第161話 アリストスの子供達の夏休み その二
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
聖帝の権能、超弩級戦艦エルディオンを子供達に案内するディオスだが、その最中、子供達から疑似シンギラリティのような反応を感じた。
エルディオン内を案内するディオス。
エルディオン内部は、いたって普通と言えばおかしいが…宇宙戦艦の内部のように、金属の床と壁が続いている。
エルディオンの全体は白銀の装甲で、縦1100メートル、横1000メートル、胴体幅90メートルの紅葉型である。
まだ、作業者を入れていない無人の状態で、動力はなんと神格炉。
神格炉にいる、強大な力の神格がこの超弩級戦艦の全てを支えているのだ。
空中、水中、宇宙空間と、三つの空間対応の何処かのSFに出てきそうな戦艦だ。
そんな巨大なエルディオン内部を案内するディオス。
子供達と手を繋いで仲良く艦内の色んな施設を見せていると、やはり、子供達と手を繋ぐとシンギラリティのトリガーの感覚を感じる。
ええ…とディオスは困惑に包まれる。
子供達は信長のように、疑似シンギラリティの術処置を受けていない。
どういう事だ?
そう思いつつ、夜…トルキウス達が訪れる。
定期的なティリオとリリーシャにゼティアのシンギラリティの状態確認だ。
ディオスはティリオとリリーシャにゼティアの検査をしている最中、ディオスから七人の子供達の事を聞いた。
「はぁ?」
と、トルキウスは眉間を寄せ、サラナが
「本当なのですか?」
その問いにディオスが
「う…ん。そんな感じがする。半分半分の感じだ」
トルキウスは考え
「一応…調べてみるか…」
そうなった時、玄関からインターフォンが鳴る。
押したのは、アリストスから来たディウゴスだ。
レベッカが出て
「どうぞ…」
「では…」とディウゴスがお辞儀して中に入ると、後ろには大きな長方形の木箱が二つ、魔導クレーンに釣られている。
魔導クレーン、UFOキャッチャーの、上の繋ぐ部分がない。UFO型のクレーン。
闇の魔導石の力で無重力状態を作り、その重力を中和出来る質量までをアームで掴んで持ち上げられる。便利な魔導のクレーンである。
無論、動力にしている諸々の魔導石を消費すると、タダの鉄くずになる。
ディウゴスが広間にトルキウスといるディオスを見て
「おや…何かの検査でしょうか?」
ディオスはディウゴスの後ろにある、長方形の木箱を見て
「ああ…例の…」
「ええ…転移接続ゲート、ヤヌスです」
と、ディウゴスは頷いた。
エルディオンの動力炉は、神格を封入している神格炉である。
高位次元の存在である神格は、この世界で自在に物理法則をコントロール出来る。
その力を使って、別の空間と空間を繋げるショートカットを作れる装置が、転移接続ゲート、ヤヌスである。
ディオスは、ディウゴスに
「その…実は…」
ディウゴスは、血の繋がらない娘、息子達に、シンギラリティのような反応を感じると説明し
「んん…アインデウス様に相談した方が…」
その提案を呑んで、ディオスは広間で、トルキウス達のシンギラリティを調べる装置が乗ったイ
スに、始めに年長の娘のフェル、リティアを調べる。
トルキウスは魔導波紋の画面を見て
「んん…ディオス殿。この子の魔導波紋は、貴方と70%酷似している」
「それ以外は?」
と、ディオスの問いにトルキウスは
「んん…今の所は…普通だ」
ディウゴスが
「では、ディオス様が彼女に触れてみては? ディオス様の魔力がシンギラリティのトリガーなら、何か反応があるはず…」
ディオスはフェルと、リティアの肩に手を乗せた瞬間
「ん!」とトルキウスが唸った。
「見てくれ」と、画面を回して、ディオス達に見せると、そこには渦を巻く魔導波紋があった。
「ああ…」とディオスは驚く、そう、シンギラリティの反応だ。
フェルとリティアから出ている。
他の子供達も、同じく検査され、ディオスが触れるとシンギラリティの反応がある。
そう、信長と同じく疑似シンギラリティの反応があるのだ。
同じくいた信長が
「ディオスさん…これは…。もしかして、子供達に…」
そう、信長は自分と同じく疑似シンギラリティを子供達に試したのか…と。
ディオスは首を横に振り
「そんな事はしていない…。どういう事だ?」
その場にいる、ディオス、妻達三人、信長、トルキウスとサラナ、ディウゴスは戸惑いを見せると、通信を繋げていたアインデウスが
『子供達に…何か、ディオスの魔力に関するアイテムを持っていないか…聞いてみるといい』
ディオスは七人の娘と息子達に
「なぁ…何か、パパの魔力が篭もったモノを持っていないか?」
その言葉に七人の子供達、娘のフェル、リティア、アル、アイカ、息子のダンロ、ティダ、シャルは、お守りにしているあの王都御苑でのアダマンタイトの破片を取り出す。
「ああ…」
と、ディオスは唸った。
そう、自分の魔力が強烈にインゴットされている破片だ。
トルキウスは顎を手に置き
「理論的にはあり得ます。子供達は、まだ幼い。幼い子供の魔導波紋は変化し易い。おそらく、長期的にその破片にあるディオス殿の魔力によって、ディオス殿の魔導波紋と似た波紋になり、それによって疑似シンギラリティになったと、推測が出来る」
サラナが
「でも…それって相当…確率が…」
そう、かなり低い。ほぼ、そうなるには数千万分の一、つまり、宝くじが当たるより低い確率だ。
だが、アインデウスが
『全く、理論、理論と小賢しい。お前達は肝心な事が分かっていない。この子達は誰の子供だ? ディオスの子供だ。簡単な理屈だ。ディオスの愛が届いた。だから、ディオスと同じようにシンギラリティになった。それだけだろう』
それにディウゴスは嬉しそうに微笑み眼鏡を上げた。
その場にいた、全員がアインデウスの言葉に確信した。
その通りだ…と。
子供達が、ディオスに近付き娘のフェルが
「アタシ達、パパと同じになったの?」
それを聞いてディオスは目から熱いモノがこみ上げ涙した。
「ああ…パパと同じになったんだよ」
ディオスは、子供達を全員、暖かく抱き締めた。
娘のアルが
「そうか…本当のパパの子供になったんだ…わたし達…」
嬉しくてディオスは涙して、子供達を抱き締め続けた。
翌日、ディオスと同じになりディオスの子となった子供達は、クリシュナにクレティアとゼリティアの三人の母親達にお願いする。
もっと、妹と弟が欲しい。
ティリオとリリーシャにゼティアじゃあ、足りない…と
それに、彼女達は苦笑してしまった。
ディオスは、ディウゴスから貰った転移接続ゲート、ヤヌスの設置をしている。
「なになに…繋げる転移距離は百キロまで、成るべくその転移ゲートがある方向に合わせた方がいい…と」
屋敷のゼリティアの城邸がある方向、広間の北の壁に水晶柱で出来た装置を置いた。
そして、ゼリティアの城邸の広間に来て、屋敷のある南の方へ同じ別の装置、水晶柱の装置を置いた。
ゼリティアの屋敷で、水晶柱のドア装置を動かす手順を勧める。
「なになに…まず、転移ゲートの認識をさせます。装置の動力を送るシステムの共鳴波長を…」
かいつまんで説明すると、まず、神格炉のあるエルディオンに、この装置を認識させる。そして、動力を貰い、神格炉の空間を繋げる力を貰うのだ。
なので、屋敷に戻ってエルディオンへ転移する装置の部屋に来て、エルディオンに行き、エルディオンの中央室、センタールームに来る。
そこは、各攻撃システムや、諸々と連結出来る場所で感じ的には、イージス艦のCICみたいなもんだ。
そこに来てディオスは
「おーーーい」
と声を張ると、そこに魔導の力で出来た立体映像が出る。
その立体映像は、白い服を纏った金髪の人族の男性だ。
どこか、浮き世離れして、神秘的な立体映像の男性。
「なんでしょう、ディオス様」
彼はこのエルディオンのシステムを管理している、人工魔導精霊、所謂、人工知能…に相当するエルディオンに宿り、エルディオンを管理してくれているイヴァンだ。
ディオスが、イヴァンに
「ディウゴスから、ヤヌスを貰ったんだけど…」
「ああ…はい、認識します」
イヴァンの周囲に幾つもの魔法陣の立体映像が流れ
「これで接続しました。後は、装置のスイッチを入れてください」
「ああ…ありがとう」
「それと…エルディオンに入れる人材の選別は?」
「ちょっと相談中だ。多分、アーリシア統合軍から入ると思う」
「成る程、普段はアーリシア統合軍の管轄に入るのですね」
「そうだなぁ…」
「システムの様々な統合をしたいので、早めにお願いします」
「分かった。一週間半以内に、何とかする」
「畏まりました」
イヴァンはお辞儀した。
ディオスは屋敷に戻り、まず、屋敷のゲートのスイッチを押して、次にゼリティアの城邸に行き、装置にスイッチを押した。
そうすると、ヤヌスのゲートが七色に光、そこに鏡面が出来て繋がったディオスの屋敷が見えた。
「お、繋がった」
そこへゼリティアが来て
「ほぅ…凄い装置じゃのう…」
ディオスはフッと笑み
「これで、何時でもゼリティアとゼティアの傍に居られる」
嬉しそうなディオスに、ゼリティアは
「そうじゃなぁ…」
と、ディオスの右腕に自分の手を絡ませる。
そして、繋がった屋敷の向こうにいる子供達が
「ああ…すごーーい」
と、一斉にゲートを潜ってゼリティアの城邸と、ディオスの屋敷を行き交いして楽しむ。
さっそく子供達の遊び道具にされる。
そして、ディオスはこの何処でもドアのような装置の裏を見る。
繋がっているの裏は七色の壁だ。
空想科学読本であった、遠くの場所が繋がる面は人体の断面解剖図のようにならないのね。
ちょっと知っていた知識とは違ったのが、残念だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。