとウルティアナ。
その圧力に…ディオスは…。
もう…どうすればーーーーーー
万策尽きた頃、客間のドアが開いた。
そこには、ソフィアと、共に来たナトゥムラとマフィーリアがいた。
ソフィアがウジュラットの元に来て
「アルバニス王…少し、王宮で話をしませんか?」
ウジュラットは首を横にして
「行けません。ここでディオス様の了承の答えを聞くまでは」
ソフィアは、ウジュラットの手を取って
「アルバニス王…ここでの話が何処かに漏れれば…王の国にとって不利益になる筈です。王宮で、事情次第では、味方になりますので…」
ソフィアとウジュラットは視線を交差させた後。
「はぁ…致し方ないですか…」
ウジュラットは重い腰を上げた。
ウルティアナは立ち上がらない。
「王女様…」とソフィアは呼び掛ける。
「わたくしは、もう…そのつもりで来ました。動きません」
「王女様…入口の方を見てください」
と、ソフィアは促す。
ウルティアナは客間の空いているドアを見ると、心配そうに見つめる身重のクレティアとクリシュナがいた。
ソフィアが
「もし、王女様がいて、二人に何かあった場合は…ディオスは…」
ウルティアナは目を強く閉じた後…
「分かりました」
何とかして、二人を王宮に連れて行く事が出来た。
その後、王都傍の空港に来たフィリティ達と共に、何とか説得して、一件を収めて貰ったが…。
アルバニス王は
「では…奥方達の出産が落ち着いた時に…また…」
そう言い残して帰っていった。
王宮でソフィアは執務机に頭をうつ伏して
「ああ…どうして…こうなった…」
何とか、貴族達の動きは牽制出来が…王族関係の動きまでは、出来ない。
これが噂となって広まり、引き金となったら…。
そんな最悪な想像を巡らすソフィアに、
そばにいたゼリティアが
「もう…どうしようもない。ここは流れに任せるしかないでは?」
その言葉に、ソフィアはゼリティアを見つめる。
流れに任せたどんな事になるか分からない。いっそ…どこの誰かに…。
一番、問題がなくて全てが納得する答え…
「あ!」
それが目の前にいるゼリティアだった。
「な、なんじゃ?」とゼリティアは訝しがる。
そう、ゼリティアは、バルストランに根付く大公の家系であり、自分の姪っ子。
王族にも繋がっている現オルディナイト当主だ。
一番、誰しもが納得して、誰しもが諦める人物。
だが…その考えにソフィアは皮肉な笑みをする。
「ごめん。ゼリティアとアイツが結ばれれば、全てが上手く行くと思っちゃった…。ゼリティアの意思を無視して考えるなんて…どうかしてた」
それを聞いて、ゼリティアは「ああ…」と微妙な顔をした。
その日は、ゼリティアの城邸でクレティアとクリシュナが妊娠検診を受けていた。
「順調ですね」
と、城邸専属の魔族の女性医師が太鼓判を押す。
そこにゼリティアがいた。
「よかったの…」
と、クレティアとクリシュナに呼び掛けると、二人はゼリティアを見つめ
「最近、ダーリンが落ち込んでいて…ね」
クレティアが告げる。
「多分…。立て続けにあった嫁入りの事件の所為だと思うの」
クリシュナが呟く。
「そうか…」とゼリティアは頷く。
クレティアが
「まあ…ダーリンの色んな事を考えると、そうなっても仕方ないとは、思っているんだ…。ただね…」
クリシュナが
「そう…ただね。夫のアーリシアの大英雄と部分だけで好きになった人とは…ちょっとね…」
クレティアが
「そう。前々からダーリンの事を良く知っていて、好きでいてくれた誰かなら…まあ…ねぇ…。クリシュナ」
クリシュナも
「そうね…。それならねぇ…。誰かそういう人いないかしら…」
と、クリシュナとクレティアはゼリティアを見つめた。
「ああ…」とゼリティアは戸惑いを見せた。
その次の日、ゼリティアの城邸にゼルティオナが来た。
「ようこそ、伯母様」
ゼリティアは挨拶をする。
「こんにちは、ゼリティア」とゼルティオナは微笑み「調子はどう?」
「ええ…お陰様で…」
「そう…少し、お話をしましょうか…」
ゼリティアは、ゼルティオナを、広い庭が見える喫茶スペースに連れて行く。
そこで、隣り合って座りながら
「はぁ…ここは、いい所だわ」とゼルティオナは背伸びする。
「フフ…何になさいます?」
「じゃあ…アッサムのミルクで…」
「畏まりました」
と、ゼリティアは手を叩き、メイド達に頼んだ。
ゼルティオナはゼリティアに試す様な笑みで
「ねぇ…ちょっとした貴女の噂を聞いたのだけど…」
「噂?」とゼリティアは首を傾げる。
「ええ…貴女に意中の殿方がいると、聞いてね。何でも…その殿方は…ソフィア陛下の魔導士だって聞いたのだけど…」
ゼリティアは一瞬淀みを見せた次に微笑み
「なんの事でしょう。そんなの噂ですわ」
ゼルティオナは「はぁ…」と溜息を漏らし
「私を見くびらないで頂戴、ゼリティア…。あのヴァシロウスを倒した時のオルディナイトでの祝賀会の時、貴女がディオス殿に向けていた視線、そして…行動…正に好きな人物に尽くしているように見えたわ」
「あ…」とゼリティアは伏せてします。
「はぁ…成る程、納得した。どうして、お父様が…ディオス殿の事を放って置けとか。ゼリティアは好きな者と結ばれれば良いとか…分かりましたわ」
「伯母様…どうか、これは内密に…」
「どうして? 貴女は、オルディナイトの当主、オルディナイト大公よ。何の不安があるの? 胸を張りなさい。どんな相手だって貴女に振り向くわ」
ゼリティアはディオスから貰った扇子を握り締めて
「嫌われたくないのです…。もし、妾の気持ちを伝えて押し通して、嫌われたら…。それなら…このままで良いのです」
ゼリティアは震えていた。
ディオスに何よりも嫌われたくないのだ…。
それなら、このままの関係で十分だと…。それだけで幸せだと…。
胸を張れる、誇り高いオルディナイト大公は、ただの震える少女になっていた。
ゼルティオナは「…分かりました…」と告げた次に
「ならば…確実な勝算を、わたくしがもたらしてあげましょう」
翌日、その日はディオスが王宮に行っていなかった。。
その日をピンポイントに狙って、ゼルティオナはゼリティアと、多数の様々な商売人を伴ってディオスの屋敷に来た。
団体で来たゼルティオナ達に、クレティアとクリシュナは目を丸くする。
「どうも…奥方様…今日は、良い日よりで」
と、明るく答えるゼルティオナの後ろでモジモジとしているゼリティア。
全く、何時もの不遜な姫でないゼリティアに戸惑うクレティアとクリシュナ。
ゼルティオナはニコニコと笑いながら
「今日は、奥方様達に様々なモノをプレゼントしようと思って」
屋敷の前の広場には、沢山の大型魔導トラックが並んでいる。
その貨物部分には大量の服と、武器、様々な調度品、果ては食べ物と何でも揃っていた。
その全てが高級品なのだ。
ゼルティオナはクレティアとクリシュナの手を取って、高級品が並ぶそこへ案内して
「なんでも、好きな品をお選びください。何でも叶えますわ」
クレティアとクリシュナは、高級品を手にしてお互いに視線を交差させる。
これは…
「何がお望みなのでしょうか?」
と、クリシュナが尋ねる。
ゼルティオナは遠慮なく
「ゼリティアとディオス殿の婚姻について、協力して欲しいのです」
それを口にしたゼルティオナにゼリティアが
「止めましょう伯母様…」
怯え戸惑っている。
「はぁ…」「ふぅ…」とクレティアとクリシュナは溜息を漏らし
「ねぇ。ゼリティア…やっとその気になったの?」
と、クレティアは呆れ気味に告げる。
「うんうん」とクリシュナは頷く。
それにゼルティオナは狂気の様な笑みを見せ
「では…」
「ああ…正し条件がある」とクレティアが「アタシ等とも、仲良くする事…」
クリシュナが
「それさえ守ってくれればいいわ」
ゼリティアは困惑を向けながら
「良いのか…?」
クレティアは肩を竦めて
「アタシ等もそんな鈍感じゃあないって。まあ、ダーリンは鈍感過ぎるけどね」
クリシュナがゼリティアの傍にきて肩に手を置いて
「苦しかったでしょう。だから…。私達は今、こうだから。あの人の事をお願い」
ゼリティアは俯き「うむ…」と頷いた。その目には涙があった。
それから、数日後、丁度…クレティアとクリシュナのお腹が九ヶ月くらいの頃。
ディオスはゼリティアの城邸に本を返しに行く時。
「ダーリン、ゼリティアによろしくね…」
とクレティアが
「それと、ゼリティアの言う事に逆らってはダメよ」
とクリシュナが念を押した。
ディオスはフッと笑う。
数日前にゼリティアが、沢山の高級品を持って屋敷に来て、妻達に勧めていたのを知っていたからだ。
「どんな無茶を振られるだろうなぁ…」
そう呟いて、ゼリティアの城邸に向かった。
昼過ぎに、到着して、昼食をご馳走になると、ディオスはゼリティアに自室に呼ばれた。
自室に呼ばれるのは初めてだなぁ…と思いつつ自室に入ると、広めの部屋が三つ連なるそこは、寝室、くつろぐソファー部屋、軽めの書斎と、けっこうな所だ。
生活できそうだな…とディオスは思っていると
「こっちへ…」とゼリティアはディオスをソファー部屋に運ぶ。
さっきから元気がないゼリティアにディオスは、何か重い問題でも抱えているのかなぁ…と思っていた。
ゼリティアはディオスをソファーに座らせ、その左隣に座る。
ディオスが
「どうしたんだ? 元気がないみたいだが…」
ゼリティアは意を決して、ディオスの左手を取って握り
「のぉ…正直に言う。妾は………お主の事が好きじゃ…」
「はぁ?」とディオスは訝しい顔をする。
それでもゼリティアは続ける。
「お主を愛しておる。この気持ちに…ウソはない。ディオス…お主の事が好きで好きで仕方ないのじゃ」
ゼリティアは祈るようにディオスの握りしめる左手を額に当てる。
ディオスは唖然として…。
今、なんて? オレを愛している? なんで…は!
「もしかして、ゼリティアも…オレが大英雄だから…か」
ゼリティアは首を横に振り
「違う。その前からじゃ…。ずっとお主に好意があったのじゃ…」
ディオスは思考を巡らせる。
何時から? ああ…そう言えば、ヴァシロウスの時に…。
その前は? いや…。
そして、極めつけが、妻達が言っていた。ゼリティアの言う通りにしてが…。
ああ…こういう事だったのかーーーーーー
全部が繋がった。
どうすれば…と思っているディオスの左手にゼリティアがの震えが伝わる。
そう、あの傲岸不遜の姫が、たった一人の男の言葉に震えている乙女になってしまっていた。
それ程までにゼリティアの想いは深いのだ。
その深さを知ったディオスの中に…
ゼリティアの握る左手で、縋る両手を握り閉め
「なぁ…本当にオレでいいのか?」
ゼリティアは肯き
「お主でないとダメなのじゃ…」
ディオスはゼリティアに向いて、ゼリティアの頬に右手を当て
「良いのか? もう…踏み出したらオレは…止まらないぞ」
「そんなの望む所じゃ…」
ディオスはゼリティアの顔を上げさせ、ゼリティアの深紅の瞳を見つめる。
まるで、己を刻み込むようにその深紅の瞳だけを見つめ
「ゼリティア…オレは、お前を愛している。お前が欲しい…」
そう告げて、ゼリティアと唇を重ねた。
その後、城邸で話をしたり、食事をしたりして、ゼリティアと過ごし、ディオスはゼリティアを離さまいと、腰に手を置いてそばにいさせた。
その夜、共に、城邸の大浴場で体を流し、ゼリティアの寝室で、ディオスとゼリティアはお互いの肌と肌を何度も重ねた。
久しぶりの愛の行為に、ディオスは耽溺して、ゼリティアの中へ沈んだ。
次の日の午前半ば、ディオスが屋敷に帰る時に、城邸の門の前でディオスはゼリティアを抱き締め、何度も口づけをして
「じゃあ…また、来るよ」
「うむ。待っておるぞ…」
二人は名残惜しそうに分かれた。
帰って来たディオスは、屋敷でクレティアとクリシュナに迎えられた。
「お帰り、ダーリン」
「アナタ、お帰りなさい」
翌日に帰って来たディオスを二人は咎める事なく笑顔で迎えた。
それにディオスは「はぁ…」と溜息を漏らして
「全く、二人は…」
クレティアとクリシュナはニッコリと笑った。
全てを理解しているのだ…。
ディオスは内心で、敵わないなぁ…と痛感する。
そして、その次の日に、直ぐにバウワッハに会いに行った。
突然の訪問にもかかわらずバウワッハは素早く受け入れ、理事長室で
「どうも…」とディオスはバウワッハに頭を下げると
「事情は聞いている…」とバウワッハは告げる。
「そうですか…その…何と…」
「お主、もし…ソフィア殿を裏切らなければ、ゼリティアが救えないとしたら…どうする?」
その問いに素早くディオスは
「ソフィア陛下には悪いですが…。自分はゼリティアの方を…ゼリティアを支えていきたいと…」
「そうか…」
淀みない答えにバウワッハは肯き
「では、お主の魔導石部門は、ワシらの傘下に入るという事で、いいな」
「はい。もちろんです」
と、ディオスは強く頷いた。
「最後に、お主の事…頼りにしておるぞ。ゼリティアの事を頼む」
「それは絶対です。何が何でも…ゼリティアを守る覚悟があります」
ハッキリと答えたディオスにバウワッハは満足した。
アーリシアの大英雄が、そばにいてくれるのだ。これ程、頼もしい事はないと…バウワッハは思った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。




