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第178話 純也ショック再び 前編

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


それは何気ない日常だった。釣りを楽しみ夕食のネタを確保しようとする純也に、仲間のダラス、ウルア、メディナの三娘達が来た。そのやり取りが後々に…


 世の中には、様々な行き違いがある。

 それはチョットしたニュアンスの違いによって生じる。

 とくに、男女では、それが最も顕著に表れる。



 ダラスは、バルストラン王都東にあるブルードラゴン町の暮らす屋敷で、ベッドに俯せになって、左手の一差し指にある仮の双極の指輪を見つめる。


 アクルカンの実験の後、ディオスは仮の双極の指輪を回収しようとしたが

「はぁ? 欲しいだと?」


 ダラスがこの仮の双極の指輪を欲した。

「いいじゃないか…今回の実験の報酬の一部として貰ってもいいだろう」


 ディオスが渋い顔をする。

 厳つい顔のディオスが渋い顔をすると、睨んでいるように見える。


 ダラスはそれに怯える。


 ディオスは首を傾げ

「まあ…いいだろう」

 そう、別に持って行かれようと問題ない。

 あくまでも仮の双極の指輪だ。

 本物の自分がしている双極の指輪を真似て作った、グレードダウンの魔導アイテムだ。

 取り外し出来ない本物とは違って、簡単に外せる。

 大した価値はない。


 そして、今、ダラスはディオスから貰う事になった双極の指輪を指でなぞりポーとしている。

 僅かでも、純也とこれを通じて繋がった。

 ちょっとだけ、純也の感触を感じたのだ。

 それもあってか、実験の時、ハイテンションになってしまった。

 純也を感じられて嬉しかった。

 その事を思い返した後、ダラスは純也がいる所へ向かった。

 純也は、おそらく…傍にある湖へ釣りに出掛けている筈だ。


 ダラスがブルードラゴン町の傍にある湖に来ると、岸辺の桟橋に純也が釣りをしていた。

「やあ…」

と、ダラスは固い感じで純也に呼び掛ける。


「おお…」

 純也は釣り竿を持ったまま応対する。


「どうだ? 釣れそうか?」

 ダラスの問いに


 純也は

「まあ…ボチボチさ。夕方には四人で食べられるくらいの量は釣れると思う。まあ…ダメだったら、近場の魚屋で大きなヤツを買って帰るよ」


「そうか…」

 チョッとダラスは緊張気味で、純也は平然と釣り糸の先にある浮きを見ていると、ダラスが

「もう…長い付き合いだなぁ…」


 純也は平然と

「そうだなぁ…もう…二年くらいか?」


「二年半だと思う」


「そんなにか、色々とあったけど…なんとかやっているなぁ…」


 ダラスは唾を飲み込み。

「なぁ…このまま…ズッと一緒にいるのかなぁ…」

 ダラスは、二人でやっていけるかぁ…?


 純也は…

「まあ、そうだろうなぁ…」

 仲間としてだ。


 しかし、ダラスには

 二人でやっていくのもいいかもしれない。

 そう、聞こえてしまった。

「そ、そうか…」

 ダラスは顔が真っ赤になり俯き

「お前がそのつもりなら、全然構わない。うん、いいかもなぁ…」


 純也はあくまで仲間として

「そうだな」

 仲間としてやっていくなら、ありだろう…と。

 

 しかし、ダラスには全く違った意味で伝わり

「分かった!」

 その場から走り出した。


「なんだアイツ?」

 純也は首を傾げた。


 悲しき男女のすれ違い。


 ウルアは、銀行に来ていた。

 四人が共同で持っている金貨通帳の記帳に来たのだ。

 金貨通帳には、毎月、決まった額の金貨が入っている。

 まずは、純也の王都での守護騎士としての給金。

 魔物を狩るハンターとしての報酬。

 純也が、シンギラリティのお陰でドラゴンといった強大な魔物の相手を出来るので、大きい報酬だ。

 そして、倒した魔物から取れた魔導石の販売金。

 ウルアはちょっとした守銭奴的な面があるので、四人のお金の管理を任されている。

 ダラスとメディナは、金遣いが荒いが…純也はとてもモノを大事にして、月に金貨二枚のお小遣いで満足してくれる。

 しかも、お小遣いが余ったら、それで四人して何処かに食べに行ったりして奢ってくれる。

 同年輩の十八なのに、本当にしっかりしている純也。


 ウルアの脳裏にとある事が過ぎる。

 このまま、もし…二人で…。


 そう、思いつつ銀行を出て純也のいる湖の桟橋に来た。

 途中で、走って行ったダラスと行き違う。


「やほーーー」

 ウルアが釣りをしている純也に呼び掛ける。


「ああ…なんだ?」


「今日の夕食、釣れそう?」


「ああ…ほら…」

 純也は、三十センチの大物が入った魔導クーラーボックスを開けて見せる。

「さっき釣れてなぁ。活き締めしておいた」


「あと、もう一匹釣れそう?」


「多分、四人分は釣れるかも」


「そっか…」

 ウルアは純也の右に座り

「ねぇ…純也…何だかんだ言って、アタシ達、上手くやっているじゃあない」


 純也は釣りをしながら

「そうだなぁ…」


「このまま、かなぁ…」


「当分の間は、そうかもしれないが…。状況なんて変わる時は、変わるさ」


 ウルアは、湖面を見つめ

「じゃあさぁ…アタシと一緒に色々とやらない?」


 純也はあくまでも仲間として

「ウルアは、しっかりしているから、いいかもなぁ…」

 そう、仲間としてだが、ウルアには違って聞こえていた。


「そっか」

 ウルアは立ち上がり

「お魚、楽しみにしているから」

 純也に背を向けて歩き出した。にやけた顔を見られたくないから…


「なんだ?」

と、純也は首を傾げた。




 メディナは、本屋に寄った帰りだった。

 魔法の術式が記されている本を手に抱えながら、ブルードラゴン町を散策する。

 思い返せば、ダラスとウルアに自分の三人でこの町に来た時に上手くやれなくて苦労した。

 そして、切っ掛けは最悪だとしても、純也が入ったお陰で、何とかやっていけるようになった。

 色々と問題も起こしたけど、純也のお陰でやってこれた。

 自分は十六になった。

 まあ、豊満な体型が多い獣人族としては、体は慎ましやかだけど…でも、魔法では自信がある。

 右腕にある呪印を見る。これは純也から魔力を供給している。

 メディナと純也の魔導波紋は、ディオスと妻達三人のように一致しているので、純也のシンギラリティから魔力を貰いたい放題だ。

 純也も、何だかんだで優しいし助けてくれる。

 メディナは、母親から教えられた良い男性というモノを思い返す。


 見栄を張らず、自分をしっかり分かっていて、優しく思いやりがある相手がいい…と。

 

 メディナはグッと拳を固め、純也がいるであろう湖の桟橋へ行く。

 途中、ウルアとすれ違いつつ、純也が釣りをしている桟橋に来る。

「純也、どうです?」


 メディナへ純也は向いて

「ああ…大物が二匹釣れた。今夜の夕食は豪勢だぞ」


「そうですか…」


「夕飯のネタでも見に来たのか?」


「その…私達ってなんだかんだで、上手くやっているじゃあないですか」


「そうだな…」


 メディナは緊張しながら

「このまま、ズッとやっていけますかね?」

 メディナは釣りをしている純也を見る。


 純也は平然と

「やっていけるんじゃないか?」

 それは、あくまでも仲間として…という意味だ。


 メディナは顔を明るくさせ

「そうですね! ええ! 私達、やっていけますよ!」


「オレもそう思っているけどなぁ…」

 純也はあくまで仲間としてだ。


「はい!」とメディナは明るく告げて、その場を後にする。


 純也はその背を見つめ

「なんだ? 今日は、変な日だなぁ…」

と、思いつつ、釣り竿に反応があり、新たな魚を釣り上げた。


 全ては、男女の行き違いである。

 純也は、仲間としての意識であり、ダラスにウルアとメディナは違った意味での答えを出してしまった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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