第59話 ディオスの噂
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでいってください。
あらすじです。
ディオスがアフーリアから帰還して、ソフィアに報告を終えて
何時もの日々が始まる。
だが…ディオスの知らない所で様々な噂が飛び交っていた。
アフーリアの資源交渉を満足いく結果に終わらせたディオスは、全ての事態の報告の為にバルストランの王宮へ来る。
ディオスは、ソフィアのいる王の執務室へ来て
「ただいま戻りました」
「アアア!」
ソフィアが怖い顔をして、王の机の上に座ってディオスを睨む。
「え…」とディオスは困惑する。
「ちょっと来なさい…」
ソフィアがディオスを手招きする。
「な、何でしょう…」
ディオスは恐る恐る近付くと、ドン!とソフィアが机を叩き
「なんで…どうして…。砂漠のど真ん中で隕石を墜とす魔法を使ったのよーーーーーー」
完全、お怒りモードのソフィアがそこにいた。
「ひええええええ」
ディオスは悲鳴を上げた。
その後、ソフィアの怒りの説教が一時間続き、やっと事態の説明が出来ると始まったら、説明する度にソフィアの顔が怒りに染まり
「お前は! なんでもかんでも! 大事にするなぁぁぁぁぁぁぁぁ」
また、説教が始まった。
昼くらいからの報告が、説教も合わせて夕方になってしまった。
「はぁ…」とディオスは魂が抜けそうになって王の執務室から出ると、そこにゼリティアがいた。
ゼリティアは、ディオスを見つめる。
「何?」とディオスはゼリティアからも説教が来るのではないかと怯えていると。
ゼリティアはフッと笑み
「まあ…無事なだけ良しとしよう…。一緒に夕食はどうじゃ?」
「ああ…うん」
ディオスはゼリティアの城邸で夕食をご馳走になって、その後、本を借りた。
曙光国に関する本を数冊だ。
ゼリティアが首を傾げ
「何故、お主は自分の出身国の本を借りる必要があるのだ?」
ディオスはジーとゼリティアを見つめた次に
まあ…ゼリティアなら、話しても問題はないなぁ…。信じてくれるかなぁ?
「ゼリティア…ちょっといい?」
「な、なんじゃ?」
ディオスはゼリティアを連れて、誰もいない客間で話をする。
そう、自分がこの世界ではない、魔法のない異世界から来たと…。
ゼリティアは信じられず目を丸くしている。
ディオスは頭を掻いて
「まあ…信じられないよね。忘れてくれ」
「いや、そうか…」
ゼリティアは目を伏せた後、上げて
「何となく合点した。お主…あまりにもこの世界についての知識が乏しかったからのぉ…。そうか…」
「信じてくれるのか?」
ディオスは試す様な瞳だ。
「ああ…信じるとも…」
ゼリティアは肯いた。
「そうか…」とディオスはホッとして
「実は、この事を知っているのは、クレティアとクリシュナしかいないんだ。ゼリティアを合わせると三人目だけど…」
ゼリティアはピックと動き
「なぜ、そんな大事な事を妾に」
「んん…。なんだろう…ゼリティアが信用できるからかなぁ…。ダメな時はしっかりと咎めてくれるし、色々と教えてくれるし、自分の中でも結構、信頼しているんだと思う。だから、かなぁ…」
ゼリティアはフッと柔らかく微笑み
「そうか…何かあったら、何時でも相談してくればよい。まあ…頼りにされると、それなりには嬉しいからのぉ」
「ああ…よろしく頼むよ」
こうして、ディオスはゼリティアの城邸から、帰路へ向かった。
ゼリティアは、その姿を城邸の窓から見つめて、フフ…と嬉しそうに笑っていた。
そう、ディオスに相当の信頼を寄せられていて、嬉しいのだ。
妻達しか、知らない秘密を共有出来て、本当に嬉しかった。
それだけで、心が満たされてしまった。
屋敷に帰ったディオスは、暖炉のある居間で、クレティアとクリシュナにアフーリアであった事を話す。
「はぁぁぁぁぁ」とクレティアは溜息を漏す。
クリシュナは眉間を押さえた。
「あの…二人とも?」とディオスは見つめる。
クレティアが
「ダーリン…前々からさぁ…クリシュナと共に思っていたんだけど…。やり過ぎないでね」
「いや…やり過ぎているような気ではないのだが…」
クリシュナが
「アナタの感覚ではそうだろうけど…。明らかに、おかしくてぶっ飛んだレベルだからね」
「ああ…う…う…ん」
と、ディオスは淀み気味に答える。
『はぁ…』とクレティアとクリシュナは同時に溜息を漏らし
「これ…アタシ達が、ストッパーとして同行しないとダメかも…」
クレティアが告げる。
「ホント、そうよ」
と、クリシュナは腕を組んだ。
「ああ…すまん。気をつける」
チョッとディオスは凹んだ。
二週間後、クレティアとクリシュナ妊娠して六ヶ月半くらいの頃だ。
この日の夜、ディオスはフェニックス町の地区に住んでいるので、その町の自治集会があって参加する。
まあ、大体、その地区の行事や諸々の連絡が終わった後、その会場となっているギルド兼食堂のそこで駄弁り一杯会となる。
「かんぱーい」
と、ディオスはヒロキと町の人達と共にグラスを交わす。
町の人が
「そういや…ディオスさん。最近、アフーリアにいっていたんだろう? 何でも…アフーリアの真ん中くらいにあるレジプトって国で、揉め事があって、そこへ…巨大な隕石が落ちたって…話…」
ディオスは俯く。
ジーとディオスを見つめる町の人達とヒロキにディオスは、シーと指を立てて
「その…言えない事があるので…察してください」
「ああ…ああ…」
それで一同、理解した。やっちゃたんだ…。
まあ、ディオスは国に関係している仕事をしている。
聞くと後でとばっちりが来るので、それ以上は聞かない事に、みんなはしている。
ヒロキが
「そういや…ディオスさんて神具を持っていないだなぁ…」
「ええ…魔法が出たタイプですよ」
ディオスは軽く肯く。
曙光国については、バッチリ予習済みだぜ。
でも、その殆どの地形や、地理の名称まで、曙光国と地球の日本は同じだ。文化形態や様式、首都まで同じなんだから、ビックリだった。
歴史は大いに違うけどね。
ヒロキが、ディオスに
「て…ことは、どっちか片親が…」
「ええ…母親がバルストランの出身です。バランという町のね」
「確かに、両親が神具持ちなら、子供も神具持ちだが…。片方が持っていないと、持つか持たないかの半々になるからなぁ…」
町の人が
「じゃあ、親父さんが、曙光国で。お袋さんがバルストランって事かい」
「ええ…そうです。その…両親は事故にあって随分前に亡くなっていますけどね」
町の人達が視線を合わせた次に
「お袋さんってどんな人?」
「んん…どういう生まれなのかは、あまり詳しくは教えてくれませんでしたけど…。バランの近くの領地を収めるダグラスさん。ダグラス家と繋がりはありましたし。まあ…そのお陰で一時期、ダグラス家にお世話になっていましたが…」
アルヴァルドに告げた事をそのまま、町の人に話す。
「ほぉ…」と町の人達は納得した後、何も聞いてこない。
よし、こう言うと何故か知らないけど、納得するからいいや!
ディオスはそう…軽く思っていた。
だが、町の人達は違う事を考えていた。
ディオスは、実は二百年前にアーリシアを制覇した魔王ディオスの子孫ではないか…と噂されている。
それが、ディオスのウソによって補強された。
噂では、魔王ディオスを裏切って英雄アルベルドに付いた奥方達は、歴史の闇に消えたが、その奥方達や子供達を、英雄アルベルドは密かに匿い支援しているいう噂があった。
つまり、ディオスの話で、ディオスの母親は魔王ディオスの系譜故に、その歴史を封印され、密かにアルベルドの子孫に当たるダグラス家が庇護していたと…。
そう、ディオスは魔王ディオスの子孫になる。
噂は本当だったと…町の人達は密かに肯いた。
ディオスは、今や時の人ではあるも…。
その周囲は普通通りに接するので、ディオスにとってその自覚はない。
こういう事だ。ある日、突然に友人や知り合いが、超がつく有名人になっても身近な人にとっては変わりない本人故に、まあ…いいかと、扱いが普通になる。
騒ぐのは、身近にいない人々だ。
その遠くにいる人々が様々に噂を伝播する。
とあるアーリシアの町の酒場の片隅で
「おい、聞いたか? アーリシアの大英雄の秘密…」
「なんだよそれ…」
「なんでもディオス・グレンテルは、魔王ディオスの子孫らしいぜ…」
「どうしてだ?」
「父親は、曙光国の人間らしい。だが…母親は、バルストランの人間だったらしい。その母親が、魔王ディオスを倒した英雄アルベルドの子孫ダグラス家の世話になっていたらしいぜ」
「それがなんだよ」
「鈍いなぁ…。アルベルドは味方した魔王ディオスの奥方達や子供達を密かに匿って守ったらしいぜ。その関係がグレンテルの代まで続いているらしい。なんでもグレンテルは、一時期、ダグラス家に厄介になっていたんだとよ」
「はぁ…」
「ディオス・グレンテルっていう名前が、それを示しているだろう。グレンテルは血統書になんかに使われる。血統を表す宝石だ。ディオスの血統…。そういう事だよ」
この噂が世界の裏側まで伝わり、曙光国のワイドショーに出てしまった。
「さあ、今、もっとも旬の男、それは…アーリシアの大英雄ディオス・グレンテル!」
司会のアナウンサーが付箋の貼ってあるボードを捲る。
「この人物の最初の功績は、こちら…ヴァシロウス討伐。
幾度となくアーリシアを苦しめたこの怪物に圧倒的までの魔法の力で戦いを挑み勝利した。
そして、次に、アーリシアの十二国を纏めて、巨大な共同国家圏を築いた。
さらにさらに、あの強硬的なロマリアの皇帝を説得し、べた褒めする程に感激させ、ア-リシアとロマリアとの交易を作った」
そして、司会は次々と分かっているディオスの功績のボードの付箋を捲る。
バルストランの王直属の魔導士。
ヴィクトリア魔法大学院での、様々な魔法に関する功績。
リーレシア王国で、最短で最高位のダイアマイト級冒険者になった事。
ヴァシロウス討伐。
アーリシアの十二国を纏めた事。
これが表の功績とされ、噂される裏の功績を出す。
レオルトス王国の内戦を勝利に導いた。その膨大な魔力と、超絶な魔法技でレオルトスを押さえようとしたアリストス共和帝国の戦艦飛空艇艦隊を防いだ。
ユグラシア大陸中央ラハマッド共和国での内戦を、政府の勝利に終わらせた。
そして、最近ではアフーリアの資源交渉を成功させ、レジプトでの混乱戦線を収束させた。etc
「これはどういう事なんでしょうか?」
司会が、解説者達に求めると
解説者達は
ディオスが世界の動きに変わっているとか、ディオスは世界を命運を握っているとか、とにかく、驚愕する過ぎる辣腕だと…。
さらに、ディオスの妻達に事についても話す。
クレティアーノ・ヴァンス・ウォルト。レオルトス王国の剣聖。
アフーリアでも1・2を争う剣聖で、若干二十歳にして剣聖になった天才であると。
クリシュナ・ヴァルナ。トルキア共和国に本部を持つ、運輸大財閥マハーカーラの総帥の娘で、財閥の守護部門出身で様々な武術の達人。
その妻達が、ディオスの裏の功績を示しているという。
クレティアーノ・ヴァンス・ウォルトがディオスの嫁になったのは、レオルトス王国の内戦を収めた褒美であると…。
クリシュナ・ヴァルナが嫁になったのも…ラハマッド共和国の内戦を収めた褒美であると…。
クレティアとクリシュナの何処かで撮った写真が出る。
そう、クレティアとクリシュナは、美人だ。
クレティアは笑顔がチャーミングな、ナチュラル美人。
クリシュナは、中東系のエキゾチックな、秘密な匂いがする美人。
ゲストに来ている男性達が、羨ましいだ。クソ…格差だ…とか呟いている。
そして、さらに凄まじいディオスの魔法技術と魔力に関しても話が出る。
なんと、ディオスの所為で、魔導士同士の秘密であった特殊体質、シンギラリティが出てしまった。
そして、解説者が、この体質と同じ者は過去に多くいた。その中に魔王ディオスもいたと…。
そこで、魔王ディオスと大英雄ディオスとの関連性が!
そこでコマーシャルとなった。
それを、社長室で見ていたカズキヨは、訝しい顔で
「本当か…」
と、ぼやいた。
曙光国ではこのワイドショーがかなりの視聴率と、魔導ネットワークでの再生回数を多くたたき出した。
では、魔王ディオスと、現在の大英雄ディオスとの関連性とは…。
一、ディオスは曙光国の出身だが、母親がバルストランの出身で魔力が強かった。
二、その母親が、なんとダグラス家という貴族と関わりがあった。
三、そのダグラス家、何と、魔王ディオスを倒した英雄アルベルドの子孫で、
密かに協力してくれた魔王ディオスの奥方と子供達を庇護していた。
つまり、ディオスの母親は、魔王ディオスの系譜であると…。
その証拠に、ディオスは両親が亡くなった後や、様々な時にダグラス家にお世話になっていた。
そして…さらに、このディオス・グレンテルという名前、本当の名前でなく、ダグラス家の当主からの貰い物だと…。
ディオスという名前は、良く魔導士がその魔王ディオスにあやかって、名乗る事が多いが、本来の使い方は、元の名前の前にディオスと付けて
ディオス・アルバート・フォルンとか
ディオス・ビリー・レイトンとか
そんな使い方をするのに、丸々、全部がディオス・グレンテルとなった。
さらに! その名前が、その系譜を示していると…。
グレンテルは、バランという町の傍で取れる、血統を示す宝石だと…。
ディオス、血統証明石…ディオスの血統! つまり…魔王ディオスの血筋だと…。
みなさん。これはどういう事でしょうか…
解説者や、ゲストに話を振り、場を盛り上げる司会者。
そして、ダメ出しのように…残っている魔王ディオスの顔写真と、ディオス・グレンテルの顔写真を並べる。
それはそれは、良く似た仏頂面だった。
それで、更に場は盛り上がり、良い感じで番組は終わった。
「んんん…」とカズキヨは唸ってしまった。
そして、社長室のデスクに置かれた資料を目にする。
それはディオスがロマリアに提供した氷山や氷河の下にある資源を採掘可能にする魔法陣と魔導技術だった。
ついつい、そんな凄い技術を生み出せるディオスに、ワイドショーの内容が真実味があると思えてします。
ぶっちゃけ、デタラメですけどね…。
そんな世界の反対側まで、そんな事になっているとは知らずに、ディオスは何時ものように、バルストランの王宮に来て、宮仕えを終えて、何時ものように、趣味のお菓子や料理作りの道具や、材料を買いに王都の城下町へ出掛けているのであった。
甘味の販売店に来るディオスに店主が
「はーい。アーリシアの大英雄様! 今日は何にします?」
ディオスはフッと笑み
「止めてくれ。オレはディオス・グレンテルっていう名前があるんだから…」
「ははは」と店主は笑って「グレンテルさん。今日はいい蜂蜜が入っているんだよ」
そんな、やり取りが当たり前となって
「へぇ…チョッと味見させて…」
「はいよ」
店主が、少しの小さい量をディオスの手に乗せる。それをディオスはペロッと舐め
「おお…いいね。このコク…何だろう…バラの香りがする」
「バラ園で育てられた蜂蜜ですよ」
「これ、二百グラムくらいちょうだい」
「はいよーーー」
「あと、黒糖も二キロくらいも」
「あいよーーー」
こんなやり取りで色んな店を回っていると…背中から
「あの…」とディオスに声を掛ける二人の女性。
「んん…」と振り向くディオスに、女性達は驚きの顔を見せて
「もしかして…ディオス・グレンテル様ですかーーー」
「ええ…まあ」
「私達、アナタのファンなんです」
「ああ…どうも…」
ディオスはファンと言った女性達を握手して
「写真…いいですか?」
二人と共に写真を撮って挨拶して別れる。
最近、こういう感じの人と遭遇する。
「なんか…観光資源になってるぞ、オレ…」
そうぼやいて魔導車が置かれている駐車場に向かうと
「やーやーー 大英雄様! お久しぶりですねーー」
この女の声…とディオスは後ろを振り向くとプラチナブロンドがあった。
ヴァアナである。隣にはケンジロウもいる。
「ウース」とケンジロウは手を上げる。
「何だ、お前等…」とディオスは嫌そうな顔をしていると
ヴァアナが楽しげに近付き
「連れないじゃあないか…。一緒に喫茶店でも行って、親睦を深めようではないか!」
ケンジロウが皮肉に笑み
「ぶっちゃけ、お前の情報が金になるから、聞きだそうって算段だ」
「はぁぁぁぁ」とディオスは訝しげに吠える。
「バカーーー なんで言うのーー」
ヴァアナがケンジロウの口を塞ぐ。
「なんで、そんな事になっている?」
ディオスは頭を傾げる。
何となくヴァアナ達とお茶となり喫茶店のテーブル席に来ると、ケンジロウがディオスにその訳を告げる。
「はぁ…アリストス共和帝国が…。アフーリアの資源交渉の失敗を考慮して、オレの情報を集めていると…」
と、ディオスが呆れ気味に呟く。
「そう…」とケンジロウは肩を竦め「奴さん、相当…頭にきたらしく、アンタの重要な情報には金貨五万枚を出すなんて言ってるぜ」
「はぁ…」とディオスは呆れて天井を見上げる。
ヴァアナは手を口に置いてヒソヒソと
「だから…ねぇ。ちょっと口を滑らせるだけでいいから。ね…」
ディオスは、眉間を押さえて俯き
「プライバシーを売って金に換えるって、自分の倫理的にどうかと思うぞ…」
「だろうな…」とケンジロウは苦笑する。
ヴァアナはヒソヒソと
「良いじゃないか…ちょっとくらい、儲けさせてよ。それなりにマージンは弾むからさぁ…」
ディオスは暫し考えた後
「という事は…お前達…アリストス共和帝国の情報局とかにコネがあるのか?」
「ああ…まあ」とケンジロウが答える。
ディオスが二人に顔を寄せて
「じゃあ、エニグマの情報くれるなら、それ相応に情報を提供するって伝えてくれるか」
エニグマという単語を聞いた瞬間、ヴァアナとケンジロウは鋭い目付きになる。
ディオスはそれを察して「やっぱり、無理か?」
ケンジロウは頭を振って
「よりにもよってそこかよ…」
ヴァアナが
「エニグマ…。非人道的実験を繰り返す。正体の掴めない非合法組織だ。その実体を、何処の国も掴んでいない。まさに、ダーク オブ ダークの領域だ」
ケンジロウが
「なんで、そんな情報を欲しい?」
ディオスは眉間を寄せ
「ちょっと関わる事があってね」
そう、アズナブル。ディオスと同じように異世界に渡ってきた男、その繋がりがあるという事は、もしかしたら…エニグマの背後にいるのは…。
ディオスの黙る雰囲気に、ヴァアナは
「分かった。幾らで売れるか分からないが…伝えておくさ」
そう言ってテーブル席から立ち上がり、レシートを持って行く。
ディオスが立ち上がり
「おい、自分の分は…」
ヴァアナはレシートにキスをして
「情報提供料だよ」
ケンジロウもその後に続いて「じゃあな」
ヴァアナとケンジロウは去って行った。
ディオスは、コーヒーカップを覗いて、残っているコーヒーを見つめながら
「ダーク オブ ダークねぇ…」
エニグマの深淵を見た。
ヴァアナとケンジロウは王都の街中を進みながら
「あ…そうだ。アイツに聞きたい事があったんだ…」
「なんだよ、お嬢」
「三人目の奥さんを迎えるって噂、聞いたんだけど…」
ヴァアナが首を傾げる。
ケンジロウが呆れ顔で頭を振り
「そんな事、教えてくれるか?」
ヴァアナは目を上に向け
「それもそうだな…」
変な噂が広まっていた。
これが…後々にとんでも事態を作り出すのをディオスは、まだ…知らない。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
次話もあります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。




