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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
大英雄協奏曲

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第63話 ゼリティアとディオス その一

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスは運用計画を終えて、リンスの王城で

運用者に訓辞を行った。

その後、何時ものようにアルマ―の店で味噌汁を

食べていると驚きの人物…自分の偽物に遭遇した。

 あの発信器騒ぎから一週間後、ディオスはポルスペルの港都市リンスの王城にいた。


 そこで、今回各十二国に配備されるグランスヴァイン級の魔法の単騎運用者達を前に、ディオスが言葉を口にする。

「君たちは、これから苦難の道を歩みだろう。君たちが授かった力は…まさに、国を守る最前線の最終兵器となる。それは正に、国の命運をその肩に掛けて戦う。誇らしいだろう。胸を張るほどの勲章だ。だが…それと同時に、人生を大きく変える程の重責も背負う事になる。そして、その力を一歩間違えただけで、死を意味する。その覚悟を持って日々に望んで欲しい」

 そう、ディオスは言葉を締めくくった。


 百三十名の運用者は、ディオス…アーリシアの大英雄の訓辞を授かって目を輝かせた。

 

 運用者のスペックは

 体内でグランスヴァイン級の魔法の生成をして放つ事が可能となる。

 その消費する魔力を生み出す為に、各個々の持ち属性を考慮した、特注の魔力増大増幅魔法陣、チャージリング魔法を享受された。


 王城の外には、大きな盾状の魔法装置を持った魔導操車が並ぶ。

 そう、グランスヴァイン級の大規模破壊魔法を防ぐ、防御部隊の魔導操車だ。


 その前で、立食パーティーをする。

 運用者達と、その者達が仕える王と士官達、運用の訓練を手伝ったエルダー級魔導士達と部下達、そして…防御システムを作った財団関係者と、多数の大きなパーティーだ。


 ディオスの周りには、エルダー級魔導士達が集まっている。


「今度は何を作りますかなぁ」

 ケンブリッジが楽しそうに告げる。


「んん…」とディオスが

「そうですね…リーレシア王国の超古代遺跡に発生するスポイトを回収して、魔法が使えない領域を自在に作り出す装置なんてどうですかね」


 サンドラが

「おお…色々と使えそうですなぁ…」


 ディオスが頭を掻きながら

「その…やり過ぎて、怒られているので…。色んな研究の補助にでもしますかねぇ」


 アルサドーラが

「では、ワシ等の研究の手伝いをしてくだされ」


「よろこんで」とディオスは微笑む。

 


 とても、和やかな雰囲気でパーティーは終わり、ディオスは王城から抜けて城下町の街中へ行く。

 その背に「おい…何処へ行く?」とヴィルヘルムが部下を連れて語る。


 ディオスは振り向いて…

「行きつけのお店があるんです。そこの料理を食べに行きます」


「そうか…」

と、ヴィルヘルムは近づき

「お前は…ワシがワクワクするような事をする。ほれ」

と、ディオスに自分に直通する連絡先を記憶させた名刺サイズの魔導プレートを渡す。

「何か、面白い事を思いついたら…連絡しろ」


 ディオスは受け取って

「ありがとうございます」

 そう、今回の運用計画について、ヴィルヘルムは多くの援助をしてくれた。

 最初は、何か高圧的な王様と思っていたが…以外や、話してみると結構、色々と聞いてくれたり、融通してくれたりする。

 ヴィルヘルムは、自分は凡人だって言っていたが…素晴らしい上としての才能に溢れている。

「じゃあ…」とディオスはヴィルヘルムに耳打ちすると…


「ぷ! ははははははは」

と、ヴィルヘルムは大笑いした。

「そうか…そういう事を!」

 ヴィルヘルムは楽しげだ。


 ディオスはニンマリと笑いながら

「まあ…何かする場合は、オルディナイトの当主に相談するって決まりになって、相談したら、当主からは…それをやるには、色々な財団の協力が必要だから、ちょっと待て!と、止められました。まあ…そのロビー活動が整うまで待ちますよ」


「さようか…まあ、ワシも推進してやろう」


「すいません」


 ディオスはヴィルヘルムと別れて、何時ものリンスにある宿兼レストランのアルマーのドアを潜る。

「こんちは…」とディオスが声を掛けると。


「ああ! いらっしゃいーー」

 女将さんがカウンターの奥にいた。


 店の一階レストランには食事している馴染みのお客がいた。

「ああ! アーリシアの大英雄! また、食べにきたのかい」


「ええ…まあ…」

 ディオスは手を振ってカウンターに来ると


「女将さん、味噌汁を…」


「はいよーーー」

 女将さんは、味噌汁と、ご飯に焼き魚のセットを出してくれる。箸付きで。


「いただきます」

 ディオスは、久しい日本食を食べていると、女将さんが

「調子はどうだい?」


「ああ…色々とやり過ぎて、ソフィア陛下の怒りを買ったから、何かする時は、オルディナイトの当主に相談するってルールが付け加えられた」


「そうかい…。奥さん達は」


「あと、二ヶ月後には臨月だから、二人の出産日が被りそうで、ひやひやしている。あと、子供が生まれた後の事でオシメを変えたり、ミルクを与えたり、抱っこの仕方とか、屋敷で一番の経験のある女中さんに教わっている」


「そう…楽しみだね」


「ああ…本当に楽しみだ…」

 嬉しそうに感慨深くなるディオスの顔に、女将さんはほっこりとしていると…

「時にねぇ…。誰か、もう一人、お嫁さんを貰う予定とかあるのかい?」


 ディオスは首を傾げ

「はぁ? 何で? そんなのないけど…」


「いや…噂で…」


 ディオスはハッとした。

 ああああ! ハニートラップの事件が…

 ディオスは項垂れながら

「まあ、確かに面倒クサい事件には巻き込まれたけど…。そんな事は無いよ。だって妻達が身重なんだよ。そんな事、絶対にしないよ」


「そうかい…」

 女将さんは楽しげに微笑む。




 その数分前、とある魔導士の男…詐欺師がリンスの街中を逃げていた。

 男の着ている魔導士のローブの内ポケットには、銀行のとある口座の情報が入った魔導情報プレートが入っている。

「やっと、手に入れた大金、絶対に手放すもんかよ」

 魔導士で詐欺師の男は、急ぎ、飛空艇の手配をした後、乗り込む前の腹ごなしに、何と…ディオスのいるアルマ―の店に入った。


 男の詐欺は、なんと…アーリシアの大英雄を偽って貴族、お金持ち、会社から大金をせしめたのだ。


「あ、いらっしゃいーーー」

 女将が入って来た詐欺師に声を掛ける。


 詐欺師、ディオスの偽物は、あろう事か本物が食事をしている右となりに来た。

「これで何か、腹が溜まるモノをくれ」

と、ディオスの偽物は、銀貨を数枚、カウンターへ置く。


「はいよーー」

 女将は、魚介のスープとパンのセットを、ディオスの偽物の前に置いた。


 ディオスは、偽物を見つめ

「もしかして…魔導士ですか?」

と、偽物に尋ねる。


 偽物は、キョトンとした後、ふふ…と笑みながらディオスに

「ああ…それも凄い魔導士なんだぜ」


「ほぉ…」とディオスは目を輝かせる。

「どんな魔導士なんですか?」

 何か面白い話が聞けるかと思って偽物にワクワクした視線を向ける。


 偽物は

「聞いて驚くな…。おれはあのディオス・グレンテルなんだよ」


「え?」とディオスは固まる。


 それを耳にする他のテーブルにいる常連客。


 女将はポカーンと唖然とする。


 偽物は驚いたと勘違いする。

「どうだい、ビビっただろう」


 ディオスは偽物に…

「どんな魔法が得意なんですか?」

 きっと同姓同名の誰かだろうと思った。


「はぁ? 知らないのか…。オレはあのヴァシロウスを倒した男なんだぞ」

 偽物は偉そうに胸を張る。


 ディオスはキョトンとして、女将と常連客達の視線がディオスに集中する。

 ディオスは額を押さえた後、理解した。

 コイツは、自分の偽物だ。しかも…本物が目の前にいるのに…分からない。

「へぇ…」とディオスは目を細めて、平坦に肯く。


「どうだ! 会えて嬉しいだろう!」

と、豪語する偽物。


 ディオスはフッと口元だけの笑みで

「実は、自分もディオス・グレンテルという者なんですよ…」


 偽物は「なに?」と顔をひくつかせる。

 まさか、コイツもオレと同じ偽物か?

「なんだ。オレの偽物か?」

と、偽物が本物にくってかかる。


 その光景に、常連客がプッと吹き出しそうになるを堪えている。

「いやいや…」とディオスは嘲笑いながら

「ただの一介の魔導士ですよ。まあ…ランクはエルダー級ですがね」

と、ディオスは、魔導服の内ポケットにある魔導士階級を示すプレートを取り出して、偽物に見せる。


「え…」と偽物は戸惑いの顔を見せる。


「どうぞ…、プレートにある階級を示す。宝石に触れてみてください」

 ディオスが促すと、偽物はプレートに埋め込まれているゴールデンフィアに触れてた後、青ざめる。


「ま…まさか…」

 そう、それは本物の魔力の反応が偽物の指先に伝わった。


 ニヤリとディオスは笑み

「奇遇だなぁ…。自分も前にヴァシロウスを倒したんですよ…」


 偽物は気付いた。本物が目の前にいると…。

「ああ…いや…」と焦る偽物。


 そこへ、店のドアが開き、警察隊の騎士の人達が来た。

 真っ先にディオスを見つけると、警察隊の人達はディオスの元に来て。

「ああ…ディオス・グレンテル様…」

 警察隊の人はお辞儀した。


 偽物はローブのフードで警察隊の人から顔が見えないようにした。


 ディオス本人に警察隊の人が来て

「ディオス様、実は…この町に、貴方様の偽物がいるようなのです。そいつが、貴方様だと偽って、貴族や富豪に投資会社から、莫大なお金を騙し取ったらしいのです」


「ほぉ…」とディオスは唸った次に、お隣でフードを被って顔を隠す偽物に

「だって。ディオス・グレンテルさん…」


 顔を隠す偽物はビクッと体を震わせる。


「はぁ?」と警察隊の人がディオスの隣にいる偽物を凝視する。


 ディオスは、偽物を覗きながら

「いや…彼ね。自分と同じディオス・グレンテルっていう名前らしいんだ。何でも…ヴァシロウスを倒した人らしいんだねぇ…」


 警察隊の人が

「そこのアナタ…申し訳ないが…ちょっと…お話を…」


 偽物は魔法陣を展開して

”ライト・フラッシュ”

 閃光が偽物の魔法陣から放たれ、目くらましになって周囲が怯む。

 その間に、偽物がドアに向かって脱兎したが…


”グラビティフィールド・ポイント”

 ディオスは重力魔法を展開して放ち、偽物だけに重力の押さえを放った。


「げふ!」と偽物は唸って床に叩き付けられ、俯せになった。


 警察隊が目を戻し、床に俯せる偽物の周囲を固め、偽物の両腕をガッチリと押さえる。

「ちょっと、お話を…」


 偽物が

「この野郎! 上手くやってアーリシアの大英雄になりやがって。ふざけんなよ! 不平等じゃあないかーーー」


 何か戯言を叫く偽物にディオスは

「そんなに、大英雄が欲しいならくれてやる。だがなぁ…これは、オレが欲しいって貰ったモノじゃあない。皆がオレをそう呼ぶ。だから、そうなったまで。そうなりたければ、努力しろ! いい大人が、不平不満並べて、努力を怠るんじゃねぇ!」


 グ…と偽物は歯軋りする。


 警察隊は偽物を連れて行った。


「はぁ…」とディオスは呆れた溜息を漏らす。

 まさか…自分の偽物に遭遇するなんて思いもしなかった。


 それに女将が、気を遣って小鉢をサービスしてくれて

「まあ、有名人だから、仕方ないさ」


「困ったもんだ」とディオスは頭を抱えた。




 宿泊先のホテルに帰って来たディオス。

 そのロビーで、今回の式典に参加していたゼリティアが執事と護衛を連れてディオスの元へ来る。

「ディオス…」

 ゼリティアが不安そうな顔を向ける。


「どうしたんだ?」

と尋ねるディオスに、言いにくそうにゼリティアが

「その…お主の…子を妊娠しているという女性が…とある貴族の元にいるのだが…」


 はぁ?とディオスは思考が停止して、数秒後

「え…それ…どういう事? えええ? へぇ?」

 全く事態が理解出来ないディオス。


 ゼリティアは複雑そうな顔で

「この近くにいる貴族の元に、クレティアとクリシュナ以外にお主の子を妊娠しておるという女性がいて、その貴族の元へ身を寄せているのだ…」


 ………………


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁああぁぁ」

 長い驚きの声を漏らすディオス。

 全く思い当たる節がなかった。



 ディオスはゼリティアに連れられて、その女性を保護する貴族の屋敷に来た。

 貴族は、夜間の訪問にも関わらず、ディオスが来た事に驚きと、妙な確信をした顔になる。

 そう当の本人が来たのだから、匿っている女性のお腹にいるのがディオスの子で間違いないと…。

 貴族は、女性のいる部屋にディオスとゼリティアを通す。

 突然のディオスの登場に部屋にいた問題の女性は戸惑いを見せる。


 貴族の伯爵が問題の女性の隣に来て

「彼女はプラスアという名です…。ディオス様…憶えがあるのでしょう」

と、自信ありげな顔だ。


 人族で金髪の純朴そうな女性プラスアに、ディオスは顔が固まった。


 それにゼリティアが

「お主…やっぱり憶えが」


 ディオスがプラスアに近付き

「すー 何処で合いましたか? 自分は、アナタにお会いしたのは…今日が初めてですが…」


 その言葉に伯爵とゼリティアは、驚き戸惑いを見せる。


 プラスアは震えながら

「あそこでこざいます。三ヶ月前…バルストランのバランで…」


 ディオスは右目を細め、疑いの顔で

「…………三ヶ月前は…アフーリアにいたのですが…。その後…レジプトで…三週間くらいアフーリアにいましたよ」


「ああ…レジプトの…町で…」


「町には、一切行っていません。ちょっと特別な活動をしていて、砂漠のど真ん中にいましたよ」


 プラスアは、震える。それを伯爵は見て

「まさか…お前…」


 そう、ウソだとバレそうになると、プラスアは懐から、アレを取り出した。

「これが、ディオス様と会った証拠です!」

 プラスアが持ち出したのは、スマホだった。

「これは、ディオス様しか持ち得ない。モノです!」


 ディオスはそのスマホを見て驚愕する。

 それは、レジプトの時にディオスに見せたアズナブルのスマホそのモノだった。

 ディオスは掲げられるスマホを触ると、暗証番号を打ち込む画面になる。

 そう、間違いない。言語もこっちの世界に合わせてあるアズナブルのスマホだ。

 ディオスは、ガッツとスマホを持つプラスアの手首を握り

「おい! これを何処で手に入れたーーーー」

 鬼の形相で迫るディオス。


「ええ…」とプラスアは怯える。


「何処で手に入れたと聞いているんだーーーー」

 ディオスの鬼迫に圧されて


「ああ…バハトリア共和国の…アーリシア側の港…です。そこの…荷物運搬の日雇いをしていて…。仮面をした男と、妙な金属プレートに覆われた少年がいて…。そこで…これがディオス・グレンテルの存在を示したと…必要ないとして…海に捨てたのを…魔法で拾って…」


 ディオスはプラスアの手首に力が入る。

「いい、痛い…」とプラスアは蹲る。


「あ…すまない」とディオスは手を離した後、ゼリティアの元に来て


「どうしたんじゃ?」とゼリティアが


「まずい…アレは…オレがレジプトで関係したエニグマの奴らの一人が持っていたモノだ」

 ディオスから驚く事を告げられゼリティアが

「本当か…」


「間違いない。捨てた連中の姿の証言が一致している」

 ディオスとゼリティアは、プラスアを凝視する。


 次にディオスは伯爵の元に来て、伯爵と一緒に部屋の隅に言って

「伯爵…彼女から聞いた話…黙っていてください」


 伯爵は、残念そうな顔で

「その…ディオス様の…子は…」


「それは、関係ありませんが…。彼女の持っていたモノは、自分が密かに追っている最重要組織の持ち物です。下手に口外すると…命の危険があります。もし、何かおかしな事がありましたら…ここへ」

 ディオスは、自分の屋敷の連絡先の名刺プレートを渡した。


 連絡先の名刺プレートを魔導通信機に接続すると、そのプレートにある通信情報によって、連絡先の魔導通信機と繋がるのだ。


 伯爵は苦しそうな複雑な顔をして

「分かりました。気をつけます」


「はい…それと…彼女の身柄は…」


「ええ…お願いします」



 ディオスとゼリティアはプラスアをホテルに連れて行く。

 

 その魔導車の中でゼリティアが、ディオスとゼリティアに挟まれるプラスアに

「お主…ディオスの子を妊娠しているのは…ウソなんじゃな…」


 プラスアは両手を膝に置いて俯く。


 ディオスが

「オレの子ではないが…妊娠しているのは本当だ…」


「なんと…」と驚くゼリティア。


 ディオスは柔らかい口調で

「話を聞かせて貰うな…」

 

 ホテルの部屋で、プラスアはソファーに座り、同じく対面にゼリティアとディオスもソファーに座って話を聞く。


 プラスアは、妊娠しているのは間違いない。それはディオスの子ではない。

 妊娠した後、プラスアの恋人だった男は突如、行方を眩ました。

 正式な手続きでの異邦人として活動していなかったプラスアは、アーリシアに戻っても社会保障が受けられず。

 途方に暮れていたら…日雇いの荷物運搬をしていた港で、偶然にもアズナブルと、少年との会話を聞いて、捨てたスマホを拾い。

 そして…色々と困った行き違いがあって、ディオスの子を妊娠しているとされ、このまま保護されようとしたのだ。

 

 ディオスは「はぁ…」と溜息を漏らし

「実家は何処?」


 プラスアは苦しそうな顔で

「リーレシアの…エンテイスです」


「正式な手続きをしないで彷徨った理由は?」


「…両親とケンカして、家を飛び出しました。私は…超古代遺跡を探査する冒険者になりたかったんです。それを反対されて勢いで…」


 ディオスは眉間を押さえた後

「つまり、冒険者っぽい事をして日々を過ごしたんだな…」


「はい…ハンターとかやったり、その合間に色んな仕事をして…身銭を稼いでいました」


 ディオスは苦しげに眉間を寄せ

「保護されたって事は、持っていたお金は…」


「全部、男に持って行かれました…」

 う…とプラスアは泣き出す。


 ゼリティアは呆れのような同情のような複雑な顔をすると、そこへディオスが

「ゼリティア…。この子をリーレシアの両親の元へ帰してくるよ」


「ディオス…」とゼリティアは呆れ気味に言う。


 ディオスは苦しそうな顔で

「だって、放っては置けない。彼女のお腹には小さな命がいる。オレも加わって両親に謝ってくる。いいだろう…」


「お主は…」とゼリティアは苦笑する。


 ディオスは、プラスアに自分の妻達を重ねてしまった。

 妻達と同じ身篭もっている彼女を放って置けないのだ。

「ああ…」とディオスは俯き頭を掻いた後

「君がそのモノを拾った場所や、色々な情報…詳しく聞いていいか?」


「はい…」とプラスアは肯いた。

 



 プラスアから聞いた、アズナブルを乗せた飛空艇の情報と、乗せた荷物、そしてその航路先まで色々と聞き出す。

 もしかしたら、エニグマだけが使う極秘経路が判明するかもしれなかったからだ。




 その後、ディオスはプラスアを連れてリーレシアのエンテイスに来る。それに

「ゼリティア…一緒に行かなくてもいいのに…」

と、ディオス。


 そう…ゼリティアも同行していた。

「いいんじゃ、これも何かの縁じゃ…」


 エンテイスの街の近くにある住宅地のプラスアの家に来る。

 両親はプラスアが帰って来た事に驚き、母親は涙して、父親は安堵した顔だ。

 そして、付いてきたディオスに疑問の目線を向けた。

 家の中に入って、プラスアから事情を聞いた両親は、父親が土下座してディオスに謝るが、ディオスはその土下座を止めさせ、両親に頭を下げて彼女を許して貰うようお願いした。

 一番の被害を受けたディオスの謝罪に、両親は感動して、それを受け入れた。

 次にディオスは、プラスアを冒険者ギルドへ連れてきた。


 突然の訪問に、ギルド長ガジェットが来て

「どうしたんだねグレンテルくん」


「ギルド長…お願いが…」

 ディオスは、ガジェットに彼女を冒険者ギルドの受け付けに雇えないかと…お願いする。


 ガジェットは

「そうか…丁度、受付の者の不足があったんだ。それに君の頼みだ。断れんさ」


「ありがとうございます」


 そして、そこに共に旅をしたナルド達も来た。


 ハンマーがプラスアを見つけ

「ぷ、プラスア…帰って来たのか…良かった。家出して一年近くも行方知れずで心配したぞ」

 プラスアとハンマーは知り合いだったようだ。


 プラスアはハンマーに事情を説明し、ハンマーは

「かたじけない…ディオス殿。すまない」

 頭を下げた。


「いいですよ。ね」

 ディオスは困ってしまった。

 


 そして、プラスアと別れ際、ディオスは金貨千枚の小切手をプラスアに渡す。

「こんな大金…」

と、プラスアは驚く。


 ディオスは、微笑み

「いいんだよ。元気な子供を産みなよ」

 そう、残してプラスアから去る。その背にプラスアはお辞儀をし続けた。


 ディオスの後に続いて、とんでもない事を見届けたゼリティアは、ディオスに

「お主…優しいのぉ」


 ディオスは肩を竦めて

「そんな事はない。自分勝手な事をしたまでさ…」


 なんとなく、ディオスの背が優しく見えるゼリティアだった。

 そして…問題な事は、ゼリティアのディオスに対する気持ちが強くなってしまった事だ。



 更に別でも、それが飛び火して貴族達の間に伝わる。

「聞いたか…アーリシアの大英雄。自分の子を身篭もっていると騙した女を、救ったらしいぞ」


「はぁ…信じられない超絶魔法技と力を持っていて、心まで優しいとは…」


「これは、うかうかしておられんぞ。欲する者が世界中から集まるやもしれん」


「ああ…急がねば…」



 そして、バルストランの王宮、ソフィアの王の執務室で、ソフィアは机について、両脇にある白い冊子の積み重なったツインタワーに頭を抱える。

「ウソでしょう…」

 両脇にある冊子のタワーは全て、アーリシア中からの貴族が、ディオスとの婚姻をお願いする書状と紹介して欲しいという娘や孫娘のお見合い冊子だった。


 カメリアが、苦悶な顔で

「陛下…どうしましょう…」


 ソフィアは両手で頭を抱えて

「どうしよう…」



 そして、それはゼリティアの元にも届いていた。

 ゼリティアはソフィアと同じ内容のディオスの見合いをお願いする冊子のタワーを見つめ苦しそうな顔する。

「はぁ…全く…」

と、呟くゼリティアの顔は、嫌そうであった。



 そんな事とはツユ知らずディオスは

「ああ…動いた…」

と、楽しげに屋敷で、クレティアとクリシュナの大きなお腹を擦る。

 本当に暢気なものだ。

 数日後にはとんでもない衝撃を受けるのに…。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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