第528話 神の真似事
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ディオスは、再び、死者の彼岸に立ち、そして…
ディオスは夢の中にいた。
”私は、子供の為に死にたかった”
ディオスの足下には、その場に膝を崩して涙している者達がいた。
ここは、ディオスが死者と対話する彼岸。
そこで、死者達が…いや、子供を救えなかった両親達が嘆き悲しんでいる様が広がっていた。
”わたし達は、子を食い殺して、生きながらえた”
”わたし達は、人…畜生以下だ”
”未来を殺して過去が延命した愚か者だ”
泣き叫ぶ子を救えなかった親達、その無念の親達が向かう先、必死に救おうと手を伸ばす先には、あのアヌンナキの三人がいた。
アヌンナキの三人、いや…三柱といった方が正しい。
一柱一柱が、百人近い子供達の魂が縮退して存在しているソウルホール。
その子の魂の一つ一つに、子を産んでくれた両親がいる。
だが、その魂の親達は、子を救えなかった。
自らの保身や、自らの欲望の為に子を犠牲にした。
逆しまの親達。
だからこそ、望んだ。
死ぬ時は、自らが未来の踏み台になろう…と。
犠牲にした子供達の幸福の為に轍となって死ぬなら本望だと。
だが、それは叶わなかった。叶わずして死んでしまった。
自らの愚かさと、弱さを呪い、今も自身が醜く爛れようとも、子を救おうを…。
だが、届かない。
死者に生者は救えない。
だからこそ、託せる者に託すしかない。その思いを…それを人は呪いと言う。
呪いと化しても、救えなかった親達は、子を、今度こそ…過去が未来へ向かうように、命が前に進めるように、怨念の彼方から、ディオスに辿り着いた。
爛れて蠢く悪獣のごとく腐臭に満ちた体を、親達は引きずり、ディオスの前に跪き額を地に付けて、願い乞うた。
”子供達を救ってください。わたし達は何も出来なかった愚か者でした。無力で、本当に何も出来なかった。だから、貴方様に頼むしか出来ません”
”あの子達を…助けてください”
”あの子達を未来へ返してください”
どんな爛れても朽ちても願う親達を前にディオスは
「おい、どうした?」
と、呼びかける声でディオスは目を覚ますと、目の前に充人がいた。
ディオスは自分の顔に起こっている異変に気付く。
泣いていた、涙を流していた。
眠りながら涙を流すディオスを見た充人が呼びかけたのだ。
ディオスは涙を拭って
「何でも…いや、呼ばれた…」
充人は、真剣な顔で
「誰に?」
ディオスは
「アルダ・メルキオールや、他のアヌンナキ達の元になった魂に通じる親達に…」
充人は眉間を寄せて
「大丈夫なのか? 何か…異常は?」
ディオスは首を横に振って
「大丈夫さ」
充人は少し俯き加減で
「あまり、自分で抱え込むなよ」
ディオスは微笑み
「分かっている」
充人が
「体調が悪いなら…」
ディオスは首を横に振って
「いい。大丈夫だ」
と、言いつつも何かを考えている顔だった。
充人は、心配な顔で眉間が寄るが
「分かった」
と、自分を納得させるように告げた。
ディオスは充人共に、機神型時空要塞戦艦エルディオンのホールに来た。
そこには、アシュリードとライアーにキャロル、ディオスのセイントセイバー達がいる。
ライアー達とアシュリードと、セイントセイバー達の間には溝がある。
ディオスを誘拐したアシュリードと、かつてアースガイヤで問題を起こしたライアー達だ。
警戒感がセイントセイバー達には滲んでいた。
ディオスがアシュリードに近づき
「体調は…大丈夫かね?」
アシュリードは頷き
「はい。お陰様で…」
ディオスが
「じゃあ、この事に関して…」
アシュリードは頷き
「はい。その…」
と、ディオスの仲間達、セイントセイバー達を見ると、年齢が近い若人達セイントセイバー達は、警戒と怪しむ視線で固定化されている。
ディオスがセイントセイバー達を見て
「その…心配を掛けてすまない。ただ…話を聞くだけだ」
セイントセイバー達のユリシーグが
「話を聞くだけで済むのか?」
ディオスは、顔を渋めて答えられない。
そこへセイントセイバー達が来て、ディオスを囲み
「兄貴は、巻き込まれただけだ! 関わる必要があるのか!」
信長が
「ディオスさん。それって本当にディオスさんにとって必要なの?」
洋子が
「オレは、ここで終わった方がいいと思う」
アーヴィングが
彼ら彼女達全員が、ディオスを泥沼へ誘い込もうとしていると思っている。
ライアーが
「ディオスは、私との契約がある。それに従って貰う」
その言葉に、セイントセイバー達が殺気をライアーに向ける。
ライアーの傍にいるキャロルがフッと皮肉に笑み
「ああ…忠犬じゃあないか…」
充人が
「落ち着け、みん」
と、告げる前に充人の右腕を引っ張るセイントセイバー、ネオデウス組の朱里と愛。
愛が
「アナタは、こっち」
朱里が
「そうです!」
「ああ…」と充人は渋い顔をする。
ライアーとキャロルは、ディオス達に馴染んでいる充人に少し笑んでしまう。
ディオスが手をパチンと鳴らして
「とにかく、話を聞いてから…。それからでも遅くない。そうじゃないか?」
ディオスの言葉に納得はしないが、セイントセイバー達は付いていく事にする。
機神型時空要塞戦艦エルディオンから下りた一同は、メルカバー内部を歩く。
永遠と続く赤い非常灯だけの通路。
アシュリードを先頭に
「ここは、そう…僕の時空で、とある宇宙域の地区にあった実験プラントです」
アシュリードが語る。
「僕の時空は…とある二つの派閥に別れていました。ナチュラル派とシステム派
ナチュラル派、僕たちの故郷の時空の銀河で、一番に人口比率を占める女性が属していて、その半分以下の人口しかない男性がシステム派です。
僕の時空は、男女比が3:7、男性が3で女性が7の比率でした」
ディオスが
「つまり…宇宙へ広がる程の…」
アシュリードは頷き
「はい。惑星を簡単にテラフォーミングするレベルの文明は、どの時空でも男女比が、女性が多くなりますから」
信長が
「そのシステム派と、ナチュラル派、つまり男女がどうしたんだよ?」
と、尋ねる口調は、どこか鋭い。
アシュリードは暫し苦し気味に
「宇宙まで版図を広げる文明は、男女という価値観は…必要なくなります。
それは当然の流れでしょう。
ですが、それを不安視するナチュラル派、女性達がいました。
高度に進んだ人工知性DI…ディープ・インテリジェンス達のお陰で、上手く行っていたのを、ナチュラル派は、自分達人間の力で統治を行おうとして、その…」
ライアーが
「破壊行為を始めた」
充人が渋い顔で
「つまり、自分の道理を通す為に…壊したのか…色々と…」
セイントセイバーのカイドが
「本末転倒だな」
セイントセイバーのネオデウスの奈々が
「そんな事をして意味があるんですか? 犠牲を出しても変えるなんて、暴挙だ」
アシュリードが
「その通りだと思います。ですが、人工知性DI達の中に、人に任せては?という事もあって、人間主観の統治へ移行しましたが…失敗しました」
ディオスが
「革命を望む者は、短絡で知性がない。なぜなら、その本質は、自分が上に立ちたいという愚かな欲でしかないからだ」
充人が
「誰の言葉だ?」
ディオスがポツリ
「ミスルおじさんの言葉だ。おじさんは本質を求める人だった。真に世界を変えるのは、真実を、それをどうにかしようと受け止めて考える事…そう…言っていた」
アシュリードが
「あの…話を戻します。
ナチュラル派に統治がなった瞬間、それは…かつて、二十世紀にあった獣の時代の再来とされる程に…酷い事になったそうです。
資源分配の不平等、そして、システム派であった男性に全ての責任を押しつける責任転嫁、さらに格差や貧困、差別、偏見が蔓延したそうです。
根絶した自殺が多発して、多くの男性の自殺が起こったそうです」
ライアーが
「人に任せて統治を担った瞬間、人は獣であるサガに従って世界は、地獄になった」
ディオスが
「ライアー。関わった事があるのか」
ライアーが頷き「少々な」と
アシュリードが
「その不満を逸らす為に、他銀河との戦争が始まりましたが…。
結局…二十年でナチュラル派の統治がシステム派によって、元の人工知性体DIに戻されたそうです。
その瞬間、まるで波が引くように、起こっていた問題が解決していったそうです。
ですが、一部だけ、ナチュラル派の統治が残された銀河の星域があったそうです」
ライアーが
「そのアシュリードが生まれた時空の人工知性体DIは、人の可能性を考慮して、実験的に人の統治、ナチュラル派の領域を残した」
アシュリードが
「そこで…これが…この天の車…メルカバーが誕生しました」
アシュリードが導いた場所、巨大な鋼鉄の扉の前
「この奥が、メルカバーの中央演算システムです。巨大な…全長が500メートルの空間で、内部に巨大な中央演算システム、セフィロートシステムがあります」
セイントセイバーの阿座が
「動くのか? 非常灯ばかりって事は、動力も満足に無いのだろう?」
アシュリードは
「大丈夫です。量子力学と超ひも理論により多次元効果を使った空間をメモリーや演算システムとして活用していますので、空間を破壊する作用が無ければ…そこにあるデータもシステムも破壊されませんので…」
と、告げてアシュリードが、鋼鉄の扉の端末に触れて開けると、重厚な音をさせて、扉が開いた。
そこには巨大な鋼鉄の円座のような空間と、その中央に飴色に輝く数百メートルの石版のようなモノが浮かんでいた。
そして
「ようこそ…」
と、待っていた者達が告げた。
アシュリードが
「どうして! 貴方達が…」
そこにいたのは、ホーリートライアングルの御方、アルダ・メルキオールの右席にして黄金の獅子レオニドスと、アルダ・メルキオールの左席にして銀の竜メファノタスがいた。
レオニドスが
「やれやれ、来るのが遅すぎる」
メファノタスが
「こちらから迎えに行こうとしたくらいだ」
アシュリードが警戒で黄金槍を出すも、その隣をいつの間にか、レオニドスが来て
「止めたまえ、我々は戦いにきたのではない」
メファノタスが、瞬間移動でディオスの前に来て
「我が御方から…齟齬なく伝えよと命じられたので…」
ディオスの前に守ろうと、セイントセイバーが構える。
だが、ディオスが
「アシュリード君。彼らは…?」
その問いにアシュリードが
「二人は、アルダ・メルキオールの側近中の側近です」
レオニドスが
「では、どうして我らが御方の両腕が来た理由は、何だと思うかね? 聖帝殿…」
ディオスは鋭い顔をして無言だ。
メファノタスが嘲笑いのような顔で
「聖帝殿…我ら、デウスエクスについて…その正体を理解していると思うのだが…」
アシュリードは驚きを、全員がディオスに視線を集中させる。
ディオスの左にいる充人が
「ディオス…」
ディオスがふ…と溜息を漏らして
「デウスエクスの正体は、人の形をした神格炉、つまり、高次元動力炉ないし、事象変移機関だ。つまり…」
と、ディオスの背に、原初、始まりの力を取り出す六角形の黄金石版、ゾディファール・セフィールが出現して、ディオスが背にあるそれを指さし
「つまり、人の形をした神の力を取り出す機関、システムだ」
メファノタスがパチパチと拍手して
「パーフェクト」
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