第191話 彼女達の決断
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでいってください。
あらすじです。
ディオスは世界王族会議の戦いの事後処理をゼリティアとしていた。
それが一段落ついて、近くの温泉宿でゼリティアと水入らずで過ごしていたら…
ディオスは妻のゼリティアと共に世界王族会議があった伊勢に残っていた。
エニグマが攻めてきた事に関する事後処理をゼリティアとして、更に喪失したネオゼウスのコアも探していた。
ネオゼウスのコアは、金色をしているので目立つし、特別な魔導波動を放っているので、それを辿れば見つかるのは時間の問題だろう…と。
三日後、見つかってディオスの前に運ばれた。
テーブルの上で壊れて中身が飛び出しているネオゼウスのコア。
それにディオスは、目元を押さえる。
そうですよ。確かに、君より、エニグマのシェルブリットを優先したから…
でも…これってないでしょう!
ネオゼウスのコアは、破壊されていた。
もう…泣くしかないディオスへ、隣にいるゼリティアがディオスの頭を抱き抱え
「夫殿…仕方ない事じゃ。だから、なぁ…」
見つけて持って来てくれたディウゴスも渋い顔をして、眼鏡の付け根を押さえ上げた。
「まあ…こうして、見つかった事ですし…」
ディオスはゼリティアの抱えられたまま、凹んでいる。
見つかったって、これ作るに、どんだけの人の手を借りたと思っているんだよ!
アーリシアのエルダー級魔導士さん達や、ロマリアのドリトルさん達に、アリストスの研究者さん達に、もう、それはそれは沢山の人の手を借りたんだぞ!
使われないで壊れたなんて…
どんだけやねぇんんんんんんんんんんんんん!
内心でショックを受けまくるディオス。
せめて使われてから壊れて欲しかったわーーーー
ディウゴスが淡々と
「まあ、構築素材とされているゼウスインゴットは…膨大な魔力がないと…浸食暴走を起こしませんし…。回収出来ない破片も、小さなチリサイズでしょう。人体に入った所で、無限な魔力を放つシンギラリティでなければ無害ですし…」
ディオスがショックを受けすぎてポツリ…
「ああ…何処かの未だに発見されないシンギラリティの中に、コアチップが入って、しかも、そのシンギラリティがスキル持ちの親和性が高い人物だったら…」
その額をゼリティアはパチンと叩いて
「夫殿! そんな物騒な事は言わない! 何時までも愚痴っても始まらん」
ディオスはガクッと項垂れる。
ゼリティアは、情けないディオスに
「夫殿。もう…今回の事での事後処理は、終わった。後は…緩やかに体を休めようぞ。なぁ…妾が、相手をしてやるから。機嫌を直せ」
項垂れたディオスは顔を上げ、ゼリティアをジーと見つめ
「いいのか?」
ゼリティアが
「この近くに良い湯治場がある。そこでなぁ…」
ディオスはゼリティアの腰を抱き寄せ
「今日は…二人で…」
ゼリティアはディオスの唇に人差し指を当て
「分かっておる」
ディオスの凹んだ機嫌が直った。
ディウゴスはポツリ…
「本当に、こういう単純な所があって良かったですよ」
世界王族会議での事後処理を終えて、ディオスはゼリティアと共に伊勢の町の傍ある温泉旅館に来た。
そこの、温泉がある部屋でディオスとゼリティアは蜜月の時間を過ごす。
その数時間前、曙光国の伊勢にある仮設本部にて、婦女スキル特別隊の女性上官が、奈々と洋子に綾妃を前にして説教をしていた。
「和豪 奈々少尉。どうして、勝手な行動をした!」
奈々は両手を後ろにして胸を張り
「エニグマの最重要人物が、ディオス・グレンテル様と交戦していました。その援護の為です!」
女性上官、少佐は鋭い視線で
「和豪少尉、君も知っているだろうが。我々が装備している魔導鎧には、自身が言った音声とその位置を克明に記録するブラックボックスが備わっている。それによると、君は…私怨の為に、奔走したように感じるが…」
「否定はしません」
奈々はキッパリと答える。
潔すぎると、洋子と綾妃は顔を渋める。
女性少佐は頭を抱え
「和豪少尉。我ら曙光国の軍人は何が本分だと思うかね…」
奈々はハッキリと
「国民の生命、財産を守る事が使命です」
女性少佐は腕を組み
「それが分かっているなら…反省の期間を和豪少尉に課する。一ヶ月の謹慎を命令する!
以上だ!」
奈々は後ろに隠す両手を固く握りしめた。
不服の辞令だった。
ロッカールームで奈々は、自分の装備をロッカーへ投げ捨てるように置いた。
隣で同じく着替えている洋子と綾妃が
「ねぇ…奈々…ちょっと頭を冷やした方が…」
「私は、十分、頭がさえている!」
乱暴に言い放つ奈々。
綾妃が頭を掻いて
「アツアツに沸騰しているだろうが…」
洋子が
「ねぇ…私達も休暇を貰ったから…。ちょっとは休みましょう…」
奈々は鋭い視線で洋子を見る。
洋子は溜息を漏らし
「戦った後の休息も、必要な訓練よ」
こうして、彼女達三人は休暇としてディオスがいる温泉旅館に来た。
ディオスは、ゼリティアと一緒に、部屋にある掛け流しの温泉で汗を流して美味しい地場産の料理を食べて、その後…ゼリティアの中へ溺れた。
奈々達は、広めの温泉に漬かり
「いい湯ね…」
洋子は満足して
「ああ! 疲れが抜ける…」
綾妃は腕を伸ばす。
奈々は…静かに湯に疲れと苛立ちを流すも
「はぁ…」
溜息をした。そんな中、思う事は…
やっぱり力が足りない。
無残にも、仇に後ろを取られて人質にされた。情けない…。
自分の弱さを悔やむ。
疲れを温泉で取った三人は、旅館の料理を食べようと施設内レストランへ向かう途中、旅館の従業員の女性達が
「ねぇ…聞いた? あの聖帝がここに泊まっているんですって…」
「本当に?」
「何でも奥様の一人と一緒に一等客室で、過ごしているらしいわよ」
「へぇ…それじゃあ、もしかしたら…それを良い宣伝に…」
「女将さんや、旅館主は、無料にしてもいいから、何か泊まったサインか証を欲しいみたいよ」
「じゃあ、それが噂になってアーリシアから…」
「お客さんが一杯くるかもね…」
スーとそれに奈々が近づき
「その部屋は…何処ですか?」
ディオスは、ゼリティアとの最高の時間を過ごせて気分が良くなり、となりで寝ている裸を布団に隠すゼリティアを抱き締める。
ゼリティアは静かな寝息を立てている。
その唇にディオスは口づけをする。
ゼリティアが眼を覚まし
「ディオスは、甘えん坊じゃのぉ…」
ディオスは起きて
「ちょっと旅館を散策してくる」
ディオスは浴衣を着て、部屋の通路を進む。
ここは、良い旅館だ。ちょっと泊まる日を延長して、クレティアとクリシュナに子供達を呼ぼう。
と、転移コードにて家族を連れてくる事を考えて入口のドアを開けたそこに
「お待ちしておりました!」
奈々が正座して待っていた。
ディオスは…見なかった事にして、ドアを閉めて手を置いて
「ああ…まだ、疲れている。きっとそうなんだ。だから、幻を見たんだな」
と、気持ちを落ち着けてドアを開けた。
正面、廊下に土下座する奈々がいた。
ディオスはドアを開けたまま固まる。
「え?」
奈々は面を上げて
「聖帝様! どうか! 私にも聖帝のご慈悲を!」
ガクッとディオスは項垂れた。
なんで! どうして! こうなってんだーーーーーーーー
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