第166話 教主達の聖遺物 後編
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あらすじです。
シューティア教、総本山に来たディオス、またしても同じ事になり、その手がかりを求めて…
ディオスは、シューティア教の総本山があるレタリア共和王国の中で、宗教区として自治が認められてる法皇庁へ来ていた。
法皇庁の厳かなゴシック調の建物、規模的には、ゼリティアの城邸より少し大きい、その客間にディオスと、シューティア教の人族の法王が対面していた。
ディオスの隣には、ユリシーグの所属するサルダレスを指揮する長官、クリストフがいた。
人族で金髪の男性のクリストフは、法王にお辞儀してディオスを紹介する。
法王がディオスに、十時の印を切って祝福すると
「初めまして、聖帝様。わたくしは法皇を務めさせて頂いております。ジャンル・リコットです」
ディオスは頭を下げ
「どうも…バルストランの王に仕えていますディオス・グレンテルです」
ジャンルは微笑み
「ご謙遜を…。貴方様は今や、五千年前にいた聖なる帝、聖帝の再来。誰しもが敬意を払います」
ディオスは微妙な顔で
「その…なりたくてなった訳ではないので…。何とも言えません」
「んん…その節度ある振る舞い。成る程…聖帝と言われるだけはある」
「いえいえ、そんな…」
ディオスは謙遜しながら
いや、普通じゃあねぇ? 聖帝だからって、特別に偉い訳でないし…。
彼も人、我も人、故に平等じゃない…。
そう、内心で思っていると、法皇ジャンルが
「貴方様にここに来て頂いたのは…とある事をお願いする為にです」
ディオスは渋い顔をして
「その…お願いとは…」
「我らシューティア教に伝わる聖剣ガリアラスの封印を解いて欲しいのです」
うわぁーーー 来たーーーーー
と、ディオスは内心でツッコむ。
レスラムの聖遺物の槍カシリウスを解放したのだ。
当然のお願いであろう。
「はぁ…その…解放しないとダメですかね…」
法皇ジャンルは、目を閉じて
「今、皆は…聖なる証を欲しているのです。ですから…」
ディオスは「はぁ…」と溜息を漏らした。
法皇とクリストフの二人に連れられて、とある場所に来る。
そこは、法皇庁でも中心で、多くの人々が、礼拝出来るホールだ。
その礼拝堂ホールの中心、いかにもという感じで岩に突き刺さった、これまた、いかにもという黄金の剣があった。
「うわぁ…」とディオスは声を漏らした次に、またしても右腕の聖印が疼く。
勿論、この礼拝堂ホールには、多くの司祭達がいる。
かつて、シューティア教を起こしたシューティアの聖具。
それが封印されて二千年。
誰も、この聖剣ガリアラスを封印された岩から抜いていない。
幾万人もの様々な人達が試したも、全く抜けないのだ。
ディオスは嫌な予感がする。
カシリウスのように右腕の聖印が疼き、更に、それに呼応するように聖剣ガリアラスが黄金の光を放っている。
もう…嫌だ!
ディオスは拒否しようと考え
「あの…止めませんか?」
その背中に
「どうしてじゃ? 夫殿…」
そう、ゼリティアが、クレティアとクリシュナと共にいた。
ディオスは妻達の方へ向き
「いいか。聖なる遺物ってのは、誰も扱えないから神聖なんだ。それを壊してしまったら…色々と信仰に歪みが出来る。だから」
「能書きはよい」
と、ゼリティアは遮り
「さっさとやる!」
扇子で聖剣を指さす。
ディオスは「はぁ…」と空の溜息を吐き、言われるまま聖剣の刺さる岩へ来る。
そして、聖剣ガリアラスの柄を右手に握り、引いた。
これまた、アッサリと岩から抜けると、刺さっていた岩が砕け散る。
多くの聖職者達の前で、嘗ての教主様の聖具が解放された。
ディオスは、沈痛な面持ちで、聖剣ガリアラスを持っている。
そんな中、やっぱりこのガリアラスもカシリウスと同じように、何かの力が伝わる感じを受ける。
まあ、その後、何とかしてこのガリアラスの調査をさせて貰い。
やはり、カシリウスと同じく何かの情報のような力を抽出した。
ディオスは、データと睨めっこする。
まるで、何かの遺伝情報のような螺旋構造のようなデータ。
何かを構築する情報体であるのは、分かる。
だが、何の情報体なのか、さっぱりだ。
彼ら、教祖達の父親は自分と同じ聖印を持っていた。
もしかして、聖印由来の何か?
「んんん…」
と、ディオスは唸っている帰りの飛空艇。
データを見て悩んでいるディオスにクレティアが来て
「ダーリン、あんまり悩んでいると疲れるよ」
「ああ…でも、気になるんだよなぁ…」
クレティアが
「まあ、二千年前に使われていた代物だったなら。二千年前を知っている人に聞けばいいんじゃない?」
ディオスは渋い顔で
「そんな超長寿な存在なんて…いないだろう…」
クレティアが首を傾げ
「いるじゃん。精霊…」
ディオスは驚きを見せ
「え? 精霊ってそんなに超長寿なの?」
クレティアが
「だって、オルディナイトを作ったバルストランの南の精霊アグニアだって千年近く生きているんだよ」
ディオスが困惑気味に
「でも、二千年も…ムリだろう」
クレティアが
「ゼリティアーーーーー」
と、隣の部屋にいるゼリティアに呼び掛ける。
「何じゃ?」
ゼリティアが顔を見せ
「ねぇ…二千年も生きている精霊っていない?」
クレティアの問いに
ゼリティアが上を向いて
「んん…精霊の寿命は、二千年だからのぉ…。いいや、確か…バルストランの西の精霊ハルヴォア様は…まだ、転生していないやもしれん」
「マジで!」とディオスは驚きを告げた。
その後、行き先をバルストラン西、西の精霊の神殿がある町にして、到着する。
バルストラン西の精霊、春の精霊を司るハルヴォアの神殿へ行く。
ピンクの魔導石、風と火で出来た山肌に作られた神殿に入ると、そこは多くの精霊の眷属達がいて、神殿を維持していた。
ハルヴォアの精霊の眷属に連れられ、ハルヴォアのいる部屋に来る。
「おやおや、珍しいお客だこと…」
ピンクの髪をした八〇代後半の老婆の人族型の精霊ハルヴォア。
大地に精霊の魔力を満たす、精霊は二千年の寿命がある。それは普通の生命が死ぬのは違い、転生という光を放って新たな精霊に生まれ直すのだ。
不死鳥のフェニックスみたいだなぁ…とディオスは思いつつ、精霊で最高齢のハルヴォアはディオス達を向かい入れ、ディオス達とお茶をしながら、ディオスの質問。
シューティア教と、レスラム教の教祖達は、どんな力を使っていたのか?
ハルヴォアは懐かしむように
「あれは…そう、凄かったよぉ…
巨大な龍のような存在を従えて、自在に環境を操作してねぇ…。
もの凄く強かった魔物達と戦っていたさ
でも、悲しいかな、その力が悪い事に使われてねぇ…」
ディオスが
「どんな悪い事に?」
ハルヴォアは苦しそうな顔で
「三人が使っている。同じような権化の劣化板レプリカが秘密裏に広まって、無益な争いに使われてねぇ…。
劣化板のレプリカは多くの命を糧に顕界するのさ。
沢山、命が散ってね。
ルクセリアだったかなぁ…その大怨霊を作るにも、使われたさ」
ディオスはそれを聞いてハッとする。
そう、確かにルクセリアの英霊となった彼らも、それらしい力を使っていたのを思い返した。
ハルヴォアは、飲み物の紅茶を回しながら
「結局、それを何と対処する為に、シューティア教や、レスラム教、フツ教が生まれた側面もあったさ」
その昔話を聞いたディオスは、顎に手を当て考える。
聖印を持つ男が父から、生まれた三人の娘、息子達。
巨大な龍のような存在を従えて、自在に環境を操作していた。
じゃあ…もしかして…
とある結論がディオスに浮かぶ。
擬似的なシンギラリティのように、オレが北極で暴走させたドッラークレスの擬似的なモノが…。
そのトリガーとして、あの聖剣や、聖槍が…。
だとしたら…その中にあったあの、高度に複雑化した螺旋状のデータは…。
ディオスは手がかりを得た。
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