第186話 曙光国、伊勢湾の世界王族会議
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あらすじです。
日本とそっくりな曙光国の伊勢で、世界中の王族が集まっての世界王族大会議が、行われる。
その目的は、無論、エニグマに関してだ。
様々な者達が集まり、運命が交差し始める。
曙光国、曙光国独特の宗教、神道の遺産が多い伊勢地方のとある半島の場所で、この世界初の世界中の王族が集結する超大会議が行われる。
その警備に、曙光国の全ての力が注がれていた。
その伊勢の地に、ソフィアと共に来ているディオスは、顎を擦りながら
何か…曙光国って地球の日本と同じ地名が多いよね…。
そう思いつつ、ソフィアにバルストランの仲間と共に、宿泊するホテルに来た。
ディオス達が泊まる部屋というより一角は、巨大な邸宅規模である。
王が泊まる部分は勿論、その部下達も護衛や仕事の為に一緒に泊まれる。
まさにホテルの一階層部分が丸々と使える。
そんな特待階層の各部屋達を繋げるホールの真ん中で、ディオスは荷物から、とある魔法陣が刻まれた水晶を取り出し、設置して、チョイチョイと…結晶に付いている基板を触って操作する。
取り出した結晶は、微妙な光を灯す。
「よし、これで…上空にいるエルディオンと繋がったな…」
ディオス達がここまで来た方法は…超弩級要塞戦艦エルディンのお陰だ。
エルディオンにディオス達、アーリシア十二国王達とその部下達が乗って、世界中にある転移コードによって、この伊勢の上空に転移、エルディオンは上空に待機のまま、曙光国の飛空艇で降り立った。
エルディオンには、アーリシア統合軍が乗り込んでいて、エルディオンのCICにはレディアンとその部下達がいて、もしもの場合に備えている。
ディオスは、エルディオンと繋がる転移装置にて、エルディオンに行く。
遙か一万メータ上空にいるエルディオンに来たディオス。
「終わったぞ。二人とも、行くか…」
「はい!」とラハトア
「了解」とアーヴィング
と、エルディオンの空間転移装置室にいるのは、ラハトアとアーヴィングの二人だった。
アーヴィングは、右手に金属の頑丈なケースを持っている。
アーヴィングがケースを掲げ
「これを届けるお相手は?」
ディオスが首を傾げ
「そろそろ…」
そこへ艦内放送でレディアンが
『ディオス。アインデウス皇帝の同型艦が到着したぞ』
ディオスが
「お、早速だな…」
アインデウスのエルディオンの同型艦エルヴァルは、その変形機構を使って大きな城に変形して、伊勢湾の海に浮かぶ。
その城化したエルヴァルの外部転移広場にディオスとラハトア、アーヴィングがエルディオンから転移して到着する。
そこに、アインデウスの実務を補助するディウゴスがいた。
「ようこそ、ディオス様」
ディウゴスが丁寧に頭を下げる。
ディオスも頭を下げ
「何時も、お出迎えありがとうございます」
ディウゴスはフッと笑み
「当然の事です。それより…」
と、アーヴィングが持っている金属ケースを見る。
ディオスが肯き
「ええ…例の試作機が完成しました」
「では…こちらへ…」
ディウゴスの案内で、ディオス達はアインデウスがいる部屋に来る。
巨城化したエルヴァルの高い場所にある部屋、アインデウスのエルヴァルでの執務室に来たディオス達。
そこには、アインデウスと妻の一人、白姫のアルディニアがいた。
アルディニアがお辞儀して
「ようこそ、聖帝様」
「どうも…」
と、ディオスもお辞儀して答える。
アルディニアは微笑み
「何時も丁寧な挨拶、嬉しいですわ」
ディオスは頭を掻き
「いや…聖帝とみんなに言われて、のぼせ上がって天狗になりたくないので…。礼節だけはしっかりと…」
アインデウスは笑み
「良い心がけだ。だからこそ、聖帝に相応しい」
ディオスが微妙な顔をして
「そんなに乗せたって何も出ないですよ」
アインデウスが
「だが…出るのだろう?」
ディオスは肯き、アーヴィングから金属のケースを受け取り、執務室にあるテーブルに置いて、頑丈な魔導ロックを解除して中身を開けた。
アインデウス、ディウゴス、アルディニアがの中身を覗く。
中身は、周囲に分厚い金属と、その中心にサングラスのようなプラスチックの物体内に浮かぶ三センチくらいの黄金の半球体。
アインデウスが腕を組み、その閉じ込められる黄金の半球体を見て
「これが…エニグマのガイバード・コアの技術、ゼウスインゴット、ゲーティアの鍵の三つが合わさった装置か…」
ディオスが説明する。
「その通りです。更に聖剣ガリアラスと聖槍カシリウスのデータから得たドラクリアスの疑似的創造領域の技術も組み込んでいます」
ディウゴスが
「どのように運用するのですか?」
ディオスが腕を組み悩ましげな顔で
「これを…本来は…ガイバード・コアのように人体に埋め込み、人体融合させるのが一番の効果がある使い方でしょう。ですが…それはあまりにもリスクがデカい。組み込まれているゼウスインゴットの浸食によって人体が蝕まれる危険性が高い。よって…」
ディオスは懐から魔導端末を取り出し、アインデウスに渡す。
アインデウスがその情報を見ながら
「成る程…魔導鎧か、魔導兵器に、この今、包んでいる浸食を防ぐ特殊炭素合金複合素材に閉じ込め、その効果を発揮させるか…」
ディオスは「はい」と肯き
「疑似的創造領域とゲーティアの鍵の力によって周囲の空間を変異させ魔導質量に変換、ガイバード・コアとゼウスインゴットの力によってそれが組織化、システム化して強力な魔導装備になる筈です」
ディウゴスが
「つまり、装備の召喚による物理的変換をしないで、魔導のエネルギーだけで装備を具現化させ、装備使用すると…」
「その通りです」
ディオスは頷いた。
アインデウスが額を掻きながら
「だが…それを発揮する為に必要な、魔力は膨大だ」
ディオスが
「その通りです。これは、王の秘技を使える者達、自分やアーヴィング、ラハトアくんのようなシンギラリティ達、グランスヴァイン級魔法運用者達、神格を使える神式スキル能力者達。そのような者達には有効かと…」
ディウゴスが
「量産には向かないと…」
ディオスが
「自分は、数だけの千より、一騎で万の軍勢に匹敵する質を生み出す方が…合理的と考えます」
アインデウスは目を閉じ
「このアースガイヤだけの事なら、数で良いかもしれない。だが…エニグマの戦いは、世界全体を巻き込んだ大災厄だ。一騎で万の力がある部隊が、万も揃えば、それは一億の部隊より強大な部隊となる。ディオスの考えの方が合理的だろうな…」
ディオスが
「では…議題に…」
アインデウスは目を開け
「ああ…提案しよう」
伊勢の世界王族大会議の護衛に、曙光国の女子スキル部隊に配属されたばかりの、洋子と奈々に綾妃がいた。
彼女達は、同じスキルを使う女子二十名の一団の中にいた。
部隊の隊長である女性が声を張る。
「我々の任務は!」
この伊勢での重要性を説いて部下の女性達に檄を飛ばした。
全員が一糸乱れぬ敬礼をして答える。
その後、洋子と奈々に綾妃の三人は、部隊で分けられた一つのチームとなって、伊勢の警備する。
世界中の王族達を乗せた飛空艇と、その護衛をする戦艦飛空艇の艦隊が来る場景を奈々は見上げる。
まさに国家の命運を賭けた超会議である事は間違いない。
だが、奈々には別の目的があった。
降りてくる飛空艇達の中でバルストラン共和王国の飛空艇を探す。
そこへ洋子が来て
「どうしたの?」
奈々は飛空艇達を見上げて
「バルストランの飛空艇を探している」
綾妃が
「そんなの無駄だぞ。ほら…あそこを見ろよ」
と、遙か上空にいるエルディオンを指さす。
「アーリシアご一行様は、アレで来たらしいぜ」
「そうか…」
と奈々は背を向ける。
洋子が
「なんのつもりで、探していたの?」
奈々は僅かに横顔を見せ
「もし、バルストランの飛空艇があったのなら、聖帝も乗っている筈だ。その飛空艇を待ち構えて、聖帝に自分を売り込みたかった」
綾妃が呆れた顔をして
「なんだよ。諦めてなかったのかよ」
奈々は鋭い刀のような顔を見せ
「求める力があるなら、何でもする。例え、女の武器を使ってもだ」
それに洋子と綾妃は「はぁ…」と溜息を漏らした。
そこまで、奈々は本気だったのだ。
時同じく、伊勢の警備をしている曙光国の軍のとある部隊、男性陣のスキル大隊の補給部隊にとある男性がいる。
彼の名は、黒木 阿座…年齢は25で、スキル士官学校を出て四年前に配属された。
阿座のスキルは、戦闘向きではない、補給系に適したスキルだった。
”コンパクト”
というスキルは、物質を好きな形、サイズに変換する事が出来る。
無論、この変換された物質を戻すには阿座のスキルが必要だ。
このスキルの特性故に、阿座は前線には出ない補給部隊に配属された。
合理的な判断であるが…。それは阿座の意思とは無関係だった。
本当は前線に出る部隊に行きたかった。
だが、阿座は曙光国の軍に所属している軍属だ。補給も大事な軍務。
阿座は、それが自分の望む事に繋がると信じて補給の軍務に邁進した。
阿座の目的、それは…十年前、阿座はスキル能力者狩りによって妹を亡くした。
阿座のスキルは、親から貰ったスキルが変異した新種スキルというタイプだった。
当時、十歳だった妹は、親から受け継いだ。変移刃武という戦闘に特化したスキルを持っていた。
それが、仇となり、妹は阿座の目の前で、エニグマのシェルブリットに殺され、首を持って行かれた。
阿座は自分の無力と、情けなさを呪った。
それから、阿座は必死に自分を鍛えた。
妹のような犠牲者を二度と出さない為に。
今は、前線で戦うではないが…その補助をするという事で、それに繋がっていた。
だが、この超会議に起こる事件が、阿座の人生を変える事になった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。