第196話 ネオゼウスアームズ
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでいってください。
あらすじです。
ディオスは、奈々と綾妃に洋子の処遇を悩む。そんな時、娘アイカのとある一言により…
夜、ディオスは居室のソファーで、アイカを膝の上に乗せて考え事をしていた。
奈々と綾妃に洋子の事をどうしよう…と。
アイカが
「パパ、大丈夫?」
心配して聞いてくれる。
ディオスは、アイカの頭を優しく撫でながら
「大丈夫だよ」
と、微笑む。
子供の相手をしている時だけ、余分が事を考えなくていい。しかも、子供と一緒に居られて、幸せだ。なので、悩んだ時は、こうして、子供の相手をして気を紛らせる。
アイカが
「ねぇ…パパ。あの子達、どうするの?」
「ああ…」
ディオスは唸る。
奈々と綾妃に洋子の事だ。
「どうしようかなぁ…」
アイカが父親ディオスに微笑み
「大丈夫だよ」
ディオスが首を傾げ
「どうして?」
「だって、信長お兄ちゃんや、一刀お兄ちゃんみたいなんだもん」
子供の素直な直感ほど、優れている才能はない。
子供の時は、悪い事は聞かざる見ざる言わざる、だが…大人になれば、悪い事も聞かないといけない、見ないといけない、そうして時には悪い事も言わないといけない。
それが、大人だ。
アイカはまだ、十歳より下だ。
ディオスの、日本での記憶では、十五になれば、大人のように色々と憶えないといけない風習が…あったかなぁ…。いや、あっただろう。
そんな事は後にして、娘アイカの汚れのない純粋な答えに、ディオスはアイカを優しくなで
「ありがとうな」
アイカは嬉しそうに微笑み
「もし、あの子達がいけない事をしたら、アタシ達が、ダメって叱ればいいもん」
ディオスはハッとする。
そうだ、その通りだ。その為に、包括的大規模破壊魔法の運用使用制限条約を作ったんだ。
ディオスはアイカに
「アイカは本当に頭がいいなぁ…ありがとう」
子供にまたしても教えられた。
翌日、ダメージから回復した奈々と洋子の綾妃の三人が、玄関広間のソファーに座っていた。
三人とも、俯いたままだ。
妻達の体術のテストでは、自分達の実力の低さを知った。
三人がいる目の前のソファーには、ディオスが腕を組んで座っていた。
洋子が
「あの…申し訳ありませんでした」
ディオスは渋い顔をして
「何が、申し訳ないんだ?」
洋子は意気消沈で
「せっかくテストまで、用意してくれたのに…結果を出せなくて」
奈々が諦めないという顔で
「ディオス様、今一度、再試験を…」
綾妃も同じ諦めないという顔で
「アタシも…もし、望めるなら…」
ディオスはフーと溜息を吐き
「再試験はない」
それを聞いて洋子、奈々、綾妃は黙る。
ディオスは呆れ気味で
「君たちに根負けした。いいだろう」
洋子と奈々に綾妃は顔を上げて洋子が
「つまり…」
ディオスは額を呆れ気味で掻きながら
「授けてやる。オレの持っている術式をなぁ」
『やっったーーーーーーーーー』
彼女達三人は飛ぶほどに喜ぶ。
「但し」とディオスが付け加える。
「オレの所属している対エニグマ組織、ザラシュストラに所属して貰う。いいね」
奈々は腕を掲げガッツポーズで
「勿論です」
洋子と綾妃は嬉しそうに頷いた。
それから、数日後、ディオスとアーリシアのエルダー級魔導士達、監視の下で疑似シンギラリティになる施術を奈々、綾妃、洋子は受けた。
アーヴィングや、ラハトア、カイドの時のデータを生かしつつ、初の女性タイプの疑似シンギラリティとして彼女達三人は誕生した。
彼女達三人も、シンギラリティになった瞬間、施術の装置を破壊するので、ディオスは
なんで、何時も破壊してなるんだろう?
非効率な疑似シンギラリティ化に頭を悩ませた。
それから、シンギラリティとしてディオスの体内生成魔法の術式と、妻達の戦闘訓練の日課が行われる。
妻達は、彼女達が夫ディオスの力を受けるに値しないと、判断していたが、ディオスがOKを出したので、素直に彼女達を指導している。
ディオスは思った。
反対していたのに、自分が良しとしたら受け入れてくれる妻達の度量に、本当に最高の奥さん達だなぁ…と妻達に対する敬意が深くなる。
それから、更に一週間後、トルキアの特注鍛冶職人のルヴィリットが来た。
「久しいの」
ルヴィリットはディオスに微笑む。
迎えたディオスが
「何時もすいません。色々と無茶な注文を…」
ルヴィリットは微笑み
「気にするな。お前さんは、ワシ等の言い値でワシ等の納得する仕事をくれる。こんないい最上の客はいないさね」
ルヴィリットは長方形の大きめのアタッシュケースを掲げる。
「ほれ、ご注文の品だぞ」
「ありがとうございます」
ディオスは感謝を告げる。
その後、屋敷の庭で妻達の訓練を受けている、一同を呼ぶ。
一同、ディオスに妻達三人、ディオスの仲間の五人の男共と、彼女達三人がいる玄関広間のテーブルにディオスはルヴィリットから受け取った長方形のアタッシュケースを置いた。
奈々が
「これは…なんですか?」
ディオスはロックを外しながら
「これは、君たち…奈々くん、綾妃くん、洋子くん用のネオゼウスを組み込んだ装備だ」
アタッシュケースに入っていたのは、白く輝く鎧のような刀、流線型デザインの銃、獣の匠が施されたトンファーの三つだった。
ディオスは白銀の刀を奈々へ、流線型の銃を綾妃に、獣の匠があるトンファーを洋子に渡した。
三人は各々に渡された武器を握り見つめ、ディオスが
「その武器には、ネオゼウスのコアが埋め込まれている。
君たちのシンギラリティの渦をシンクロして、その効果を発揮するだろう。
奈々くんが持っているネオゼウスの刀はムラクモ。
綾妃くんが持つネオゼウスの銃はライテイ。
洋子くんの持つネオゼウスのトンファーはヤクモだ」
奈々は刀を抜く。そこには鋭く輝く刀身があった。
ディオスは、各々のネオゼウスの武器を見る彼女達に
「さっそくだが…そのテストを行う」
ディオスの屋敷の前で、奈々に綾妃と洋子は、己のネオゼウスの武器を手に、そのネオゼウスアームズと、自分のシンギラリティを繋げた。
三人から膨大な量の魔力が放出、それが各々の手にあるネオゼウスアームズに繋がると、彼女達の全身を疑似創造領域が包み込み変貌する。
魔力を質量として変換、疑似創造領域のネットワークが繋がり、装備者の肉体の強化変異を行い、それに合わせての装備を具現化、装着させる。
それは、さながら、アニメにあったリリ○ルな○は、または…シ○フォ○アだ。
ディオスは
んん…アニメだな
そう思っている間に、奈々と綾妃に洋子の創造装備は終わった。
奈々は、黒と青のスレンダーな装甲鎧に、背中に、八つの剣のマントの翼を装備している。その剣一つ一つの柄には龍の匠が備わっている。
右手には、大きめの同じ龍の匠がある剣を握っている。
奈々は、構えると背中にある八つの剣が飛翔して奈々の周囲を守るように囲む。
九つの自在に操れる剣を持つ奈々。おそらく、スキルの八岐大蛇が影響しているだろう。
綾妃も同じく赤と白のスレンダーな装甲鎧に身を包み、腰の部分からガトリング砲を四門、両腕に機関砲と盾が備わった両手装備をしている。
綾妃は、雷のタケミカヅチの武具神としてのスキルの特性が出ていた。
洋子も二人と同じく青と白のスレンダーな装甲鎧に身を包み、両腕に洋子の腕の四倍近い大きさの突貫ハンマーが備わり、背中にもドリルのような装備のマントのようなモノがある。力重視のスサノオのスキルの影響が出ているようだ。
ディオスは、チャンと機能したネオゼウスを見て
あれだな、ガン○ムの人型サイズだな。いや、テッカ○ンブ○ード風の魔法少女って感じだな。
ちょっと魔法世界とはズレてしまった装備に、侘しさを感じるも、使えるなら良しと納得させた。
ネオゼウスの装備である彼女達を前に、信長とユリシーグにカイドが前に出て
「じゃあ、兄貴。性能テストって事で」
と、信長が呼び掛ける。
「ああ…頼む」
ディオスは肯き、ネオゼウスアームズの彼女達と、アクルカン装備の信長、ユリシーグ、カイド、六人による性能テストが開始された。
一気に六人は空へ飛び、空中で爆発の球体が生じる激しい超常戦闘を行う。
ディオスは、その様子を見て
「いいな、性能としても申し分ない」
納得するディオスの脇をゼリティアがつつき
「のぅ…夫殿。勝手にテストして良かったのか?」
ディオスは真っ青になり、額を抱えて
「しまった…。許可…取ってなかった」
後々の始末書の山を想像するディオスだった。
その後、始末書の山を処理しているディオスの合間に、奈々と綾妃に洋子は、曙光国からザラシュストラに行くように任命され、ディオスのいるバルストランへとんぼ返りした。
その飛空艇の中で、奈々は授けられたネオゼウス、刀型のムラクモを握り閉め
「やっと、スタートに立てたぞ」
と、新たにエニグマと戦う決心をした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。