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第197話 阿座の始まり

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


数週間後、退院した阿座は職場の仲間と共に、退院祝いをして貰い…


 世界王族会議の事件から一ヶ月程度、阿座は退院して、補給部隊に復帰して上官に挨拶する。

「黒木 伍長、ただいまより復帰します」


 上官は肩を持ち

「無事で何よりだ。病み上がりだ。ムリはするなよ」


「は! ありがとうございます」


「仲間が、退院祝いをしたいと言っていたぞ。行ってやれよ」


「勿論です!」

 阿座は敬礼して、職場に戻った。


 職場では阿座を心配していた補給部隊の仲間達が、暖かく迎える。


 一番の年長者が

「いや…心配したよ。胸部に重傷を負ったって聞いたから」


 女性兵曹が

「ええ…心配で生きた心地がしませんでしたよ」


 阿座は微妙な顔で

「本当に心配をかけて申し訳ない」


 阿座より少し上の男性兵曹が

「今夜は、黒木の退院祝いだな」


 その夜、職場の仲間と共に町の居酒屋に来て職場の七人とで、阿座の退院祝いをしていた。

 阿座が

「自分が入院中に、色々と変わった事が…」


 仲間の女性兵曹が

「ええ…エニグマの物量を目の当たりにした世界王族会議の面々は、エニグマに対応する為に、色んな条約と技術協定のネットワーク構築を開始したわ」


 中年の男性兵曹が

「なんでも、アーリシアにいる聖帝様の主導で、相当な技術が流通しているらしい。明日には、飛んでもない魔導兵器が完成しているかもよ」


 最年長の男性兵曹が

「こんな事態、見た事がないよ。ワシが思うに…聖帝ディオス・グレンテルの手腕じゃあないかと思っている。ちと、知り合いに聞いた話だと、ディオス・グレンテルは根回しが上手い男らしい。あっという間に既成事実を作って、どうしようも出来なくするらしいぞ」


 男性兵曹が

「おお…コワ…。その内に世界を支配するかもなぁ」


 最年長の男性兵曹が

「どうじゃろう。聞いた話だと、本人にはそのような気が一切ないらしい。だから、権力競争をしたい連中は、困っているそうだ。野心がない行い故に、歯止めが効かんとなぁ…」


 阿座は頷いて効いていると、そこに女性兵曹が

「ねぇ。阿座くん聞いた? 君がいた士官学校の女性士官科出身の鬼娘達の事…」


「ええ…ああ、あの鬼神三姫達がなにか?」

 阿座には憶えがあった、というより遠くから凄まじいくらいに戦闘訓練をしていた彼女達を見た事があった。

 阿座は記憶を引っ張りだして

「ええ…確か、和豪財閥と、火笠重工に、鷹柿工業の、娘達だったかなぁ」


 女性兵曹は肯き

「そうよ。和豪 奈々。火笠 洋子。鷹柿 綾妃。その三人…なんと、聖帝ディオスの直属の部下になったのよ」


「なんだって…」

 驚く阿座に女性兵曹は続ける。

「何でも、直談判した彼女達は聖帝様のテストを受けて受かったらしいわ」


「はぁぁぁ!」

 阿座は驚き、女性兵曹に顔を近づけ

「どんな…テストだったんだ?」


 女性兵曹は楽しげな顔で

「話によると、聖帝様の魔法攻撃を耐えるテストと、聖帝の奥方達、武術の達人達に実力を示すテストの二つらしいわ」


 阿座は困惑した顔をして一杯を口にする。

 もしかしたら、そのテスト受けて自分も合格すれば…。


 仲間の男性兵曹が

「阿座、止めとけ。話によると、相当…ボコボコにされて死にそうになったらしいぞ」


 もう一人の仲間の男性兵曹が

「それにだ。彼女達は、曙光国で大きな影響力を持つ財団や重工、工業の一族だ。それも功を奏しているんだろう。一般人さまであるオレ達には端からムリなんだよ」


 阿座は項垂れる。

 やっぱり、家の力か…。

 自分は、本家の名家とは離れた遠くの分家。偶々、父親に戦闘系のスキルが受け継がれていた程度の一般の家だ。

 士官学校に入っても、結局の所…要職は全て、それなりの家の者が入る。縁故だ。

 阿座は一気飲みして、自分が抱いた淡い期待を打ち消した。


 阿座は仲間と飲み終えて一人、街を歩いてゲームセンターへ行く。

 そこにパンチ力を測定するマシンがあった。

 阿座は銀貨を入れて、マシンにパンチする。

 そのパンチ力は200キロ、2回目に220キロ、3回目に190キロ。

 魔法のアシストなしでチョットした格闘家レベルまで出る。

 阿座は普段から体を鍛えている。

 

 阿座は、十五の時に、エニグマのスキル能力者狩りで妹を失っている。何も出来なかった自分を呪い、体を鍛え格闘スクールにも通っている。何時か、エニグマに一矢報いる事と、自分の妹のような犠牲者を出さない為にも…。

 その為に、スキルを持っていたのでスキル専用の曙光国軍の士官学校に入った。

 だが、現実は無常で願いは叶わず、補給部隊に回された。

 

 大人になれば、世の中の無常、理不尽にぶつかる。

 

 良いポジションは、絶対的に、その組織のトップを取っている者達の縁故で決まる。

 

 じゃあ、それで組織が腐るか…といえば、腐る時もあるが、大体は何とか回ってしまう。

 

 不条理だ、矛盾だ、と喚いても、それが人間だ。

 

 出来るなら、信用出来る相手に、仕事を任せたいが心情だ。

 

 それが嫌なら、軍隊なんて辞めて、自分で商売を立ち上げればいいが…どうしても、そういう縁故とかの繋がりは、何処にでもあるのだ。


 世は不平等が常なのだ。


 それで腐っても仕方ない。そこで出来る事をする。

 それが、生きているという事だし、軍隊にいて何らかの業務に携わっているなら、それは無駄ではない。



 ゲームセンターを出た阿座は、ネオンで見えない星空を見上げ

「それでも…」

 そう、それでも、自分は…望める場所に行きたかった。

 それは叶わない。どんなに前線への転属願いを出しても、胸部にある世界王族会議の戦闘で受けた傷が、それを拒む。


 医者の話では、肋骨の骨の中に何かが埋まって、その一部が心臓の近くまで達しているようだ。

 それを摘出する手術は難しいが、普段の生活には、全く困らない。

 激しく体を酷使する場合、何らかの害悪をもたらす可能性は高いと…。

 補給部隊にいるのだ。戦闘に参加する事はないので、仕事には問題ない。


 だが、この枷によって、自分の願いは…。

 阿座は頭を振り、腐っていてもしかたない! 出来る事をする!

 そう思って、帰り道を進む。


 そんな先、前方の脇道から爆発と噴煙が噴出した。

「え…」と阿座は困惑する。


 周囲が驚きの声を放って止まり、数秒後

 キャアアアアアアア

 悲鳴に包まれ、逃げ惑う人でごった返す。


 噴煙の向こうから、走ってくる人影が見えた。

 それは、幼い娘を父親だった。


 その後ろの噴煙から、アレが出現する。

 エニグマの人型戦車だ。

 人型戦車は、赤いレーザーポインターの目を動かし、娘を抱えて逃げる父親にロックした。


 それに阿座は気付き

”コンパクト”

 スキルの何でも収納している無限ボックスにあるゴミや物体を、人型戦車にぶちまける。


 人型戦車は動きが止まる。


 阿座が、父娘の二人に来て

「こっちだ!」

と、逃げる方向へ誘導する。


 その通路は、人が通れる程度の道幅だった。

 そこへ、阿座と父娘は逃げ込み、人型戦車も駆け付けるも、狭さに阻まれた。


 狭い通路を逃げる阿座と父娘

「アンタ! 大丈夫か!」


 阿座は後ろに着いてくる娘を抱えた父親に呼び掛ける。

「は、はい」


「とにかく、逃げるぞ!」


 阿座は、必死に二人を導くが、三人が走る頭上、建物の上を人型戦車が走り行く先をミサイルで破壊した。

「クソ!」と、阿座は唸るも「こっちだ」と逃げ道を案内して走る。


 阿座はとにかく、親子を導く。

 逃げられるように走るも、人型戦車は建物の天井を行き、その先をミサイルで破壊して塞ぐ。


 そして、阿座はとある出口の前で止まる。

「ど、どうしたんですか?」

と、後ろにいる娘を抱える父が尋ねる。


 阿座は顔を苛立ちに歪め

「この先に行くと、開けた場所に出る」


「あ…」と父親は青ざめる。


 絶望を更に加速させるように、人型戦車が二人の後ろの道を破壊、二人の頭上、建物の上に来て、阿座達がいる狭い通路を赤い機械の目で覗く。


 阿座は「く…」と恨めしそうな顔をする。


 止まった三人の前の出口から声がする。

「おい、出て来たらどうだ?」

 先の出口から、シェルブリットの声がする。


 阿座は物陰から出口の外を覗くと、人型戦車を四台も従えるシェルブリットと両脇に子供サイズの全身装甲の部下三人を連れて阿座達を待ち構えていた。

 

絶体絶命だ。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございます。

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