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第185話 曙光国、女子スキル士官学校

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


奈々は、仲間の洋子と綾妃と共に、士官学校でスキルを使った訓練をしていた。


 曙光国、スキル専用特別士官学校。

 そこのグランドで、三人のドゥルガー『女鬼神』が暴れていた。

 八岐大蛇の和豪 奈々

 スサノオの火笠 洋子

 タケミカヅチの鷹柿 綾妃。

 

 この三人は高レベルの戦闘に特化したスキル持ち故に、複数人の戦闘スキル持ちが相手をしないと全くの訓練にならない。


「おおおおおお!」

 奈々は雄叫びを上げて、背後に九つ首の鎧龍を出現させる。

 全長十メータの鎧龍達は、正面にいる戦闘スキルを発動する女子の数名を一蹴する。


 その隣、スキル…スサノオを発動させる洋子。

「次! 来る!」

 厳しい声を放って怯えて下がっている残りの女子士官候補生を呼ぶ。

 洋子のスサノオは全長が十メータの光の鎧を纏う巨人だ。

 その力は凄まじく、単騎での戦艦飛空艇なら落とせる。


 洋子の罵声に引き摺られて、残りの訓練するスキル持ち達が突撃して来る。

 この訓練を受けている者達、全員が女子である。

 士官学校は、男子と女子が別れている。

 この世界の軍隊は、男女によって軍隊の区分が違う。

 男性は、主に陸戦、魔導操車や、魔導騎士の兵員として。

 女性は、戦艦飛空艇の艦隊や、ゴーレム部隊、魔導士部隊、兵站、多岐に渡る軍隊の運用に付く。

 無論、軍隊のトップに男女差別はないが…。

 どうしても、傾向として男性は遠征の立案へ。女性は、防衛の維持、管理へ。

 そういう風に、別れてしまう。

 無論、職業に差別はない。だが…どうしても男女で適正の違いが出てしまうのは致し方ない。

 これを平等にしようと、ムリに編成を組めば、一気に軍隊といった組織は瓦解する。

 軍隊とは、自由度が高い民間とは違う。個々の部門が専属的な組織なのだ。


 スサノオの洋子へ向かって来る、スキルの女子士官候補生達。


 だが…洋子の上に浮かぶ、綾妃が自分のスキルを発動させる。

”タケミカヅチ”

 浮かぶ綾妃の周囲に稲妻が発生し、それが何十本もの槍に変わる。

 稲妻の槍の投擲が、向かって来る女子士官候補生達に襲い掛かる。

 その襲撃によって、全てが終わった。


 綾妃と奈々が洋子の隣に来て

「もう! 終わりか!」

 奈々が厳しい声を放つ。


 綾妃が

「そんなへっぴり腰で、戦場を生きていけると思っているのかぁ?」

と、どこかバカにしたような口調である。


 ボロボロの女子士官候補生達は、立ち上がる事さえ出来ない。

 彼女達は、洋子を除けば、奈々や綾妃と同じ16だ。

 中等部を卒業して、このスキル専用士官学校へ入った。

 無論、戦闘系のスキル持ち故に、それなりには戦闘に強い。

 だが、目の前にいる洋子や奈々に綾妃は別格だった。


 洋子が倒れる女子士官候補生達に駆け付け

「さあ! 起き上がる!」

 立たせようとしたが…


「待ちなさい!」

 奈々の母親の青葉が来た。

 青葉は、この女子スキル専用士官学校で講師をしている。


 青葉は、倒れている女子に近寄り

「もう…彼女達は限界です。もう少しは…手加減というモノを…」


 奈々が

「和豪講師官。戦場に手加減など、存在するのですか?」


 青葉は苛立つ顔を娘、奈々に向け

「奈々!」


「ここでは! 和豪候補生です!」

 鋭い視線で、奈々は母親を見る。


 青葉は頭を俯かせ

「とにかく、終わりです。彼女達を医務室へ運びます」


 奈々は「失礼します」と歩き出す。


「何処へ行くのですか!」

 青葉が尋ねる。


 奈々は

「隣の男子校舎へ行き、稽古をつけて貰います」


 それに洋子も

「私も失礼します」


 綾妃も

「アタシも行きます」


 三人して、男子校舎へ向かった。


「全く…」と青葉は頭を抱えた。



 そこでも、鬼神の如き力を発揮する奈々と洋子に綾妃。

 三人に対して、男子のスキル持ち二十人で相手をする。

 

 彼女達三人のスキルも特別で強い事もあるが…それに合わせて、三人が日々研鑽している事も加わって、デタラメな強さを誇っていた。


 男子達が加わった三人の戦闘訓練が終わって、そのまま、三人は上に着ている戦闘スーツを脱いで、汗を拭い水道で水分を補給する。

 素っ気ないスポーツブラしかない上半身。

 洋子と綾妃は、かなりの胸の実りがあり、奈々は…二人と比べると小さいが、程良い大きさである。

 だが…そこだけが女として扱える部分で、見えている背筋、腹筋、腕筋達は、強い筋が見える程に力強い。


 三人へスポーツドリンクを持って来る男子士官候補生。

「ほら…チャンとした水分補給も必要だぞ」


「ありがとう…」

 年長者の洋子が受け取り、残りの奈々と綾妃に渡す。


 洋子がドリンクを飲んでいると、持って来た男子候補生が

「君たちの強くなりたり理由は、分からないでもないが…。もう、ここでは君たちの強さを高めるのに、答えられる連中なんていないよ」


 洋子は飲み干して

「それでもベストは尽くす」


 厳しい口調に、男子士官候補生は頭を抱えた。




 夜、洋子と綾妃に奈々は、女子寮で同じ相部屋だ。

 三人は、訓練で疲れた体を休める為に、ソファーやベッドでゴロゴロする。

 休息も訓練だ。

 疲れを残して訓練すると、無駄になるし、何より回復をチャンとすると、次の訓練の時に最良の訓練が出来る。


 ベッドにいる綾妃が

「情けない。ここには、もっと強いヤツはいないのかよ…」

 ふて腐れている。


 傍にあるソファーで本を読んでいる洋子が

「十日後には、特別スキル部隊に配属されるわ。それまでの辛抱よ」


 綾妃の隣のベッドにいる奈々が

「果たして、配属された先に、我らより強い者はいるだろうか?」


 綾妃が

「期待できないんじゃない?」

 

 その理由、それは…半年前に、洋子と奈々に綾妃の力を験す為に、スキル部隊より数名の兵士が来た。

 その数名の兵士達と模擬戦をしたのだが…。

 奈々達が圧倒してしまった。

 洋子と奈々に綾妃のスキルは、母親から受け継いだスキルだ。

 三人の母親は、共に娘達と同じ女子スキル士官学校の卒業生。

 そして、三人のスキルは、代々、この曙光国で最強のスキルの一角を担っていた家系だ。

 血筋による才能に加えて、日々の鍛錬を欠かさない三人の実力は、前代の母親達を越えていると言わしめた。


 奈々は、もっと強くなりたい…そう思って、魔導端末のニュースを見ていると…ディオスの事が出て来た。

 ニュースの内容は、ディオスが更なるゼウスリオンの改良を行う事。

 新たな攻撃魔法を開発した事。

 

 奈々はそれを見てグッと歯を噛み締める。


 二年前の、ディオスとヴァシロウスの攻防を映した映像を見た時に、ディオスの飛んでも無い実力に驚愕した。

 こんな人間がいるのか?

 信じられなかった。

 その後、様々なディオスが魔法を使う映像が流れたりした。

 そのどれも、天変地異級ばかりで、驚嘆するしかない。

 そして、とある話を聞いた。

 ディオスは、自身の内にある魔力を無限に発生させるシンギラリティを人工的に付与する技術を開発。

 それによって、部下とした四名を人工的シンギラリティにして、同じ人外に変えた…と。

 聖帝ディオスの軍隊は、五人しかないが…一人一人が一国の軍団に匹敵する。

 一騎一国だと…。


 奈々はディオスのニュースを見ながら

「アーリシアの聖帝殿の部下に…なることが、叶わないだろうか?」


 綾妃がフッと笑み

「ムリだって、相当なお偉い様じゃあないと…知り合いになる事だって不可能だよ」


 洋子が

「聖帝ディオスと知り合いなのは…曙光国で…四皇家の一つ、暁家の一刀様しか…」


 綾妃が

「ほらなぁ! 王族クラスじゃあないと、ムリだって」


「そうか…」

と、現実の壁に奈々は項垂れた。




 同じ夜、和豪財閥の社長室で、一清がとある資料を目にしていた。

 一清にいる社長机の前のソファーに、弟ので技術開発部の京一が座っている。


 京一も同じ資料を見て

「本気なのか? 信じられない…」

 資料の魔導端末を前のテーブルに軽く投げ置く。


 一清が淡々と

「ディオスはやる気だ。世界の技術レベルを一斉に引き上げるつもりだ」


 京一が

「それが、聖帝様にどんな得があるの? 裏で、タダで強大な兵器の技術を提供する。自分がそれで儲かる理屈がないと信じられない」


 一清がフッと笑み

「ディオスの理屈はこういう事だ。世界平和。その為にヤツは、特別な秘技を使う王族全てにゼウスリオンと、王に付いて来てくれる民達の集合意識が兵器となるエンペラードをバラ撒き、それに呼応できる兵器も作らせるつもりだ。エニグマの事は知っているだろう…」


 京一は複雑な顔で

「未だに信じられない。この世界を滅ぼす程の物量を持っているなんて…」


 一清は席から立ち上がり

「それでもディオスは、エニグマを完膚なきまでに叩き潰す気でいるようだ」


 京一は、社長室の大窓から夜景を見ている一清に

「本当に可能なのか? 兄さん」


 一清は横顔を向け

「私は、出来ると信じている」


 …………………

 

 僅かな沈黙の後、京一が手を組み、顎を置き

「あれから、聖司くんの事があって十年か…」


「そうだ。聖司が殺されて…」


 京一は項垂れ

「ショックだった。かわいい甥っ子が…殺されて…。オレは…今でも許せない」


 一清が京一の後ろに来て

「お前もボロボロだったなぁ…。その後、支えてくれた助手の女性と…」


 京一は

「清正だって、同じさ。オレと同じく支えてくれた良い女性と結ばれて…今でも思い出すよ…兄さん。聖司くんのあの…抱き締めた温もりを…」

と、京一は自分の顔を手で覆い隠して、悲しみに堪える。


 一清は、悲しむ京一の肩に手を置いて

「本当に、いつも、聖司を思ってくれてありがとう…京一…」


 京一は顔を上げ

「兄さん。オレも出来る事を手伝うよ。聖帝からのデータの提供は?」

 

 一清は肯き

「十日後の、曙光国の伊勢で行われる世界王族会議で、曙光国は包括的大規模破壊魔法の運用制限条約に入る。その後な筈だ」


 京一は立ち上がって

「分かった。研究室に行って受け入れる準備を進めておく」


 一清が

「あと…提供したデータによって開発された品のデータフィードバックが条件らしい」


「了解した。それも簡単にできるようにして置く」

 京一は了承して、社長室を後にする。


 一人残った一清は、懐から一枚の写真を取り出す。

 それには、自分と妻の青葉と五歳の奈々と、生きていた九歳の聖司の家族の肖像だった。

 一清は、写真を胸に抱き

「必ず…エニグマを倒す」

 そう…強く誓った。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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