第461話 metanoia~父~
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マニビスは、ホムラを助ける為に飛び出したが…
それはテミシアの時…ネメシスの姫が本格化する前。
アヌビスと充人は、宇宙船の中で会話する。
充人は、食事をしながら…目の前に立つ遠隔幻影のアヌビスへ
「ふ…ん。つまり、アヌビスは…自分を超越存在に至らしめた極天に会いたいのか…」
アヌビスは肯き
「そうだ。私が何故、超越に至れたのか…それは、私自身も分からない。ある日、突然にその道が開けて、私は至った」
充人が
「血筋的な事と、周囲が望んだのがあるんじゃないのか?」
アヌビスは渋い顔で
「だとしても…だ。どうして私だけが…そうなれたのか? その理由を聞いてみたい」
充人が面倒な顔で
「へぇ…何処かの時空文明の宇宙王になっても、そういう事で悩むんだなぁ…」
アヌビスが充人を見つめ
「そうは思わないのか? 自分がどうして、ここにあるのかと…」
充人がフッと笑み
「別に、自分は自分だ。悩む必要なんてないと思うけど…」
と、告げつつ
「なぁ…嫁さん達や子供達がいるんだろう?」
アヌビスは肯き
「そうだが…」
充人がアヌビスを指差し
「そこまでする必要があるのか? その極天に出会う為に…自分を必要としてくれる居場所や家族を捨ててまで」
アヌビスはハッとして
「それは…」
答えに詰まってしまった。
充人は自分の手を見て
「オレはさ…俺自身が踏みにじられた果てにバケモノになった存在だ。だから…俺自身とオレの中に溶けていった覚悟達に誓って、踏みにじられる者達の傍にあり続けるって、自分の意志でそうしている。アヌビスを見るとさぁ…なんか、何かに流されているように見えるんだよ。大きな目的を理由にして、自分がここにいるべきって決めつけているような気がするんだよね」
アヌビスが真剣な顔で
「この世には、大きな流れがある。それは分かるが…私は…私の意志で、選んでいる」
充人が頭を面倒クサそうに掻いて
「この世にある悲劇は、人間が原因だ。悲劇が生まれる理由は全て人間に帰結する。だからこそ、人間によって解決しないといけない。だから、世界を造っている神格は、力を貸さない。それなのに…何故、こんな悲劇がこの世にあるのですか神様!なんて、言うヤツは、お門違いだ。悲劇を作るのは人間で、その作ってしまった悲劇を何とかするのが人間だ。おれはそういうのを多く見てきた」
と、充人は告げながら食事するテーブルをコツコツと指で叩きながら
「アヌビスが…極天を目指す事で、悲劇になる者達がいる訳だ。それってさあ、本当にアヌビスのやりたい事なのか? アヌビスを愛している者達を振り払ってでも、やる事なのか?」
アヌビスが渋い顔で
「何が言いたい?」
充人が笑み
「アヌビスは愛されているんだよ。多分、そのお前を超越に至らしめたソレに。だからこそ、アヌビスは、それに近付いて、同じように愛を返したいって…。そういう風にオレには聞こえるんだがなぁ…」
アヌビスは頭を振り
「バカらしい、目標と、愛情が同じなんて…」
充人が
「じゃあ、さあ…アヌビスが求める極天が、何時もアヌビス自身の傍にいて、アヌビスを見ていてくれていたが、それをアヌビス、お前が気付いていなかっただけだったらどうする?」
アヌビスはフッと笑み
「そんな事はない。アレは極天は、遙か彼方なのだから…」
充人がふ…んと頷いて
「まあ、じゃあ、もし、もしだ。アヌビスに何かがあって、記憶や己の事を失ってもアヌビスは、極天を目指すんだな」
アヌビスは肯き「当然だ」と答えた。
充人は、食事のカレーを頬張り
「まあ、ここまで言うとしつこいから、終わりにするさ」
そして…ギアドス宇宙崩壊の日、マニビスは襲撃して来たファーストエクソダスの民を直に見たくて外に出た。
どうしてそんな事をしたのか…分からなかった。でも、何かが己に訴えて外に出た。
空から降臨する、ファーストエクソダスの民をマニビスは見上げて、胸が苦しくなった。
降臨するファーストエクソダスの民の流星達に、赤い髪の乙女を見つけて
「ああ…ホムラ…」
と、その乙女の名前を告げてしまった。
マニビスは額を抱えて
「そんな、私は…知らない」
と、困惑している間に、ファーストエクソダスの民が攻撃を開始した。
混戦する現場。
マニビスは、過ぎった事を否定して、外の施設を彷徨うと、崩壊し続ける統治機関本部宇宙戦艦が出現した。
宇宙域で爆炎を放つ統治機関本部宇宙戦艦から、バケモノとなったジャダートが降臨する。
ジャダートは落ちた本部カディンギルで、光線の咆哮を放ち周囲を破壊する。
そして…その咆哮がホムラに迫った。
マニビスは…
「止めろーーーーーー」
と、ホムラを抱えて守った。
そして、現在…。
「おとうさーーーーーん」
と、ホムラは叫び、ホムラを守るマニビス。
攻撃するジャダートはそれを見て、残虐に笑む。
記憶の力も失ったマニビスという骸に落ちたアヌビスが、その身を挺して娘を守っているのだ。
更に光線の力が強くなる。
それでもマニビスは、娘を守り続ける。
ホムラはマニビスに抱き締められて感じる。何時も自分を愛してくれた父の温もりだ。「お父さん…」
と、ホムラは涙する。
それをマニビスは感じて、壊れた仮面から出ている瞳から同じく涙を伝わせる。
ああ…この温もり…忘れていた。私は…。
どうして、こうも愚かだったのだろうか…。
大切な家族を友を仲間を見捨てて…。そうだ…だから、私の望みは叶わないのだ。
愚かな我執に取り憑かれて…本当にバカだった。
力は失っても、せめて娘だけは守ろう…この身が消えようとも…。
すまない。ホムラ、皆よ…。
その肩に誰かが手を置いた。
マニビスは見た。娘を守る為に背を焼かれているが、その目線の先に、会いたかった彼が□□□□□が立っていた。光に包まれ朧気な彼が…微笑み。
”大丈夫だよ”
と、告げた瞬間
『どりゃああああああああああああ』
怒号のような二人の声が響き、マニビスを焼こうする光線を殴り、吹き飛ばした。
その威力は、全長四十メートルのバケモノのジャダートまで伝わり
「うああああああ」
ジャダートを吹き飛ばし、転がす。
マニビス…いや、アヌビスが顔を上げると、左右にディオスと充人が立っていた。
二人が力を合わせてジャダートの光線を殴り飛ばして消したのだ。
アヌビスは、穏やかな顔をしてディオスを見る。ディオスは額にサードアイを開き魔法陣を背負っている姿は、まごう事なき彼の寵愛を受けた者だ。
アヌビスは、やっと分かった。自分と彼は…離れてなどいなかった。彼は何時も自分を見ていて傍にいてくれたのだ。
その証に、ディオスと充人に出会わせてくれたのだから。
アヌビスは、ホムラを離してその場に倒れる。
そこへ
「お父さん! しっかりしてーーーー」
シューヨォとアサフィがホムラの元に来て、ホムラが支えようとする人物が、直ぐに父アヌビスと分かり
「父さん! 父さん!」
そして、同じくここに降臨したファーストエクソダスの民でアヌビスの妻達が、息子達と娘の事態を察して、素早く駆け付ける。
ボロボロの夫を妻達は見て
「アナタ! アナタ!」
と、ホムラと共に夫のアヌビスを抱えると、アヌビスが
「…あ…すまなかった…。私が…」
と、今にも命が尽きようとしている。
充人が
「どういう事だ。それ相応の力があるから、瞬時に再生する筈…」
吹き飛ばされたジャダートが巨体を起こして
「あはははは、その男は、時期に死ぬだろう。残念だったな…」
ディオスがジャダートを睨み
「お前が…アヌビスの…」
ジャダートは巨体の胸部を開き、アヌビスの力を封印している鋼色の六角形の装置を見せ
「これが、アヌビスの力を使ってシステムを構築している装置だ。これが存在する限り、その別れたそっちに力は戻らない。そして、そちらが死ねば、これはエネルギーを供給する強大なジェネレーターになるだけ」
と、ジャダートは巨体の胸部を閉じて
「これでいい。ファーストエクソダスが取り戻すべき王は死に、永劫に…この世界が滅ぶまで戦いは終わらない! あはははははははは! 最高の結果になったぞ!」
と、告げたジャダートは、更にバケモノの巨体を巨大化させる。
40メートルから100メートルに、それは巨大な怪獣だった。
「あはははははは!」
ジャダートは狂気に染まって笑う。
充人が前に出て
「要するに…アイツの内部にある、アヌビスの力を封印している装置を壊せばいいんだな」
ディオスが隣に並び
「手伝うか?」
充人が指を鳴らして
「問題ない。ディオスは…アヌビスが死なないように力を与え続けてやれ」
ディオスが肯き
「任せた」
と充人に一任して、アヌビスに触れて自身の宇宙王、聖帝の力を流し込みアヌビスの延命を行う。
充人が飛翔した次に、充人の背中から二十メートル級の機神が飛び出し、充人をコアの胸部に収納する。
「ナフタリ、行くぞ」
と、充人が搭乗した機神は、黒く蝙蝠のような翼が四つ付いた悪魔のデザインがあるソレだった。
充人の機神ナフタリは、一瞬の間に超音速、亜光速へ達して100メートルのジャダートに衝突した。
「ゴアアアアア」
ジャダートが嗚咽を上げる。
100メートルの巨体が軽々と浮かび上がる程の突進を充人の機神ナフタリが噛ました。
浮かび上がったジャダートの巨体の下に充人の機神ナフタリがいて、両手に超重力の集積を発生させ、マイクロブラックホールを握り
「オオオオオ。ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラララララらららららららっらららららら」
マイクロブラックホールの超拳撃を放ち続ける。
残像が出る程の機神ナフタリの動きに、アヌビスの延命を行っているディオスは見つめて青ざめ
「20メートルの巨大ロボットがやっていい動きじゃあない」
充人の機神ナフタリの拳撃によってあっという間に100メートルの巨体が粉々になり消滅した。
その刹那、ジャダートであろう人型が、シラ目を剥いて何処かへ落ちた。
粉々になった巨体から、アヌビスの力を封印する装置が出現すると、装置から巨大な防護結界が構築される。
それを前にする充人の機神ナフタリは、マイクロブラックホールを握る両手を天と地に向け
「滅殺機神奥義。機神滅黒掌」
マイクロブラックホールのエネルギーを爆発させ、白黒の斑状のエネルギーを機神ナフタリが握って、それを封印する装置に向けて放ち続ける。
連続する斑の機神の正手、左右、上下と装置を叩き、防護結界が粉砕されると、両手を引いて構えて
「どりゃああああああ」
同時正手を装置に放って完全粉砕した。
それを見たディオスがシューヨォとアサフィに
「充人って、君達と出会った時もあんな感じだったの?」
シューヨォとアサフィは肯き
「はい、出会った時から変わっていません。あのメチャクチャ具合は…」
と、シューヨォが答えた。
破壊された装置から膨大な黄金の光が噴出すると、それが大きな渦として天空を舞い、アヌビスの元へ下りていく。
マニビスからアヌビスに開放されて、アヌビスの傷が休息に癒えると、あのファーストエクソダスの民の出で立ちになる。
アヌビスは立ち上がる。
光輪を背負い、黒髪に金髪が混じる髪で、スーツの匠がある観音菩薩のような洋装。
ファーストエクソダスの民達、アヌビスの家族達は父を夫を前に感激していた。
ディオスは、アヌビスを見つめる。
逃亡していたんだから、また逃亡すると思っていた。
だが…アヌビスは跪き、妻や子供達の前で土下座して
「すまなかった! 私が愚かだった! 本当に申し訳ない!」
子達や妻達の前で謝罪した。
そのアヌビスと囲んで、妻達や子達が父を立たせて
「その言葉…もう、私達から」
と、妻の一人が口にするとアヌビスは肯き
「私が愚だった。皆を悲しませて苦しめた。本当にすまん。だから…自らの愚行を償いたい。今一度…ファーストエクソダスの王をやらせてくれ。全身全霊を掛けて、必ず…遂げる。もう二度と…皆が取ってくれた手を離す事はしない」
そこへ、ヴィクターを合わせてファーストエクソダスの長老級も駆け付ける。
何十人という長老級達を前に、アヌビスが
「本当に、申し訳ありませんでした」
と、頭を下げると、長老級達が近づきアヌビスの顔を上げさせ、ヴィクターが
「アヌビス…もう、二度と…こんな愚かな事はしないな」
アヌビスは涙して肯き
「はい。約束します。もう…二度としません」
ヴィクターは友アヌビスの肩を抱き
「さあ、帰ろう…我が家へ」
と、告げてアヌビスは頷いた。
長老級達が手を空に上げて宇宙に向かって御印を放った。
それは…戦闘中止と、ファーストエクソダスの宇宙王の帰還を知らせる通知だった。
その通知によってギアドス宇宙を覆っていたファーストエクソダスの民が戦闘を止めて惑星から離れていった。
ディオスと充人は、家族や仲間達に囲まれて謝り涙するアヌビスを見つめて
「終わったなぁ」
と、ディオスが告げると、空からアーヴィング、阿座、信長、ユリシーグ、奈々、洋子の6人のセイントセイバー達が来て、阿座が
「ディオスさん。この宇宙であった戦闘が全て止まりました。ファーストエクソダスから通達があり、王を取り戻したので撤退すると…」
ディオスは胸をなで下ろして
「一応は、最悪は防げたな」
だが、充人が
「いや…まだ、だ。雷御が残っている。アヌビスに協力して貰うぞ」
ディオスは、フン…と鼻息を荒げ
「私と充人、アダムくん、アヌビスの四人の力があれば、雷御を…サタンヴァルデットの彼を止められるだろう」
その頃、戦いを止めたファーストエクソダスを前にする奏と翼にアリス。三人は、背中にディオスが作ったこの世界仕様にした魔導機神、Gギガンティスを装備して戦っていた。
三人が目の前にするのは、アヌビスの娘の一人だ。
飛んでも無く強いアヌビスの娘の力は、Gギガンティスを使う三人がかりでも苦戦、いや、まるで様子を見るように戦っていた節があった。
アヌビスの娘が、父が帰還するという御印を察知して
「私達は、目的を達したわ。戦闘を止めたいのだけど…。続けるなら容赦はしない」
翼が
「我々も戦闘は望んでいない」
アヌビスの娘は肯き
「ありがとう。父が帰還すると同時に、私達もここから去るから。じゃあ、さようなら」
と、娘は父の元へ向かった。
奏とアリスはその場に膝を崩して、アリスが
「全く、バケモノが! 続けるなら容赦はしないって…まだ、余裕があるのかよ!」
翼が
「宇宙王を生み出す強大な文明。下に恐ろしきよ」
奏が
「でも、良かった。これで…」
と、安堵していたそこへ…。
本部カディンギルの最上部、砲口の先端部分の縁に雷御は座って、地上の戦闘を見つめていた。
激しいネフティスの乙女達の戦い、ディオス達の遭遇、ジャダートの出現、そして、充人の戦いと、アヌビスの解放。
全てを見下ろしていた。
その後ろに
「全ては終わったぞ」
とベガは告げる顔は悲しげだ。
かつて家族だった者が行った事に悲しみが過ぎっている。
雷御は地上を見下ろしたまま
「ベガ姉…どうして、ファーストエクソダス達に、アヌビスがここにいると知らせたんだ?」
ベガは苦しそうな顔で
「ディオスを合わせて四人の宇宙王達の力を借りて、この世界を変えて貰おうと…思ったからだ」
雷御が立ち上がり
「成る程、ベガ姉もオレと同じ事を考えていたという事か」
と、告げた瞬間、触手喰手を生やして地上へ落ちた。
「じゅーくん!」
と、ベガは、自身の力、青き巨人兵を展開して、雷御を追跡する。
雷御が落ちながら背から生えた触手喰手を爆発的に伸ばして
「さあ、フィナーレの始まりだーーーーー」
落ちるより早く伸びる触手喰手は、地上へ向う。
始めに戦いが終わって安堵する奏達の元へ来て、奏を掴み引っ張って行く。
『奏ーーーーー』
アリスと翼が叫ぶ。
次に、アヌビスが謝罪している現場にいるディオス達の元へ伸びて、アーヴィングと阿座を触手喰手が掴んで回収する。
あっという間の事に
「何ーーーーーー」
と、ディオスは驚くしかない。
そこへ
「ハハハ…」
融合体の怪獣の躯が破壊された反動で崩壊しつつあるジャダートがディオス達に近付き、ボロボロと壊れる躯を引き摺りながら笑い。
「これで終わりではない。これからが始まりだ」
ディオスが近付き
「どういう事だ!」
ジャダートは、死ぬ寸前にも関わらず楽しげに笑み
「この世界の再創世が始まる。今までの神聖櫃システムを破壊して、新たなシステムが! 充座システムが、この世界を造り直すだろう」
雷御は、触手喰手に回収させた者達を周囲に並べる。
そして、空間転移でとあるモノを呼び寄せる。
「アムザクの遺産、ZADNの破片、そして…オメガデウスから作られしゲンスティンスト」
まず、ゲンスティンストの胸部にある収納へ奏が入り、ZADNの破片の傍にアーヴィングと阿座が置かれて、アムザクの遺産とされる白磁器の円筒形の物体が六つに分裂して、その全てを包み込む位置に浮かぶ。
アーヴィングと阿座が、ZADNの破片の傍にいるだけで、ZADNの破片が活性化して膨大なエネルギーを放つ。
その儀式が、本部カディンギルの中腹で始まる。
ZADNの破片から放たれる膨大なエネルギーは、雷御と、奏を入れたゲンスティンストを包み、その周囲に浮かぶアムザク遺産の分裂体がキューブ如く面を回転させて増殖して、雷御と奏を入れたゲンスティンストを包み込み爆発した。
アーヴィング阿座は、爆発と共に解放され、その場から脱兎する。
阿座のソードソニックの背中にアーヴィングが乗り、二人は無事で
「何が起こっているんだ?」
と、アーヴィングが告げる。
爆発したそこには、白光と輝く飾り鎧のような存在があった。
その飾り鎧の存在の中心にあるクリスタルには、奏と雷御がいて、奏は目を閉じて、雷御は目を開いていた。
それは、雷御が作り出した新たな世界創造システム、充座だった。
それを見たジャダートは
「アハハハハハ。それでいい。それこそ…私の悲願。この世界を破壊して変えてしまえ」
と、告げた瞬間、波に攫われる砂の城のように粉々になって消えた。
雷御と奏をコアに乗せる充座システムは、光速を越える速度で、宇宙に昇り、そして…宇宙空間にシステムの根を広げる。
白磁器に輝く電子回路が超光速でギアドス宇宙を包み込み、それに繋がる充座システムがこの宇宙を再創世し始めた。
宇宙を塗り替えている様を見上げるディオス達に、雷御を追っていたベガは下り来て
「まさか…彼女が、当代の神聖櫃に選ばれし者だったとは…」
ディオスは再創世される空を見上げて
「何て事だ…」
驚愕してするしかない。
そして、充座システムと融合した奏は…
「ここは?」
と、星々の海に浮かんでいた。
奏は、周囲を見渡すと、雷御が直ぐ傍にいた。
警戒する奏だが、雷御は奏に背を向けたまま、この星々の中心にある光の集合体に両手を伸ばして掴むと、その光の集合体から一人の少女が出現する。
穏やかな目をして、優しげな彼女を雷御が
「ユーナ」
と、告げた。
そう、三百年前にギアドス宇宙を支える為に、神聖櫃に組み込まれたユーナの魂だった。
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