第318話 保護された子
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悠希は、ディオス達と共に、不浄払いの施設に来た。悠希と融合したネオデウスコア、そして…
悠希は、ディオス達と共に、首都の東京にある不浄払いの施設にいた。
一応は、客室の部屋で悠希は、ソファーに座ってディオスの質問に答えている。
ディオスが悠希との間にあるテーブルに置いたメモ用紙を見て頭を抱える。
悠希の話の経緯を紙に書いて整理して
「つまり…アタッシュケースから、君の胸部にある黄金のコアらしきモノが出て
君の胸部に接続。
そのコアから聞こえる声のまま、力を発動させた…と」
悠希は俯き加減で肯き
「はい…」
ディオスは眉間を寄せる。思考を回しているが…悠希から見れば、まるで怒っているかの強面だ。
悠希が…
「あの…わたし、どうなるんでしょうか?」
ディオスは眉間を寄せた不動明王のような顔を向ける。
「ひぃ」と悠希は怯える声を放つ。
ディオスが淡々と
「まずは、保護者に連絡する。そして、検査を受けて貰う。今後の事は、その検査次第だ。どんな技術の産物か…分からない。リスクや危険性を調べないと、君も安心できないだろう」
悠希はハッとして
「あ…はい。そうですね」
真面な返答で悠希は安心した。
そして次に
「あの…私が助けて連れて来た女の子は…」
ディオスが表情を和らげ
「大丈夫だ。保護者に無事に渡したよ」
悠希は、微笑み
「良かった」
悠希がネオデウスを発動する切っ掛けとなった女の子は、保護者と名乗る男性と共に手を繋いで帰っていた。
七歳くらいのその女の子と、保護者の男性は、人が少ない裏路地へ入ると
「いい加減に手を離せ」
と、女の子が鋭く告げる。
「ああ…悪い」
と、保護者の男性が手を離すと、胸部にあるネクタイの飾りを触ると、姿が変貌する。
認識阻害と、変異魔法によって変装していたのは…カズールだった。
そして、女の子の身長が伸びて、金髪が伸び、あの十代の子供には似つかわしくない鋭い顔のキャロルが現れる。
キャロルは、悪魔のような笑みで
「上手く行ったな」
カズールが嘲笑のような笑みで肩を竦め
「突貫工事のような作戦だったのになぁ…」
キャロルは鋭い顔を向け
「綿密な計画だ」
カズールは顔を渋め
「すまん。悪かった」
キャロルは、右手を横に向けると魔導収納が現れ、服装を切り替える魔導マントを取り出し、自分に覆うと、あのエニグマのキャロルの服装になる。
呪術的な文字が並ぶどこかピエロの意匠がありつつ、魔導士のようなドレスを纏い、カズールと共に裏路地の闇に消えつつ
「で…フール(愚か者)の候補はもう…仕上がっているのか」
カズールが懐から魔導端末を取り出しキャロルに渡して
「こんな所かな…」
キャロルは、それをスクロールして、ニヤリと適任のフール(愚か者)を見る。
「こいつにしよう」
それをカズールが見て、同じくニヤリと笑み
「ああ…成る程…確かに」
二人は、利用するべき愚者の元へ行く。
悠希は、検査服で施設の検査を受けていた。
魔導透過装置に全身が掛かり、心拍や脳波、魔力波紋、体液の検査。
メンタルの検査も受けた。
それが全て終わったのは夜中だった。
「はぁ…」と悠希は用意してくれた部屋のベッドに突撃する。
「疲れた…」
部屋のドアがノックされ「入っていいか?」とディオスの声がする。
「はい! どうぞ…」
悠希が呼び、ディオスが入ると両手に握られるお盆には、悠希のプライベートの魔導端末と、その他の備品があった。
ディオスはそれを持っていきつつ
「これの調査が終わった。君に返そう。それと…学校の方には、君が不浄魔物の汚染にあったので、当分の間、入院という事にしてある」
悠希は苦しそうな顔で
「そうですか…」
ディオスはそれに首を傾げ
「どうした…? 何か心配事でもあるのか?」
悠希が悲しげな笑みで
「香里と…親友と一緒の寮で相部屋なんです」
ディオスは肯き
「そうか…じゃあ、連絡するといい。心配しているだろう」
「はい」
と、悠希はお盆から備品を受け取ると、早速、香里に通話する。
「ああ…香里」
『何やってんのよ! 悠希ーーーー』
「ごめん」
怒っている香里の声がした。
ディオスは、それを見てフッと柔らかく笑み、その場から去ると、背中越しに
「ごめん、本当にごめん」
と、必死に謝る悠希の声がした。
部屋に出る寸前
「ああ…保護者の母親は…明日、来るから。事情は自分の方で説明する」
と、ディオスは告げて、悠希が通話したまま頷いた。
ディオスは、悠希が泊まる不浄払いの施設内を出て、暁家の邸宅へ帰ろうとすると、その後ろに、不浄払い一番隊隊長の神野 壱子が来て
「ディオスさん!」
と、呼ぶ。
「ああ…」
と、ディオスは気付く。
壱子が「これから帰りですか?」と顔を覗き込み。
ディオスは肯き
「ええ…暁家へ…」
壱子が
「私の魔導車で一緒に帰りませんか?」
ディオスは頭を傾げ
「構いませんが…」
壱子が少し不安な顔で
「その…今、保護しているあの子についても…ちょっと…」
ディオスは壱子が持つ、スポーツカー、NIS○ANのGT-Rの助手席に乗り、壱子の運転で帰路に向かいつつ話をする。
「あの、葵 悠希という子なんですが…」
壱子が切り出す。
「何か…あるんですか?」
ディオスが尋ねる。
壱子が苦しそうな顔で
「とある事件に…その子の父親が…関わりがありましてね」
「事件?」
「はい。事件名、天神施設事故と言われています」
「なんですか…それは?」
「表向きは、空間中にある魔力の圧縮を行い人造魔導石を製造する施設が暴走して大事故を起こした…となっていますが…」
「ああ…自分のように、魔導石を作る研究をしていたのですね。ん? 表向き?」
ディオスが疑問の顔になると、
壱子は
「本当の所は…膨大な魔力を使って神格がいる神域へアクセスして、強大な神格を招来させエネルギーとして使おうという研究がなされていました」
「え!」とディオスは驚きを向けた。
壱子が
「神格をエネルギー源、動力炉して使う技術は、アインデウス皇帝の一門が独占しています。神格炉という技術です。
まあ…強大なエネルギー炉なので、その存在は秘匿されていましたし…大っぴらに広まる事もありませんでした。
ディオスさんがいたお陰で、一応の知名度は世界中に広まりましたが…」
ディオスは苦い顔をする。
自分も同じく神格炉に興味を持って、作ろうとした事がある。
エルディオンのデータをチョロまかそうとして、エルディオンを管理している魔導人工精霊イヴァンに怒られた事が、散々にあったけど…。
そりゃあ…欲しいよね。どんな法則や性質のエネルギーが無限に取り出し放題だもん。
ディオスが渋い顔をして額を掻きつつ
「つまり、表向きって事と、事故って事は…失敗して…とんでもない事に…」
壱子は渋い目線で、口だけの苦い笑みをして
「はい。開発は極秘に行われていて、それをしていた民間企業、天神社が、小笠原沖にその人工島の施設を浮かべて研究していました。
ディオスさんのセイントセイバーの一人、崎島 信長くんがいますよね」
「ああ…信長が…どうしたの?」
「崎島さんのご両親もその研究に…知らずに加わっていました」
「え? 知らないって…どういう…」
「研究に参加していた。神格召喚のスキルを持つ者達は…。召喚した神格が魔力の流れをコントロールするポイントとして使われるだけと、ウソの説明を受けていました」
ディオスが額を抱えて
「ちょっと待ってください…。その怪しすぎる展開って…」
壱子が厳しい視線で
「何事にも失敗するパターンというモノがあります。話を続けると…その研究人工島、天神施設の管理と指揮をしていた一人に、葵 悠希の父親がいます」
ディオスは顔を引き攣らせる。
マジかーーーーーーーーー
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