第172話 初恋メーター事件 後編
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでいってください。
あらすじです。
ディオスは、ソフィアに対する日頃のイライラの解消の為に、ソフィアに初恋メーターを使おうとしたが…
ディオスは、右手に特殊魔導アイテム、初恋メーターなるモノを握っていた。
ケットウィンから貰い修理して、いざ使って見て分かった事。
以外や、周りにいる貴族の人達は、初恋の相手と結ばれている。
その傾向として…親同士の口約束の許嫁だ。
あくまで、自分の周りでの事であって、それ以外はあると考えた方が当然だろう。
だが、それを見れてチョッとホッコリと心が温かくなった。
地球では、何時かの面白統計で、初恋の相手と結ばれる確率は、百分の一だった。
この世界の暖かい部分を見れて良かった。
この位が頃合いだ。
そう、ディオスは思って、このアイテムを封印しようとした。
使えなくするのは簡単だ。
装置の魔導回路の一カ所にある、魔導部品を抜けばいい。
それで、置物になる。
初恋メーターを開けて、魔導回路にある部品を抜こうとする寸前。
脳裏にアイツの顔が過ぎった。
ソフィアだ。
…………………
どんな、相手がソフィアの初恋なのだろうか?
普段から、腹パンされたり、ワガママに振り回されたり、チョット怒りがこみ上げ。
仕返しの優越感の為に、今一度、これで最後の初恋メーターを使う事にした。
これが最後だ。
翌日、ディオスは、王宮に行く。
目的は、エルディオンの管轄についての話し合いだ。
ディオスがヤヌスゲートを潜ってゼリティアの城邸から王宮へ向かった後、ディオスの屋敷の庭で子供達に、武術の指導をしているクレティアが同じくしているクリシュナに
「ねぇ…クリシュナ。ケットウィンさんの屋敷から帰ってくるバスの中でダーリンが話した事」
クリシュナが首を傾げ
「ええ…ちょっと妙だったわね」
クレティアは腕を組み
「ダーリンって意外と無駄な事をやらないからさぁ…」
クリシュナは右手を顎に置き
「そうよねぇ…。自分の初恋の相手をバラして、それで…何か…その後が続かなかったわね」
「あの流れだと、ダーリンは、アタシ達の初恋の相手も、どんな人って聞きそうな感じには…」
「ええ…そうなると私も思っていたわ」
「妙だよね。ダーリン、自分の初恋の話をした後、ちょっと挙動不審だった」
「んん…気になるわ…」
クリシュナが唸っていると、そこへチズが
「クリシュナ奥様、クレティア奥様。通信です」
と、魔導通信機をチズが持って来た。
それをクリシュナが受け取り、多数会話モードにした。
「はい、クリシュナですが…」
『ああ…クリシュナさんですか!』
ケットウィンだ。
クレティアが
「どうしたんですか? ケットウィンさん」
『実は、前にディオスくんが、部品取りで持っていた壊れた初恋メーターなる魔導アイテムが他にもあって、もし…良かったら部品取りに欲しいかなぁ…と』
クリシュナとクレティアは『ん!』と声を合わせて唸った。
クリシュナが
「それは…どのようなアイテムで?」
『名称の通り、相手の初恋の相手を知る事が出来る魔導アイテムです。壊れていたのか…動きませんでしたし。他の同じアイテムもあって、同じく壊れているので…』
クレティアが
「あの…ダーリンは、そのアイテムを貰った後…どうしました?」
その問いに、ケットウィンは答える。
ディオスが言うには、結局直らなかった。その後、ディオスが、その初恋という名称で、自分の初恋話をしてくれた事、その後、どういう事か…ディオスが自分の初恋の相手が奥さんだと見破った事を話した。
クレティアとクリシュナの顔が渋くなる。
まさか…夫は…。
直感が告げる。ディオスは初恋メーターを直して使った…と。
その後、二人は急いでヤヌスゲートを潜ってゼリティアの城邸に入り、ゼリティアに事情を説明する。
ゼリティアは渋い顔をして
「全く、夫殿は!」
こうして、三人してディオスの後を追った。
ディオスは、王宮の王執務室にて、ソフィアとレディアン、カメリア、数名の仕官達と共に、エルディオンの管轄の話を進める。
レディアンが
「という事だ。この辺りが定石だと思う」
ソフィアも
「そうね。妥当な所よね」
エルディオンは、普段は、アーリシア統合軍のイチ戦艦飛空艇という事にして運用しつつ、エニグマや大きな世界的事件の動きに関係する時は、所属をディオスが最高執行官を務めるザラシュストラに切り替えるという、ダブルな使い方に落とし所とした。
アーリシアとして区分が決まり、次はアインデウスが関係するザラシュストラとしての区分だ。
これは、アインデウスと話し合うしかない。
ソフィアが
「ねぇ…後、少しで子供達がアリストスに帰るのよね」
「ああ…」
ディオスは頷く。
ソフィアは
「アンタが子供達について行ってアリストスに帰す事にして、その後、アインデウス皇帝と話し合うって算段にしない」
ディオスは肯き
「その方が無駄がないな」
レディアンが
「では、決まりだ。エルディオンとアーリシア統合軍との連結を行うので、作業員が入れる日を決めてくれ。それと、その他諸々の書類のサインも頼むぞ」
「了解した」
ディオスは納得して肯き、これにて話し合いは終わった。
その後、ディオスが
「なぁ…ソフィア…」
王執務机で背伸びするソフィアに呼び掛ける。
「どうしたの?」
ソフィアが首を傾げ
「ソフィアの初恋って何時なんだ?」
と、ディオスが問う。
「はぁ?」と訝しい顔をするソフィア。
「いや…その…この日は、ね…思い出すんだよ」
ディオスは、とある昔にあった話をする。
十五の時に好きだった女の子が、告白してくれて嬉しかったが、直ぐに多数の女の子の友達が来て、実は好きじゃあない相手に告白する罰ゲームだったとなった話をする。
その時期が丁度、今ぐらいで思い出した…と。
それを聞いていたソフィアと、傍にいたレディアンがフッと笑み。
「そうか…それは…何とも…無残な青春だな」
レディアンは、半笑いだ。
そして、その背に霞が出て初恋の相手が出た。
それは、夫のシュリナーダだ。レディアンもどうやら、貴族全般の付き合いが長い相手が初恋の人物らしい。
ソフィアは…
「へぇ…ふ…ん」
チョットバカにしたような笑みだ。
ディオスの額に青筋が出る。
ムカつく
と、ディオスは思いつつ、ソフィアの背後に霞が出る。
お、初恋の相手が出てくるそこへ、ドンと部屋のドアが開き
「ダーリン!」
クレティアが呼び掛けた。
「え…」
ディオスは後ろを向くと、クレティアとクリシュナにゼリティアが開いたドアにいた。
「どうした? 三人とも…」
三人はディオスの前に来ると、ディオスをジーと見つめる。
「ええ…? え?」
戸惑うディオス。
クリシュナが
「ケットウィンさんから連絡があったわ。とある魔導アイテムが多数見つかったから、部品取りに欲しいかって」
ディオスは首を傾げ
「え、何のアイテム?」
クレティアがフッと笑み
「初恋メーターってヤツらしいわ」
ディオスが僅かにピクッと震え
「ああ…そう。他にもあったんだ」
ゼリティアが
「夫殿。初恋メーターを直したのであろう…」
ディオスは無意識に、初恋メーターをしまっていた魔導士ローブの腹部内ポケットへ手を置いてしまった。
素早く、クレティアは手を入れて初恋メーターを取り出した。
ディオスは、真っ青になり
「ああ…う…ああ、うああ」
しどろもどろになるディオスに、クレティアが
「これ、何なの?」
チン! ディオスは覚悟を決めて項垂れた。
「すいません」
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