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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
第五次ヴァシロウス降臨

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第46話 祝賀会の色々

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスが回復して、ディオスの功績をたたえる祝賀会が開かれる。

そこで、ディオス、困ってしまっていた。

 その日は、五日目の経過観察の日だった。

 ディオスは、オルディナイトの城邸で、治療してくれた三人の医師達に、様々な体の様子を見て貰う。

 

 ディオスの両腕には、吸盤の端子がついてディオスのバイタルを見る。

 魔族の女性医師が

「バイタル及び、体の回復具合、順調ですね」


「そうですか…よかった」

 安心するディオス。


 医師達がデータを持ち寄って話し合っているそこに、診察に使っている部屋のドアが開き、ゼリティアが入って来た。

「どうじゃ?」


「ああ…ゼリティア様」

 オーガの女性医師がお辞儀して、他の医師達もお辞儀する。


 人族の男性医師が

「順調です。奥様達に話した通り、奥様達がリハビリの筋トレをディオス様に行っているので、前より頑丈なくらいですよ」


「そうか…」とゼリティアはホッとする。


 男性の医師が

「ディオス様、もう…回復の飲み薬は、夕食後か、夜の眠る時に飲んでください」

 薬が減った。


 それ程に介抱に向かっているという事にディオスは顔を明るくさせた次に、戸惑いながら

「あの…その…お酒とかは?」


「ああ…無理しない程度でなら」

 魔族の女性医師が了承する。


「そうですか…。お酒を飲もうって、その…約束をしている人がいるので」

 ディオスは微笑む。


 それを聞いてゼリティアは

「そうか…なら、色々な祝賀会も参加できるな」


「ええ…」と魔族の女性医師が頷くが「ですが…無理はなさらないように…」


「はい…」とディオスは肯き「あの…」


「ん? 何か?」と男性医師が


 ディオスはモジモジとしながら

「そのですね…。あの…妻達との…ねぇ…。触れ合いといいましょうか…。その…営みといいましょうか…」


 男性医師はハッとして、魔族とオーガの女性医師達は、ふふ…と朗らかに笑み。

 そう、ディオスの言いたい事が分かった。妻達との夜の営みについてだ。

「ああ…大丈夫ですよ。まあ、それも無理がない程度に」


「へへ…はい」とディオスは照れ笑いする。


 ディオスの照れ笑う隣で、ゼリティアは口元を扇子で隠す。

 その唇には強く噛み締め堪えているのがあった。


 ディオスが楽しげに妻達の話をする時、嫉妬しかゼリティアには過ぎらなかった。

 別にクレティアやクリシュナが嫌いではない。

 だが…嫉妬しか出来ない自分が嫌いなゼリティアは、背を向けて

「では、ソフィア殿に報告してくる」

 そう告げて部屋を出て行く。

 そうしないと、自分の気持ちが爆発して、惨事になりそうだから…。


 ドアから出て、ゼリティアは「はぁ…」と深い溜息を漏らした後、執務室へ向かった。

 その背をセバスは見つめていた。


 

 ディオスの次の診察は、十日後となり、診察を受けた部屋から出るとセバスがいた。

「あ、セバスさん」


「ご機嫌麗しくディオス様。お体の方は?」


「もう、大丈夫ですよ。あ、そうだ…」


 ディオスは懐から金貨を取り出す。そう、これはセバスと賭をした金貨だ。

「セバスさん。賭はセバスさんの勝ちですから。お返しします」


「ありがとうございます」

 セバスは受け取り

「では、ディオス様。今度は、ディオス様がもっと素晴らしい御方になって、ゼリティア様を伴侶として向かい入れる事に賭けましょう」

 そう言ってセバスは金貨五枚をディオスの手に握らせる。


「はぁ?」とディオスはキョトンと唖然とする。

 ディオスは右手にある金貨五枚を見つめ

「これ…賭になっていないと思いますが…」


 セバスは微笑み

「賭は楽しむ事でございます。儲かるとか、負けるとかではありません。楽しむ事が出来るのが賭けでございます。わたくしは楽しみにしておりますよ」


 ディオスは首を傾げながら

「そんな事に、絶対にならないと思いますよ。だって、ゼリティアと自分は貴族と平民ですよ。無理ですね」


 大貴族が、ただの平民と結ばれるなんて許される筈もないし、そんな想定皆無なのだ。


 セバスはディオスを見つめ

「貴方様には、それを超えてしまうような、気配がある。そう…人知を超えた何かをお持ちです」


「はぁ…」とディオスは呆れた溜息を漏らす。

 どんだけ、この人も過大評価するんだ?

 バカらしくて頭が痛くなるディオスだった。




 翌日、ソフィアから連絡があって、昼に王宮に来るようにと言われた。それにクレティアやクリシュナも伴って三人でだ。


 ディオスは、玄関に立って迎えを待っていた。

 クソめんどくせぇーーーーーーと思って。


 王宮に来る内容は、ヴァシロウスを倒した英雄、ヴァシロウスの英雄であるディオスの功績を讃えての大祝賀会を催すというのだ。

 

 本当にめんどくせぇーーーーーー

 そう思って顔を顰めるディオスを両脇にいるクレティアとクリシュナは、苦笑いで見る。

 

 そして、昼ちょっと前、迎えの魔導車が来た。

 それにディオスとクリシュナにクレティアの三人は乗って王宮に来ると。

 ドン ドーン

 音のする花火が上がっていた。

 

 それを魔導車の中で聞いてディオスは

「ああ…もう…お祭り騒ぎにしやがって」

 ぼやいていた。


 ディオスの言葉に、クレティアとクリシュナは微笑する。


 ディオス達は、王宮の門の前に下ろされ、正面門から、王宮に入ると


 ワァアアアアアアアアアア

 沢山の人達が花道を作り、歓声と拍手で三人を迎えた。


 わーお、なんだコレ!

 ディオスは内心でツッコんだ。


 花道の奥から、正装したソフィアにナトゥムラ、スーギィ、マフィーリア、そしてダグラスとケットウィンまでいた。


 ディオスは驚き、ソフィア達に駆け付け

「ダグラスさん。ケットウィンさん」


 ダグラスはディオスの肩を叩いて微笑み

「ディオス。本当によくやりました。素晴らしいです。貴方は本当に誉れ高い事をした。いや…ディオスが戦っている姿に感動して涙が溢れてしまいましたよ」


 ケットウィンさんが、ディオスへ微笑み

「ディオスさん。本当に素晴らしかった。貴方と友で、本当に胸が溢れんばかりの嬉しい気持ちで一杯ですよ」


 ディオスは、二人の肩を持ち

「ありがとうございます。ダグラスさん、ケットウィンさん」


 その背をソフィアが押して

「さあ、色々とあるんだから…さっさと行く」


 ディオスは、王宮の中央広場全体が、巨大祝賀会場となったそこの一番高い場所に登壇してマイクを向けられる。


 司会の人が

「では、まずは、ヴァシロウスの英雄、ディオス・グレンテル様に一言」


 ディオスは困惑気味に何百人といる前で言葉にする。

「その…皆さん。その…自分では、大した事をしたという自覚はありません。むしろ、皆さんに助けてもらって、倒せましたから。自分の方がお礼を言いたいです。ありがとうございます。その…祝賀会で不謹慎かもしれませんが…。手を胸に当てて、考えてください。ヴァシロウスによって犠牲になった人達を…」

 会場にいる何百人がディオスの言葉通りに手を胸に当て、犠牲になった人達の顔を過ぎらせる。


 ディオスも同じく手を胸に当て「はぁ…」と息を吐いた次に

「空を見上げてください。きれいな青空ですよね。もう…ヴァシロウスがいない平和な空です。この先の未来を思うと…胸が熱くなります。皆さん、犠牲になった人達の分まで、幸せな未来を作っていきましょうーーーー」


 うぉおおおおおおおおおおお


 歓声が沸き起こる。それにディオスは手を振って応える。


 司会の人が「では、乾杯の音頭を、グレンテル様に行って貰いましょう」


 ディオスに乾杯のグラスが来る。

 ディオスは、それを掲げ

「では、これから来る素晴らしい未来に、かんぱーーーーーい」


 かんぱーーーーーーい


 何百人という来場者が乾杯の呼び声とグラスを掲げた。


 その中にいるソフィアが

「アイツ…上手い事を言うようになった」



 ディオスは高い所から降りると、両脇にクレティアとクリシュナが来て、ディオスと共に、会場のテーブルに並ぶ料理を摘まんでいると

「グレンテル様」「グレンテル様」「ディオス様」

と沢山の人達がディオス達を囲む。


「おおおお!」

 それにディオスが戸惑う。


 人々がディオスを質問攻めにする。

 あの魔法は、どんな魔法なんですか? あのヴァシロウスの攻撃を防いだ防具は一体。ディオス様は、どうしてそんなに魔法が強いのですか?


 それに戸惑いつつ、ディオスは一つ一つ答えていく。


「これこれ」とそこへゼリティアが近付き

「困っておるじゃろう。ディオスの為の祝賀会なんじゃ。労わんか」


 そう言われて、囲む人達がディオス達を上質なソファーに座らせ、色々と料理を持って来たり、飲み物を持って来たりして、ディオス達を楽にさせる。


 その一人が「ディオス様、どうして、ヴァシロウスを倒すと宣言出来たのですか?」


 その質問にディオスは「ああ…」と脳裏に亡き人達との夢を過ぎらせると


「是非、その根拠を聞きたいですな」

 一人の将軍が来た。

 その人は、ヴァシロウスの時にディオスを止めた人だ。

「どうも…オルディル・フォー・ヴォルドルです。レディアン様を主筋とするヴォルドル家に連なる九つある分家の一つの者です」


「ああ…どうも」とディオスはお辞儀する。


 オルディルは、ディオスに

「是非とも聞きたい。どうして、グレンテル殿は、ヴァシロウスに勝てると根拠があったのですか?」


「んん…」とディオスが頭を掻きながら

「そのですね…頼まれたんですよ」

 ディオスは、ヴァシロウスが復活する数日前から見ていた。ヴァシロウスによって犠牲になった者達が、自分に頼み込んでいるという夢を話した。

「最初は、怖かったですが…。後で現れている人達が、ヴァシロウスの犠牲者達だって分かってそれで…」


 周囲は、驚愕とした顔を向ける。


 そう、アーリシアで犠牲になった人々がディオスを頼っていた事実に、驚きの次に、グス…と涙が広がる。


 ええええ!

 ディオスは内心でビビる。


 オルディルも涙して

「そうですか…。そんな…何と…」


 ディオス達の周囲が感涙に包まれる。


 それを呆然とディオスは見つめるしかない。


 なんで、泣くの? 止めてくださいよーーーー

 この事態にどうすればいいかディオスは、分からずオドオドとする。


 クレティアとクリシュナは涙する人達を静かに見つめる。

 涙が溢れる人達を止める必要はない。


「そうか…クソーーー やっぱり、貴方は凄い!」

と、涙する人達中の一人が

「さあ、みんな! アーリシアの全てを背負って戦ってくれたグレンテルさんを労うぞーーー」


 オオオオオオ!

 周りが一気にヒートアップした。


 それにディオスは顔を引き攣らせ「おふぅ」と声にならないうめきを出した。



 祝賀会は、夜八時まで続き、お開きとなった。


 ディオスは、終わった…と安堵して、屋敷に帰ろうとしたが…そう、甘くはなかった。

 その肩をナトゥムラが抱き

「ねぇ…ディオスちゃん…」


 ゲ! この人かよ! と内心で顔を引き攣らせるディオス。


 ナトゥムラはディオスに頬寄せ

「なぁ…行こうぜ…。約束したろう」


「ええ…」とディオスは隣にいるクレティアとクリシュナを見て、助けを求める。


 クレティアとクリシュナはディオスを見つめた次に

「ダーリン。もっと楽しんでくればいいよ」

「そうよ。アナタ」

 クレティアとクリシュナは微笑む。


 はい、救援要請失敗。


 ナトゥムラは妻達からの許可を得て

「よーーーし 飲むぞーーーー 今夜は、眠らさないぞーーーー」


 ディオスは顔を引き攣らせ

「お手柔らかにお願いします」



 夜九時、ナトゥムラはディオスを連れて、行きつけのお店に来る。あの前に行ったお姉さん達がいる場所だ。


 ナトゥムラは店のドアを潜る。

「ようぉ!」

 入口のそばいた女の子に気軽に声を掛ける。


「ああ…ナトゥムラさんいらっしゃい。今日は一人?」


 ナトゥムラは、ドアの向こうで入るのを、拒否して止まっているディオスを引っ張り込み。

「今日は、オレの大親友を連れてきた」

 ディオスの肩を抱いた。

「ど、どうも…」

 ディオスはお辞儀する。


 女の子は、ディオスの顔を見て

「ええ? えええええ! もしかして…」


 ナトゥムラは右手の親指を立て満面の笑みで

「そうよ! ヴァシロウスを倒した英雄、ディオス・グレンテルを連れてきたぞーーー」


 店の中がザワザワとする。


 女の子達が、うそーーー 本当に。


 接客を受けていた客の男性達が、なんだと! 本当にか!

 入口に注目が集まる。

 

 ディオスは内心で、もう…勘弁してくださいよ…と思っていた。


 そして、店に入ってイスやテーブルの配置が換わった。


 ディオスと、ナトゥムラを奥に、巨大な円形の配置にイスやソファーが並ぶ。

 なんと、客人達もディオスの話を聞きたいとして、集まってしまった。


 ディオスは顔を引き攣らせていると…前のテーブルにお酒が来た。

 それは、銀色の酒瓶で氷のケースの中に入っている。

 

 ナトゥムラがそれを見て

「おい、これは…この店で一番の上物じゃあないか…」


 え!とディオスはビビる。


 ナトゥムラが

「いいのか? 一番の大事な客用にあるんだろう!」


 ママがディオスのとなりに座って

「ええ…そうよ。ヴァシロウスを倒してアーリシアを守った、英雄なんですよ。一番のお酒を出さないでどうするの!」


 ディオスの左にいる女の子が

「これ…金貨千枚する。超高級酒なんですよ。楽しんでくださいね」


 ぶーーーーーと、ディオスな内心で鼻を拭いた。

「あの…お代は…出しますので…」


 ディオスは、ビクビクと震えていると、ママが

「バカ言わないで! これは店からの貴方への感謝よ。一杯楽しんでくださいね」


 ディオスは、金貨千枚、一千万円のお酒を口にする。

 全く、味の良さがわかんねぇぇぇぇぇぇ


 ナトゥムラは貰って

「くーーーー 美味えぇぇぇぇぇ」

 喜んで吠えている。

 

 ディオスに注目している客の一人が

「グレンテル殿…一つ聞きたい。貴方は、始めからヴァシロウスを倒すと宣言していたそうだな」


「ええ…まあ」とディオスは頷く。


「なぜ、倒せると豪語出来たのかね?」


「ああ…その…」

 ディオスは祝賀会でも話した。亡き者達の訴えを聞いた夢の話をした次に、周囲がシーンと静かになる。

 まあ…これが普通の反応だよ…とディオスは思っていたが。


 次に、周りが口元を押さえて涙を溢れさせた。客人達も女の子達も涙している。

 

 えええええええ!とディオスは引き気味に戸惑う。


 客の一人が

「そうか…そうだったのですね。グレンテル殿…やっぱり、貴方は…凄い。ヴァシロウスを倒し英雄に成るべくしてなった御方だ…」


 その言葉に女の子も、客人達も涙して頷いていた。


 客のもう一人が

「さあ! グレンテル殿の功績を讃えて、乾杯しようではないかーー」

 店の中は、テンションが上がって熱くなり、大騒ぎだった。


 こうして、一時間半後、ディオスとナトゥムラは店を後にした。

 沢山の女の子達の見送りを背にして。



 そして、ナトゥムラさんのもう一軒の行きつけに行く。

 そこでも、大騒ぎとなり、店からの好意で高い酒を貰った。

 それで、またしても同じ、亡き人々の願いを受けた夢の話をすると、みんな涙して、その後、ヒートアップした。


 真夜中の一時、ディオスはナトゥムラは魔導タクシーに乗せて、ナトゥムラの屋敷へ向かっていた。

 うぃ…うぃ…とナトゥムラは、余程、楽しいお酒だったのか、嬉しげな顔をしてグッタリしている。

 はぁ…とディオスは溜息を漏らした。

 


 魔導タクシーは屋敷に着いて、ディオスは酔っ払って眠るナトゥムラを背負って降りて、屋敷のインターホンを鳴らす。

「はーい」

 その女の人の声にディオスは、すぐピンと来た。ナトゥムラの奥さんアージャさんだ。

「ああ…すいません。今…旦那さんが帰ってきましたので…」


「あ、はーい」

と、奥さんが答えた後、門が自動で開き、ディオスは屋敷の中へ入る。

 ドアを開けると、ディオスがナトゥムラを背負っている姿に、アージャは驚き

「あ…ディオスさん。ごめんなさい。夫が…」


「いいですよ。それと…今回の事は…自分が関係しているので、ナトゥムラさんを怒らないでください」


 アージャは微笑み

「はい」


 ナトゥムラをベッドに寝かせた後、アージャは

「祝賀会、私も参加したんですよ」


「ああ…すいません。お声を掛けられなくて…」

 ディオスは頭を下げる。


「いいんですよ。沢山の人達に囲まれていましたから」

 アージャはディオスに微笑み

「夫は、ヴァシロウスを倒す最後の時に、ディオスさんが大声で自分を呼んでくれた事を…。本当に子供みたいに喜んでいましたよ…」


「いや…マジで本当に、最後の最後にとんでもない事があったんで、つい、頼ってしまいました」


「ふふ…ディオスさん。これからも夫を頼ってあげてください。ディオスさんが困っている時には、夫は喜んで助けてくれますから」


「はは…はい。頼らさせていただきます」

 ディオスは、後頭部に手を当ててお辞儀した。



 二日後…またしても祝賀会だ。今度はオルディナイト一門主催の…。

「ああ…」

 もう…これで終わりにしてくれよ…とディオスは思っていると、迎えの魔導車が来た。


 三台ある魔導車の内、先頭にあった魔導車のドアが開き、そこから、あのレストランで悶着を起こしたフランギルが顔を見せる。


 ディオスはクレティアとクリシュナを伴って、迎えの魔導車に近づき

「すいません。わざわざお迎えまで貰って」

 ディオスが頭を下げると、フランギルが直角に上半身を曲げ、綺麗なお辞儀で

「ディオスさん! あの時は申し訳ありませんでしたーーー」


 えええええ!とディオスは内心でツッコム。


 フランギルはディオスの両手を取って手で包み

「ディオスさんは、オレの父親と弟の仇を取ってくれた大恩人だ。貴方が困っている時には、絶対にオレが助けに行きます。どんな事でも言ってください」

 超好意的で、尊敬の眼差しを向けるフランギルにディオスは引き気味で

「ああ…はい…」

と、答えるしか無かった。



 ディオス達が、フランギルの迎えに連れられて来たオルディナイトの城邸では、門が開いたと同時に、それはそれは、沢山の人達が、拍手でディオス達の魔導車を迎えた。


 それにディオスは、王宮であった祝賀会と重なり

「ああ…デジャヴだ…」

 そう呟き、クレティアとクリシュナと共に魔導車から出ると、バウワッハとゼリティアに別の赤髪の女性が迎える。


 その女性がディオスにお辞儀して

「初めまして、バウワッハお父様の長女で、ゼリティアの叔母のゼルティオナです」


「ああ…どうも…」

 ディオスはゼルティオナの丁寧な挨拶にお辞儀した。


 バウワッハが

「さあ、お主達…こっちに来い」


 ディオス達を誘導する。


 オルディナイトの城邸の庭園は、パーティー会場と化して、各テーブルにはコックが一人付いて、色々な料理を振る舞っている。


 ディオス達が連れてこられた場所は、庭園より少し高い玄関で、そこに、大きなもう上等ですと言わんばかりのソファーが置かれていた。

「ここに座ってくれ」

 バウワッハが座らせる。


 そこは、丁度、パーティー会場となっている全てが見渡せる高座だった。

「はははは」とディオスは引き攣りのような笑みをする。


 ディオス達が座ったソファーの前にバウワッハと、その右にゼリティア、左にゼルティオナが付いて、バウワッハが

「ディオス・グレンテル殿…。我ら、オルディナイトの悲願であるヴァシロウス討伐を見事、成し遂げてくれた事に感謝する。我ら一門全ての感謝と賛辞を全てお主に捧げる。ありがとうディオス」

 バウワッハがお辞儀すると、一斉にパーティー会場にいる全員がディオス達に向かってお辞儀した。


「うぉぉおぉぉ」とディオスはソファーから飛び出し、頭を下げるバウワッハのそばに来て

「もう、いいです。だから、頭を上げてください。本当に、もういいですって」

 もの凄くディオスは焦ってバウワッハとゼリティア、ゼルティオナの頭を上げさせようとした。



 その後、バウワッハやゼリティア、ゼルティオナに数名のオルディナイトの者達を交えて話が始まる。

 やはり、色々な事を質問された。

 ヴァシロウスを倒した魔法とはどんなモノか?とか、どうして、そんな力を持っているとか…と、ディオスは話せる範囲で答えていると…。


 ゼルティオナが

「そう言えば、ディオス様は、初めからヴァシロウスを倒せると豪語していたそうですが…それは、何故ですか?」


 ああ…きたーー どうしよう…とディオスは困っていると、右にいるクレティアが

「ねぇ…話してあげたら、夢の話を…」


 ディオスは眉間を寄せて

「絶対に泣かないでくださいよ」

 そう、念を押して、自分が亡き犠牲者達が、自分に頼み込んできた夢の話をして

「それに、ゼリティアの両親と祖母も、他にも師匠の父親とか、レベッカさんの旦那さんとか、ユーリとチズの両親も出てきたんですよ」


 ゼリティアはハッとして

「だから、お主、あの時に…」

 そう、写真の魔導プレートを見ていた時の事を思い出すゼリティア。


「はは…それで分かったんだけどね」

と、ディオスはハニカム。


 周囲は呆然とした次に、一気に瞳から涙を溢れさせた。


 わーおおーーーー こうなったよーーー ディオスは内心でツッコんだ。


 ディオス達以外の周囲が感涙してしまい。

「ああ…何と何と…」


「そうか、そうだったのか…」

 涙するバウワッハが

「だから、お主は、ヴァシロウスを追い詰めて叩いていた時に、あの言葉を発したのだな」


「あの言葉?」とディオスは、ヴァシロウスをタケミカヅチで殴っていた時に叫んだ言葉を思い出し

「ああ…はい、すいません。乱暴な言葉でしたが…」

 ディオスは苦笑して頭を掻く。


 ゼルティオナが溢れる涙を拭いながら

「そうだったのですか。貴方様は…私達の、アーリシアの総意を背負って…」

と、告げた次に、席から立ち上がって

「さあーーー 皆のモノよ! 今日はディオス様を讃えて労うわよ。我らオルディナイトのおもてなしを見せてあげなさい!」

 そう、周囲に放った。


 一斉にディオス達に、様々な料理や、美酒、飲み物が集中して振る舞われ、ディオスは困惑して顔を青ざめる。

 両脇にいるクレティアとクリシュナは、苦笑しかない。




 その三日後、ディオスは簡単な旅支度をしていた。屋敷の広間でディオスは

「じゃあ、行ってくるよ。レベッカさん。ユーリ、チズ」


『行ってらっしゃいませ』とレベッカとユーリ、チズはディオスにお辞儀する。


 ディオスのすぐ前にいるクレティアとクリシュナが

「いってらっしゃいダーリン」とクレティアは微笑む。

「アナタも豆ねぇ…。ヴァシロウスがどうなったか? なんて気になるなんて」

と、クリシュナは腕を組む。


「ああ…まあね。超古代遺跡の産物だし、それに…約束があるしね。お父様と、フィリティ陛下、ヴァルド兄上、ルヴィリットさんに、ヴァシロウスの牙…かなぁ…その置物をプレゼントするってね」

 

 ディオスは屋敷に来た魔導車に乗って、出発した。

 向かうはヴァシロウスの骸が沈んでいる海、ポルスペル国の港都市リンス、近海だ。

 

 ディオスは、ソフィアから受け取った死亡して魔導石化したヴァシロウスのデータが載る魔導プレートを見ながら

「さあ、どんだけ利用価値があるのかなぁ…」

 その大量にある魔導石の骸の利用方法を考えて向かった。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話もあります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。


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