第55話 アルヴァルドとシャルマ
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これはアルヴァルドとシャルマの話である。
レスラム教暗部シャリカランのグランド・マスターであり、マハーカーラ財閥の総帥であるアルヴァルドは、とある貴族の分家だった。
とても小さな貴族の家で、ほとんど市井に近いようなモノだった。
父は人族と獣人のハーフ、母親は獣人、その受け継いだ形質は父親の人族のモノだが、肉体的な強さは獣人だった。
それはアルヴァルドが、十四の時だった。
貴族同士のいざこざに父親と母親は巻き込まれ殺され、アルヴァルドも命を狙われた。
そこを救ったのが、二つ上のクレティアの母親になる十六のシャルマだった。
シャルマの家系は、その身に宿す神格召喚というスキルの所為で、代々シャリカランに登用される暗殺者の一族だった。
シャルマに救われた後、アルヴァルドはそのままシャルマの弟子となり、シャルマから様々な体術や、魔法技を教わる。
その中でも、魔力を身体能力に付加する才能に長けたアルヴァルドは、シャルマとコンビを組んで、様々なシャリカランの仕事をこなす。
主な任務は、レスラム教を受け入れてくれる国を守る事で、そのレスラム教の国を壊そうとする輩を暗殺する任務や、その国に攻め入った軍隊の将の暗殺などを行っていた。
偶に、要人警護も行う。
そんな、ある日、アルヴァルドは、任務で通り掛かった超古代遺跡で光に包まれて消えた。
そして、再び出現した時には、あの無限に魔力を供給する渦、シンギラリティになっていた。
無限の魔力を持った事で、無限に身体能力を向上出来るアルヴァルドは、一騎当千の戦術兵器と化して、ロマリアと対峙する様々な国の防衛に借り出され、成果を上げた。
功績と共に、シャリカランでの地位が向上、シャルマと共に幾多の戦いを勝ち抜いていった。
この時のアルヴァルドには、密かな願いがあった。
それは、ここまで育ててくれたシャルマを嫁にして、闇の家業から抜ける事だった。
アルヴァルドとシャルマは、戦友のような親友で、姉弟のようで、師弟でもあり、男女でもあった。
アルヴァルド、二十歳の頃…トルキア共和国では、最強の矛、アレクルスという称号を得て、シャリカランの上から二番目の地位、セカンド・マスターになった。
この時、一年後にシャルマと一緒になろうと約束した。シャルマは肯いてくれた。
だが…そう、上手く行かなかった。
なんと、アルヴァルドの主筋に当たる、貴族家マハーカーラが内輪揉めの為に、多くの者達が犠牲となって、気付けばアルヴァルドしか生き残りがいなかったのだ。
アルヴァルドの両親もこの内輪揉めで亡くなったのだ。
トルキアでも武英雄という名声があったアルヴァルドは、直ぐにマハーカーラ家の当主にされ、ユグラシア中央やその南からアルスートリ大陸の運輸を仕切るマハーカーラ財閥次期総帥にされた。
それによって強制的に、貴族繋がりの正室を三人も迎える事となった。
仕方ないとアルヴァルドは受け止め、シャルマも迎えようとしたが…シャルマは拒絶した。
アルヴァルドは必死にシャルマを説得する。
シャルマなしでは、自分はダメになると必死に縋るも、シャルマはシャリカラン暗部の深い闇の部分まで通じる者。
光に入ったアルヴァルドの足手まといになると…。
アルヴァルドから離れようとしたが…。
三人の正室も、シャルマの功績や手腕を知っているので、留めようとした。
正室ではないが…シャルマは、側室で、アルヴァルドとは離れた感じで過ごす事となった。
そうして、正室達にも多くの子供が産まれ、シャルマからクリシュナも産まれた。
アルヴァルドは、正室の子供達にも、側室から産まれたクリシュナを兄弟として扱うように言っていた。
子供達は、その通りとして、クリシュナにも兄弟同然として扱ったが…クリシュナは、アルヴァルド達から距離があった。
クリシュナがシャリカランの暗殺者になる時にも、アルヴァルドや兄弟達は反対したが…。
クリシュナの意思が尊重され、クリシュナはシャリカランに入った。
アルヴァルドや、兄弟達は、何時か…クリシュナにも平和な光の道を歩ませよ…と考えていた。
そんな時、ロマリアからの侵攻軍が、トルキアの北にあるラハマッドに来た。
その部隊は異様だった。
全てが人の操作が必要としない、全自動兵器の軍隊だった。
そこへ、アルヴァルドもシャリカランの者達も参戦して、自動兵器群と戦った。
その中で唯一の戦士がいた。
それが、金髪で仮面を被るアズナブルという、この自動兵器群を作り出した武器商人と、その付き人のレイドとララーナの三人だ。
アズナブルは、アルヴァルドと同じシンギラリティだった。
双方の戦いは熾烈を極め、アズナブルの狡猾な作戦の為に、シャルマの部隊が孤立、それにアルヴァルドが駆け付け、戦局を引っ繰り返してなんとか勝利させたが…。
シャルマは死ぬ寸前だった。
アルヴァルドは、シャルマを抱き締め、涙していると…それを…。
あの男は…笑った。
アズナブルが、追い詰めて殺したシャルマを抱き締めているアルヴァルドを、ゴミでもみる視線で嘲笑った。
その言葉が今でも、アルヴァルドには忘れられない。
よかったな…ゴミが帰ってきて、いいや、もう…塵芥のどうでもいい、何を抱えて、おかしなヤツだ。
そう、アズナブルは、ゴミでも始末するようにシャルマを殺したのだ…。
その後、侵攻は収まってロマリアと、一時停戦となった。
だが…アルヴァルドは忘れていない。
アズナブルを…何時か、絶対に殺す。
シャルマの仇を取る機会を、伺っていた。
そして…その好機が訪れた。
それは、奇しくもクリシュナの婿、ディオスが関係するアフーリアでだ。
全てに万全を期す為に、アルヴァルドは、ディオスに協力を求めた。
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