第170話 初恋メーター事件 前編
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
ディオスは家族と共にケットウィンの屋敷に来ていた。その屋敷の傍にあるケットウィンの一族が代々収拾する魔導アイテム保管庫で、聖剣ガリアラスと聖槍カシリウスと同じようなモノが無いか探しに来て…
ディオスはバルストラン南部のケットウィンの屋敷に来ていた。
侯爵であるケットウィンの屋敷は大きく、大きな地下保管庫がある。
そこには、先祖代々が集めた様々な魔導アイテムが保管されているのだ。
その規模、東京ドームクラスだ。
ケットウィンの先祖達が集めた魔導アイテムの種類は、豊富だ。
日用品、珍しい魔導兵器。戦車みたいな魔導兵器まである。
チョッとしたアミューズメント施設だ。
子供達は?
「パパーーーー」
そう、いる。
フェルが両手に握れる魔導アイテムを持って来た。
「これ、どう?」
ディオスが見て
「んん…どれ?」
それは人形の玩具の魔導アイテムだ。
説明によると、魔力を送ると喋ってくれるらしい。
その種類は数千個。
似たような玩具も地球にあったなぁ…。
子供達十人もディオスと同じく、この保管庫にいた。
子供達は珍しいアイテム達に好奇心を刺激され、手にしては楽しんでいた。
家族してケットウィンの所へ遊びに来ていたのだ。
ディオスが隣にいるケットウィンに
「すいません。子供が迷惑を掛けて…」
ケットウィンは微笑み
「いいですよ。ここに保管されているアイテム達に、久しぶりに手にしてもらって、喜んでいますから」
「ありがとうございます」
ディオスは頭を下げる。
「で…お望みのモノは、見つかりましたか?」
ケットウィンの言葉にディオスは、渋い顔をして
「んん…どうやら…」
「そうですか…」
ディオスが、ケットウィンの一族が集めたアイテム保管庫に来た理由は、あの聖槍カシリウスと、聖剣ガリアラスと同じようなモノがないか…と探しに来たのだ。
まあ、擬似的にドッラークレスのような存在を作り出せる技術は、二千年前の当時に色々な所で使われていたと精霊のハルヴォアから聞いた。
もしかしたら、それと似たか相当のモノがあるかも…と期待したが…無かった。
「みなさーーーーーん」
保管庫で呼び声を放つ少女。
ピンクの髪に140センチのドレスを纏う少女は、声を張りながら
「みなさーーーーん。外でバーベキューの用意が出来ましたからーーー 食べましょうーーー」
彼女は、ケットウィンさんの奥さん。
ピンクの髪で少女のような見た目とは裏腹に、ケットウィンさんより、十も年上の五十代の精霊の眷属だ。
四十代のケットウィンさんも、見た目は二十代後半のように若い。
奥さんと並ぶと、ケットウィンさんの方が年下なのに、お兄さんのように見える。
ケットウィンが奥さんのチョコタンに近づき
「ありがとう、チョコタン。さあーーーー 皆さーーーーん」
『はーーーーい』
と、子供達が顔を見せに集まる。
七人の姉達や兄達に手を繋がれて歩く、ティリオとリリーシャにゼティア。
子供達は、ケットウィンさんの後に続き、それにディオスも行こうとしたが、妙なハート型の魔導アイテムが目に入る。
「なんだコレ?」
ディオスは手にして、そのアイテムに付けられている説明がインゴットされた魔導プレートに触れると
「んん? 初恋メーター?」
何となく気になって、ディオスは持って来てしまった。
ケットウィンの屋敷の大きな庭でのバーベキュー、ケットウィン夫婦と共にディオス達家族が、そして、もう一組の家族がいた。
ダグラスの家族だ。
ダグラスの十代半ばの息子と、十代付近の妹二人が、ディオスの子供達と一緒にバーベキューを楽しみ、その周りに母親達がいた。
当然、クレティア、クリシュナ、ゼリティアもいる。
チョッと離れたテーブルに、ディオスとダグラスにケットウィンの三人が酒盛りをしている。
ケットウィンが
「残念です。まさか、無かったなんて…」
そう、ディオスが望む物が無かった事を惜しむ。
ディオスが
「んん…まあ、特別なモノですからね…」
ダグラスが
「しかし、ディオスが…聖帝ですか…」
ディオスは首を傾げ
「実感ないですけどね」
ダグラスが
「あんまり、ムリして変な方向へ行かないでくださいよ。何時でも相談に乗りますから。祖先のようにね」
ダグラスは、エルフの国ノーディウス王国から出版された、ディオス・ディヴァイアスの本を手にすると同時に、ノーディウスからとある古い手紙を貰った。
それは…ダグラスの先祖アルベルドからだった。
これを読んでいる後の子孫よ。
もし、これが手の渡っているなら、全ての真実が明るみになっているだろう。
私は、狂った親友を殺して英雄になった。そう…言い伝えられているだろう。
だが、事実は違う。私は、このアーリシアと救おうと、汚名を背負ってまでも戦おうとした友、ディオスと共に今も、世界を混沌とさせようとする連中と戦っている。
私が、友を殺して英雄になったなんて真っ赤なウソだ。
これを読む子孫よ。これを手にした時、友であるディオスと同じ者が、降臨しているだろう。
その者の助けになって欲しい。
それは、手紙を書いている今も共に戦っている友と同じように。
その手紙を見て、ダグラスは涙した。
どこか、自分は親友を殺してのし上がった男の子孫という負い目を背負っていたからだ。
だが、真実は違った。
この手紙を貰えて本当に良かった…と。
現在、ケットウィン邸でのバーベキュー。
ディオスは、微妙な顔をして隣で酒盛りしているダグラスに
「その…最近、ソフィアがオレに対する風当たりが強くて」
ダグラスは苦笑して
「分かりました。まあ、和らげるようには…手紙か、何かで一言を入れますから」
「ありがとうございます」
ディオスはお礼を言う。
「あ…それと…」
ディオスは懐から、あの初恋メーターなるモノを取り出す。
「これ、何です? ケットウィンさん」
ケットウィンは見て
「ああ…今から三十年前に出た。個人製造販売のオリジナル魔導アイテムです」
「へぇ…個人の魔導工房で作られた…」
「ええ…でも、これって名称通りなら、かなりプライバシーの侵害になるので、差し押さえられましたけどね」
ディオスは初恋メーターなるモノを掲げ
「なんか、魔力を吸わないので、壊れているんですか?」
「はい、動かないですし」
「貰って良いですか? 精神系の魔導アイテムなら、珍しい魔導回路の部品取りにしたいので」
「いいですよ」
こうして、ディオスは初恋メーターなるモノを貰い。
子供達が寝静まった後、魔導収納にある簡単修理キットを取り出し、分解してみた。
「へぇ…人の精神を覗くムネモシュと似ているなぁ…」
そして、壊れている箇所を見つけた。
「何だ…ここの魔導コンデンサーが焼けて壊れているだけじゃないか…」
チョチョッとディオスは、壊れていた部品を外して交換する。
「よし…」とディオスは修理を終えて、握ると魔力が吸われる感じがした。
修理は成功だ。
これが、とある珍事件への始まりだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。