第160話 アリストスの子供達の夏休み
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
アリストスにいる子供達が夏休みで、ディオスの屋敷に帰郷した。浮かれるディオスがそこにいた。
ディオスは浮かれていた。
今日はアリストスから子供達、娘のフェル、リティア、アルと息子のダンロ、ティダ、シャルの六人が帰って来るのだ。
ディオスは、逐次、懐からダイアマイトの懐中時計を取り出して時間の確認をする。
もう、待ちきれないのだ。
ディオスのテンションはアゲアゲだ。
クレティアとクリシュナの午前の訓練中、ディオスはソワソワしている。
その背中を、同じく訓練している信長とユリシーグは見つめ、ふっと生暖かい笑みを向ける。
浮かれるディオスに誰しもが生暖かい。
子供達が来るのは昼少し前、訓練が昼前に終わった瞬間
「子供達を迎えに行ってくるーーーー」
と、ディオスは猛ダッシュで魔導車のある車庫へ向かい、魔導車に乗って空港へ向かった。
それにクレティアとクリシュナは呆れ
「はぁ…ダーリンたら…。子供達の迎えはゼリティアがしてくれるって、言っていたのに…」
クレティアは額を抱える。
クリシュナが「はぁ…」と溜息を漏らし
「本当に…仕方ないヒト…」
ディオスは空港に到着して、魔導車を駐車場に止め、急いで空港内へ入る。
一隻の飛空艇が着陸する。
それはアリストスから、バルストラン王都へ来る飛空艇で、タラップから人々が降りて魔導バスで、空港まで運ばれる。
客が出てくる空港ゲート前では、ゼリティアとセバスに数名の執事が子供達の到着を待っていた。
ゼリティアは、人が出てくるゲートを額に手を置いて見つめていると…
「お!」
奥から、子供達6人と付き添いのアリストスでの親の親族達十名の団体が見える。
ゼリティアが一団に
「おおーーい、ここじゃーーー」
と、手を振って自分達を示す。
子供達がゆっくりとゼリティアの方へ向かっていたが…唐突にダッシュで走ってくる。
「どうしたんじゃ?」
と、ゼリティアは首を傾げた次に
「フェル、ダンロ、リティア、アル、ティダ、シャルーーー」
ゼリティアの後ろから猛ダッシュでディオスが駆けてくる。
「え?」とゼリティアは戸惑っている間に、ディオスは子供達に駆け付け、子供達は
『パパーーー』
と、六人してディオスに抱き付いた。
ディオスは、全力の限りで6人の子供達を抱えて、嬉しそうに回る。
「会いたかったよーーーーー」
もの凄く喜ぶディオス。
6人の付き添いで来た親族の一人が
「はは…三ヶ月前にあったばかりですがね…」
ゼリティアは呆れてしまう。
ディオスは、子供達の到着が待ちきれずに来てしまったのだ。
「仕方ない…」
ゼリティアの用意した大型魔導車に乗って子供達とディオス、子供達の親族達はディオスの屋敷へ向かう。
因みにディオスの乗ってきた魔導車は、ゼリティアの連れた執事の一人が乗って来てくれた。
久しぶりの我が家に子供達はハシャギ、アイカが
「みんなーーーー」
と、顔を見せる。
六人はアイカに近付き、ニコニコして、懐からとある小袋を取り出す。
その中身は、かつてディオスが子供達を救った時に、ゾルトリアの連中が使っていたアダマンタイトのナイフの砕けた破片だ。
アダマンタイトのナイフを砕いた魔力が篭もり、今でも素手で触れると熱い破片を、子供達は見せ合う。
そして、それを組み合わせて一つの形にする。
刃の部分がないナイフの刀身が完成する。
そう、これが子供達の絆の証なのだ。
更にそこへ「お姉ちゃん、お兄ちゃん」とティリオとリリーシャにゼティアの三人が来る。
『わあああああああ』
と、子供達は三人の二歳児に駆け付け、抱っこしたり、頬にキスしたりした。
何とも頬が緩みそうな場景にディオスは、ニヤニヤとしていると
「夫殿、子供達の荷物」
と、ゼリティアに促され
「ああ、すまん」
と、ディオスは大型魔導車に乗っている子供達の荷物を下ろした。
子供達の滞在期間は、二週間程度。
夏休みのシーズンとなり、ディオスの屋敷で日々を過ごす事になった。
付いて来たアリストスでの親である親族達は、二・三日程度、滞在して帰国する。
勿論、夏休みなので勉強のキットは持って来ている。
それは、10インチサイズ魔導端末で、一日に一回、宿題が提供される。提供される時間は、午後の三時だ。
それをサボると、後で補習という罰則があるらしい。
まあ、とにかく、楽しい夏休みをディオスと共に過ごすのだ。
その夜、ディオスは腕によりをかけ、沢山の多国籍料理で子供達と親族をもてなし、屋敷にある大浴場で、子供達、ティリオとリリーシャにゼティアも含んで、賑やかに汗を流し、大きな十人近くも寝られる巨大ベッドで子供達と共に眠る。
子供達が寝息を立てた頃に、ディオスはそっと起きて離れ、子供達のアリストスでの親達がいる広間に来る。
そこでは、各々、ソファーに座ってくつろぎ、談笑している。
そこにディオスも入って、子供達の事を話し合う。
親の一人の老婦人が
「まさか…ディオスさんが、聖帝になるなんて…」
親の一人の老紳士が
「いや、驚きですよ」
ディオスは頭を振り
「聖帝とか、そんな事、関係ありません。皆さんは自分と同じ、あの子供達の親です。それだけです」
それを聞いて、アリストスでの親達は微笑みを向けてくれる。
暖かな夜は更けていく。
翌日、子供達はクレティアとクリシュナと共に、午前の訓練に参加する。
元気よく素振りをしたり、型の真似事をする子供達を見る、同じく訓練する信長とユリシーグの二人。
信長が
「なんだろう。子供達は戦闘系のスキル持ちだから、武術に対してセンスがある動きをするなぁ…ユリシーグ」
ユリシーグは肯き
「ああ…。まあ、奥方達の教え方も上手いがなぁ」
そうして、ディオスを見る二人。
ディオスは、訓練を張り切っていた。
「ディオスさん、子供達がいて、テンション高そうだなぁ」
信長が
「ああ…普段は、慎重なのになぁ」
ユリシーグは頷く。
午後は、ディオスは魔導石の生成、最近、魔導石を十個も同時生成出来る新しい魔導石生成装置を前に、両手から魔力を放出させる。
ロケットのような形状で、高純度魔導石を生成させる魔導触媒の入った十個のケースを掲げ接続する新型はとある特徴がある。
今までなら、ただ単に魔力を回収して生成が、魔導石の結晶形状や硬度を自在に調節出来、更に、魔力を回収する時に、生成場の天井に宇宙に浮かぶ銀河の渦のような状態を幾つも作り出す。
これは天井にも魔力の流れを精錬する魔導回路が刻まれているので、より、高密度で高効率に魔導石へ魔力を送れるようになっていた。
それは、地下室という暗闇に出現した、銀河の星々のような光景に同席して見ていた子供達は、テンションが上がり、同じくいた親の親族達も感嘆を漏らす。
必要な魔導石8個を生成した後、広間で魔法研究を開始するディオス。
時間的に午後の三時、子供達も夏休みの勉強が魔導端末に転送されるので、ディオスの傍で勉強をする。
四時半に子供達の勉強が終わり、ディオスも魔法研究の仕事も終わり、子供達が
「アレに乗って見たい!」
と、王都の周囲の高高度を周回飛行するアインデウスがくれた、超弩級戦艦エルディオンを指さした。
「ああ…じゃあ、行ってみるか?」
と、ディオスは屋敷の中にあるエルディオンへ転送する転移魔導装置の部屋へ子供達を連れて行く。
六つの結晶型の転移装置が囲む場がある部屋で、ディオスは子供達と共に、その場の真ん中へ来ると
「じゃあ、いくぞ…」
と、転移装置に触れ起動させる。
子供達がディオスに近付き、ディオスの手や足を握る。
「大丈夫だよ」
ディオスが優しく声を掛けるが、妙な感じを受ける。
あれ? 魔力が…吸われたような…。
この感じ、クレティアやクリシュナにゼリティアが、ディオスの魔力の影響によってシンギラリティの渦を得て、その渦を起動させる時に魔力を借りる感じと似ていた。
気のせいか…とディオスは思いつつ、子供達と共に、エルディオンの内部へ転移した。
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