第173話 初恋メーターの真実
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あらすじです。
ディオスは企みがバレて、散々な事となり、貴重アイテム初恋メーターを分解して使えなくするしかなくなり、ソフィアや妻達、レディアン立ち会いの下、分解式をするも、そこにあった初恋メーターには…
「フン!」とソフィアはディオスに腹パンした。
「うぐぅ…!」
ディオスは、殴られた腹を押さえて膝を崩した。
そう、初恋メーターで相手の初恋を探ろうとするプライバシー侵害を犯したディオスに、容赦はない。
「お前…」とソフィアは怒りに燃えている。
レディアンは呆れて額を抱え「全く」と呟く。
クレティア、クリシュナ、ゼリティアは「はぁ…」と三人溜息を漏らしている。
自業自得だ…と
ディオスは蹲り
「すいません。本当にすいません」
ソフィアは、机の上にある没収した初恋メーターを手にして
「全く、何てアイテムなの!」
レディアンが
「妙なアイテムもあるものだなぁ…」
ディオスは、手で殴られた腹を擦りながら立ち上がると、ソフィアがその襟を掴み
「アンタ…これ、今すぐ分解しなさい」
「え…でも、貴重な…」
「こんなプライバシー侵害をする魔導アイテムなんて、貴重でもなんでもないわ!」
グッとソフィアは襟を絞めた。
「う…はぁい」
と、ディオスは息苦しそうにして同意するしかなかった。
ディオスは、魔導収納から修理キットを取り出し、王の執務机の上で、初恋メーターなるアイテム分解式が始まった。
ああ…貴重なアイテムなのに…
ディオスは残念に思っている後頭部をソフィアが叩き
「早く! 分解する!」
ディオスは顔を渋くして
「はいはい」
と、初恋メーターの分解を始める。
まずは、作動動力を供給する接触型魔力回収機構が来て、次に精神を読み取るムネモシュと似たような魔導回路の分解。
そして、最後の相手の精神を読み取って受け取った情報を解析して、装備者に伝える部品に来たが…
「んん?」
ディオスは唸った。
「どうしたの?」
ソフィアが尋ねる。
アイテム最後の部分は、結晶型の部品だ。大きさ的に親指の爪くらい。
結晶型の魔導回路も珍しくはない。だが…それは明らかにそういう類いとは違う。
ディオスは、顕微鏡を取り出しその部分を覗くと
「え? 何?」
驚くディオスにクレティア、クリシュナ、ゼリティア、レディアンも寄り
「どうしたの? ダーリン」
と、クレティアが
ディオスは、結晶部分の部品だけになった初恋メーターを握り
「この中核に使われている部品、ゼウスリオンの構築材料の元となったエルギアの素材で出来ている」
『え!』と全員が驚きを放つ。
クリシュナが
「本当なの?」
「ああ…間違いない」
と、ディオスは肯く。
その翌日、ケットウィンにお願いして直ぐに残りの見つかった初恋メーターを持って来て貰った。
ディオスの屋敷の広間で、ディオスな持って来てくれた五個の初恋メーターを分解して
「やっぱりだ。同じようにエルギアの素材が使われている」
広間には、ソフィア、レディアン、妻達のクリシュナとクレティアにゼリティア、持って来てくれたケットウィンもいる。
ケットウィンが
「そんな…。コレは個人が製造販売したアイテムですよ。製造に国家規模の力が必要な部品が入っているなんて…信じられない」
レディアンが
「偶々、その個人の工房が作り出したとか…」
ディオスは首を横に振り
「ムリだ。エルギアの素材を作り出すには、賢者の石から金を作ると同じように、巨大な施設が必要だ。それを個人の工房が持てたとは…想像出来ない」
クリシュナが
「じゃあ、何処から盗んで加工したとか?」
ディオスは否定の首振りをして
「それもありえない。どこから盗んだと仮定しても、機体の部品として加工された場合は、そこから再度、別にするには、製造方法と同じ手順を取らないと加工されてついた性質がリセット出来ない」
クリシュナが
「つまり、どっちにせよ。国家規模の大きな施設が必要になると…」
ディオスは手を顎に当て考え
「ケットウィンさん。これを作った人物って分かりますか?」
「ええ…まあ」と頷くケットウィン。
「その人物、調べて見ましょう」
ディオスは嫌な予感を過らせる。
そして、ケットウィンが教えてくれた人物の資料を王宮から取り寄せ調査していると…
「どういう事だ?」
ディオスが額を抱える。
「どうしたの…」
クリシュナが聞く。
ディオスは鋭い顔で
「このアイテム、百近くが出回り、数週間後に回収されている」
クレティアが
「そりゃあ…プライバシー侵害があったんじゃあないの?」
ディオスが鋭い視線で、資料を見て
「このアイテムが出回った場所、殆どが貴族の名家や、資産家の所で、しかも、回収するように報告を出したのは、作った本人からだぞ」
ディオスは更なる調査が必要と思い
「もっとアイテムを調べて見る」
そうして、細かく初恋メーターを分解すると、何とデータを蓄積するメモリーのような魔導回路が小さいながらも備わっていた。
ディオスは考える。
どういう事だ?
流通した量に比べて、回収する速度が速い。
しかも、データを取る部分も備わっている。
何のために…?
考えるディオスの隣でソフィアが
「変なの。始めから回収するつもりだったみたい」
ディオスはハッとした。
そうだ、回収する予定で作ったんだ。
理由は? まさか…エルギアの素材の研究の為に…。
確かにこの程度の小型なら、それにエルギアとして素材だった頃ならゼウスインゴットと違い。そんなに浸食作用も強くない。ほぼ、皆無だ。
つまり、様々な精神の感応を試して、素材の向上を狙った実験だった。
こんなの、個人が出来るレベルを超えている。
まさか…。
ディオスはある予感を抱える。
そして、子供達がアリストスへ帰る日、それに同伴保護者としてディオスが付きそう。
六人の娘、息子達と共に飛空艇に乗ってアリストスへ向かい。
子供達を、一人一人アリストスの家に送り、そのアリストスでの親と固く握手して、また会おうと誓い合った。
子供達を送り終えて、ディオスはとある場所へ向かった。
そこは、アインデウスがいる世界樹城だ。
天高くそびえる飴色の世界樹型の巨城を前に、ディオスは鋭い視線である。
アインデウスの世界樹城へ入ったディオスは、早速、アインデウスと執務室で話し合う。
まずは、エルディオンの扱いについてだ。
向かい合うソファーでアインデウス、ディオスが対面でソファーに座る。
説明の資料を見るアインデウス
「うむ。成る程…妥当な線だな。これで、行こう。ザラシュストラの区分になった時だが…」
色んな権限や、その他諸々を話し合い。大体が決まった後、ディオスがあの初恋メーターをアインデウスの前にあるテーブルに出した。
アインデウスがそれを見て
「何かね?」
ディオスは渋い顔をして
「何だね? じゃあなくて、何かね? ですか…。つまり、これについて知っているのですね」
アインデウスは、悪びれもなく
「ああ…知っているとも」
逆に堂々としているので、ディオスの方がショックが大きい。
「これ…どういうモノか、分かっていますよね」
「ああ…初恋の相手を知れる魔導アイテムで、コア部品にエルギアの素材が使われている」
「はぁ…どうして、こんなモノを作ったんですか?」
「エルギア技術の利用価値の再検証の為だ」
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