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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
トルキア共和国
18/1105

第17話 トルキア共和国 使者

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


突如、クリシュナの背景である使者がディオスに向けられる。その時、ディオスは…?

トルキア共和国 使者


 次の日、ソフィアはディオス達夫婦の三人と、護衛のナトゥムラ、スーギィ、マフィーリアを連れて王都でショッピングする。

 レンガ造りの多階層のデパートに入り、ソフィアが洋服を選び

「ねぇ、ディオス。どっちがいいと思う?」


「え! オレが選ぶのか?」

 ディオスは困惑する。

 ソフィアが提示したのは、白いワンピースと銀色のドレスだ。

「んん…」

と、ディオスは二つを指さして泳ぎながら、ソフィアの顔色を窺う。

 白いワンピースを指すと、少しソフィアの眉間が動く。銀色のドレスを指さすと口の口角が上がり、僅かな笑みになる。それによって

「こっちかな…」とディオスは銀色のドレスを指さす。


「やっぱりね…。アタシもこれが似合うと思っていたんだ」

 喜ぶソフィアが嬉しそうに銀色のドレスを撫でている。


ディオスは、ホッとする。もし、間違えていたら…腹パン確定だろう。


 ソフィアは思いっ切りディオスを振り回す。

 飲み物買ってこい。アレをしろ、コレをしろ。とにかく、ディオスをこき使って日頃の王様としてのストレスを発散する。

 それにディオスは、疲れてしまい頭を抱える頃には、昼だった。


「あそこで、お昼にしましょう」とソフィアが喫茶店を指さす。

 そこへ一行が入る。

 ディオス達男性陣は別のテーブルへ、ソフィアとクレティアにクリシュナは近くの景色が見えるテーブルに着く。

「何にしようかなぁ…」とソフィアがメニューを見ていると、クレティアが

「これなんてどうです?」

 メニューをテーブルに置いて指さし


「どれどれ」とソフィアが覗き込みクレティアと接触すると、クレティアが小声で

「見たんでしょう…夜中…」

 怪しげな声で囁く。


「え…」とソフィアが固まる。


 ニンマリとイタズラに笑うクレティアにソフィアが困惑している。


 ソフィアは口を閉じ耳まで真っ赤にして恥ずかしそうに黙る。

 

 そう、クレティアが言っている事が分かっていた。昨夜、ディオス達夫婦の営みを見ていた事がバレていた。


 クレティアがソフィアに耳打ちする。

「エッチ」


 ソフィアは、耳まで真っ赤にして持っていたメニューをバンと大きな音をさせて閉じる。


 その様子に呆れたクリシュナが「クレティア…」と窘める。


 大きな音がしたのでディオスが、ソフィア達の席に来て

「どうしたんだ? 何かあったのか?」


 ソフィアは目を光らせ、拳を握り、ディオスの腹にパンチした。


「え…」とディオスは困惑して殴られた腹を抱える。


「何でも無い!」とソフィアは荒く突き放し、その様子をクレティアはクスクスと笑み、クリシュナは呆れて額を抱えた。


 こうして、ソフィアのお出かけは終わり、ディオスの屋敷で一泊後、朝には王宮に帰る事になる。その屋敷での夜、ソフィアは書庫で本を読んでいるディオスの元に来て

「ねぇ…ちょっといい?」


「ああ…なんだ」

 ディオスは本を閉じてソフィアは向くと、ソフィアの手にはワインのボトルが握られていて

「一杯、つき合いなさいよ」

「分かった」

 ソフィアはディオスを連れて、二階の王都の景色が見える部屋で一杯を始めた。

「乾杯…」

「乾杯…」

 ソフィアとディオスはグラスを交わす。


 ソフィアはワインを口にして

「どう…ここでの生活は?」


「そうだな…良い感じにはなったさ」


「そう…」


「師匠はどうだ? 王様になって」


「なかなかよ。大変だけど、やりがいはあるわ」


「そうか…」


「ねぇ…また、レオルトス王国みたいな事が、舞い込んだら…どうする」


「それは…内容次第だ」


「内容次第では、動くんだ」


「ああ…ダグラスさんと約束したんだ。世界平和を目指すってな」

 ディオスは悪戯な笑みを見せる。


 その笑みをソフィアは見つめ

「正直に言うわ。世界平和なんてどうでもいいじゃない。アンタには嫁さんが二人もいて、魔導石を作る仕事と、王に仕える事もしている。十分じゃない」


「そうだな…確かに、十分と言えば十分だ。高望みをするべきじゃあないかもしれない」


 ソフィアが暗い顔をして

「でもね。アンタを見ていると何時も思うというか、感じる事があるの…」


「なんだ? バカ弟子とか、腹パンし易いとか…」


「違う…。何だろう。きっと大きな流れに巻き込まれるんだろうなぁ…と思って」


「大きな流れか…。心配か?」


「当たり前でしょう。アンタはアタシの弟子なんだから。謂わば、弟か子供みたいなもんよ」


「そうか…。まあ、なんだ。大きな流れに呑み込まれそうになっても、何とか上手くやるさ」


 ソフィアは心配な顔で

「もし、辛くなったらアタシを頼りなさいよ。なんたってアタシは王様なんだから」


「へいへい、王様、ありがとうございます」


「アンタは…独りじゃあないんだから…」

 ソフィアは隣にいるディオスの手に自分の手を重ねる。


 その感触は、どこか母親に労られている子供のような気分だ。

 



 翌日の朝、ソフィアはナトゥムラとスーギィにマフィーリアを伴って王宮に帰っていた。その姿をディオスは手を振って見送る。

 

 帰りの魔導車の中でソフィアは、嘗て、アーリシアを支配した魔王ディオスを思い返す。

 魔王ディオスの最後は、とても悲惨なモノだった。

 部下に妃達に子供達までも裏切り、勇者アルベルトに組みして、アーリシアの全てとたった一人、戦って孤独に死んだ。

 その歴史の中で、もし、魔王ディオスが孤独でなかったら…別の歴史があったかもしれない。

 でも、それは過去の事だ。変える事なんて無理だ。

 そして、その未来、今は、決まっていない。

 今のディオスを魔王ディオスのように孤独にしなければ…。

 そう、ソフィアは思い。

 自分が何時でも彼をディオスを引っぱたいて、でも正して行こうと心に思ったのだ。


 ディオスの屋敷では、ソフィアという嵐が過ぎ去ってホッとするディオス。

「さて…」

と、その言葉が何時も屋敷の日々の始まりを告げた。


 


 一週間後、昼頃に郵便がディオスの屋敷に届いた。

「旦那様…」とその荷物を受け取ったレベッカがディオスに渡す。


「なんだこれは…」とディオスは郵便の箱を見つめると宛先は、ケットウィンだった。

「ケットウィンさんから」

 ディオスは、郵便の箱を開くと一通の手紙と、古い書類の束が入っていた。

「なになに」とディオスはケットウィンの手紙を読んでいると、その後ろに


「ダーリン、どうしたの?」

 クレティアが、クリシュナを連れて来た。


「ああ…ケットウィンさんの送ってくれた荷物だ。何でも、自宅の屋敷を掃除していたら、祖父が纏めた魔法に関する研究の書類を見つけたそうだ。もしかしたら、魔導石に関係しているかもしれないから、送ってくれたようだ」


 クリシュナが書類の束を取り、見つめ…

「封印循環魔法 クライン・ポッド?」

 書類に書かれている言葉を言う。


「貸してくれ…」とディオスは両手を向けると、クリシュナはその両手に書類を渡す。

 ディオスは、書類を読みながら

「ああ…成る程…」


「どんな魔法なの?」とクリシュナが聞く。


 ディオスは書類を読みながら

「所謂、エネルギーを閉じ込める魔法だ。闇属性の空間系統を操作する魔法で、閉じられた空間を作って、そこにエネルギーを封じ込めるという代物だ」


「何のために使うの?」とクレティアが聞く。


「恐らく、自然界に存在する魔力のスポットに行って、そこの魔力をこのクライン・ポッドで封印して魔導石の生成に使うのだろう」


「でも…」とクリシュナが「封印なら許容があるから、大量に閉じ込められないのでは?」


「この魔法の面白い所は、取り込んだエネルギーを魔法で作った閉じた空間内で回して、それに応じて許容が増えるから、幾らでも入るらしい」


「すごいじゃん」とクレティアが驚く。


「確かに凄いが…これを発動させるには、相当な魔力が必要だから、実用化しなかったかもしれん」


 クリシュナがディオスを見つめ

「アナタなら、これを発動させる事が出来るんじゃない?」


「ああ…まあ、出来るが…。何にどう使う? 魔導石の生成には自分の魔力で十分だし…」


「ああ…」と唸るクリシュナ。


 ディオスは次の魔法を捲ると「ん…なんだこれ? どんな魔法かって説明がない。ええ…ウソだろう。魔法陣の設計図しかない」


「へぇ。なにそれ」とクレティアは覗くと「あ…」と小さく書かれた字を指さす。

「ええ…と、アクシズ・フォール・ダウン?」


「んん…」とディオスは唸る。

 クレティアが言った名前だけでは全くどんな魔法か、分からない。

 これは、何処か魔法陣が詳しく分かる資料か、本を手がかりにして調べるしかないだろう。そして、最後の資料は

「おお…凄い、エンチャン魔導石の生成方法だ」


「エンチャン魔導石?」とクレティアが訝しい顔をして「魔導石にも、エンチャン系の特殊金属のような性質を持たせられるの?」


「ああ…そのようだ」

 この二つの魔法とエンチャン魔導石の書類にディオスは

「後でお礼の手紙を書かないとなぁ」




 その日の魔導石の生成は少数の為に四時くらいに作業が終わり、地下施設から上がって来ると、レベッカが

「旦那様。丁度、お電話が来ております」


「んん? どこからだ?」


「役所の方からです」

 ディオスはピンと来た。これは…と魔導通信機を取り、話を聞く。

「はいはい。はい…。ああ…そうですか。はい、はい、ありがとうございます」


 傍らにはレベッカがいた。

「何のご連絡でしょうか?」


「レベッカさん、審査が通ったらしい」


「審査? ああ…」

 そう、レベッカは分かった。一週間前にディオス達三人を夫婦と認める証明後見人婚姻が認められたのだ。

「おめでとうございます」

 レベッカが頭を下げる。


「レベッカさん。頼みがある」


「何で御座いましょう」


 

 その日の午後、クレティアとクリシュナ、修練の為の魔物を狩りから帰って来ると、ケーキが焼ける良い匂いが漂っていた。


 クレティアは鼻をクンクンとさせ

「いい匂い。ケーキでも焼いているのかなぁ…」

 ウキウキしながら、匂いのする厨房に向かうと、そこにはディオスがいて、ディオスがエプロンをしてレベッカの指導の下、ケーキを作っていた。


「あら、アナタ。ケーキを焼いているの?」

 クリシュナも来た。


 ディオスは嬉しそうな顔で

「お帰り、クリシュナ、クレティア」


 クレティアが近づき

「ダーリン。ケーキなんて作ってどうしたの?」


「通ったんだ。審査が」とディオスが嬉しそうに語る。

 その言葉にクレティアとクリシュナは、証明後見人婚姻制度の審査が通って三人が夫婦として認められた事を察して


「ああ…そうか、ダーリン。これ、お祝いね」


「そうだ」とディオスは頷いた。


 夕食時、ケーキが登場する。

 ディオスとクレティアにクリシュナの三人が本当の意味でも夫婦になれた記念として…。

 ケーキは切り分けられ、クレティアもクリシュナにも、レベッカやユーリにチズにも行き渡り、クレティアが口にして

「うまい! ダーリン。おいしいよ」

 

 クリシュナは食べて

「初めてにしては、上出来だわ」


「おいしいです旦那様」とユーリは頬張り


「うん。うまいです旦那様」とチズは満足げだ。


「旦那様は意外な才能がおありですね」とレベッカも認める。


 そう、魔法や魔法技術に関しては凄まじい能力を発揮する。

 剣術や武術に関しては普通だ。意外なというか、裁縫や料理が得意という不思議な才能がある。


 クリシュナは食べながら

「そう言えば、こんな事を聞いた事があるわ。魔法の能力が高い人程、料理や裁縫が得意だって」


 ディオスは顎に手を当てて考えながら

「何か、通じるモノでもあるのだろうか…」


「いいじゃんそんなの」とクレティアは頬張りながら「ねぇ。ダーリン。また作ってよ」


 ディオスは笑み

「そうだな、二人の誕生日とか、何かのお祝い事なんかには作るようにしよう」

 朗らかな夕食が過ぎていった。




 とある日、ディオスはクレティアとクリシュナを連れて王都へ遊びに行く。

 三人の連れ合いは、王都の店をウィンドショッピングする。

 左にクリシュナ、右にクレティアとディオスはその真ん中で、二人に両手を握られて、あっちに行ったりこっちに行ったりとしていると、不意に、寒気と視線を感じる。


 ディオスはその場で視線を泳がせ、何だ…この感じ…と該当する感覚を探すと殺気に似ていると思った。


 ディオスは困惑していると、クレティアが

「ダーリン。喉が渇いたから、休憩しよう」

 

 喫茶店へディオスを連れ込む。

「ああ…」とディオスは戸惑いつつも、喫茶店に入る。

 三人は席に着き、飲み物と少しの軽食を頼んで談笑していると、またしても、ディオスは殺気を感じる。

 押し黙るディオスに、クレティアとクリシュナは気付き

「どうしたのダーリン?」

「アナタ、どこか調子でも悪いの?」


 ディオスは視線を動かしながら

「二人は気付かないか? 殺気がこっちに向かれている」


 クレティアとクリシュナの表情が鋭くなり、視線が動く。


「おかしいわね。怪しい人物は見当たらないけど…」

と、クリシュナは隣にある窓の外を見る。


「ホントなのダーリン?」とクレティアは店内を確認する。


「ああ…二度程、感じた。気のせいだと思っていたが…」

 ディオスは外と店内を見る。


「行こう。ダーリン」

 クレティアが立ち上がり、その後をディオスとクリシュナも続いた。


 喫茶店から出て三人は、周囲を警戒しながら歩くも、怪しい人物や殺気はない。


「警戒しているから消えたか…」

と、ディオスは漏らす。


「何か心当たりは?」

 クリシュナが尋ねると。

 

 ディオスに過ぎったのは

「レオルトス王国の支援者か…」

 

 クレティアとクリシュナは顔を顰める。

 

 アリストス共和帝国の手先が、ディオスを狙っているのかもしれないと考え

「ダーリン、屋敷に帰ろう」

「ああ…」

 ディオスはクレティアの提案に頷いた。


 


 屋敷に戻ったディオスは、早速、ソフィアに連絡を入れた。

「どうしたの? アンタから連絡なんて…」

 通信機越しにソフィアの声がする。


「今日、王都を歩いていたら、殺気を感じた」


「え? どういう…」


「狙われているかもしれん。思い当たる節は、レオルトス王国の支援者か…」


「あ…分かった。こっちでも調べてみる。後、明日になるけど…そっちに護衛を回すわ」


「すまん。助かる」


「いいのよ。とにかく、気をつけてね」

 ソフィアが連絡を切った後、ゼリティアがソフィアのいる執務室に入る。

「失礼する」


「丁度良かった。ゼリティア…」


「何じゃ?」


「ディオスのヤツ、今日…尾行されたらしいの」


「何と…思い当たる節は?」


「恐らくだけど、レオルトス王国の支援者の事が絡んでいるかも」


「分かった。妾の方でも、色々と探りを入れてみよう」


「お願い、それと当分の間、ディオスの家に魔導石を取りに行くのは気をつけた方がいいかも」


「うむ。護衛を同行させよう。ディフィーレのヤツに連絡じゃな」




 ディオスの屋敷では、通信機を手にディオスが連絡を受け取っていた。

「ああ…ディフィーレくんか」


「ディオスさん。事情はゼリティア様から聞きました。今日は取りにいけませんが、明日、護衛を数名伴って取りに行きます」


「その方がいい。用心にこした事はないからな」


「はい、では、ディオスさんもお気を付けて」


「ああ…」




 その夕食後、ディオスは書庫で本を読んでいると、妙な気配を窓の外から感じる。

「なんだ…変な感じがする」

 ディオスは窓から外を覗こうとした次に、ドアが荒く開いて


「ダーリン!」

 クレティアが姿を現す。

「ダーリン、マズイ…囲まれている」


「なんだと…」

 ディオスは鋭い顔をする。



 屋敷の広間で全員が集まっている。

 ユーリが

「旦那様…外に妙な人影が…」


「心配するな」とディオスは呼びかけた。


「アナタ」と玄関脇にある窓に屈んで隠れるクリシュナが「屈んで、窓から見えないように来て…」


 ディオスは言われた通りにしてクリシュナに近付くと

「窓の外…」

と、クリシュナが指さし、そこをディオスが見ると

 屋敷の前に広がる草むらを蠢く複数の人影が見える。


「何人いる?」とディオスは尋ねる。


 クリシュナは難しい顔をして

「恐らく…十人以上は確定かしら」


「ふ…」とディオスは溜息を吐き「作戦を練ろう」



 広間の真ん中に集まってクリシュナが

「どうする? 応戦する?」


 クレティアが

「それはチョット、マズイかもだって…」

と、ユーリにチズとレベッカを見る。


 レベッカは眼鏡を持ち上げ

「わたくしは多少、剣の心得がありますので…」


 ユーリはチズに抱き付きながら「私は…」と怯えている。チズが

「ユーリと私、素人です」


 ディオスは腕組み

「救援を呼ぼう。連絡は…」


 レベッカが首を横に振り

「現在、不通でございます」

 通信をジャミングされているようだ。


「そうか…じゃあ…アレだな」

 ディオスは動く。




 ゼリティアは寝室で本を読んでいた。そこへノックされ

「失礼します。お嬢様…」

 セバスが入る。


「何じゃ、こんな夜更けに…」とゼリティアは本から目を離さない。


「お嬢様。屋敷の者が、南の方角、恐らく…ディオス様のいる屋敷の当たりから赤と青の信号弾が空へ昇ったのを見たと…」


「ん…信号弾?」とゼリティアは本を閉じた次に、脳裏に過ぎったのは信号弾の意味だ。

 赤は非常事態、青は進行中だ。


 ゼリティアは横になっていたベッドから飛び起きて

「今から、支度をする。妾の甲冑を持ってこい。後、数十名、戦える護衛も連れて行く」


「は」とセバスは畏まる。


 ゼリティアは寝室を出て

「後、王宮に連絡じゃ。ディオスのヤツが非常事態じゃと」


「畏まりました」



 ゼリティアは甲冑に素早く着替えて、屋敷の玄関を潜ると、そこには武装魔導車に乗った数名の騎士達がいた。

 ゼリティアの屋敷で警護を務める者達だ。

 

 ゼリティアは先頭の武装魔導車に乗ると、そこへセバスが

「お嬢様、王宮に連絡した所、ナトゥムラとスーギィにマフィーリア様一行が、部下を連れて出たそうです。おそらくは…」


「うむ。いくぞーーー」

 ゼリティアは、呼びかける屋敷から出発した。



 ゼリティア達一行が、王都を僅かに進んだ所で、ナトゥムラ、スーギィ、マフィーリア達一行と合流する。

「おう、ゼリティア」とナトゥムラが呼びかけ「お前も気付いていたのか」


「お主達もか!」


「ああ…とにかく、急ごうぜ」

一団はディオスの屋敷へ向かう。




 信号弾を打ち上げ終え、二階から戻ったディオスは広間で

「これで、気付いてくれる筈だ」


 クリシュナは腕を組み

「後は、どのくらいで到着するのかしら…」


 窓の脇に隠れて様子を見るクレティアが

「ダーリン、クリシュナ!」

 二人を呼ぶ。


 ディオスをクリシュナはクレティアの元に来て、窓を覗くと、人影が纏まり、屋敷の前にいる。


「これは…カチコミ間近かなぁ」とクレティアは予測する。


「はぁ…」とディオスは溜息を漏らし「クリシュナ…オレと一緒に応戦する。クレティアはレベッカさんとユーリにチズを守ってくれ、状況によっては脱出も視野に」


「了解!」とクレティアは右手の親指を立てる。


「行くぞ、クリシュナ」


「ええ…」

 ディオスはクリシュナを伴って玄関から出る。


 ディオスは両手に魔力を貯め、魔法陣を展開する。


 クリシュナは両手に曲がり鉈を取り出し構える。


 屋敷の前にいる黒いローブの一団から三人が出て

「ま、待ってください。私達は戦いに来たのではありません」

 三人は全身を黒いローブに包んで顔を隠している。


「戦いに来たのでは、ないなら姿くらい見せろ」

と、ディオスが告げると三人は頭を覆うフードを外す。

「んん…」とディオスは唸る。


 獣人、人族、オーガ族と三人の顔立ちはまだ、幼く十代後半だった。


 クリシュナは三者三葉の三人の少年少女を見て

「貴方達…」

 驚いているそこへ、三人の真ん中にいた人族の少女がクリシュナに向かって

「クリシュナ様ーーーーーー」

と、クリシュナに向かって駆けだし、クリシュナに抱き付いた。

 クリシュナは戸惑いながらも、抱き付いた少女の名前を告げる。

「ら、ラーナ…どうして…」


 抱き付いた少女ラーナはクリシュナに

「お迎えに上がりましたクリシュナ様」


 その様子にディオスはクリシュナへ

「知り合いなのかクリシュナ?」


 クリシュナは困り顔で

「ええ…私が組織にいた時に育てた子なの…」


 クリシュナに抱き付いて離れないラーナはディオスを睨む。

 その感じは町中で感じたあの殺気だった。


 この子か! 殺気の正体は! とディオスは驚く横で最初に呼びかけた獣人の少年が

「お初にお目に掛かります。カルラと申します。私達は、秘匿組織シャリカランの者です。クリシュナ様が所属する組織の者です」


 クリシュナはフッと皮肉に笑み

「元だけど…」


「いいえ、元ではありませんよ。クリシュナ様」と獣人の少年、カルラは答えた。


 ディオスは額を抱えたまま

「事情の説明をお願いしたい」


「はい」とカルラは頷いた。


 だが、ディオスはハッとして

「ああ…信号弾!」




 ゼリティア達一団は、王都の城砦の門を潜り、ディオスの屋敷まで後僅かの所で、ディオスの屋敷から信号弾が上がる。今度は緑の信号弾だ。

「停戦した?」とゼリティアは眉間を寄せる。


 ナトゥムラが「事態が変わったみたいだが、急ぐぞ」と進む。



 ゼリティア達がディオスの屋敷に到着して玄関を荒く開ける。

「一体、何があったのじゃ」

 ゼリティアが声を張る広間では、ソファー席に座るディオスにクレティア、カルラとクリシュナに抱き付いて離れないラーナ。その周辺にはレベッカとユーリにチズ、そして、ラーナ達が連れてきた十名のローブの集団がいる。


「早かったな…」

と、ディオスは告げる。


 ゼリティアはローブの集団を訝しく見ながら

「こやつ等はなんじゃ…」


 ナトゥムラも同じく訝しく見ながら

「なんか、真面な連中には見えないが…」


 ディオスが対面に座るいるカルラを見つめると、カルラは頷いた。

「ふ…クリシュナの繋がりで、秘匿組織シャリカランの者達だ」


 スーギィが鋭い顔をして

「シャリカラン…あの、レスラム教が抱える暗部か」


 ディオスがカルラを見て

「そうなのか?」


 カルラは気まずそうな顔で

「はい。まあ…そういう所です」

 肯定して答えた。


 ディオスは腕を組み、カルラを見つめ

「揃いも揃ったから、そろそろ説明してくれないか?」


「はぁ…その…」とカルラはディオスを見つめた次に、ディオスの後ろに来たゼリティアやナトゥムラ、スーギィにマフィーリア様を見つめて躊躇う。


 その隣では、クリシュナが座り、そのクリシュナに抱き付いて頬ずりするラーナの姿がある。


 ディオスはそっちに視線を向けると、ラーナがその視線に気付き睨むが、直ぐにクリシュナに甘え胸に顔を埋めるが、また睨み、甘え、またまた睨み、甘える。そんな感じを繰り返すラーナにディオスはフッと笑む。

 分かるぞ、クリシュナは確かに触り心地が抜群だ。そして、その胸に埋まりたいのも分かる。

 分かるぞ。

 ちょっと微笑ましく思うディオスに、右隣にいるクレティアが耳打ちする。

「なんか、あの子…面白いわね」

「ああ…確かに」

 ディオスは小声で呟き頷く。


「おい、早く説明せよ」とゼリティアが苛立ち促す。


「ええ…その、まずはどこから…」とカルラが困っていると、クリシュナが抱き付くラーナの肩を掴み退かし

「ラーナ。ちょっと隣にいて」

「はい、クリシュナ様!」

 ラーナは大人しくクリシュナの隣に座る。

 凄く従順だ。だが、座った直ぐにディオスを並々ならぬ顔で睨む。

 

 えらく、嫌われているなとディオスは思う。

 

 クリシュナがカルラに

「カルラ…私を裏切り者として、処分しに来たの?」


 カルラは激しく頭を横に振り

「いいえ、裏切り者だなんて…クリシュナ様は、組織からディオス様と通じる連絡員として派遣されたとなっています」


「連絡員?」とクリシュナは戸惑いの顔である。


 カルラが身振り手振りで

「クリシュナ様が任務の為にバルストランに行った後、僅かな間、行方不明扱いになりまして、その後、バルストラン王の従者でありますディオス様の配下となっていると分かってからは、扱いがディオス様へ派遣した連絡員となりまして」


 クリシュナは右手を口に当て戸惑い「何故、どうして?」と口にしている。


 そんな姿のクリシュナにディオスが

「カルラくんだったか…どうして、クリシュナがオレの連絡員となったのだ?」


 その疑問にラーナが

「レオルトス王国での一件よ」


「何…」とディオスは鋭い顔をする。


 ラーナはディオスを凝視しながら

「お前が、レオルトス王国の内戦に干渉して、王立軍を勝利させた事が裏の世界では相当に有名な話として広がっているの。一万の軍団を壊滅させたり、七万の軍団を撤退させたり、アリストス共和帝国の大艦隊を航行不能したり…とね。とんでもなく強い魔導士のコネにクリシュナ様がなったという事になっているの」


 レベッカとユーリにチズがディオスを見つめる。

 三人はディオスが王の斥候として派遣された程度しか聞いていない。

 まさか…そんな事になっていようとは…。

 

 ディオスは側にいるレベッカ、ユーリ、チズに

「レベッカさん。ユーリ、チズ。この事は黙っていてくれ」


「は」とレベッカはお辞儀して、ユーリとチズも同じくお辞儀して頷く。


 ディオスは頭を掻きながら

「その話が出るって事は、それに相当する話を持って来たと…」


「はい…その通りです」とカルラは頷き「実は…」と言いかけた瞬間、ラーナが立ち上がり

「お前の力なんか必要ないからな!」とディオスを指さす。


「はぁ?」とディオスは訝しい顔をする。何も聞いていないのに…。


 ラーナは隣にいるクリシュナの手を取り握り締め

「クリシュナ様、トルキアに帰りましょう。私はクリシュナ様をお迎えに来たのです」


「ラーナ、落ち着いて…」とクリシュナは促す。


「いいえ、落ち着けません。だって、あのクソ野郎の妻となっているには、何か理由があるのでしょう。分かっています。だから、とっと始末を付けますね」

 ラーナが両手を広げ、クリシュナと同じ曲がり鉈を取り出し「死ね、クソ野郎!」とディオスに切り掛かる。

 

 それにクレティアが反応して剣を抜き「ダメ! ラーナ」とクリシュナが止めようとする。


「ストップ、ラーナ!」

 カルラとその仲間数人が、ラーナを掴み抱え抑える。


「離せぇぇぇぇぇ コイツを殺して、クリシュナ様を解放するんだ!」


「これ以上、事態をややこしくさせないでくださいぃぃぃぃ」と抑えるカルラが叫ぶ。


 ディオスは平静に、事態の混沌ぶりを見つめ「なんだコレは?」と呟く。


 ディオスとカルラ達の間にあるテーブルをドンとゼリティアが叩き

「いい加減にしろ。チャンと説明せんか…」

 凄い形相で、ラーナとカルラを睨む。


 カルラは青ざめ、ラーナはふくれっ面になるも、動きを止めない。


 クリシュナがラーナの頬を叩き

「ラーナ、いい加減にしなさい。何を勘違いしているか知らないけど…私は私の意思で彼の妻になったの。変な事を言わないでちょうだい」


 ラーナは両手から曲がり鉈を放し「うう…わぁぁぁぁぁぁぁぁ」と泣き出してその場に伏せてしまった。


 何だ。このカオスは?とディオスは、首を傾げる。


 泣き伏せるラーナの背をカルラは擦りながら

「ディオス様、我々の目的は、ディオス様を我が組織の本部があるトルキア共和国へお連れせよとグランド・マスター(最高位者)から命じられて来ました」


「ああ…組織のトップが?」とディオスは顔を訝しくさせる。


「はい、そうです…」


「理由は?」


「トルキアの隣国、ラハマッド共和国で軍のクーデターがありまして、クーデター軍と政府軍が戦ってレオルトス王国のように内戦になっております。恐らくそれをレオルトス王国のように収めて欲しいのでは、ないかと…」


「ああ…成る程…」

とディオスは納得した次に

「では、普通に接触すれば良かったではないか。クリシュナが連絡員となっているなら、尚更、簡単な筈だ。それをこんなにおかしくして…どういうつもりだ?」


 カルラは難しそうな顔をして

「始めは、我々もクリシュナ様にご連絡して接触しようとしましたが…。おかしい事に、組織にはクリシュナ様との連絡手段がなく…」


 それはクリシュナが、組織を裏切ったとしていたから、連絡もしていないから当然だろう。

 だが、それなら何故、連絡員となっていた事に尚更、ディオスは疑問が過ぎる。


 カルラは続ける。

「それで、最初はクリシュナ様を探す事から初めて、まあ…役所の資料をちょっと見せて貰ったり」


 ああ…要するに忍び込んで、盗み見たのか…とディオスは思う。


「そうして、情報を集めたらディオス様とクリシュナ様がご夫婦となっていて…。連絡員だったのが突然、夫婦となっていたので困惑してどうしようと様子を窺っていたら、ラーナが…ジャミングの魔法を唱えて…ディオス様を殺すと言って突入しようとして…何とか説得している時に、信号弾があがって…それで、何とか抑えて貰って、接触を…」


 ディオスは眉間が上がる。ああ…そうか…妙な気配ってこの子の…。

 そして、外で動いていた人影ってこの子を止める為に…。


「うぐ、うぐ…」と啜り泣いているラーナにいたたまれなくなり、クリシュナが「ラーナ」と優しく背を撫でている。


 ラーナは泣き腫らした顔を上げ、クリシュナに抱き付き「クリシュナ様ーーーー」と甘えて泣く。


 ああ…分かった。王都にいった時に殺気で見ていたのも、さっきから睨んで殺すとした行動の意味も理解した。この子は、クリシュナが大好き過ぎるんだ。

 クリシュナ大好きっ子だ。

 それが分かり額を抱えるディオス。

 

 ゼリティアがパンと両手を叩き合わせ

「よーく分かった。要するに、ディオスをお主達の問題解決の為に呼びたいと、そういう事じゃな…」


「はい…」とカルラは頷く。


「おい、ディオス…どうする?」とナトゥムラが尋ねる。


「んん…」とディオスは唸った次に「ソフィアに…師匠に相談だ。それからだ」


「まあ、そうだな…」とスーギィは頷く。




 その後、ゼリティア達は帰宅し、カルラと仲間の十名達は玄関で

「ここが連絡先です」とカルラが自分達のいる宿の連絡先をディオスに渡す。


「ああ…分かった」とディオスは受け取ると、広間でまだ、クリシュナに抱き付いているラーナを見て

「あの子はどうする?」


「すみません」とカルラは来て「ラーナ! 帰るです!」とラーナの背を引っ張る。


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と子供のように駄々をこねるラーナ。


 ディオスは項垂れ「その…差し支えないなら、預かりますので…」


「本当にすいません」とカルラは頭を下げる。


 カルラ達は宿泊へ戻り、ディオスはクリシュナから離れようとしないラーナを見て

「クリシュナ…気が済むまで相手をしてやりな」


「ごめんなさいアナタ」

と、クリシュナは困惑気味に答える。


 ディオスはラーナを見ると、ラーナはべーと舌を出してバカにした。

「ふ…」とディオスは苦笑いをした。

 



 翌日、ディオスは王宮へ向かい、王の執務室へ入るとソフィアが、王の執務机で座りながら、呆れた顔をしている。


 その様子から、ソフィアが事情を察していると分かり

「ソフィア…事情だが…」


 ソフィアは肩を竦め

「聞いているわよ。ゼリティアやナトゥムラ達から…」


「そうか…で、オレとしては行った方がいいと思うが」


「ふ…」とソフィアは深くイスに座り

「トルキアか…ユグラシア大陸中央部の国よね…。ラハマッド共和国ねぇ…」


「やはり、マズいか…」


「いいえ。寧ろ、何とかした方がいいかもしれないわ。ユグラシア大陸とアーリシア大陸は隣接しているのは知っているわよね」


「ああ…」


「ここ最近、ラハマッドの内乱のお陰で、ラハマッドやその周囲にある地区から、戦火を逃れようとして脱出する難民が多く出ているの。勿論、その難民はアーリシアの方まで来ているわ」


「で、どういう事なんだ?」


「こういう事よ。急な人の移動は、色々と問題を起こす。アーリシアに逃れてきた難民は皆、レスラム教徒なの。崇拝する宗教は自由よ。でも、突然に現れた別宗教にアーリシアのシューティア教徒達は混乱して、衝突が起きている。他にも就業や住居、生活といった様々な問題もね」


 ディオスはフッと笑む、言わんとしている事が分かった。

「つまり、早く内乱を終わらせて難民には自国へ帰って貰いたいと…」


「そういう事、住みたくて来た分にはいいけど、来たくないけど、逃げて来たなんてのは話が別よ」


「分かった。早めに解決してくるよ」


「今回はどうするの? また、王の斥候って事にして置く?」


「いいや、今回は暗部の組織との繋がりだ。個人的に旅行に行っているという方が都合がいいだろう」


「じゃあ、長期休暇って事で」


「すまない、師匠」


「いいから、でも…目立つ事をするんじゃないわよ」


「分かっている…」



 ソフィアから了承を得て、ディオスはカルラに連絡する。

「行く事になった」


「本当ですか! 良かった。トルキアの移動は全部、こちらで持ちますので」


「ああ…頼む」

 ディオスは屋敷の戻り、事情をレベッカやユーリにチズに説明して

「という事だ。屋敷の事を頼む」


「畏まりました」とレベッカのお辞儀にユーリとチズも続いた。


 その後、ゼリティアに連絡して

「という事だ…」


「分かった。まあ…魔導石の生産は落ち着いておるから、大丈夫じゃろう。気をつけて行ってこい」


「ああ…」


 そして、広間のソファーにいるクレティアと、クリシュナに

「行く事となった。準備を頼む」

「了解ダーリン」

「分かったわアナタ」

と、二人は返事をして、ディオスはクリシュナに抱き付いているラーナを見て

「という事だ。よろしく頼むぞ」


「べーだ」

と、ラーナは舌を出した。相変わらず態度が悪い。


「はぁ…」とディオスは項垂れた。

 そう、ラーナは昨日の夜から全くクリシュナから離れようとしない。母親にべったりの子供のようだ。



 カルラ達が用意した飛空挺に乗ってディオス達は、一路、トルキア共和国へ向かう。

 その飛空挺の中で

「嫌だ。絶対に離れない!」

 ラーナはクリシュナから離れようとしないので、カルラ達が

「いい加減にするですラーナ」

と、離そうとするが、ラーナはクリシュナにしがみつき


「絶対に嫌ァァァァァァ」


「はぁ…」とクリシュナは溜息を漏らし「ラーナ」と額に右手の一差し指を置いて「ちょっと、おやすみなさい」

 クリシュナは、眠りの魔法を使う。

”スリープ・ドリーム”

 ラーナは、スッと眠りに入り、クリシュナから手を離す。


「ありがとうございますクリシュナ様」

と、カルラ達はラーナを抱えて運んでいった。


 その様子に「大変だな」とディオスにクレティアは苦笑いする。


 クリシュナは二人に近付き

「一息つきに行きましょう」


 飛空挺の下部にある展望室へ来る。


 三人は、三人用の大きなソファーに座りながら


「見事な駄々っ子ぶりがある意味、清々しいくらいだ」

 ディオスは真ん中にいる。


「大変ね。クリシュナも…」

 クレティアはディオスの右に


「ホント…あんなになるなんて…思いもしなかった」

 クリシュナはディオスの左に


 ディオスは、二人の肩に手を伸ばして置いて

「なぁ…クリシュナ。あのラーナとはどういう関係なんだ? ただの教えた仲とは思えないが…」


 クリシュナは遠くを見て

「八年くらい、一緒に暮らしていてね。姉か母親のような感じだと思っていたわ」


 クレティアは悪戯に笑みながら

「ああ…だから、お母さんが取られたと思って、あの駄々っ子ぶりかぁ…」


「それを聞くと、あの子には悪い事をしたなぁ…」とディオスは呟く。


「いいのよ」とクリシュナは首を振り「あの子はもう、十七なんだから、そろそろ独り立ちの時期よ」


「あんな様子だと、無理かも」とクレティアは茶化す。


「止めてよ」とクリシュナは困った顔をする。


「なぁ…」とディオスが「クリシュナがいた組織とは、どんな所だ?」


 その問いにクリシュナは難しい顔をして

「一言で言うなら、レスラム教に関する汚れ仕事を受け持つ組織よ」


「歴史はどの位だ?」


「そうねぇ…レスラム教が誕生した二千年前くらいから続いているかも」


「じゃあ…」とクレティアが見つめ「教会の秘匿組織サルダレスルみたいなもんなの?」


「まあ…似ているかもね」とクリシュナは言った後、躊躇い気味に「その…アナタなら分かっていると思うけど…。私は、組織の中でも暗殺を専門としていたから…」


 ディオスは息を吐き

「まあ、その辺の過去は問わないさ。言いたくない事も多いだろう」


 クリシュナはディオスに身を寄せ

「ありがとう…アナタ」


 クレティアが「じゃあ、クリシュナ。組織に戻る訳じゃない。また、同じように組織に所属するの?」


「いいえ、用件が済んだら。みんなと一緒に帰るわ。もう…アナタ達の家族なんですから」


「そう、良かった」とクレティアは微笑む。


 ディオスは優しくとクリシュナを撫で

「そうか…」

 三人は家族である。それを再確認したディオスであった。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話もあります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。


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