表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
大英雄協奏曲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/1121

第58話 魔王らしい決着と因縁

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオス達はアズナブル達の様子を見ながら

様々に暗躍して、事態を動かす。

そして、その果てにあったのは?

 ディオスはレジプトとの合同本陣のテントの中で、アルヴァルドと共に食事を取っている。

 基本、レジプトの食事はスプーンで食べるモノが多く、欧風というより、中東風の欧風合作といった感じだ。

 テーブルで、アルヴァルドを奥に、両脇にディオスとカルラにシャリカランの部下達を並んでいる。


 アルヴァルドが…

「の…ディオス。お前は、確か…極東の曙光国の出身じゃったなぁ…」


 スプーンを咥えているディオスはビックと体を震わせ

「ええ…そうですが…」


「アズナブルがお前に見せた、妙な魔導情報プレートのような機械…。何か、関係があるのか…」


「ああ…」とディオスは言葉を詰まらせる。


 ディオスの隣で座るカルラが

「もしかして、アズナブルは曙光国出身なのですか?」


 ディオスはカルラに視線を向け

「それはどうして…思うんだ?」


「だって、言っていたではありませんか…。”同じ力を持つ同胞”と…。同じ力とは、グランド・マスターと同じ魔力体質で、同胞とは…同郷という事になるので…」


 アルヴァルドが…

「そう言えば…ディオスよ。お前…曙光国の生まれなら神具を持っている筈だが…」


 ディオスは目をパチパチとさせ

「神具ですか…」


「ああ…」とアルヴァルドは肯いた。


 カルラが

「曙光国は、その殆どが九割方人族という珍しい国です。さらに、曙光国の民にはその血に脈々と流れる神具という魔法具を生まれつき持っているそうです。シャリカランの者に中にも曙光国出身者は、神具を必ず持っていますが…」


 ディオスは、内心で困惑する。

 どうしよう…バレてしまう! ここは…

「ああ…自分は、ハーフなんです。父親が曙光国の出身で、母親がバルストランのバランの出身なんです。多分、父親の方の力が遺伝しずに、母親の方の魔力が強い方が遺伝したので…神具は…持っていません」


 アルヴァルドが

「母親が魔力が強いとは…何か、特別な家系なのか?」


 ディオスは頭を傾げる演技をして

「その…、良くは分かりません。教えてくれなかったので…でも、ダクラスさん。バランの傍にあり領地を治める貴族のダグラス家とは、関わりが深いです。ですから…一時期、自分は、食客としてダグラス家にはお世話になっていました」


 アルヴァルドとカルラ達が視線を合わせた後


「そうか…」とアルヴァルドが呟き、話が終わる。


 アルヴァルド達は、ディオスが、かつてアーリシアを制覇した魔王ディオスの血筋ではないかという噂を聞いていた。

 そう、それがさっきの話で確証に変わった。

 バランにあるダグラス家は、かつて、魔王ディオスを倒した英雄アルベルトの子孫だ。

 つまり、ディオスの母親は、ダグラス家が管理していた魔王ディオスの家系なのだ。

 全員がそれで納得した。


 ぶっちゃけ、ディオスのウソだが…ね。


 ディオスは、新たな情報を得た。

 へぇ…曙光国の人ってみんな、そんな力を持っているのか…。ちょっと勉強して置いた方がいいなぁ…。

 そう、常々思う。



 それから、ディオス達は、ロマリアの自動兵器軍の監視を度々続けた。

 曙光国の内情は、密約の共闘を交わしたカズキヨから知らされるので、楽だが…。

 ロマリアのアズナブルがいる方は、分からない。

 

 ディオスは、隠れられる遠くの山丘から、ロマリアの方を遠見で観察する。

「何してんだ?」

 そう、そこは何かを組み立てているような場景がある。

 それもかなりデカい。

 その全長は、傍にある空母型戦艦飛空艇の数倍はある。


 ディオスはソレを睨み。

 もしかして…巨大な戦艦を作っているのか?

どうやって、そんな物資が運ばれているんだ?

 いや…その前に、あんな巨大なサイズのモノを簡単に生産する施設って、どこにそんな規模の工場があるんだ?


 ディオスは共に来たカルラに

「カルラ…あんなデカいモノを生産出来るなら、そのモノを作っている施設が何処にあるか分かっているんだろう」


 カルラは困った顔をして

「すいません。シャリカランの力を持っても、まるで分からないんです。どうやってあんな大資材を生産しているのか、不明なんです。まるで、突如フッて現れるみたいに持って来るんです」


 ディオスは右手を顎に当て考える。

 確か…カズキヨは、アズナブルがエニグマという組織と絡んでいると言っていた。なら、その当てはエニグマしかない。

 エニグマ…要注意だな…。



 ディオス達は監視を終えて、本陣に帰還する。


 ディオスの前に、アルヴァルドと、スーツを来た獣人の男性が来た。


 アルヴァルドが難しい顔をして

「ディオス…ちと…マズイ事態になった」


 ディオスは作戦室のテントの中で、アルヴァルドとスーツの獣人の男性アヴァルを交えて話をする。


「はぁーーーーー」

 ディオスは唸った。


「事実です」とアヴァルは難しい顔をする。


 ディオスは額を抱え

「ええ…つまり、あの自動兵器の軍団は、ロマリアの王政府や各地の統治を任される大公達の意向を無視して動いていると…? なんだ。それ? 訳が分からない…」


 アヴァルが困った顔をして

「あのロマリア部隊は、民意私兵団と言っています。つまり、ロマリアの民意で動いていると…」


 アルヴァルドが

「それは、ロマリア国民の総意なのか?」


 アヴァルは首を横に振って

「いいえ、精々…三%程度の過激な民意です。まあ…九億の人口の3%民意ですから。それでも相当な数ですが…。議会や投票といった選挙では全く相手にされないというか…ロマリアでも手を焼いている連中で、過激派一団と言われて要注意対象なんです」


「え、何? どこにそんな連中と手を組んで、得があるの?」

 ディオスは混乱して額を小突く。


「一体、何が目的だ?」

と、アルヴァルドも首を傾げる。


 ディオスもそれを考えていると、最悪な考えが過ぎった。

「お父様…アズナブルは、確か…武器商人でしたよね…」


「ああ…」


 ディオスは視線を横にして鋭くさせる。

 この世界を遊具としてしかみていない。最低な思考…はぁ…

「お父様…アズナブルは、この世界を戦争で覆い尽くすつもりです」


「なんだと…」


「おそらく、このアフーリア全体を戦争で覆う為に、この様な事態を作り出したのでしょう。最低な考えだ。このまま、長引けば長引く程…アズナブルの思惑通りになります」


「では…どうする?」

と、アルヴァルドはディオスに問うと、ディオスはあの残酷な魔王の笑みをして

「簡単です。クソ野郎には鉄槌ですよ」


 ディオスの作戦を聞いたアルヴァルドは、ドン引きしてしまい。

「お前…エグいなぁ…」


 ディオスはフッと笑み

「向こうがクソなら、綺麗にしてやった方が世の中の為です」




 その夜、テントでディオスは屋敷へ通信をしていた。

「どうだ? そっちの様子は?」


 クリシュナが

「そうね…大分、お腹が大きくなったからしら…」


 クレティアは

「ダーリンの方はどう?」


「ああ…許可が出れば直ぐに終わる。それで終わりさ」


「まあ…やり過ぎない程度ね」

とクリシュナが念を押す。


「ははは…」

 ディオスは妻達との楽しげな会話を終えて、通信を切ると、そこにアヴァルが来た。

「どうですか? 一杯でも」

 軽めのお酒である。


「ああじゃあ…」とディオスはお相伴する事にした。


 アヴァルとディオスは、軽く飲み合いながら

「アーリシアの大英雄、恐るべき手腕ですね」


「はは…まあ、色々と周りが手を尽くしてくれるので、がんばってしまいますね」


「彼女が…クリシュナが惚れ込む訳だ…」


「へ?」とディオスは動きが止まる。


 アヴァルは軽く口にしながら

「実は、数年前にクリシュナと付き合っていたんですよ」


「ああ…あ、うん」と、ディオスはどう答えればいいか分からない。


「でも、つまらない男って言われてハデにフラれました」


 わーーーーお!

 ディオスは言葉を失う。


「でも、その通りだった…。自分は、ふったクリシュナを見返そうと必死にがんばりました。何時か、オレをふった事を後悔させてやろうって…。

 そんな時、クリシュナが男とくっついたと聞いて、まあ…もっと怒りを募らせて。

 そんな男とくっついたのも後悔させてやるって、もっとがんばったんですが…敵いませんでした。

 だって、ヴァシロウスというとんでもないバケモノを倒し、アーリシアを一つに纏めて、威圧的で強硬なロマリアの皇帝を魅了して、とんでもない好条件でアーリシアとロマリアの交易を開始させたアーリシアの大英雄グレンテル。

 そんなとんでもない傑物が夫なんです。もう…天地がひっくり返っても無理だって分かった時に、感謝が出てきたんです」


「は…」とディオスは恐縮する。


「あの時、クリシュナが自分をハデにふってなかったら、これ程までに自分は、良くなれなかった。そのお陰で奮起出来たし、そして…とてもいいヒトと出会えた」

 アヴァルは左手を上げる。

 その手首には結婚したという証のブレスレットがあった。


「ああ…まあ、はぁ…」とディオスは、どう言葉にしていいか分からない。


「すいません。愚痴みたいに言ってしまって…。だから、絶対に幸せになってくださいね。ディオス様…」


「ええ…はい」とディオスは肯いた。

 人には歴史がある。

 それを無理矢理に聞いては、ダメだ。だが…ちょっと、今回の話は重かった。




 二日後、ディオスのいる本陣へ通信が入る。

 それはロマリアからだ。

『こちらは、ロマリア帝国総統本部。総統本部の結論を告げる。ディオス・グレンテル殿の助言通り、現在、レジプト王国にいる。ロマリアの民意という民意私兵団は、一切…ロマリア帝国と関係がないと宣言する。よって、レジプト軍によるあらゆる掃討作戦を、なんら咎める事は一切無い。正式な書面は送付した。届く前に、通信で確認の意思を伝える。以上である』

 グッとディオスは拳を固めて掲げた。

 言質は取ったぜ!


 それを後ろで来ていたアルヴァルドとカルラ達シャリカランの者は、ドン引きしていた。


 ディオスの作戦は、こうだ。

 アズナブルの部隊を、レジプトと曙光国の軍で同時制圧をするというのだ。

 その為には、ロマリアにアズナブル達が関係ないと、宣言させなければならない。

 そこで、ロマリアに用意した対価は…なんと、大氷山の下にある資源を掘る為の特別魔導技術の提供だった。

 いかれた思想の連中の掃討を許可するだけで、その技術が手にはるのだから、安いとしてロマリアは了承した。

 なにせ、ディオスには不可能とされた海底資源採掘の魔法技術を生み出したノウハウがあるからだ。


 ニコニコ笑うディオスが、アルヴァルド達に

「全部の支度が整いました。さっそく潰しましょう」


 アルヴァルド達は、完全にドン引きだ。

「こいつ…エグい…」とアルヴァルドは呟いた。



 ディオス達はレジプト軍を率いて、アズナブル達の方へ向かう。

 レジプト軍の戦艦飛空艇の甲板にいるディオスは、右から同じ方向を進む、曙光国のゴーレム達を釣り下げている戦艦輸送飛空艇の姿を確認する。


 曙光国には、どう交渉したかというと…。

 バラされたくないアズナブルの始末をつけるという事、その漏らしたくない情報の全てを曙光国に渡す。

 後は、そんな情報を知らないという密約も交わした。

 全てカズキヨ経由で。


 曙光国のゴーレム輸送飛空艇達から、何かがディオスのいる甲板に近付く。

 それは、鋼の翼を持った巨剣に乗るカズキヨだった。


 カズキヨは、ディオスの傍に来て、甲板に降り立ち

「やあ…」


「ああ…どうも」とディオスはお辞儀して


 カズキヨは引き攣った顔をして

「お前…本当にエグい性格をしているなぁ…」


「はぁ…。あ、そうだ…」

 ディオスは魔導収納から、精神を覗く黒い王冠を取り出して、カズキヨへ渡す。


「これは?」とカズキヨが首を傾げる。


「これは、相手の精神を覗く魔導具の複製だ。アズナブルの連中を捕まえても、どうせ、口を割らないだろうから。これで連中の情報を直接、精神から取ってしまえばいいさ」


 カズキヨは口を閉じて右頬を痙攣させ

「本当にお前は、エグい…」




 アズナブルは、ロマリアとの通信が途絶えたのを知る。

 通信機を前に何度も、関連があるロマリアの貴族や過激派連中と連絡を取ろうとしても、一切繋がらない。

「やれやれ…」

 そうこれで、察した。

 おそらく、ディオスが色々と手を回して、ロマリアとの関連を切ったのだ。

 自分達は晴れてテロリストに認定されたのだ。


 そこへ、レイドが来て

「アズナブル様…連中が…」


「ダイダロスは完成しているな…」


「はい。全て工程を無人製造装置は終えています」


「もとより、ここには我ら三人しか人員はいない。見せてやろう…我らの力を…」




 ディオス達の合同部隊が、後一キロの地点まで来ると、あの組み立てていた巨大な戦艦が動き出した。

 空気を震わせ、全長一千メートルの巨大戦艦が空中に浮かび、その中に搭載されている無数の無人兵器達を放出する。


 それを、飛空艇の甲板から見るディオスと、カズキヨ、アルヴァルド。


 アルヴァルドが

「あの数…ちと骨じゃのぉ」


「お任せを…」

と、ディオスが告げて魔法を発動させる。

”グランギル・カディンギル・オクトーバーレイン”

 ディオスのいる飛空艇の周囲に十メータサイズの魔法陣が幾つも展開され、そこから豪雨の如き光線が放出される。

 その光一つ一つが、放出された千数百機もの無人機達を打ち抜き破壊、爆発の天の川を作る。


 それを見てアルヴァルドは「お前は本当にいい婿だ」と呟いた。


 カズキヨにはそれが聞こえていた。

 ディオスは魔法の飛んでいく音で聞こえなかった。

 

 

 そして、空に浮かぶ巨大戦艦から、一筋の光がディオス達のいる飛空艇へ襲い掛かる。


 ディオスはその光に向かって右手を開き

”クワイトロール・オル・シールド”

 空間防壁を展開して、防御した。

 空間防壁に衝突しているのは、なんと…光となったアズナブルである。


 そして、別の空中から、ゴーレムを纏うレイドが出現、飛空艇に取り付きディオスをその右手に掴む。

 ディオスの防壁が消えて、アズナブルは、アルヴァルドとカズキヨの二人がいる頭上の空中に止まる。

 アルヴァルドとカズキヨが、アズナブルに集中した次に、二人の左右から、ララーナの巨剣が迫る。

 軽やかに二人は飛んで、回避。

 

 アルヴァルドは無限に高まる身体強化を発動させ、その放出する魔力がオーラとなって浮かぶ。


 カズキヨは、その血に流れる神具を具現化する。

「神具解放、九頭龍」

 カズキヨの背後から、鎧の九つの龍が出現して、その一体、鋼の翼が生えた龍の背に乗る。

 カズキヨはその内にあるシンギラリティの力によって、極限まで神具を発動出来るので、神具のオリジナルとなった鎧の九つの龍を具現化出来るのだ。

 

 アズナブルとララーナに、アルヴァルドとカズキヨは対峙、ディオスを捕まえたレイドのゴーレムは、その下に来る。


「これで、お前達は…動きがとれない」

 レイドは、ゴーレムの右手の中にいるディオスに呼び掛ける。


 フッとディオスは笑み

「いいや…これでいい」

 ディオスはエンテマイトをフル出力で発動、ゴーレムの右手が弾け飛んだ。

 ディオスは転がったゴーレムの部品を見て驚く。

 なんと、中身がない鉄の塊が合わさって形を成していたのだ。

 はぁ…魔力かスキルのような作用でゴーレムを構築しているのか…という事は。

 ディオスが壊したゴーレムの右手は再び、部品が戻って再生された。


 レイドが鋭い視線をディオスに向け

「キサマの都合の良いようにはさせない」


 ディオスは勝ち誇った笑みを向け

「いいや、全部がこちらの予定通りだ…」

とディオスは右手を空に掲げる。

”クワイトロール・ホロウ・オクタゴン”

 ディオス達の周囲、アズナブル、ララーナ、アルヴァルド、カズキヨ、ディオス、レイドの六人を呑み込む、巨大な八角形の空間結界ドームが構築された。


 ディオスは通信機を持ち

「全軍に通達する。今から全速力で撤退しろ。でなければ死ぬぞ…」


 アズナブルは、自分達を閉じ込めた結界を見回して

「我らだけを閉じ込めてどうにでもなると思うか? もう…ダイダロスは動いている。手遅れだ」


 フッとアルヴァルドは笑み

「おい、キサマ…下にいるのは誰だ?」


 足下にいるディオスを指さす。


 アズナブルはハッとした。

「止めろーーー レイド!」

 レイドは、ディオスに向かっていくが…。


 ディオスは、レイドのゴーレムを指さし

”クワイトロール・タワー”

 空間を曲げた柱がレイドのゴーレムの周りで発生して、ゴーレムを絡め取って動きを止める。

 そして、次にディオスは被害を拡大させない為の魔法を発動させる。

”アインサイズ・クワイトロール・リングス”

 それは、この三十キロ四方ある砂漠の戦場の周囲上空に威力を広めない、空間結界のフィールドリングを構築させた。

 決め手をディオスは発動させる。

”アクシズ・フォール・ダウン”

 空が轟く…。

 天空より炎の山が降臨する。七百メータサイズの隕石が、巨大空中戦艦ダイダロスへ向かって墜落する。


 ディオス達の部隊は、何とか、威力が及ばない場所まで逃げられた。


 天墜の巨大隕石の直撃を受けてダイダロスは爆発、膨大な閃光と衝撃波が広がって砂漠を蹂躙、

 その被害をディオスの作った空間結界リングによって拡大させはしない。


 ディオス達は、あの八角形の空間防壁ドームによって無事である。

 だが、その上空はアクシズ・フォール・ダウンの余韻により大量の粉塵が大気に混じって暗雲の世界だった。


 アルヴァルドはポキポキと肩を鳴らして

「さて…これで心置きなく、お前をボコボコに出来る」


 ディオスも、その傍に浮かび、アルヴァルド、カズキヨ、ディオスの三人が並ぶ。


 武神の魔王、アルヴァルド

 魔法の魔王、ディオス

 神具の魔王、カズキヨ

 三人の圧倒的、人知を超えた威圧にアズナブルの隣にいたララーナは、勝算がゼロであると確信した。


 ララーナは、アズナブルだけでも逃がそうと動くが…。

”クワイトロール・ホロウ”

 ディオスはララーナの操る巨剣達とララーナを封印する空間魔法を告げて、ララーナを封じた。


「さて…」とディオスは両手を交差させて鳴らし「三対一だ…抵抗してくれると嬉しいなぁ…ねぇ。お父様」


 アルヴァルドは、フッと楽しげに残酷な笑みを浮かべ

「ああ…そうでないと…楽しみがいがない…」


 カズキヨは圧倒的王者の見下ろしで

「分け前は分かっているなぁ」


 三人の魔王による蹂躙が始まる。


 アズナブルは、身構えていると…ディオスは何かの気配を察して、上を向いた瞬間、強大な空間防壁が真っ二つに裂けた。


「いやほぃぃぃぃぃぃ」

 何者かが、防壁を壊してアズナブルの前に来る。

 その者は、全身を機械のような鎧で覆い、右手に幾つものブレードが付いた巨剣を握っている。

「これは貸しだぜ」と、防壁を壊した人物が言う。


 ディオスはその者を睨むと、その者の顔立ちはまだ十代後半の少年だった。


 そして、もう一人現れる。

 年齢は十代くらいの少女で、全身を赤黒いスカートの丈の短い女の子のドレスを纏っている、金髪の娘だ。

「全く、こんな事になって、はた迷惑だ」

と、その少女が告げた次に、背後から無数の糸が出現、あっという間に掴まっているララーナとレイドを包み繭のようにして、確保する。


「お前達は一体!」とディオスが叫んだと同時に


「見つけたぞーーーーーーー」

 カズキヨが叫んで、機械鎧を纏う少年に龍の背から取り出した巨斧を手にして斬り掛かる。


 それを少年は巨剣で受け止め

「ああ…なんだ? テメェは…」


 ギリッとカズキヨが力を強め

「お前が殺した息子の仇…。取らさせて貰う!」

 足並みが崩れたそこへ、空から光線が降り注ぐ。


「ぐおおお」とディオスは叫ぶ。


 事態が混乱した隙に、少女がアズナブルと確保したレイドとララーナを連れて脱出。


「待ってーーーーー」

 アルヴァルドの叫びが響く。


 カズキヨの方は、少年がカズキヨの腹を蹴って距離を取った次に、巨剣から空間防壁を切り裂いた光の斬撃を放って素早く撤退した。


『くそーーーーーーーー』

と、アルヴァルドとカズキヨの叫びが木霊して、ディオスは、全てを逃がした空を睨む。

 

 どうやら…色んな手を用意する必要があるな…。

 次に会った時は…お前等の終わりだ。



 このレジプトでの事態は収束、資源交渉も、今まで圧されていたアフーリアの担当官は晴れ晴れとした顔で、アリストスの担当官は俯いたままで、資源価格はアフーリアの提案通りに通った。

 

 レジプトで、カズキヨと別れる時に

「なぁ…どうして、あの時に、強引に向かったんだ? 息子の仇って」


 カズキヨは懐から写真を取り出して

「息子がいたんだ…。もう何年になるだろう…。エニグマの特殊能力者狩りによって殺された」


 ディオスは察した。

 そう、あのアズナブルを助けた少年が、そのエニグマの狩りをやった人物か…と。

「そうか…」

 

 カズキヨはディオスを見つめ

「頼みがある…。もし、エニグマ関係の事に遭遇したのなら…その情報を…提供して欲しい。金なら幾らでも用意する」


 ディオスは、カズキヨの肩に手を置いて

「そういう事があったら、力を借りていいか?」


 カズキヨは強く目を開き

「ああ…もちろんだ」

 カズキヨから連絡先を受け取った


 ディオスは

 これから…絶対にあのような連中と関わる事があるだろう。

 だとしたら…将来の子供達に確実に影響する。

 絶対にぶっ潰してやる…。

 そう、痛感した。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話もあります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ