第240話 リーレシアでの作業
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ゆっくりと楽しんでいってください。
ディオスはナトゥムラと共にリーレシアの超古代遺跡、発掘戦艦による新宇宙国家建設の作業をしていたが
ディオスは久々に超古代遺跡があるリーレシア王国に来ていた。
その目的とは…リーレシアの超古代遺跡の種類の一つ、超古代遺跡戦艦の発掘と、とある改造の為だ。
発掘され上部が出ている超古代遺跡の戦艦内にディオスは入り、動力炉部分で作業をしていた。無論そこには、ナルド達四人もいる。
動力炉に設置しているのは、とある部品だ。
ラチェットが
「これでいいか? ディオスさん」
ディオスがラチェットの作業現場に来て
「ああ…そこでいいですよ」
ラチェットが設置しているのはとある金属プレート部品だ。
そのプレート部品は、ゼウスインゴット製だ。
ナルドは動力炉、何も無い反物質炉へゼウスインゴットのプレートを付けながら
「でもまあ…こんな事に発掘戦艦が使えるなんて…」
同じ作業をしているリベルが
「エニグマ達が使った惑星級の兵器の残骸と、超古代遺跡の発掘戦艦が同じ素材構築されているんなんて…」
同じ作業をしているハンマーが
「確か…なの何とか…」
ディオスが
「ナノマシンです。まあ、でもノミの四分の一のサイズ程のマシンの群体で構築されているので…。十億分の一のナノサイズとは、ほど遠いですけどね」
ナルドが
「つまり、エニグマと…超古代遺跡とは…その使われている技術に共通点があるって事は…」
言いたい事は分かる。
外宇宙から来た兵器と、超古代遺跡は同じ者達が作ったという事だ。
ディオスは
「その辺りは、まだ…詳しくは…」
ラチェットが
「オレ等、超古代遺跡ハンターをしている連中からすれば、気になっていた問題ですよ。オレ等以外に一万年前の大崩壊を生き残った連中がいる。それは、オレ等のいる世界にいるとは限らない」
ディオス達は作業を終えて外に出ると、傍には研究者や技術者が集まった特設テントがあった。
発掘戦艦での設置作業が終わったディオス達五人は、テントへ向かうと様々な計器を前にする研究者、技術者達とナトゥムラに近付く
「おーーーい」
と、ナトゥムラが手を振り
「作業が終わったぞ」
と、ディオスは手を振って答える。
テントにディオス達も来て、テントの一団達と共に計器を見ていると
「順調ですな」
と、技術者が告げる。
「そうですか…」
とディオスは、ゼウスインゴットを設置した発掘戦艦を見上げる。
発掘戦艦に設置したのは、とある性質を強化したゼウスインゴットだ。
生体ゼウスインゴットである阿座から、抽出した物質や魔力を取り込んで変換する力を付属させた特注ゼウスインゴットは、発掘戦艦のナノ素材を浸食して自分の支配下に置いている。
見た目は変化がない発掘戦艦だが…その素材全てはゼウスインゴットに支配されつつある。
ナトゥムラが
「なぁ…どうして、ゼウスインゴットは…発掘戦艦のその…構築している…群体金属素材を浸食出来るんだ?」
ディオスは考える。噛み砕いて説明するには…。
「つまり…その…この発掘戦艦は全体の全てに人の血管のように動力が伝達されるネットワークが広がっているんですよ。その動力によって形状維持されているし、風石のような浮遊する力も発生出来るので…。その全体に広がる動力ネットワークからゼウスインゴットの浸食を広げて支配下に置いたって事です」
「はぁ…ん」
と、ナトゥムラは何となく理解出来た。
「ガン細胞みたいなモンか…」
と、ナトゥムラはポツリと告げた。
ディオスはオッと思う。的確な指摘だった。
そんな所へ研究者が
「ディオス様、発掘戦艦の全てが手中に入りました」
「ああ…では、出発を…」
「はい」
研究者や学者達は、発掘戦艦の操作を始める。
発掘戦艦は埋まっている地面を揺らして、抜け出るとそのまま空へ昇る。
ディオスの計画は、こうだ。
発掘戦艦を種に、こちらで操作指示を出せるゼウスインゴットの支配下に置いて、全長百キロもある戦艦達の残骸に、種の発掘戦艦をドッキング。ドッキングした百キロの戦艦の残骸を元に、遠隔操作型の魔導製造プラントを作るのだ。
発掘戦艦による支配下に置ける実験は成功…というか前々からゼウスリオンの技術があるので問題はない。
この発掘戦艦に仕込んだ種は後、十個程上げて、十一機もの百キロ級の製造プラントを作り、千キロ級の宇宙戦艦を作る計画だ。
凡そ、十一機もの百キロ製造プラントを作るには、半年かかるだろう。
製造プラントが完成後、二年掛けて千キロの宇宙戦艦を作り、半年を掛けて実働テストをして、三年後に完成して、その後、人を移住させる。
三年後には、アースガイヤ星系から千キロの宇宙国家戦艦が飛んでいく。
良き宇宙航海であることを願いたい。
順調に種の発掘戦艦の事業を終えて、リーレシア王国のエンテイスのテラスカフェでのんびりしなが、ナトゥムラにナルド、ラチェット、リベル、ハンマーとディオスは軽食を取っている。
ナルドが
「順調ですね…」
ディオスが
「ああ…順調だ。もっと問題があるかもって思っていたが…」
ハンマーが
「ディオス殿が、世界の色んな所を繋いだお陰で、世界中の技術が交流して良き相乗効果を発揮している。それ故に、問題も起こらないのだろう」
リベルが
「本当ですよ。沢山の新たな便利な魔法具が出て来て、世の中が上手く回っている」
ラチェットが
「だが…その分、面倒な問題も多くなった」
ナルドが
「止めろラチェット。悪い事を言うな」
ラチェットが
「事実だろう。犯罪は国境を越えて行くし、便利な技術を悪用しようって輩はいる。オレ等だって、大きな犯罪については人手が欲しいって招集されるだろう」
ハンマーが
「国同士の争いがなくなったが、平和になったらそれなりの問題も多くなる。難儀ですな」
ディオスは苦笑いをして
「まあ、仕方ない事です。どんな時だって問題はある。そして、最近エニグマの技術が…」
ラチェットが
「ところで気付いている?」
ナトゥムラが面倒クサそうに頭を掻いて
「これも、広がっているエニグマの技術の産物か…」
ディオス達の周囲に座る者達が一斉に立ち上がり、その瞳から赤い赤外線を伸ばす。
その者達の腕が外れて、そこから銃身が出現する。
そう、ディオス達を囲む全員が、エニグマの技術の流出によって作られた人型ゴーレムだ。
リベルが
「本当に、人工的な魔力波長しかないんですね」
ディオスが
「所詮は量産の機械、ちょっと騙せるくらいで十分なのですよ」
ディオスはのんきに紅茶を口にする。
その周囲は銃身を向けている人型ゴーレムである
「さて…」とディオスはカップを置いて「皆さん、片付けましょうか…」
と、ディオスが言い放った瞬間
”グラビティ・フィールド・バースト”
重力波の乱流が周囲を襲う。
人型ゴーレム達は動きを鈍らせた。
ナトゥムラやナルド、ハンマーが剣を抜き、ラチェット、リベルは魔導弓に、魔導杖を構える。
ナトゥムラ、ナルド、ハンマーの三人が怯んだ人型ゴーレムを切り裂き粉砕する。
ラチェットは魔導弓の魔法で作られた矢を放って壊し、リベルは魔法を使って破壊。
ディオスは
”レイ・ソード”
光線の刃を放って人型ゴーレム達を真っ二つにする。
「こっちだ!」
とナトゥムラが活路を開き、そこからディオス達は外に出る。
突如、飛び出したディオス達に驚く人々、そこへディオスが
「皆さん、ここから逃げてくれーーーー」
それに人々は従って逃げるが、突っ込んで来る者が…そう、化けている人型ゴーレムだ。
人型ゴーレムは腕を銃身に変えて襲い掛かるも、弾丸が出る前にナトゥムラ、ナルド、ハンマーは切り裂き粉砕。
ラチェットは的確に人型ゴーレムの額を打ち抜き、リベルは超震動の魔法を杖に付加させ、人型ゴーレムを叩き壊す。
放出系の魔法を使うと逃げる人に被害が出る為だ。
ディオスは空間超震動の膜エンテマイトと、両手足に
”グラビティ・アビス・エンテマイト”
と超重力のエネルギーを乗せて人型ゴーレムを殴り蹴り破壊する。
ウジャウジャと出てくる人型ゴーレムに、ラチェットが
「なんだよ…数で押すのか?」
リベルが
「幾ら来てもこの程度で、僕達が倒される事は無い」
ディオスは破壊しながら思う。
こんなゴミ、幾ら投入してもオレを殺す事は出来ない…という事は!
ナトゥムラがそれに気付き
「ディオス!」
と駆け付けようとしたが、頭上から大型のゴーレムの一撃が来る。
「く!」とナトゥムラは唸り避け大型ゴーレムを睨むと、その黒光りするゴーレムの上にルクセリアの時に介入した軍服の少女がいた。
「ナトゥムラさん!」
ディオスが向かおうとする背後に、天空戦争でシェルブリットからゴッドブレスの力を抜き取った黒髪の剣士の男が現れ、居合抜きして刀を振るう。
ディオスは、クレティアのスキル、アクセラレーションを使おうとしたが、発動しない。
そう、ディオス達のいる場から少し離れた所に、スキル封じのアイテムが刺さっていた。
黒髪剣士の男の漆黒の刃がディオスの首に迫る。
「ディオスーーーー」
ナトゥムラが叫びながら疾風の如き早さで、ディオスの前に立ち剣を防護に構える。
迫る漆黒の刃、それがナトゥムラの防護するアダマンタイトの剣に接触して止まった瞬間、アダマンタイトの剣が腐るように砕けた。
ヤバい!とディオスは直感する。
その間に、剣を失ったナトゥムラは、黒髪剣士の男の腹に蹴りを放つ。
黒髪剣士はそれを左腕で防護しながら後退する。
ナトゥムラは腐り落ちた剣を捨て、腰にある次なる剣を手にして黒髪剣士に斬り掛かる。
黒髪剣士は、ナトゥムラの首を狙って右から左に、男の漆黒の刃が走らせる。
だが、その間に一人の男が入り漆黒の不気味な刃を止めた。止めたのは人差し指と中指の僅かな抓みだ。
止めたのは黒髪で、柔らかそうな顔立ちの男性で
「やれやれ、カーストギアか…。危ないモノを使う」
刃を止めた男性が、襲ってきた黒髪剣士へデコピンの指を向け、何も無い空を弾く。
そんなの攻撃は無意味な筈が…黒髪剣士は強烈な爆風を喰らったかの如く吹き飛び、黒髪剣士は地面を転がりつつ立ち上がり、ディオス達と助けた男性を睨む口から血が零れる。
空を切ったデコピンが、黒髪剣士の内部にまでダメージを与えていた。
次元違いのデコピン男性は、中指と人差し指で持つカーストギアの刀へ、ふ…と一息掛けると、漆黒の刀が一瞬で蒸発…というより、浄化されたように霧散して消えた。
黒髪剣士が睨んでいると、その背後にアインデウスの妻、白姫のアルディニアが現れ
「おっと、動くと消滅するわよ」
黒髪剣士の周囲を攻撃魔法の魔法陣で囲んで捕らえた。
そして、あの軍服の少女の背後に黒姫のアルディルが来て、大鎌を少女の首筋に置き
「降参すれば命だけは助けるわよ」
そして、ディオス達を守った男性の左に赤姫ザミエルが付く。
ディオスは助けてくれた男性をジーと見つめる。そして、男性の口元を隠し、目頭を見つめると…
「あれ? もしかして…アインデウス様?」
男性は微笑み
「驚いたか? 威厳を醸し出す為に、髭の魔導立体映像を職務の時は付けているんだよ」
そう、声からもアインデウスと分かった。
普段、アインデウスの隣にいるザミエルが
「アナタ…どう…?」
アインデウスは得意げな笑みで
「もちろん、捕まえて話を聞こうじゃないか…」
そう告げた次に、頭上から妨害閃光が降り注がれる。
爆音と閃光、魔導認知力を狂わせる妨害波の相乗効果によって場が荒れる。
だが、ディオスは僅かに見た。
妨害閃光に混じって仮面の男アズナブルがいたのを…。
妨害閃光が消えると、黒髪剣士の男と、軍服の少女に従っていた大型ゴーレムの消えていた。
アインデウスが
「逃げ際が上手いと、戦い難いなぁ…」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。