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第162話 マリファスとアーヴィングのその後、前編

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでください。

あらすじです。


重罪人マッドハッターこと、マリファスは、ドラゴニックフォースの曙光部隊と共にとある場所に来た。そこは…


 マッドハッターこと、マリファスは、とある場所に護送されていた。

 両手には、能力を押さえるリミッターの手枷を填められ、背中には様々に変化する漆黒の翼を使えないように特別な拘束具まで付けられている。

 その周囲、護送車内にいるのは、アインデウス皇帝の部隊、ドラゴニックフォースの中でも選りすぐりで構成された、アインデウス皇帝の長女リュートをトップにした曙光部隊が同行している。

 マリファスの右には、金髪で額に千里先さえ見通せるサウザンド・アイズ(第三の目)を額に持つ、ヴァハの兄にして、ドラゴニックフォースの中でも最強の双璧であるジュンハ、左には、黒の長髪に190の長身で余裕の笑みを浮かべる、ジュンハの双璧であるヤドーが座っている。

 正面にはリュート、その右に同じく黒髪で女性のナラハ、その右に細身で優男のジェイル、その右に白髪でジャックナイフのように鋭い顔つきの男カズイル、その右にヴァハと、大所帯でマリファスを護送している。


 現時点での時間軸として、ディオスが聖帝となったルクセリアの英霊祭から数日後、ディオスの屋敷に子供達が来た頃だ。

 

 ガタンと、魔導護送車が揺れる。

 どこへ向かってるのだろうか?

 マリファスは、窓のない護送車の室内を見渡す。


 リュートがそれに気付き

「おかしな事を考えるなよ。この面子でなら…速効でお前を潰せるのだからなぁ…」


 マリファスは手錠の両手で顔を隠した。


 右にいるジュンハが

「何をしてもオレには見えているぞ」

と、額の第三の目が動く。

 マリファスの全てを見抜いている。


「このまま、何処かで死刑になるのか?」

 マリファスの問いに


 カズイルが

「け! もっと面白いモノを見せてやるから、楽しみにしていろ」


 そう言われて揺られて二時間…。

 護送車は止まり、護送室の後部ドアが開く。


 マリファスに迷いはなかった。

 このまま、死刑になっても後悔はない。

 それ程の事をしたし、それを悔い改める気はない。

 死ぬのを覚悟したが…。

 マリファスは、目に飛び込んだ風景に驚愕して固まった。


 その背をヴァハが押して

「さあ、お前の罪の重さを実感する時が来たぞ」


 来た場所、そこはマリファスにとってお馴染みの場所だった。

 そして、最も知られてはいけない場所でもあった。

 ナルマンド共和国北部の山岳の集落。


 はぁはぁはぁ…マリファスの息が荒くなる。


 ここは…二十年前にマッドハッター、マリファスが逃れた場所だ。

 当時、マリファスは、アインデウス皇帝のドラゴニックフォースの襲撃に敗走して、背中にある漆黒の翼で逃げていた。

「まさか…アーリシアに、唐突に…」

 マリファスは、エニグマのマッドハッターとしてアーリシアを揺さぶる拠点を作ろうとロマリアの諜報下部組織を使って作っていた最中に、ドラゴニックフォースの襲撃を受け敗走、辛うじて逃れ、このナルマンドの北部まで飛んで来ていたが、体の損傷が酷く、空中で意識を失って森へ墜落した。

 

 それをとある獣人の少女が助けてくれた。

 名前はファーティマ、まだ…九歳の子供だ。

 ファーティマは直ぐに、両親を呼んで、マリファスを助け出し、住んでいる集落の家に運んで手当してくれた。

 ファーティマの両親は、この辺りで生薬の薬学士を続けている家系で、手当はお手のモノだった。


「ありがとうございます」

と、ベッドで手当のお礼を告げるマリファス。


 父親が

「その背中にある翼は…」

 意識がない内に運ばれたので、翼をしまい忘れていた。


「その…血族に伝わる…」


「ああ…」と父親は納得した。

 スキルに近いモノか…と。

 

 その後、傷を癒やしたマリファスは、お礼も兼ねて、それと自身が潜む為に、この家に厄介となった。

 生薬の薬学士をしている一家に、マリファスは持っている技術と実験で得たデータを使い生薬を作る手伝いをしたり、娘のファーティマの遊び相手になったりしていた。

 

 父親が、なぜ、傷を負っていたのか?

 マリファスは、血族狩りと偽った。

 特殊なスキルや、能力を持つ血族を狙う連中がいるというのは、風の噂で知っていた父親は、それで納得した。


 半年をここで過ごし、マリファスは出て行く時に、娘のファーティマが

「また…会えるよね…」


 マリファスは「ああ…会えるさ」と約束してしまった。



 その後、エニグマとして活動しながら、その活動休止期には、ここへ訪れて過ごす日々が続いた。

 そうなって十年が続き、ファーティマが薬学を習うためにトルキアの大学に行く時に、マリファスは援助を申し出た。

 始めは、両親も断ったが…マリファスが、助けて貰ったお礼をしたいとして、ファーティマの大学での援助をした。

 住む場所、生活、学費、とにかく、出来る限りをした。

 そして、週に一回程度、様子見で訪れたりも…。


 そんな事をしている自分にマリファスは、何をやっているんだ…と自分で呆れてしまう。


 そうして、ファーティマは、順調に大学の薬学部を卒業、薬学士の免許を取り、父親と母親のいる集落へ戻り、その傍にある町に生薬の専門店を出した。

 その出店費用もマリファスが面倒を見た。


 生薬の専門店は、軌道に乗り、色んな人を助ける生薬の販売をする。

 それを合間に手伝いにくるマリファス。

 この世界を混乱に貶める目的があるのに、この世界に馴染んでいる自分が皮肉に思えた。


 そして、ファーティマがマリファスに告白した。


 それを聞いてマリファスは、困惑する。

 どうすれば…?

 自分は、この世界を貶める為にいるのに、この世界で伴侶を得ようとしている。

 こんな矛盾があるのか?

 葛藤したが…結局、ファーティマの告白を受け入れ、半年後に結婚して夫婦となり、一年後、女の子アヴァリアを授かった。


 このままでは、いけない。ダメだ。

 そう思うも、エニグマの活動は止めない。

 ファーティマとの家族も続ける。

 矛盾の板挟み、おかしな背反二律を抱え、そんな悩みを消し飛ばしてくれたのが、エニグマのゴルドとの会話だった。


 ゴルドは淡々と

「別にいいだろう。人間なんて割り切れる生き物じゃない」

 それだけで、救われた。

 

 ナルマンドでは、愛する妻と娘がいる父親マリファス。

 エニグマでは、世界を混沌に堕とす悪魔マッドハッター。


 こんな矛盾の中で、次第に上手くバランスが取れるようになった。

 だが、あの男、ディオス・グレンテルが出てきた時に、事態は変わった。


 何時か、エニグマでの事で殺される。

 過ぎったのが妻ファーティマと、娘アヴァリアだ。

 二人を守る為に、もしもの遺言として、アーヴィングに二人の事を頼んだ。

 そして、自分が死んだ時に、金貨数十万枚のお金が妻と娘に入るようにした。


 死に仕度は完璧、そして…殺される筈が、こうして…ここに来てしまった。

 そう、ここは来てはいけない場所だ。


 妻と愛娘に、妻の両親が、あの家の前で待っていた。

 

 妻のファーティマと、両親は愕然とする。

 ドラゴニックフォース達に包囲され、罪人の如く来る夫に…どうすればいいか、分からなかった。


 マリファスを搬送してきたリュートが、ファーティマ達に

「全ての説明をします」


 マリファスが

「やめろーーーーー やめてくれーーーーー」

 叫ぶが、


 それをヴァハとカズイルが押さえ

「テメェの罪をカウントする時間が来たぜ」

と、カズイルが鋭く告げた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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