第200話 阿座のネオゼウス その二
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あらすじです。
戦いが終わり、変貌した阿座の調査が行われ。判明した事実にディオスは頭を抱えた。
ディオス達が、エニグマのシェルブリット達と対峙して広場は、広場を埋め尽くすミサイル達によって爆炎と噴煙に変わり、視界不良になってお互いを見失い終わった。
ドコッとディオスは土山から体を出して、土を払い周囲を見る。
木やベンチといった公園の広場だったそこは、土が引っ繰り返って土砂と穴だけの無残な場所になっていた。
その所々で、土を退けて姿を見せる奈々と綾妃に洋子、阿座。
ディオスと戦っていたアーヴィングとラハトアにカイドは、素早くその場から離れ遠巻きの高い建物から、シェルブリット達が逃げる道を発見し、追跡しようとが…姿が見えなかった。
土を払うディオスの傍に、アーヴィングとラハトアにカイドの三人が来てカイドが
「申し訳ありません。相手を見失いました」
ディオスは首をコキコキと解しながら
「多分、姿を見えなくする何かの方法か、空間転移で逃げたんだろう。次はそれを考慮してやればいい」
「はい」とカイドは頷いた。
ラハトアが
「あの方は…どうしましょう…」
と、阿座を指さす。
阿座は全身が黒い鋼に覆われ、右腕が龍の顎門を持つバケモノになっていた。
ディオスは、渋い顔をして顎を擦り
「一応…自我があるようだし…保護で…」
「了解」とアーヴィングが肯き、阿座に歩み寄る。
奈々は呆然として空を見上げていた。
そう、エニグマの部下をしていた子供が、まさか…亡くなった兄だったなんて…。
思考が止まってしまっているそこへ、阿座が来て
「大丈夫か?」
呼び掛ける。
奈々は阿座を見て
「貴殿も…知り合いだったのか?」
対峙したエニグマの子供が…だ。
その問いに阿座は肯き
「ああ…だが、ここで呆けている場合じゃないだろう」
阿座は冷静だった。
そこへ、洋子と綾妃も来る。二人とも、不安な顔をしている。奈々と同じく困惑しているのだ。
洋子が
「貴方は平気なの?」
戸惑う自分に問うように告げている質問に、阿座は
「確かに困惑している。でも、目的は変わらない。エニグマと戦うだけだ」
感情と理性が切り離せる男らしい阿座に、洋子が
「感情に振られないのが、羨ましいわ…」
阿座は首を横に振り
「いや…そんな事は…」
と、告げた瞬間、阿座の黒い鋼の全身に亀裂が走り、黒い鋼の表面が剥がれ落ちて素っ裸の阿座が出て来た。
「え!」
阿座は青ざめて、奈々は恥ずかしさに目を瞑り、洋子は両手を交差させ顔を隠し、綾妃が
「この変態ヤロウがーーーー」
両手のガトリングを阿座に向けた。
「待ってくれーーー」
と、阿座は股間を左手で押さえて、右手を向けて叫んだ。
そこへアーヴィングが来て、来ていたマントを阿座に掛けて肌を隠した。
「お前達、戯れている場合じゃあないだろうが…」
呆れるアーヴィング。
事態は終わりを告げた。
エニグマの襲来によって、街の一部は破壊、空から襲来した戦艦巨人ダイダロス達は、信長とユリシーグのドッラークレスで殲滅、ディオス達が捕らえようとしたシェルブリット達は行方知れずだ。
阿座は…和豪財閥の研究機関にいた。
京一が所長を務める和豪研究機関で、阿座の調査が行われていた。そこにディオスと一清も同席していた。
検査服の阿座が、魔導検査装置にて調査される様子をモニタールームで見るディオスと京一に一清。
京一が
「ディオスさん。これを…」
と、阿座の検査データが載った魔導端末を見せる。
「オオオオオオ」
ディオスは唸ってしまった。
阿座の全身を形作っている細胞の全てに、胸部から伸びる原子サイズのネットワークが接続されている。
更に、阿座の細胞が変異していた。それはゼウスインゴットと生体細胞が融合した、一種のバイオメタルのような存在に変貌していた。
ディオスが顔を引き攣らせていると、モニタールームにアインデウスの部下のディウゴスが来た。
「失礼…」
と、告げてディオスが持っている阿座のデータが載る魔導端末を手にして、阿座のデータを見ると「はぁ…」と溜息を漏らし
「ディオス様…。何時ぞやに言っていましたよね。ネオゼウスのコアチップが、誰か親和性がある者の中に入ってくれたらなぁ…と。言った通りになりましたな」
ディオスはそれを言われて口を渋く紡いだ。
本当に言った通りになるなって…思いもしなかった…。
ショックを受けるディオス。
ディウゴスが
「これは…どうしましょうか…?」
それは阿座の処遇についてだ。
ディオスは額を掻いて
「まずは…事情を聞いてから…」
阿座は検査が終わり、服を用意してもらって着替え、ディオスと共に研究所の屋上にあるカフェエリアで阿座と会話する。
まず、ディオスから阿座の体がどのような状態か…説明する。
阿座は、自分の体が、ネオゼウスというチップが埋まった所為で、生体とゼウスインゴットが融合した人とは違う全くの別存在になった事を告げられた。
阿座は自分の人としての両手を見て
「信じられない。今までと変わらない感じですよ」
「半分は生体だからな」
ディオスは告げた。
そして、阿座に胸部に関して何か知っている事があるか?と聞いた。
阿座は、一ヶ月程前の曙光国での世界王族会議の戦闘の時に何かの破片が飛んできて負傷、その小さな破片が胸部の肋骨と心臓の間に埋まっていると…。
ディオスは額を抱える。
それだーーーー ネオゼウスのコアチップが飛んで来て彼の中に宿ったんだーーー
ディオスは髪を掻き上げて気分を落ち着け
「本来なら、何も影響しないはずが…君がシンギラリティとしての体質を宿していた為に、君の体に入ったネオゼウスのチップが活動して、君を改造したんだと思う」
阿座は自分の手を見ながら
「シンギラリティの魔力が無限に沸き上がる体質を持っていたなんて…」
「心当たりは?」
ディオスは覗くように見つめる。
阿座は渋い顔で
「小さい頃…超古代遺跡の傍に来た時に光に包まれた事を憶えています。何にも異常がなかったから、夢だと思っていました…」
「成る程…」
ディオスは頷く。
阿座が不安な顔で
「これから…自分はどうなるんですか?」
ディオスは頭を掻いて
「その事は…色々と話し合う事になるだろう。だが、悪いようにはしない」
阿座が視線を左右に動かした後
「あの…自分は…つまり、超魔導兵器ゼウスリオンに匹敵する何かって事ですよね」
ディオスは戸惑い気味
「ああ…まあ、そうだな…」
阿座は覚悟した顔で
「じゃあ、望めるなら…ディオス様と同じようにエニグマと戦うザラシュストラへ…」
ディオスと会話を終えた阿座は、和豪財閥が用意してくれた特別な洋風旅館に泊まる。
そこはとある街中で、裁判等で犯罪証言をする人物を守るセーフハウスの一つだ。
阿座は、洋風旅館の通路を散歩する。
歩きながら、遭遇した事態の整理を始める。
そうしていると、正面から泣き叫く女の子を抱えるナトゥムラが現れた。
「ああ…見つけた」
と、ナトゥムラはホッとして阿座に近寄る。
「ああ…どうも…」
阿座はお辞儀すると、ナトゥムラが抱えている女の子に
「ほら…例のお兄ちゃんだぞ」
そう、ナトゥムラが抱えていたのは、預けた女の子だった。
ナトゥムラから、女の子を渡された阿座は、女の子を抱える。
女の子は、ピッタリと阿座に抱き付いた。
ナトゥムラが
「スゲー泣いてよ。あのお兄ちゃんはどこーーー なんて泣き叫いていてなぁ…。ディオスに聞いて、オレ達がいるここに居るって聞いて、探していたんだよ」
阿座は女の子の背中を擦りながら
「そうか…大丈夫だったぞ」
「うん…」と女の子は告げた次に、安心したのか阿座に抱えられたまま眠ってしまった。
阿座はナトゥムラに
「親に連絡は…」
ナトゥムラは厳しい顔をして
「この子、荒木 七海ちゃんは、両親と父方の祖父母と食事をしに街に来ていたらしい。そこへエニグマが…。先に母親と祖父母が…」
阿座は項垂れた。
父親も死んでいる。目の前で殺されたのを分かっている。
ナトゥムラが
「母親側の生きている祖母は、病気で入院中。親戚も…エニグマに狙われた子供を引き取るのは…」
阿座は、誰も引き取り手がいない七海ちゃんの背中を優しくなで
「この子の先の事が決まるまで…自分が面倒を…」
ナトゥムラは肩を竦め微笑み
「良いんじゃないか…」
「ありがとうございます」
阿座はお礼を告げた。
一時的だが、阿座が五歳の七海ちゃんの保護者となった。
その夜、ディオスはアリストスの世界樹城に繋げてアインデウスと話していた。
「どうしましょうかね…」
と、ディオスは通信画面にいるアインデウスに聞く。
アインデウスは、ディオスからもたらされた阿座のデータを見て
「さて…難問だな」
渋い顔をして顎を擦る。
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