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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
アーリシア大英雄への

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第49話 天災魔法による戦略

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオス達は、ヴィルヘルムの思惑を防ぐ為に、フランドイル軍とフランドリル軍が合流するポイントへ向かう。

そして、様々な思惑が交差する。

 ディオスは王都そばの飛空挺空港にあるオルディナイト財団出資の最新飛空挺開発ポートに立っていた。

 目の前に、鋭角なフォルムの黒い飛空挺が運ばれてくる。大きさ的に50メートル。

 この世界の飛空挺としては、小型の部類が入るが、その後部についているのは、ディオスの製造する高純度魔導石で作られたジェットエンジンが四機乗っている。


 ディオスはここに来る前に、屋敷でクレティアとクリシュナに全てを説明した。

 

 クレティアとクリシュナは、目を閉じた後、覚悟をした顔をする。

 そう…夫が何れ、大きな事態に巻き込まれるのが分かっていたからだ。

「ダーリン。がんばってきな」

「アナタ…気をつけてね」


 二人の励ましを貰って、ディオスはここにいる。

 その隣に、スーギィとナトゥムラが来た。


 ナトゥムラが

「ディオス、準備は?」


「大丈夫だ」とディオスは静かに告げる。


 二人は、身重でこれないクレティアとクリシュナの代わりに助っ人として、ディオスが頼んだ。


 さらに、その後ろにユリシーグとアイナに数名のサルダレスの者達が来る。


 ユリシーグは、正面にある黒い小型飛空挺を見て

「これが、オレ達が乗る飛空挺か…」


 その脇からゼリティアがセバスと共に現れ

「実験型、高速飛空挺フォルス…。高出力の魔導ジェットエンジンを四機も積んでおる。これなら、一時間後には、目的のフランドリルとフランドイルの堺に到着する筈じゃ」


 ディオスはゼリティアの前に来て

「ありがとう…恩に着る」


 ゼリティアは腕を組み

「気にするな。バルストランを…アーリシアを戦火に呑み込まれないようにする為じゃ。だが…お主…本当にそれだけして、事態が治まるのか?」


 その問いにディオスは首を横に振る。

「なら、なぜ…」

と、ゼリティアが困惑を浮かべると、ディオスが、これから起こる事の予測を口にする。


 それを聞いてゼリティアは、驚愕の顔になり

「お主…そんな事…紙一重じゃぞ…」


「だが、やるしかない」

 ディオスの決意は固い。


「はぁ…」とゼリティアは溜息を漏らし「分かった。じゃが…もし…最悪の事になったら、這ってでも逃げ帰ってこい。約束じゃぞ」


「ああ…」とディオスは肯き約束した。




 ディオス達を乗せた実験飛空挺は、夜の空を高速で、バルストランを後にして向かう。


 

 フランドイルの王都では、ヴィルヘルムが書斎で読書をしていると…ドアがノックされる。

「失礼します。陛下…」

 グラディウスが入ってくる。


 ヴィルヘルムは読書を続けながら

「首尾は?」


「順調でございます。兵士及び魔導騎士達一万を乗せた強襲戦艦飛空挺艦隊と、飛行ユニットを装備した魔導操車の部隊、七万。四日後には出発出来るそうです」


「そうか…ロマリアの動きは?」


「天の目で監視をしていますが…今の所、ロマリアと我が国の中間緩衝地帯には、動きがありません。ロマリアの内陸にも、ロマリアの艦隊の動いている様子を監視していますが…今の所は…」


「以外や愚鈍だな…」


「陛下…このまま、予定通りに…」


「ああ…。それと…レギレルのヴィクトールにも一報を入れてやってくれ」


「どのように…?」


「アーリシアで最高の魔導士を手に入れる算段をしているとなぁ…」


「畏まりました」

 グラディウスが下がると、ヴィルヘルムは本を閉じて、机の上にあるアーリシアの地図を見つめる。

「さて…どう、賽の目は動くかのぉ…」



 ディオス達は、フランドイルとフランドリルとの堺にくる。そこは、小高い丘が続く平原だ。

 ディオスな、その全貌を一望出来る、山頂にいた。


 そこへ、ユリシーグが来る。

「来たぞ、南、フランドリルの強襲輸送戦艦飛空挺艦隊だ」

 南の方を指さす。


 戦艦飛空挺の艦隊が見える。その側面にはフランドリルの花形の紋章がある。


 そこへ、ナトゥムラとスーギィが現れる。

「来たぞ、北の方角、フランドイルの軍団だ。予想通り、飛行ユニットを装備した魔導操車の大軍勢と、兵士と魔導騎士達を乗せた。強襲輸送戦艦飛空挺の艦隊だ!」

 ナトゥムラが北を指さす。


 そこには、膨大な数の空を飛ぶ魔導操車と、戦艦飛空挺の艦隊が進んでくる。その側面には剣を交差させたフランドイルの紋章がある。


 ディオスは視線を鋭くさせる。

「では…行ってくる」

と、ディオスは告げる。


「気をつけろよ」

 ナトゥムラが心配げに声を掛けた。


 ディオスは頷いた次に、瞬間移動のベクトでそこから消えた。


 ディオスは、ベクトの連続移動で、とある中間を目指す。

 その場所は、フランドイルとフランドリルの合流するポイントだ。

 両国の軍団が、接触まで二キロ。

 そのポイントの空にディオスは浮かぶと、右手を空に掲げ天災魔法を発動させる。

”タイフーン・トルネード・アンビシャス”

 ディオスの発動させた魔法は、頭上にある上空に空間作用で構築させた台風発生装置を作り、その場に台風を生成させる。


 フランドイルの旗艦にいる司令は、合流するポイントの空が激しく渦巻くのを確認した。

「な…なんだ…」

と、司令は遠見の魔法でそこを見ると、空中に浮かんで魔法を発動させている人物、ディオスがいるのを見た。

 ディオスの上げる右手から光が昇り、そこを中心として台風が発生し始める。

 司令はゾッと背筋が冷たくなる。

「ま…まさか…」


 ディオスの発動させた台風生成魔法は、倍数的に積雲を拡大させ、フランドイル軍とフランドリル軍まで覆い尽くす。


「司令!」とフランドイルの旗艦の仕官が「突如発生した積乱雲に我が軍と、合流するフランドリル軍が包まれました」


 司令は仕官に

「航行に障害は?」


「この程度なら」

 ガクンと旗艦が横になった。


 ディオスの発動させた台風魔法は、ただの台風だけを発生させる魔法ではない。

 大気を激しくかき混ぜ、幾つもの竜巻を発生させる。

 台風による暴風と、竜巻達による激しい襲来で、フランドイル軍とフランドリル軍は、滅茶苦茶にさせられる。


 フランドリル旗艦

「司令ーーーー 艦隊の維持が困難な状況です!」

 フランドリルの司令は顔を驚愕に染め

「合流するフランドイル軍に、伝達…。このままでは、本艦隊の維持が困難である! 一時、この空域より離脱する。送れーーー」

「はい!」


 フランドイル軍の旗艦では、司令が計器に掴まって、竜巻と暴雨風の猛威を耐えている。

 そこへ仕官が

「司令、フランドリル軍より、伝令です。本艦隊の維持は不可能である。一時、空域より離脱すると…」

 司令は軍帽を深く被り

「陛下にご連絡しろ。我ら、フランドリル軍との接触に失敗、現在、空域は信じられない天候の災害に見舞われている。私の判断で、一時撤退する」

「了解です!」



 フランドイル軍とフランドリル軍は、その場から逃れるように退却した。


 その一報が直ぐに、ヴィルヘルムのいる王都の王宮に伝わる。

 グラディウスは急ぎ、この事を伝えようと、廊下を早歩きで進み。

「失礼します。陛下…」

 グラディウスがヴィルヘルムのいる執務室のドアを開ける。

「あ…」とグラディウスは戸惑う。


 ヴィルヘルムのいる王の執務机の前に客がいた。その人物は魔族の老魔導士、フランドイルのエルダー級、アインシュであった。


 机にいるヴィルヘルムとアインシュは鋭い顔をしている。


「アインシュ様。どうも…」とグラディウスは挨拶した次に、ヴィルヘルムへ

「陛下…合流する艦隊が…」


「天災にやられて退却したのであろう…」

 ヴィルヘルムはグラディウスが言葉より先に告げる。


「あ…はい。その通りでございます」

 グラディウスは驚いていると…


 アインシュが

「陛下…これを…」

 

 ヴィルヘルムは、一枚の紙を手にして見つめる。

「どういう事だ?」


 グラディウスはアインシュと、ヴィルヘルムを交互に見つめ

「陛下…何が?」


 アインシュが

「グラディウス殿…、実は…我が軍とフランドリル軍との合流するポイントの近くには、私の抱える弟子の一人が、偶々いてね。その弟子から…突如発生した台風と竜巻の群に、両軍が襲われて撤退するのを見たと…私に連絡があった」


「ああ…それで…」


「そして、だ…」

 アインシュは左に抱える書類より一枚を取り出し、グラディウスに渡す。


「んん…魔法陣の設計図ですな」

と、グラディウスは書類を見て答える。

「ええ…開発者。ディオス・グレンテル。台風型竜巻魔法…タイフーン・トルネード・アンビシャス…ん!」

 グラディウスは唸った。


 そう、報告にあった艦隊を襲った災害と同じ作用を起こす魔法なのだ。


 グラディウスはアインシュを見つめる。


 アインシュが

「これは…数日前に、ヴィクトリア魔法大学院に提出された。ディオス・グレンテル殿の魔法だ…」


「陛下…これは…」とグラディウスは驚きを向ける。


 ヴィルヘルムは、両手を組み額に手を当て

「どういう事だ? これでは…自分がやったと…言っているようなモノだぞ。何を考えているディオス・グレンテル」


 グラディウスが

「つまり…今回の災害は、ディオス・グレンテルが…が、邪魔をしようと起こしたと…」


 ヴィルヘルムは机から離れ

「おそらく、気付いてなんらかの行動を起こすとは…思っていたが…」


 アインシュが

「脅しでしょうか? これ以上、動くなら…もっと…」

 そう、もっと凄まじい魔法で潰すという暗喩という事だ。


 ヴィルヘルムは窓の外を見つめた次に、目を閉じ考える。


 それを静かにアインシュとグラディウスは待つ。


 ヴィルヘルムは目を開き

「グラディウス。シャドーズを動かせ。ディオス・グレンテルを追跡させろ」


「は!」とグラディウスがお辞儀する。


「ただし…妙な真似はするな…。魔法を使った場合は、その使った様子を…どんな魔法陣を使ったかを、ハッキリ分かるように、魔導映写で捉えよと…」


「分かりました…」とグラディウスは肯き、執務室から出て行く。


 シャドーズとは、フランドイルが抱える秘密の諜報組織だ。


「アインシュ…」とヴィルヘルムは呼ぶ。


「は…」とアインシュはお辞儀して


「ディオス・グレンテルが、もし、我が軍を邪魔しようとして、今回と同じように災害級の魔法を使った場合は、それを魔法陣込みで映した映像は証拠になるか?」


「なり得ます。現在、災害級の魔法を単騎で使えるのはディオス・グレンテルを他におりません。それに、魔法陣には、個人独特のアレンジがありますので…それも…」


「そうか…」とヴィルヘルムは再び、机に座る。

 なんだ? 何故、こんな、証拠が残るような事をする? それ程までに、愚かだったか?

 もしくは…。




 その夜、ディオス達は、艦隊が合流する筈だった場所の近くにある国境の交流点である町の宿屋にいた。

 そこの一階にあるレストランで食事を取る。

 

 ナトゥムラが

「これで、終わってくれるかなぁ…」


 スーギィが

「両艦隊が撤退した程度だ。まだ…」


 ディオスは、静かに食事を食べていると、宿屋のドアを潜り、ユリシーグが入ってくる。

「待たせたな…」

 ユリシーグが三人の傍に来る。


「首尾は?」

 ディオスが聞く。


 ユリシーグが、気まずい顔をして

「四日後、再び艦隊が合流するそうだ。ここより、数キロ先の大平原がポイントらしい」


 ナトゥムラがチィと舌打ちして

「そうか…前みたいに、台風の魔法じゃあ、その場に着陸されて収まるまで、待機出来るな…」


 ディオスはパンを咬み千切り

「いいや、予定通りだ。それでいい」


 ナトゥムラとスーギィが顔を見合わせ

「なぁ…何を考えているんだ? 教えてくれ…」

と、ナトゥムラが聞く。


 ディオスは静かに、ただ…一点を見つめて食事をして答えない。


「はぁ…」とナトゥムラとスーギィは溜息を吐く。


 さらに、アイナと数名の同行したサルダレスの者達が来て

 アイナが

「ディオスさん、皆さんマズイ…。フランドイルが極秘諜報機関のシャドーズを動かしているみたいです」


 ユリシーグが

「ディオス、移動した方がいい。シャドーズは厄介な連中だ」


 ディオスはユリシーグを見つめ

「どうしてだ?」


「連中は、個人を識別する特殊な魔法を使う」


「個人を特定する魔法?」

 ディオスは問うとユリシーグが

「正確には、個人の持つ魔法波長を特定して、追跡出来るんだ」


 ディオスは目を伏せた次に、鋭く細く剣のようにして

「そうか…なら、使える」



 同じ夜、ヴィルヘルムの元へ、フランドイルにある教会達を纏める大司教が訪れた。

「陛下…。もう…お止めください…」


「何をだ?」


「この世の中に争いの種を蒔くのは、国に生きる民に不幸をもたらします」


 ヴィルヘルムは、大司教の言葉の意味を察する。

 そう、ディオスを手に入れる為に、ガリシャマイト連合王国を攻める事を…。

「オールバー大司教よ。これは同盟国フランドリルからの要請だ。無下に出来ん」


「陛下…戦いではなく。対話と融和で、物事を解決しましょうぞ」


「ほう…。まあ、聖職者である汝はそう、思うのも無理はない」


「でなければ…大いなる神の罰が、陛下に落ちてしまいます」


 ヴィルヘルムの眉間がピクッと動いた次に

「分かった。汝の訴え、考えてみよう」


「ありがとうございます」

 大司教が去った後、グラディウスが入って来て

「陛下…」

 ヴィルヘルムに耳打ちする。


「ほう…サルダレスとか…分かった」

 ディオスは教会関係者と行動を共にしている。

 成る程…だから、さっきの大司教の物言いか…。

「何が狙いだ…」とヴィルヘルムは考える。


 


 町に来て二日目、ディオスは窓から外の町を見つめる。

 行き交う人々、だが…路地の細い部分に、隠れて宿を見つめている者達がいる。

 ヴィルヘルムが放ったシャドーズの影である。

 それを目を細めてディオスは見つめる。


 そこにナトゥムラが来て

「ふぅ…今、戻ったぞ」


「ナトゥムラさん…」


「丁度いい、古い建物が町のそばにあったぞ」


 さらにそこへ、スーギィも来て

「戻った…実験は成功だ」


 ディオスとナトゥムラは肯き合った。



 両艦隊が合流する日が来た。フランドイルとフランドリルの両艦隊は、この町より、数キロ先の大平原で午後の半ばに合流する予定だ。

 ディオス達のいる宿の周囲にいるシャドーズ達の警戒が最大まで強くなる。

 ヴィルヘルムの命令通り、ディオスが魔法を発動させて魔法陣を展開する姿を克明に、映像として収める為に…。


 宿屋から一団が出る。その中にナトゥムラとスーギィの姿がある。

 それ以外は、顔を隠すようにフードを深く被っている。

 

 シャドーズは、個人識別魔法を使った集団を調べると、それに目的のディオスの反応があった。そう、フードの集団の中にディオスがいる。

 

 一斉にその集団が走り出した。それを追ってシャドーズの追跡が始まる。

 

 それを宿屋の屋根から見つめる者がいた。ディオスである。

 そう、ディオスは識別魔法を誤魔化す術を編み出して、ナトゥムラとスーギィのいる一団を囮にしたのだ。


 ディオスは素早く、ベクトを使って瞬間移動した。

 向かうべき場所は、二回目となる両艦隊の合流する大平原へ。


 

 ディオスの囮となった集団は、町を走り抜け、とあるボロの家へ入った。

 その周囲をシャドーズは隠れて囲む。

 それを、廃墟の家の窓からナトゥムラとスーギィが確認して


「やったぜ。作戦成功」とナトゥムラ。


「後は…任せるだけだ」とスーギィが。


 他の者達、アイナとユリシーグにサルダレス達はフードを取って顔を出した。


 ユリシーグの両手には、ディオスが作った疑似個人の魔法波動を放つ魔法が輝いていた。




 ディオスは、平原に到着する。

 そして、周囲を確認する。北にフランドイル軍団と南にフランドリル軍団の、戦艦飛空挺と空を飛ぶ魔導操車部隊を確認した。


 ディオスは、足下の平原に右手を向ける。

”アース・ディレクション・インパクト”

 大地を泥濘地帯に変える魔法を発動させる。

 地震が発生し、大平原を揺らせる。

 ディオスを中心として、平原が一気に泥の海に変わり広がる。


 次にディオスは、空へ両手を向ける。

”ダウンホール・アイス・タイフーン”

 遙か上空にある大寒波を下ろす魔法を発動させた。


 両艦隊の周囲を包む程の、数十キロに及ぶ雲の輪が降臨する。

 それを、フランドイルの旗艦が察していた。

「司令! 周囲の気温と気圧が急降下して、艦を支える風石の浮力が不安定になっていきます」

「なんだと!」

と、司令は報告した計器を操作する仕官に近付く。



 強烈な寒波が両艦隊に叩き付けられる。風石の浮力が不安定になり、次々と飛行ユニットと装備した七万の魔導操車部隊が、泥濘化した平原に緩やかに墜落する。

 泥の海に埋まる魔導操車、そこに寒波が降臨して、泥が凍てつき魔導操車を地面に凍りづけにする。

 そこに、浮力を維持できない戦艦飛空挺も緩やかに墜落、泥濘の海に埋まり、降臨する大寒波によって地面に凍りづけになる。

 フランドイル軍とフランドリル軍の両艦隊が、地面に埋まって泥の氷に覆われて動く事が不可能になった。



 それを実行し終えたディオスは、瞬間移動のベクトを使って消える。

 向かう先は、ナトゥムラ達のいる廃墟の家である。

 

 その廃墟の家にいるシャドーズは、艦隊が航行不能になった連絡を受けて戸惑う。

 ディオスの魔法を発動させたのを確認していない。

 混乱するシャドーズ、そして、その上空を過ぎて、廃墟に空いている屋根の穴からディオスは家の中に入った。


 ディオスは家の床を転がる。

「大丈夫か!」

 ナトゥムラが駆け付け、ディオスを支える。


 ディオスは起き上がりながら

「作戦は、成功だ」


 それを聞いて一同は安堵の声を漏らす。


「さあ、仕上げだ」と、ディオスは告げる。



 混乱するシャドーズ、その廃墟からディオスが姿を見せる。

 シャドーズは、驚きでディオスを見つめる。

 ディオスは、見えるシャドーズの一人に近づき

「何か?」

と、首を傾げる。自分は何もしていませんという顔をして…。


 シャドーズは、ディオスを凝視していると、腰にある小型魔導通信機が震え、それを取って連絡を受けると、シャドーズは撤退した。


「はぁ…」とディオスは深く溜息を吐く。


 その背にユリシーグが来て

「では…予定通り、ロマリアに…」


 ディオスは肯き

「ああ…流してくれ…フランドイルの艦隊が行動不能であると…」




 ヴィルヘルムは、グラディウスから艦隊が地面に埋まり凍って航行不能という連絡を受けた。


 ヴィルヘルムは目を閉じて

「シャドーズからの連絡は?」


 グラディウスが苦しそうな顔で

「それが…一切、魔法が使われた形跡がなく、その様子が捉えられなかったと…」


 ヴィルヘルムは、目を開き鋭くさせる。

「やられた…」

 そう、シャドーズの装備の特性を理解して、おそらく、囮を使った。


 次の手を考えるヴィルヘルム。

 そこへ、ドアがノックされ別の仕官が入る。

「失礼します」


 仕官は、グラディウスに耳打ちする。

「なんだとーーーー」

 グラディウスが吠えた。


「どうした?」

と、ヴィルヘルムが尋ねる。


「陛下…ロマリアが…四十艦という大艦隊を編成してこちらに向かっております」


 ヴィルヘルムは驚きに目を開き

「どういう事だ! 情報の速度が速すぎるぞ!」


 さらに、そこへ、ドアがノックされ別の仕官が入る。

「失礼します。陛下…」

と、入って来た仕官は両手に持つ魔導通信機をヴィルヘルムに差し向ける。


 その魔導通信機は、アーリシアの王同士を繋げる直通である。

「誰だ?」とヴィルヘルムが問う。


「……バルストラン王ソフィア様でございます」


 ヴィルヘルムはそれを取る。


「ごきげんよ。フランドイル王。バルストラン王、ソフィア・グレンテール・バルストランです」

 ソフィアの声がある。


「ヴィルヘルムだ。一体何の用ですかな?」


「フランドイル王。予言を伝えに参りました」


「はぁ? 予言だと…」

 ヴィルヘルムは驚愕に目を見張る。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話もあります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。


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