第167話 バルストランでの縛り
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ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
教主達の聖遺物から得たデータを元に様々な装備を設計する。そして、その聖遺物を解放した余波が…
レタリア共和王国から西の精霊へ行きバルストランに帰還したディオス達。
翌日からは何時もの様に、ディオスは午前中、まあ、夏休みで来ている子供達と共に妻達の訓練を受け、午後になると、魔法研究と魔導石の生成。
最近、ゼリティアの城邸の広間と、自分の屋敷の広間を空間を繋げるゲート魔導装置、ヤヌスで繋いだので、ゼリティアの城邸へ、作った魔導石を運んでいる。
因みに、空間ゲートのヤヌスは、人が入れる一メータ幅しかなかったが…二メータまで広げられるので、最大の二メータまで広げ、ゼリティアの城邸から色々と道具を入れたりもしている。
夕食は、屋敷で子供達、妻達、レベッカ達女中達と食事して、子供達は、本や色んな映画が見れるゼリティアの城邸へヤヌスを通って行った後、ディオスは一人、広間で魔導書を五つ取り出して、聖遺物から持ち帰ったデータの解析を行った。
分かった事は、各聖遺物の中にあったデータは、五種類の系統がある事が判明した。
つまり、槍のカシリウスと剣のガリアラスの二つを合わせると、十個の系統がある。
情報体の基本部分があり、それに何かに応じての個別の部分がある。
ディオスはこれを見て思ったのが…。
まるで兵装の換装パターンと同じだ…と。
そして、更に…カシリウスとガリアラスの構築物について…それは、ゼウスインゴットと似ている。
賢者の石をベースにして、作られる演算、発露、記憶の特殊金属であるゼウスインゴット。
今のゼウスインゴットよりかは…チョッとグレードは低いも、同じ設計思想である。
ゼウスインゴットを作れるのは、アインデウス達しかいない。
「チィ…また、アインデウスか…」
一体、幾つの秘密を抱えているんだ? 万年皇帝様は?
チョット苛立つも、ディオスはデータの解析を進める。
そして、カシリウスとガリアラスのコピーのようなモノを作れる設計図を完成させる。
二千年前よりかは、技術も進んでいるので小型化出来るし、それで出力も落ちる事は無い。
顔を覆うような外周の仮面のような、媒体装置の設計図を見るディオスは…。
「んんんんん。材料のゼウスインゴットが無い限り、出来ん!」
なら、データだけでも利用して、低出力だが、擬似的に装備のようにさせる装置を考える。
「おお…いけるな。出力は元の千分の一だが…。能力的には神格を発現させる神式と、神格の能力をエンチャンとさせる二式の中間的な装備だなぁ…」
まあ、貰ったモノは生かさないと、勿体ないしね。
そうして、色々と設計するディオスだった。
そして、翌朝。
その日は、王宮に行く日だった。
ヤヌスのゲートを潜ってゼリティアの屋敷から、ゼリティアと共に王宮へ行くディオス。
何時ものように、王執務室で法整備に勤しんでいると…。
「みんなチョットいい?」
王の執務机にいるソフィアが
「まあ…皆も知っていると思うけど、このバカが!」
と、ディオスを指さし、ディオスは戸惑い気味に自分を指さす。
その状態でソフィアが
「このバカが、聖遺物なんてモノを解放した所為で、各地区、シューティア教とレスラム教の管轄区域内から、このバカに、色々と行事に出席して欲しいっていう要請が沢山、来ています」
それを聞いて、え!とディオスは戸惑う。
その言葉にディオス以外、全員が「はぁ…」と重い溜息を漏らす。
やっぱりね…て感じだ。
ソフィアは額を小突き難しい顔で
「正直…コイツは、アタシの臣下な訳で、その…色々な宗教行事には、王族とか諸々の勢力が関わっているのよ。そうなると…まあ、引っ張り込もうっていう輩が出てくるわけよ」
レディアンが挙手して
「こちらで、関係できる行事の範囲を法的に設定した方がいいだろう」
スーギィが
「聖帝というビックネームに加えて、更に各教義発祥者の聖遺物を受け継ぐという、トンでもネームまで加わった。これを利用しない手はないと…躍起になる連中は、後を絶たないぞ」
ナトゥムラが
「なぁ…ディオス。色々と面倒な事になっているって…分かるか?」
ディオスは項垂れ「ああ…」としか言えない。
その後、どうするかの区分を後に決めるとして、ソフィアはゼリティアとレディアンを部屋に残した。
ソフィアが
「ゼリティア。どうして、止めなかったの?」
レディアンが
「そうだぞ。問題が大きくなるとは、思わなかったのか?」
ゼリティアは複雑そうな顔で
「夫と子供達の為じゃ」
『はぁ?』とソフィアとレディアンは驚きの声を漏らす。
ゼリティアは
「アリストスの子供達なぁ…。夫と同じくシンギラリティの力を持っているらしい」
「え?」とソフィアは驚き。
「どういう事だ?」
レディアンは戸惑う。
ゼリティアは
「子供達が、絆として夫の魔力が込められた破片を持っていたらしい。その影響以外でも、夫と子供達は度々、接触して夫からの魔力の暴露をされていたのが原因らしい」
レディアンが
「成る程、娘のジュリアと、ティリオくんと同じ事が起こったのだな」
ソフィアは面倒クサそうに頭を掻き
「成る程…アイツと同じになった子供達の為に、シューティアのサルダレス、レスラムのシャリカランの、暗部としてのパイプがあった方がいいと…」
ゼリティアは肯き
「そういう事じゃ。表側だけでは守りきれん…」
レディアンが眉間を押さえ
「政府、王族、宗教、暗部、様々な組織が絡む板挟みなら、ディオスやその子供達に下手に手出しが出来なくなる…。そういう事か」
ゼリティアは「ああ…そうじゃ」と肯定した。
ソフィアが机に腰掛け腕を組み
「でも…どうしよう。あっちへ引っ張れ、こっちに引っ張られって、今、激しい綱引きが起こっているわ。どうしたら…」
レディアンも顎に手を当て考え
「何か、いい妙案は…」
『んん…』と三人は悩んでいた。
ディオスは、王都を散策していた。
だいたい、王宮の仕事が終わると、王都に出て趣味のお菓子作りや料理の材料を買ったりする。
そんな中
「あの…」
赤ちゃんを連れた親子連れが来た。
「ああ…どうも…」
と、ディオスはお辞儀して
母親が赤ん坊を
「この子に祝福を…」
「あ、はい」
ディオスは赤ちゃんを抱いて、額にキスして、右手に聖印で作る黄金の結晶を渡す。
「ありがとうございます」
と、両親は嬉しそうだった。
家族無しで王都を歩く日は、こういう事が多くなった。
何でも、周囲が気を遣って、王都で単独で動く日だけに尋ねるように日程が、密かに出回っているらしい。
そんなの防犯上、良いのだろうか?
いや、大丈夫なのだ。
「おい、これで終わりか?」
店の奥からナトゥムラが片手に荷物を持って出てくる。
そう、バルストラン次期剣聖のナトゥムラが警護してくれる。
まあ、正直、バケモノ オブ バケモノのディオスに、挑んで勝てると思っている者はいないが…一応の護衛である。
ディオスはナトゥムラと共に買い物の帰り
「ああ…なんで、こんなに面倒な事が…」
ナトゥムラが肩を竦め
「仕方ないだろう。お前、色々と背負わされる運命なんだから」
ディオスは不意に
「もっと、強力な、そう、バルストランと離れるなんてムリですよ…なんて事…」
と、ディオスは不意に王都の都議会選挙の看板を見る。
地区で立候補している候補者達の画像が出ている魔導看板を見て
「あ…」
と、声を漏らす。
そうだ、もっともバルストランでズブズブの関係なのは…政治だ。
評議員は、バルストランの様々な権益や利権、その他、諸々と絡みまくっている。
もう、身動きが取れない位に絡んだ何かで、バルストランに縛って貰おう。
そう、ディオスは考えた。
直ぐにそれを実行した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。