第195話 彼女達の決断 テスト第二弾
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あらすじです。
奈々、洋子、綾妃の三人は次に、ディオスの妻達、武術の達人によるテストを受けるが…妻達の思惑は…
ディオスの膨大で強力な魔法攻撃のテストに耐えた彼女達は、翌日、メディカルチェックを受け、状態は良好だったので次のテストに屋敷の庭にいた。
ディオスの屋敷は、周囲を護衛用のハーフゴーレムに囲まれ、チョットした要塞となっている。
そのハーフゴーレム達を後ろに奈々、綾妃、洋子の三人は並んでいる。
その目は意気揚々と輝いていた。
何故なら、後もう一つのテストを合格すれば、ディオスが彼女達に様々な術式を伝授してくれるのだ。
その話を聞いてソフィアも、ナトゥムラとスーギイにマフィーリアを連れて来ていた。
最後の試験官、それはディオスの妻達だ。
ディオスが最初にした絨毯飽和魔法攻撃のテストは、暴威の力に晒された時に、どれだけ耐えられるか?というテストだった。
今度の妻達のテストは、体術がどれだけ優れているか?と戦闘技術をテストするものだ。
因みに、妻達は、武術において達人クラスである。
クレティアは、アフーリア大陸で最年少の二十歳で剣聖になった、剣の天才。
クリシュナは、表向きはマハーカーラ財団の守護部門で最強の多方面武術使いとなっているが、その実はレスラム教暗部シャリカランのディオスと結婚したので引退したが元最強の暗殺者。
ゼリティアは、オルディナイト家当主にて、バルストランで最強の槍使い。槍ならば、バルストランの剣の最高峰、剣聖ヴァンスボルトとタメを張れる程に強い。
クレティア、クリシュナ、ゼリティアの三人は、髪をポニテールに縛り邪魔にならないようにして、普段の気軽なドレスではなく、簡易魔導鎧を纏った戦闘特化の洋装である。
ディオスはポニテールの妻達を見て、ちょっと嬉しかった。
金髪のクレティアは、よくポニテールであるが、黒髪のクリシュナと赤髪のゼリティアのポニテールは珍しいし、新鮮だった。
どんな格好でも美しい妻達に、ディオスは
オレの嫁さん達、最高!
喜んでいる隣には、ソフィアにナトゥムラ、スーギィ、マフィーリア。
ちょっと離れた場所で、信長、ラハトア、アーヴィング、カイド、ユリシーグ。
多くの面子が、奈々、洋子、綾妃の戦闘技術テストを見守る。
妻達の手には各々の刃がない魔導プラスチック訓練刀が握られている。
奈々と綾妃に洋子の三人は、奈々が刀、綾妃は両手ナイフ、洋子はトンファーである。
無論、刃がないプラスチックの訓練刀である。
要するに実戦形式だ。
ディオスが、二組の間に立ち
「これより、戦闘技術テストを行う。魔法は、体力のアシスト程度しか使わない事。テストの合格の是非は、妻達が納得する実力を見せる事。以上」
ディオスは、二組から下がる。
遠巻きに見るディオスは、腕を組み
まあ…テストだから、どうせ、クレティアとクリシュナにゼリティアの妻達は、受け身で彼女達三人の実力の様子見だろう。
そんな感じで軽くに考えていた。
ディオスが離れて風が、妻達と彼女達の間に流れた瞬間、クレティアが走った。
それに奈々と綾妃、洋子が対応。
「はぁあああああ」
と、奈々が訓練刀で切り掛かるも、すっとクレティアは避けて、奈々の腹部に膝蹴りをお見舞いする。
「ぐぅ」と奈々は唸り、吹き飛んで背後にあったハーフゴーレムに衝突する。
「奈々!」と叫んだ綾妃の腹に肘鉄を喰らわせるクレティア。
洋子がトンファーで攻めようとした脇腹に、駆け付けたクリシュナが蹴りを放ち、洋子が飛んで転がった。
ディオスは、え?と驚く。
妻達は、相手を見る為に待ち構えるだろうと思った。
それは、テストしたアーヴィングやカイド、ラハトアの時もそうだったからだ。
しかし、今回は違った。
妻達が積極的に攻めている。
奈々は、ハーフゴーレムを伝って腰を地面に付けると、そこにクレティアが来て、奈々の襟首を掴んでぶん投げた。
背中から、奈々は地面に叩き付けられた。
綾妃が「奈々!」が叫ぶそこへゼリティアが模造刀の槍で突撃、綾妃の腹部を突く。
「ああ、う…」と綾妃が蹲るが、ゼリティアは情け容赦なく、綾妃のコメカミと側頭部を槍の先で滅多打ちにする。
洋子は、クリシュナに袖と襟を掴まれ、足を崩され投げられ地面に叩き付けられる。
「がぁ…」と洋子が呻くも、クリシュナは問答無用に洋子を持ち上げ、何度も洋子を投げて地面に叩き付ける。
ディオスは真っ青になる。
明からに妻達は、奈々と洋子に綾妃を潰しに掛かっている。
「ちょ、ちょ…」
と、ディオスはテストではないとして、止めようとするその背の布をソフィアが掴んで止めた。
「止めなさい。アンタがいく必要はないわ」
「え…でも…これはテストじゃあないぞ」
ディオスが怯えながら告げる。
ソフィアは淡々と
「アンタは、甘ちゃんな所があるから仕方ないけど、クリシュナやクレティアにゼリティアから、事情は聞いているわ。アイツ等…アンタの力が欲しいから来たんでしょう。だったらそれなりの覚悟を見せて欲しいものよ。ボロボロになって死にそうになってでも、手に入れてやるなんて気合いを見せてくれないと、誰も認めないわよ」
「ええ…」
と、ディオスはドン引きした。
一方的な妻達の戦いだが、奈々は、クレティアから離れ体勢を直し攻める。
奈々の攻撃、蛇腹突きという、刀の先が不規則に動く特殊な攻撃をクレティアにするも、クレティアは、蛇のようにくねる刃を紙一重で避けて、奈々の懐に入って刀と突撃で奈々を吹き飛ばした。
奈々はそれで痛感した。
今まで訓練で戦ってきた者達より、段違いにクレティアは強い。
おそらく、自分は足下にさえ及ばないと察した。
奈々は転がりながら綾妃の方へ行く。
ゼリティアの槍に滅多打ちにされる綾妃に加勢、綾妃を連れて、投げられ続ける洋子を助ける。
三人は固まる。
その正面に妻達が来て、見つめる。その目は殺気に輝いている。
奈々は、妻達に刀を向けながら
「洋子、綾妃、大丈夫か」
洋子が頭を振り
「今まで訓練した連中より、段違いに強い」
綾妃がハァハァと息を荒げ
「マジ噂通り、聖帝の妻達もバケモンだぜ」
奈々が
「一人一人相手しては勝ち目がない」
洋子が
「じゃあ…」
三人は肯き、息を合わせる。
疾走する先は、ゼリティアだ。
まずは、遠距離をタイプを潰す。
槍のような長物なら、近距離の攻撃を躱すのは困難だ。
あっという間に、ゼリティアと彼女達の間合いは詰まった。
ゼリティアは冷静に対処する。
槍を横に持つと、繋ぎ目を外した。
え?と攻めた彼女達は困惑。
ゼリティアは槍を分解して、二刀流の棒にして、向かって来る彼女達三人に対処した。
竜巻の如き棒術が現れ、彼女達三人を弾き飛ばした。
「ああ!」「クソ!」「く!」
奈々、綾妃、洋子が悶えて後退したそこへ、クレティアとクリシュナが来た。
クレティアとクリシュナは蹴りと正手、殴りで彼女達を離れ離れに飛ばして、孤立させ、三人で分散して攻める。
纏まる事が不可能となった彼女達の後は、妻達の圧倒的な暴力に晒される。
一時間も妻達にボコボコにされ、地面に転がる奈々と綾妃に洋子。
奈々は地面に蹲り、あっちこっちのダメージで立てなかった。
それは同じく仰向けに倒れる綾妃も洋子もだ。
クレティアが
「もう…諦めて国に帰ったら…」
クリシュナが
「私達、貴女達を受からせるつもりないから」
「え…」と奈々は顔を上げて、見下ろす妻達を見る。
ゼリティアが
「汝達は、夫の力だけを欲している。そんな下らない理由の為に、夫殿を使おうとしておる。故に答えは決まっておる」
「ノーよ」
と、クレティアは告げた。
奈々は体を抱えながら
「私達は…そんな…為に…聖帝様の力を…ディオス様の…力を欲しているのではありません…」
クレティアが
「アンタ達の事は調べて分かっているわ。家族をエニグマのスキル能力者狩りで失っている。復讐の為に力が欲しいんでしょう」
洋子が体を俯せにしてゆっくりと立ち上がりながら
「確かに、それもあります。でも…」
綾妃も同じくして立ち上がりながら
「アタシ等は…あの時、誓ったんだ…。アタシ達のような人達を…もう…出してはいけないって」
奈々が妻達をしっかりと見つめ
「復讐…それも、否定しません。ですが、私達の根っこにあるのは、私達ような犠牲者を出してはいけないという覚悟です」
クリシュナが冷たい視線で
「じゃあ、その覚悟、示しなさいよ。私達は、その覚悟をもって過ごしてきた男の子を知っているわ。貴女達もそのぐらいの事を示しなさい」
それを聞いて信長は照れくさそうだった。
奈々、綾妃、洋子はボロボロの体を立ち上げて、再びクレティア、クリシュナ、ゼリティアに向かって行った。
その後、一方的に妻達の攻撃が彼女達三人を襲い。
本当にボロボロでも、奈々と綾妃に洋子の三人は怯まず向かったが…。
彼女達のダメージの蓄積によって、一時間半後には、意識を失って地面に倒れた。
最後の最後までボロボロになって向かって来て、倒れている彼女達を妻達は見つめ
「はぁ…しょうがないわ」
とクレティアは呟く。
ディオスがそこへ来て
「どう…だ?」
クリシュナが
「まあ、後の判断はアナタが決めて」
「ああ…うむ…」
と、ディオスは頷いた。
そして、奈々と綾妃に洋子の三人は再び屋敷に運ばれて治療を受ける事になった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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