第189話 世界王族会議の戦闘 後編
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あらすじです。
圧倒的に攻めるディオス。だが…そこに…
エニグマの襲来に混乱する伊勢の町。
その戦場に奈々と洋子に綾妃の三人がいた。
三人は、スキルを使って町を破壊する人型戦車へ抗戦する。
人型戦車は、背面にガトリングとミサイルポットを背負い、戦車の如きレール脚部、腕部は機関砲。
凶悪な仕様の人型戦車だが…この世界は魔法の世界である。
放たれる物理の弾丸とミサイルは魔導障壁にて防がれ、近付いたら破壊。
それ程、手こずる相手ではないが…何せ数が多すぎる。
更に海の向こうから、戦艦巨人が迫る。
焦りが倍増する筈が…。
ディオス達、ラハトアのドッラークレスが戦艦巨人ダイダロスを殲滅、更に融合ドッラークレスによって、人型戦車を投下していた戦艦達も破壊され、状況は一変して有利になった。
奈々は思う。
こんな絶望に近い筈の状況が、こうも簡単に覆された。
聖帝ディオスの力、恐るべし…。
更に、奈々のいる遠くで、何かが戦っているのが見える。
遠見魔法で見ると、奈々は目を見張った。
そこに、シェルブリットを圧倒しているディオスの姿が見えた。
そして、シェルブリットを見た瞬間、奈々の血が沸騰した。
兄、聖司を殺した相手がそこにいたのだ。
奈々は考える間もなく、そこへ疾走する。
「ちょ! 奈々!」
洋子と綾妃がその後を追う。
「任務中よ!」
洋子が先頭を行く奈々に叫ぶ。
「どうしたんだ!」
綾妃が聞く。
奈々は、背中にスキルの八岐大蛇を背負い
「あそこに、いるんだ!」
ディオスとシェルブリットの戦い、圧倒的なディオスの攻めである。
シェルブリットは逃げようとするも、その先を空間転移で現れるディオスが攻撃をシェルブリットに叩き込む。
シェルブリットは逃れられない。ディオスは逃がす気なんて更々ない。
シェルブリットは、魔導車両に突っ込んだ。
車両に埋まった体を起こす、その足下にディオスがドンと着地する。
「さて…」
ゴキンと、神格鎧を纏う両手の指を鳴らして
「このまま、意識を奪って拘束させてもらおうか…」
要約すると、タコ殴りにして捕まえると言っている。
シェルブリットは忌々しそうな顔しかしていない。
ディオスが最後のラッシュを掛けようとしたそこへ
「兄の仇! 覚悟ーーーーー」
奈々は八岐大蛇の力の一つ草薙剣で斬り掛かる。
突然の横槍に「え!」とディオスは戸惑う。
そして、付いて来た洋子と綾妃も、同じく仇のシェルブリットを見て
「覚悟!」と洋子。
「やっと巡り会えたぜ!」と綾妃。
洋子はスサノオの巨人、綾妃はタケミカヅチの稲妻の槍。
シェルブリットに攻撃しようとした。
意味不明な彼女達の横槍に動きが鈍るディオス。
その隙をシェルブリットは逃さない。
グランザバザで、先に来た奈々の草薙剣を破壊、奈々を捕まえて奈々の首にグランザバザの刃を当てる。
「動くなーーーーー」
奈々を人質にしたのだ。
「あ…」
何という失態を…奈々は痛感する。
ディオス、洋子、綾妃の動きが止まる。
奈々が叫ぶ。
「私の事など、どうでもいい! コイツを倒せーーーー」
シェルブリットが
「って言っているが…ムリだよなぁ…聖帝様よぉ…」
洋子と綾妃が「奈々!」と叫び悔しそうな顔をする。
ディオスはハァ…と溜息を漏らし
「そうだな…。お前を倒すより、捕まっている女の子の身の安全の方が大事だ」
シェルブリットは笑み
「お前のそういう頭の良さと切り替えの早さ、嫌いじゃあないぜ」
ディオスが首を傾げ
「で…どうする?」
シェルブリットが奈々を盾に逃げようとした次に、閃光が降り立つ。
その閃光が、シェルブリットのグランザバザを握る右腕を切り落とした。
切り落としたのは、神格タケミカヅチの神格鎧を纏い、一億度のプラズマ魔導刃の両手剣を握るクレティアだった。
更に、奈々を押さえるシェルブリットの左腕を切り落とした者がいた。
炎の神格カグツチの神格鎧を纏うクリシュナだった。
クレティアが
「ダーリン、おまた!」
クリシュナが
「アナタ…何故、こんな状況に?」
両手を失ったシェルブリットは下がるも、その後ろに閃光が降りる。
その閃光から炎槍の刃が伸びて、シェルブリットの背中を捉える。
「夫殿…。まずは…コヤツを押さえればいいのだなぁ」
神格炎帝の神格鎧を纏うゼリティアが、神格の力で出来た炎槍を握り、シェルブリットを押さえた。
「助かったよ」
ディオスは最高の妻達に微笑む。
クレティアが楽しげに
「最高のタイミングだったでしょう」
「ああ…」
と、ディオスは頷いた。
奈々は洋子と綾妃に抱えられ、その場から離れる。
そう、自分達は何も出来なかった。
ディオスと妻達に押さえられたシェルブリット。
「さあ、どうする?」
ディオスの降伏勧告。
だが、シェルブリットの頭上から何かが落ちた。
黒いボールだ。それが、閃光と妨害の轟音を放ち周囲を攪乱する。
場が混乱する。
そんな中に、あのシェルブリットの傍にいた子供の如き全身鎧の三人が来て、シェルブリットを抱えってその場から脱出する。
「逃がすか!」
ディオスの、マハーカーラの神格鎧にはその攪乱が効かなかった。
直ぐに、シェルブリットを運ぶ三人に近付き手を伸ばしたが、その三人が頭部の鎧の顔部分を開けた。
そう、その顔は子供だった。
十歳の子供、雰囲気から男の子一人、女の子二人。
それにディオスは、驚きが鈍った瞬間、三人の全身鎧の子供達は再度、攪乱のボールをディオスに投げつけ、ディオスを眩ました。
その僅かな間に、三人の全身鎧の子供達は、シェルブリットを連れて行き、逃走した。
ディオスはその場に止まり「やっちまった」と…逃した事を悔いる。
そして、次に脳裏には…何故、子供達が?と過ぎる。
その事態から数時間前、シェルブリットがネオゼウスのケースを破壊して、そのコアを出し、ビルからネオゼウスのコアが落ちて、地面に跳ねて転がった。
その近く、世界王族会議のビルは、多くの防護部隊がいた。
その防衛部隊を基点として、エニグマの放った兵器の処理をする攻撃部隊達、その兵站として、補給部隊に阿座がいた。
阿座は、必死に魔導車を走らせ、補給を攻撃部隊に届けていた。
ビルの傍にある部隊に補充の魔導弾や、燃料魔導石、並びに食料を届けにきた阿座。
「第58補給部隊、到着しました!」
阿座は戦っている部隊のテントに声を張る。
「感謝する!」
テントにいる兵士が敬礼する。
急いで阿座は、補給をテントの中に入れる。
戦場で補給をミスすると、その部隊は確実に全滅する。
それ程までに補給とは一大事なのだ。
その傍に、ネオゼウスのコアが転がる。
そんな小さなモノに普通は誰も気付かない。
阿座が、補給を必死に運んでいると、そこへエニグマの人型戦車が降り立つ。
「逃げろーーーーー」
兵士が叫ぶ。
阿座も逃げようとした。
エニグマの人型戦車がキャタピラの脚で大地を踏みしめたそこに、ネオゼウスのコアがあった。
ネオゼウスのコアが破壊され、内部にあるコアチップが飛び出し、弾丸の如く飛ぶ。
それが…阿座の胸部に直撃する。
ゴフ…と阿座は血を吐き倒れ
「誰かーーーー メディーーーーーック」
傍にいた兵士が、阿座を抱えて引っ張っていった。
阿座の胸部深く、心臓の真ん中にネオゼウスのコアチップが埋め込まれた。
そして、阿座には阿座の知らない秘密があった。
それにネオゼウスのコアチップは接続する。
阿座には、シンギラリティがあった。
そう、阿座は血族に伝わるスキルが、幼い頃にシンギラリティ化した所為で、変異したのだ。
阿座は緊急搬送された。
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