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第3話 始まりへ 魔法 自己鍛錬

次話を読んでいただきありがとうございます。

あらすじです。


ソフィアを師匠に魔法を習う勇志郎だが、優志郞の持つ無限魔力が、昔にこの地方を恐怖に貶めた人物を思い出させてソフィアとの誤解が起こるも、優志郞はその誤解を解いて、ソフィアの指導で魔法の勉強を続ける。

始まりへ 自己鍛錬、魔法篇


 屋敷に戻った勇志郎とソフィア、二人の醸し出す空気は重い。勇志郎が魔王とされる人物と同じヘキサゴン・マテリアルである事に恐怖を感じたソフィアが、会話を拒絶していた。

 

 夕食の席、ダグラスが…

「どうしたんですか?」

 重い空気の二人に語りかける。


「いえ…その…」と勇志郎は言葉を濁す。


「ごちそうさまです」

 ソフィアは席を立ちその場を去る。


 ダグラスは勇志郎を見つめ

「勇志郎、ソフィアに何か失礼な事をしたんですか…」


「その…」

 勇志郎は、ダグラスに湖であった事を話す。自分がかつて魔王と呼ばれた人物と同じ六属性持ちで、それを恐怖されたのだと…。

「ふぅ…」とダグラスはため息を漏らし「そうですか…それはそれは…」


「どうすれば、良いですかね…」

 困る勇志郎にダグラスが

「勇志郎、アナタはどうしたいのですか?」


 勇志郎は気難しい顔で

「どうしたいって。まあ…その…怖がるのは止めて欲しいですね」


 ダグラスは席から立ち上がり

「勇志郎…こちらに来てください」

 ダグラスに連れられ勇志郎は、ダグラスの私室に来ると、ダグラスは私室の本棚の一つから一冊を取り出し

「これを…」


 勇志郎は受け取る。

「これは…」

 題名は、勇者アルベルドの戦記という時代物のような本だった。


「まずは、ソフィアが恐怖する理由を知るべきだと思いますよ」

と、ダグラスは頷く。


 

 勇志郎は自室に戻り、ベッドに横になりながらダグラスから渡された本を読む。

 その勇者アルベルドの戦記という本には、あのソフィアが口にした魔王ディオスが度々、出てきた。

 突如、現れた魔王ディオスは、自身の膨大で強力な魔力と魔法を武器に各国家を征服し巨大な帝国を築いた。

 そこで魔王ディオスが行った治世は、種族間完全隔離だった。

 種族毎に地域で隔離して、交流を制圧し完全操作、それに従わない者達は容赦無く虐殺された。

 特に、種族として過酷を強いられたのが、エルフと人間だ。

 エルフ族と人間達は北の極寒の地に隔離され、その治世で苦しみに喘いでいた。

 それを打破したのが勇者アルベルドだった。

 アルベルドは、各種族から選りすぐりの戦士を集め、魔王ディオスと対決、過酷を究めた戦いは、魔王ディオスの討伐によって幕を下ろし、世界は開放された。

 魔王ディオスの治世の反省からこのアーリシア大陸では、種族間の差別が忌諱とされ、様々な種族が入り乱れる地帯になった。

 

 本を読み終えた勇志郎は頭を掻き

「成る程…恐れる理由か…」

 ソフィアはエルフ族だ。エルフ族は長寿であるが故に、今も魔王ディオスの時代を生きたエルフも存在する。その口伝により重々、魔王ディオスの恐怖を教え込まれている。

「これはなぁ…」

 勇志郎は部屋から出てソフィアの所へ向かう。


 ソフィアの自室のドア前に立つ勇志郎は、ノックをしようとした次に、ドアが開いた。

「え?」とドアを開けて固まるソフィアがいる。


「やあ…」

 勇志郎は固いポーカーフェイスの顔の口元に笑みを作る。


「なに?」

と、ソフィアの態度は冷たい。


「ちょっと話しを…」と優志郞が切り出す。


「手短にね。お風呂に入りたいんだから」

とソフィアはベッドを腰掛けにする。


「ああ…」と優志郞は頷きソフィアの部屋に入れた。

 

 ソフィアは勇志郎を部屋に入れる。


 優志郞は、ソフィアが自室へ入れてくれた事は、望みがあると分かった。


 ベッドに腰掛けるソフィアに、勇志郎は対面にあるイスに座り、勇志郎は頭を下げる。

「色々とすまなかった」


「何よ。突然、あやまって」

と、ソフィアは戸惑う


 優志郞は真剣な顔で

「ダグラスさんから魔王ディオスに関する本を渡されて読んだ」


「ああ…そう」と頷き黙るソフィア。


 優志郞は頭を掻きながら

「その、なんだ。オレも色々と遠慮なくやって、無粋だった」


 ソフィアは視線を俯かせ

「別にアンタが悪い訳じゃあないって分かっているけど…でも、やっぱり、その…反応しちゃうの」


「そうだな。仕方のない事だ。未だに伝えているエルフの人はいるんだろう」

と、少しだけ固い笑みをする優志郞


「ええ…生きているわ。高齢だけど…ね」

 ソフィアは頷く。


「そうか…」

 勇志郎は自分の顔を撫で

「そんなにオレは表情がないのか?」

 話題を変える。


 ソフィアはジーと勇志郎の顔を見つめ

「ええ…まるで、人形みたい。感情だってそんなに表さないし、不気味って言えば不気味」


「成るべく、怖がらせないように善処する」と優志郞は笑みを作る。


「その…なに…」とソフィアは銀髪を掻きながら「アタシの方こそ、ごめん」


「いいさ、仕方ない事だ。ただ…」

と、優志郞はためらい気味に


「ただ…?」とソフィアは首を傾げる。


 真剣な顔で優志郞が

「怖がるのは止めてくれ。かわいい子に怯えられると、かなりショックだ」


 ソフィアはムッとして

「何よ。アタシはアンタより年上で、アンタの魔法のマスター、師匠なのよ。それをかわいいなんて、失礼しちゃうわ」


「すまん。確かにそうだな」と優志郞は頷く。


 勇志郎は困惑するとソフィアがベッドから立ち勇志郎の前に来ると

「アンタはこの先、どうするつもりなの?」


「この先?」と優志郞は驚きの顔をする。


 ソフィアは、イスに座る優志郞と同じ視線で

「だってかなり強力な魔力を持っているのよ。それなりに使い所はあるわ」


 優志郞は視線を泳がせて

「そうだな…考えた事もない」


 ソフィアは勇志郎の肩をつかみ

「決めた。アタシについて来なさいよ」


「え…ソフィアの腰巾着になるのか?」

 優志郞は少し呆れる。


 ソフィアは自信がある笑みで

「そうよ。アタシ、大きな夢がある。その為にアンタは協力する。どう、最高の使い所でしょう」


 ふ…と勇志郎は呆れ

「まあ、考えて置くさ」


「何よ。アンタ、アタシの弟子でしょう。師匠の言う事には従うもんでしょう」

と、ソフィアは膨れる。


「だから、考えて置くって言っているだろう」

 優志郞は考える。


 ソフィアは得意げに指を立て

「選択権はありません。だってここまで育てたのはアタシなんだから、その責任があるの」


「責任? なんのだ?」と優志郞は首を傾げる。


「アンタを魔王ディオスの再来になんてさせないね」

 ソフィアは真剣な顔をする。


 優志郞は笑み

「そんな気はさらさらない」


「無くても…」とソフィアは膝を曲げ勇志郎を見上げ

「強すぎる力は必ず、恐ろしい何かを引きつけるわ。だってかつての魔王ディオスもそんな気はない人だったと私達の間で言われているから」

 ソフィアは悲しそうで心配げな顔を勇志郎に向ける。

 

 勇志郎はフウ…ため息を漏らす。

 今は、特に…という状態で何か、目標がある訳では無い。

 ソフィアの言っている事も分かる。

 そうだな…断る理由もないし、少々…つき合ってみるか。

「分かった。ソフィアの夢につきあってやる」


「イエェェェイ。じゃあ、アンタはアタシのお付きの魔導士ね。丁度、欲しかったんだ」

 嬉しそうに飛び跳ねるソフィア。


「ソフィアの大きな夢とはなんだ?」

 勇志郎の問いに、ソフィアは悪戯笑みで


「それは後日に教えてあげる。楽しみにしてなさいよ」


「はいはい」と勇志郎は呆れ半分、諦め半分の微妙な気持ちだった。



 翌日、恐怖から普通に戻ったソフィアの監視下の下で勇志郎の魔法訓練が続行される。

「アンタの得意な魔法って何?」


 ソフィアの言葉に勇志郎は頭を傾げ

「得意か…そう、ハッキリと何の系統が良いか思い当たらない」


「贅沢にも六つの属性を持っているんだから、何か得意な魔法一つを決めて置くと、そこから突破口になって色々と習得出来るわよ」


「んん…」と考え込む勇志郎にソフィアは


「じゃあ、色々と試して得意分野を見つけましょう」

と、勇志郎の手を取り屋敷の外に出る。

 

 訓練の場所に選んだのは、大岩が転がる荒野地域で

「じゃあ、色んな技を岩に向けて放ってみようか」

 ソフィアの助言に従い勇志郎は、様々な魔法を放ち、岩を砕く。

 

 光の魔法による光線

 風の魔法による岩の粉砕

 大地の魔法による隆起

 水の魔法による水圧切断

 炎の魔法による熱溶解。


「どう?」とソフィアが勇志郎に具合を尋ねるも、勇志郎はしっくりこないのか


「まあ…なんだな、だ」


 ソフィアは眉間を押さえて

「そう…最後に闇の魔法だけど…これは…ちょっとね」

 

 闇の魔法、物体の質量及び、重力をコントロールする。闇の属性を集中させると、擬似的に質量が増したエネルギーの固まりが形成出来る。その他に、特定の場所の重力を強め押さえ付ける等の効果が発生する。


「あんまり、得意とする人が少ない分野なんだけど…」

 困り顔のソフィア。


 勇志郎は、掌を岩に向け闇の魔法を放つ。その僅かに、腕の周囲の空間が歪んだように見えた。

 掌から放たれた闇の魔法は、漆黒の小渦となって発射され岩を砕いた。

「ほう…」と勇志郎は興味深く考える。


「どうしたの?」

 ソフィアが勇志郎の顔を覗く。


「もしかしたら、面白い事が出来るかもしれん」

 勇志郎は、闇の魔法を練り全身を循環させ、全身から正面に放つと、勇志郎の周囲の空間が歪み、そこへ勇志郎が引っ張られ消えた。


「え、何!」

 ソフィアは消えた勇志郎に驚き周囲を見渡すと、さっきまでいた場所から百メータ先の所に勇志郎が立っている。

「どういう事…」

 呆然とするソフィア、百メータ先にいる勇志郎は再び同じように闇の魔法を循環させ空間を曲げた。再び勇志郎は消えソフィアの側に戻った。


「面白い魔法を見つけた」

 勇志郎はニヤリとソフィアに笑む。


「説明してね」

 ソフィアは腰に手を当て訝しげに見つめる。


 勇志郎は空間を曲げて移動する一種の瞬間移動のような魔法を編み出した。

 ソフィアは勇志郎の説明を聞き、納得しない顔で

「闇魔法にそんな効果があるなんて聞いた事がないわ」


「だが、現実として起こして見せた」


「…信じられないけど…でも、アンタがそれを起こせたって事は、アンタの膨大な魔力に関係しているかもしれないわ。闇魔法ってけっこう魔力を使うから敬遠する術者が多いのよ。それで他の属性の魔法より技が少ないの」


 ソフィアの説明を耳にした勇志郎は使いこなす者が少ない属性に引きつけられ

「成る程…決めた。これで行こう」

 勇志郎は右手の拳を握る。

 空間に作用する魔法、相当な応用力があるぞと、勇志郎の脳内で様々な効果の思惑が巡る。


「空間の魔法ねぇ…まあいいけど」

 ソフィアは嘆息する。


 その後もソフィア監視下で、様々な空間に作用する闇魔法の技を勇志郎は、考案する。

”レド・ゾル”

 闇魔法を発動させる勇志郎、そこへ光の矢が勇志郎に降り注ぐ。矢は勇志郎に当たる前に方向を八方に散らせ勇志郎から外れる。

 レド・ゾル、空間の引力と斥力に作用して様々な力学の攻撃を逸らさせる。力学の方向を変える魔法技は、理論上どんな攻撃も分散、逸らさせる絶対の防御になる。

”エンテマイト”

 空間を震動させ衝撃波に似た波を生じさせて向かって来る物理、魔法の攻撃を呑み込み跳ね返す。


 だが、一番に使えるのは…ベクトと命名した擬似的な瞬間移動だ。

 空間を曲げて遠くの空間を引き寄せて移動する疑似瞬間移動、遠くになれば成る程、到達目標地点から外れる。

 正確に到達出来る距離は百メートルから百五十メートルだが、連続使用すれば高速の長距離移動も容易だ。

 その後、空間を曲げて剣を作るが、見えないのでボツ

 姿を隠す空間の魔法を考案、曲げた空間が分かるのでボツ

 ボツが出てくるので勇志郎は考える。

 使える魔法技だけに意識を集中させ、その精度を磨く方が有益だろうと…。

 勇志郎は精度を磨く訓練に入る。使える疑似瞬間移動のベクト、エンテマイトの衝撃波、レド・ゾルの展開領域の拡大。

 

「ねぇ…」とソフィアは訓練する勇志郎の肩を叩き「そればっかも、バランスが悪くなるから、色々と学びなさいよ」


「得意分野を伸ばす方がいいと」

 勇志郎が告げる。


 ソフィアが勇志郎の顔をアイアンクローして

「アンタが一人でやっている間、アタシは暇なの。アタシの暇つぶしに色々と魔法を教わりなさいな」

 

 そこからは、ソフィアの私書である魔法の技が書かれた技術書を元に、外での訓練を行った。

 技術書に書かれた魔法を二人で試しながらの訓練中ふと、ソフィアが

「へぇ…こういう魔法なんだ…」

 放った魔法を見て驚いていた。


「初めて使ったのか?」

 勇志郎の問いに


 ソフィアは意地を張って胸を張り

「知っていたわよ。アタシを誰だと思っているの! ウィザード級よ!」

 

 勇志郎は右頬を皮肉に上げ、知らなかったのだな…強がりやがって。

 

「何、その顔は!」

 顔を真っ赤にするソフィアは、勇志郎の両頬を抓り上げた。


 そんなある時、勇志郎は技術書に”神格召喚”という見慣れない文字があったのでソフィアに尋ねた。

「ソフィア」


「何?」


「この神格召喚というのはどういう魔法なんだ?」


「ああ…」とソフィアは勇志郎の持っている本を取り

「この神格召喚ってのは魔法っていうよりスキルに近いわね」


「スキル?」


「スキルはね。特殊な血族が使える魔法以外の効果を発揮する特別な力なの」


「ほう…魔法以外の力が存在しているのか…」


「ええ…スキルはかなりの種類があって、その中でも魔法に近いって言われているのが神格召喚で、名前の通り高位の次元から神格を召喚して具現化させる秘技よ」


「はぁ…見てみたいなぁ」


「まあ、滅多に見れるもんじゃあないけどね」


 勇志郎はソフィアから技術書を取りページを捲ると”多数多段魔法”という項目が目に入る。

「なぁ、この多数多段魔法とは?」


 ソフィアはその項目を見つめ

「ああ…これ…これはね。大多数の術者を使って巨大な効果を発揮させる魔法の事よ。主に魔法陣を多数に組み合わせた魔力バカ食いで、使われた事なんてホンの数回しかないわね」


「ほぉ…」と勇志郎は、そのページを読み進める。

 極大殲滅魔法…バルド・フレア。

 熱核魔法…グランスヴァイン。

 台風発生魔法…デオローン。

 等々、物騒な名前の魔法が並び、その術式に使う魔法陣はどれも複雑な幾何学模様をしている。

 そして…その魔法に込める魔力は術者が数万から数千人単位だ。

 魔法陣を構成するにはイメージさえしっかりしていれば、何でも描けるが…それに魔力を走らせ効果を発揮させる量の魔力が足りなければ、ただのイルミネーションだ。

 勇志郎は、複雑な魔法陣に興味を引かれ、その図を憶える事にする。

 


 こうして、ソフィアの暇つぶしの為の教わる魔法訓練の日々が暮れていった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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次話を出すがんばりになります。

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