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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
第五次ヴァシロウス降臨

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第38話 第五次ヴァシロウス降臨 その前日

新章、読んでいただきありがとうございます。

第五次 ヴァシロウス降臨です。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスが屋敷でレベッカを見ると、何かカレンダーを気にしていた。

その理由は、ディオスに分からなかったが…後に驚愕の理由が判明して…

その日は、二月に入った日だ。

 ディオスは、屋敷の通路を歩いていると…レベッカがカレンダーを見つめている。

「んん…」とディオスはそれを見つめる。


 カレンダーを見つめるレベッカの表情は、どこか苦しそうだ。


「レベッカさん…」

 ディオスが声を掛けると。


 レベッカはハッとした次に何時もの厳しい顔立ちに戻り

「なんでしょう旦那様…」


「ああ…何か、カレンダーで気になる事でもあるのか?」


 レベッカは困り顔の後、首を振り

「いいえ。何でもありません」


「ああ…そう…」

 そう言われると何も言えないなぁ…とディオスは口を紡ぐ。



 それから、数日、レベッカだけではない、ユーリもチズもカレンダーを見て苦しそうな顔をしているのを見つける。

 三人の行動が余りも不思議な為にディオスは、カレンダーを見つめる。

 

 魔導祭暦…日によって色んな意味がある謂われ、日数、その他予定。

 全く、不信な部分が分からない。

 聞きたくなる好奇心が疼くも、無理矢理聞いては、心情が許さない。

 何か、切っ掛けを…

「あ!」とディオスはある約束を思い出した。

 屋敷のみんなでバウワッハと食事をした店に行こうという約束…これを利用しよう。日を決めていたのに、色々な事で先延ばしにしていたから、丁度いい。


 


 その翌日の夜、ディオスはドレスコードを身に纏う。

 まあ、シャツとジャケットにパンツのスーツスタイルだが…。


「ダーリン、準備出来た?」

 クレティアがクリシュナを伴って姿を見せる。

 二人はディオスと同じくドレスコードだ。


 クレティアは明るめのドレススタイル、クリシュナはシックな感じのドレススタイル。

 

 ディオスは大変に満足で

「クレティア、クリシュナ…とても綺麗だ」


 クレティアとクリシュナはフフ…と微笑み

「ありがとうダーリン」

「まあね…」

 ちょっと嬉しそうだった。


 ディオスは二人を連れて広間に来ると、同じくドレスコードのユーリとチズがいた。

「あ…旦那様…私達はOKです」

と、ユーリが微笑む。


 可愛らしいユーリとチズをディオスは

「二人とも、綺麗だぞ」

と、褒めると、ユーリは照れ笑いして、チズは驚きに目を開く。


 ユーリはコロコロと表情が変わる喜怒哀楽が多い、チズは落ち着いてあまり感情を顔に出さないが…目が色々な感情を見せるので、面白い。


 そこへ、レベッカが来る「はぁ…」と溜息を漏らして…。

 レベッカはその赤い髪に合わせてのドレスコードである。

「全く、旦那様は…このようなお気遣いは無用と…」


 ディオスはフッと笑み

「いいじゃないか…。食事はみんなでした方が楽しい。だから、付き合ってくれ」


 レベッカはディオスの後ろにいるクレティアとクリシュナを見る。


 クレティアとクリシュナは肯き微笑む。

 そう、自分達も夫と同じ考えだと…。

 レベッカは肩の力を抜いて「分かりました」と了承した。

 


 こうして、ディオスの屋敷の一行は、バウワッハと食事した王都のプライベートレストランへ向かう。


 レストランに到着すると、魔導車を預けて、レストランの受付に来る。

「予約したディオス・グレンテルですが…」

と、ディオスが告げると。


 受付のオーガの女性が予約表を見て

「はい。伺っております。その…短期でのご予約なので、個室ではありませんが…」


「ああ…十分です」


「はい、では…」

 受付の女性が呼び鈴を鳴らして、ウェイターが近付き、受付の女性がウェイターに説明して

「こちらでございます」とウェイターがディオス達を案内する。


 案内された場所は、大きな丸テーブルが並ぶ、夜景が一望出来るホールだった。


 天井に明かりが無く、全てが柱や壁にある間接照明で、丸テーブルには純白のテーブルクロス、テーブル毎にロウソクを形作った魔導石の明かりが並び、綺麗に食器やナプキンが飾られている。

 まさに、ザ・高級店だ。


 ディオスは、再び来て思った。場違いだなぁ…。


 ウェイターが、ディオス達をテーブルに案内して、一人一人をイスに導くウェイターのサービス。

 いいよ、いいよ、勝手に座るから!とディオスは内心でツッコム。


 その戸惑いは、クレティアやクリシュナにも飛び火している。


 ユーリとチズは、呆然と成すがまま、唯一レベッカだけは、落ち着いている。


 流石、五十年も生きている精霊の眷属、動じない。


 テーブルにいる皆は、メニュー表を見る。

 わかんねぇーーとディオスは困る。


 そこへ、クレティアも

「ねぇ。ダーリン。全くどんな料理か分からない。どうしよう」


 ディオスは、クリシュナを見ると、クリシュナも困り顔で

「ごめんなさい。私も分からない」


 三人はレベッカとユーリ、チズを見る。

 ユーリとチズは首を横に振り、分かりません。


 レベッカは

「多少は…分かりますが…。その…」


 みんなしてお手上げ状態に、そばで待っているウェイターが

「どのようなお食事がご所望でしょうか…」


 ディオスは、ウェイターに

「その…色々とみんなで食べ比べしたいので…コースというよりも、一品一品で…」


 ウェイターはお辞儀して

「畏まりました。当店のコース料理のオードブルのような一皿を六つ用意というのは、どうでしょう」


 超気が利くウェイターさんに、ディオスは感激して

「すいません。それで…」


「はい、承りました。少々お待ちを…」


 ウェイターさんは、軽やかに微笑み注文を取ってくれた。


 ディオスは、ウェイターさんの気遣いに感謝していると、となりで食事をして人達がクスクスと笑う。


 それが、ディオス達の耳に入る。

 まあ、恐らく、ここの常連だろう。何も知らない新参者がおかしいのだ。

 こんな店だ。来るのは貴族か、それなりのお金持ち。


 笑いを耳にしたユーリが悲しげに俯く。


 それにディオスが

「ごめんなユーリ。オレの所為で…」

 謝るディオスに、ユーリが激しく首を横に振り

「そんな、旦那様の所為ではありませんよ」


 クレティアが微笑み

「ユーリ、気にしないで楽しく食べよう」


「はい…」とユーリは微笑む。


 ディオスはそれにホッと安心すると…。


「おお…お主…。来ていたのか」

 ん! この声は…ディオスは声のした後ろを向くとゼリティアがいた。


「あ、ゼリティア」とディオスは反射的に言ってしまった。


 ゼリティアの隣にはバウワッハと、屈強な体をした赤髪の人族の男性がいた。

「おお…何じゃ、皆で食べに来たのか?」

と、バウワッハが尋ねる。


「ええ…まあ、バウワッハ様もゼリティアも?」


「ああ…そうじゃ」

と、ゼリティアが笑むが…唐突にバウワッハの隣にいた赤髪の男性が、ディオスの傍に来て激しくディオスの座るイスの脚を蹴った。

「え…」

と、戸惑うディオスに。


 赤髪の男性が向ける顔は怒りだった。

「おい、テメェ…今、何て言った?」


 ディオスは目を踊らせる。困惑しているのだ。


 赤髪の男性は、ディオスに怒りを向け

「おい! 答えろ! オレ等の総代、オルディナイト家当主、ゼリティア様を。名指しで呼ぶなんざ…どういうザけた事だ? アアア!」


 声を荒げた男性。それにバウワッハが

「これ、フランギル…」

 自重を促すも、フランギルと呼ばれた赤髪の男性は、ディオスの襟を掴みその屈強な腕で軽々と持ち上げ

「お前のような身の程知らずは、このオルディナイト家守護統括、フランギル・ゴルド・オルディナイトが、容赦しねぇ…」


 ディオスは、ハッとする。オルディナイト家守護統括、つまりフランギルは、オルディナイトの防衛を司る武闘派一門の頭だ。


 ディオスを襲う強行に、クレティアとクリシュナは席を立ちフランギルと睨む。


 クレティアがディオスの襟を掴み上げる右腕を掴み。

「テメェ…ダーリンに何してんだよ…」


 クレティアとクリシュナは殺気を漲らせる。


「ああ…」とフランギルも負けじと睨み返す。


 フランギルと、クレティアにクリシュナの三人が一触即発の事態に


「ま、ま…」とディオスは止めようとする。


 そこへ、フランギルの頬が扇子で叩かれる。


「え…」と呆然とするフランギル。


 叩いたのはゼリティアだ。

「フランギル…どういう了見じゃ。妾の友人に手を上げるなぞ…」

 その顔は怒りだ。

 ゼリティアはもの凄く怒り、殺気さえ滲んでいる。

 困惑するフランギル。


「手を放さんかーーーーー」

 ゼリティアが周囲を恐々とさせる怒気を放った。


「は、はい…」とフランギルは、ゆっくりディオスを放した。


「はぁはぁ」と襟を擦って首を解しながらディオスは席から立ち上がり、一同の前に出て

「落ち着いてください。悪いのは自分です。その…場を弁えなかった自分が悪いのですから…」


 フランギルは、ディオスを凝視する。

 その後ろにいるバウワッハが

「フランギル…。その男、ディオス・グレンテルと言うゼリティアは友人じゃ。それはワシも認めておる」


「親父…」とフランギルはバウワッハへ向く。

「フランギル。お前の気持ちは分かる。お前のオルディナイトを大事を思う気持ちは嬉しい…。だが、何も事情も聞かずに手を上げるというのは、如何なものかと思うぞ」


「はい、親父…」

 フランギルは素直に頷く。


「それにのぉ…。ディオスは、我がオルディナイトの鉱物部門で高純度魔導石を製造している重要人物じゃぞ」


 フランギルはハッとして、ディオスを横見して

「コイツが…あの、高純度魔導石を…」


 ディオスは、横見するフランギルを見つめる。

 まあ…納得していないよねぇ…。


 バウワッハがフランギルを抜いて前に出て、ディオスの傍に

「すまんのぉ…。コヤツは、オルディナイト家の愛情が深すぎて暴走しがちなんじゃ」


 ディオスは「ああ…」と頭を振って

「いいですよ。自分に悪い所がありましたので…」


 ゼリティアも来て

「すまんの、今日のお主達の食事は、妾が奢ろう」


「気にしなくていい」とディオスは首を振るも


「いいんじゃ」とゼリティアは押した。


 こうして、ゼリティア達も加わっての大きな食事会となった。


 他の客達…周囲は、オルディナイトの理事長と、そのオルディナイト家当主ゼリティアと共に楽しく食事するディオス達に不思議そうな視線を向けていた。


 ディオスは、フランギルの訝しい視線を浴びるも、まあ…気にしないでいようと…した。


 その食事の最中、ディオスがレベッカに

「レベッカさん。最近…何かカレンダーを見ているようだけど…何か、あるのか?」


 レベッカはハッとして黙る。


「んん?」とディオスが首を傾げると、ユーリ、チズ、バウワッハ、ゼリティアも黙る。


 ええ…と困惑するディオスとクレティアにクリシュナ。


 そこにフランギルが「ケッ」と唸り

「このバカが…二月の最後の日は…十七年前に第四次ヴァシロウス降臨があった日だぜ。この無神経野郎が…」


 バウワッハが

「これ、ディオスはユグラシア極東の出身じゃ。知らなくて当然」

と、窘めた。


 ディオスは、脳裏に、レベッカの夫の命を奪い、ユーリとチズを孤児にしたヴァシロウス降臨の事を思い出し

「みんな…ごめん…」


 レベッカが微笑み

「良いんですよ。それより、食事を楽しみましょう」





 翌日、ディオスはゼリティアの城邸に来た。借りていた本を返すのと…話をしに。

「ゼリティア。ありがとうな…これ、面白かった」

 図書館でディオスは、ゼリティアの五冊を返す。


 ゼリティアは受け取り

「お主は、本当に本が好きなのだなぁ…」


 ディオスの読書ペースは速く、一週間で五冊なんてペロリだ。


 ディオスはフッと笑み

「ゼリティアがチョイスしてくれる本は、読みやすくて勉強になるだけださ」


「そうか…」とゼリティアは優しげに微笑む。


「なぁ…ゼリティア…オレに教えてくれないか?」


「何をじゃ?」


「ヴァシロウスの事…」


 ゼリティアの顔が暗く鋭くなる。


 それを見てディオスは、やっぱり…地雷か…聞かない方がいいかなぁ

「ごめん。やっぱりいいよ」


 ゼリティアは頭を横に振り

「いいや…話そう…。このアーリシアがどれだけ、ヴァシロウスの苦しめられているかを…」




 オルディナイト城邸にあるテラスカフェで、ゼリティアはディオスに語る。

「そもそも、ヴァシロウスは…二百年前にアーリシアを支配した魔王ディオスが、極秘裏に建造していた魔導生体兵器じゃ」


「魔導生体兵器…そんな技術が…」


「その技術の出所は分からん。だが…北の北極に近いレギレル国の隣、アイスランドの近海に、その当初は…不明建造物として巨大な百メータクラスのドームがあった。バルストランの王暦でいうと…。共和王国暦834年じゃ…」


 ディオスは、頭に…確か今は…共和王国暦985年、ざら…150年前だ。


 ゼリティアは続ける。

「その施設を調査した一行は、施設に入った瞬間、魔王ディオスの紋章を発見し、そこが、魔王ディオスによって建造された施設と分かり、調査を開始した。調査中、ドームが起動して、その近くの海底が爆発…全長1200メータの巨大な存在が現れた。それがヴァシロウスじゃ」


 ディオスが目を見開き

「ちょっと待て…1200メータ? そんなにバカデカいのか…」


「ああ…」とゼリティアは肯き

「初のヴァシロウスは、レギレル国を襲撃、その後…大陸の方へ移動して国々を蹂躙した。その被害…犠牲者四億人。破壊された建造物一億五千戸。死者…一億五千万人じゃ…」


 ディオスの顔が一気に青ざめ

「今…犠牲者四・億・人。死者…一億五千万人」

 ちょっと待て…日本人口全てに匹敵する人々が喪失…したのか…。


 ゼリティアは深く静かに

「一ヶ月に及び、ヴァシロウスは破壊の限りを尽くし…西大洋に潜り、海底岩盤を突き破り大地へ潜った、次の襲撃までに力を蓄える為に…」


「次の襲撃は?」


「それから五十年後…ヴァシロウスは現れた。だが…我らも黙ってはいない。十二国共同で魔導士が二百万。魔導騎士及び魔導操車の部隊が三百万の、総勢五百万の大規模部隊を待機させ、ヴァシロウスを迎え撃った。これが第二次ヴァシロウス降臨じゃ」


「その結果は?」


 ディオスの問いにゼリティアの赤い瞳が暗い赤を向け

「全滅した。僅か数時間で…」


 ディオスは唾を飲み込んだ。ウソだろう…五百万の部隊が全滅…。


 ゼリティアは淡々と、静かに、だが…悲嘆を込めて

「その後、ヴァシロウスはアーリシアを蹂躙して、犠牲者三億五千万人、死者一億人を出して、第二次ヴァシロウス降臨は終わったのじゃ」


 ディオスは頭を抱える。億単位の犠牲者と死者の数に絶句して言葉がでない。


 そんなディオスにゼリティアが

「その…大丈夫か?」

 気遣ってくれる。


 ディオスは頭を振って

「大丈夫だ。続けてくれ…」


「そうか…ヴァシロウスは再び、西大洋へ潜り、海底深くへ潜み。次なる降臨まで力を蓄え続け…それから四十年後に、再び出現したのじゃ。それが第三次ヴァシロウス降臨…」


「その時は?」とディオスは縋るように聞く。

 あまりの惨事に何処か、救いがないかと思っていた。


 ゼリティアの瞳に光りは一切無い。

「魔導士が三百五十万。魔導騎士及び魔導操車が六百五十万の、一千万の大軍勢で迎え撃ったが…全滅。犠牲者…三億六千万人、死者…一億二千万人じゃ」


 全くの救いがない状況にディオスは、頭を抱えた。

 ウソだろう…毎回、一億もの人間が消えていく…。

 脳裏に、第四次ヴァシロウス降臨が過ぎる。まだ、後…もう一回ある。

「なぁ…確か…十七年前に第四次ヴァシロウス降臨があったんだよなぁ…。その時は?」

 ディオスは見た、ゼリティアの顔が今までに無いくらいに怖く鋭く、絶望に満ちた顔になった。

 そこに一切の輝きがない。あの不遜傲岸な姫が絶望した死刑囚のようだ。


 ゼリティアは口を開く

「十七年前にあった第四次ヴァシロウス降臨…その時の迎え撃った軍勢は、魔導士が一千万。魔導騎士及び魔導操車が一千万。総勢二千万の軍勢で立ち向かった」


 ディオスは唾を飲み込み

「その……結果は?」


「……全滅…した…」


 ゼリティアの言葉に、ディオスはドン引きした。

 二千万の今までにない聞いた事がない規模の軍団が全滅したのだ。

「なぜ、こうも…ヴァシロウスは軍団を全滅させると思うか?」

と、ゼリティアの問いにディオスは、顔を引き攣らせ

「わ、分からない…」

 そうしか言えない。


 ゼリティアは重く鋭く

「ヴァシロウスは成長しているのだ。第二次は1400メートルに、第三次は1600メートル、第四次は…1800メートル。二百メータづつ成長し、その巨大さに比例して強大になっていったのじゃ」


 ディオスは額を抱える。

 だから…魔導生体兵器…成長する兵器か…。不意に

「なぁ…そんなに危険なら、アーリシアのから逃げれば…」


「やってみろ」とゼリティアは嘲笑っているような口調で

「ヴァシロウスは人間だけを探知する力がある。大量に多くの人がいる場所を探り出す。故にそこに人がいないなら…逃げた他国へ向かい蹂躙する」


 ディオスは愕然とした。もし、大量に逃げた人を受け入れれば、そこが狙われる…最悪だ。

「じゃあ、王族とか重要人物だけは…」


 それもゼリティアは嘲笑いを向け

「お前は、現地の状態を肌で感じず、外から指揮するヤツの言葉を信じられるか?」


 ディオスの中で、その答えはノーだ。信じられる訳がない。


 ゼリティアは嘲笑の顔を向け

「いいじゃろう。ヴァシロウスが怖くて逃げる。それを力や権威がある者が行えばどうなる? 裏切り者と罵られ、末代までアーリシアの地を踏む事は許されんぞ」

 ゼリティアは扇子を手の平に叩き合わせてながら

「ヴァシロウス降臨の後…アーリシア以外の周辺他国や遠方他国から多くの支援が来る。まあ、人道的支援じゃが…。裏を返せば、ヴァシロウスをこっちに寄越さなくて、生け贄になってくれて、ありがとうという事じゃ」


 ディオスは愕然とする。アーリシアに住む限り、このヴァシロウスとは切っても切れないのだ。


 ゼリティアが、ギュッと扇子を握り締め

「だが…我らとて、ただ…無残に殺されるのを待ってはおらん。次こそ、ヴァシロウスの最後にしてくれる。オルディナイトの全勢力をもって…」

 それを口にしたゼリティアの瞳は鋭く、強く燃えていた。

 彼女には堅い意思があるのだ。


 その理由をディオスは…

「もしかして、ゼリティアも…ヴァシロウスに…」


「ああ…父と母、祖母を奪われた。我が、オルディナイト一門全てがヴァシロウスによって肉親を失っておる。ヴァシロウス討伐は、我らオルディナイトの悲願じゃ」


 ディオスはそれを見て

「そうか…。オレも微力ながら協力するよゼリティア」


 ゼリティアは、ニヤリを笑み

「妾はお主の力に期待している。高純度魔導石を生成したり…。知っておるぞ、天候を変える程の魔法を使えるとなぁ…。まあ…その時は働いて貰うぞ」

と、何時もの傲岸な姫に戻った。


 ディオスはフフ…と笑み

「まあ、期待には応えるさ」


 ゼリティアはあの自信たっぷりの笑みで

「だが…それも後…二・三十年先じゃ。ヴァシロウスは、大体、四十年か、五十年後に出現する。十七年前じゃからのぉ」


「そうか…」

 ディオスは頷く。

 その位時間があるなら、色々と準備が出来るだろう。



 そう…なる予定だったが…そうはならない時が、このディオスのいる時だった…。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話もあります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。


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