第159話 聖帝降臨祭 後編
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
知らぬ間に、ディオスが聖帝となったお祭りが決まり、バルストラン王都は賑やかになった。その後…
翌日、王宮に行く予定があり、ゼリティアと共に王宮に来る。
まあ、ルクセリアでの書類作りだ。
バルストランの王執務室で、ソフィア、カメリア、ナトゥムラ、スーギィ、マフィーリア、ディオス、ゼリティアとで、ルクセリアでの英霊祭の記録を一時間程度で作り終えると、ソフィアが
「ねぇ…周囲から、聖帝降臨祭をした方が…って、話があるんだけど…」
ディオスは微妙な顔をする。
もう、昨日の記念パーティーで懲り懲りだった。
ナトゥムラが頭を掻きながら
「その…正確に歴史に残っている訳じゃないだろう。聖帝の事が…。そんなあやふやな事で降臨祭なんて、大げさじゃないのか?」
ナイスな意見を言ってくれた。
ソフィアが額を押さえながら
「政府とか王府とかの者達の意見じゃなくて、バルストランの民の方で、そういう意見があるのよ」
スーギィが難しい顔で
「民が行いたい祭か…。制限するのは難しいなぁ」
マフィーリアがサングラスを押さえ上げながら
「押さえるのは、マズイ…。一応は、許可して行わせれば、満足するだろうし…」
カメリアが眼鏡の付け根を上げて
「ご本人は…どう…」
ディオスに視線が集中する。
となりにいるゼリティアが不安そうな顔を向ける。
ディオスは項垂れる。
ああ…ダメって言えないじゃん。
「分かりました。ただし、自分の方も出し物をします」
ソフィアが
「どんな?」
「魔導の花火です。かなり、大きいモノをやりますから…王都の上空に制限を掛けてください」
「分かった」
と、ソフィアは了承した。
それから、一週間後、バルストラン王都ベンルダンはお祭りの熱気に包まれていた。
お題目は、聖帝降臨祭。
沢山の出し物がメイン通りに並び、煌びやかに彩り、王都の周囲では…子供が遊べる用の簡易設置型の遊園地が並ぶ。
多くの人達がこの聖帝降臨祭を楽しむ為に、国内外から飛空艇や、魔導バスが大量に入って来た。
メイン通りの奥、王宮の門の前にはディオスがいる華やかな陣があった。
そこへ多くの人、各種族、様々な人達が来て、ディオスの傍にくる。
ありがたそうに、拝む人。
右腕の聖印を見たいとして、ディオスが見せると、拝む人。
触れたいとして、触れた後
「ありがたや、ありがたや」
拝む人。
そして、子供に祝福をお願いする人。
ディオスは思った。
オレは、観光スポットになってしまった。
両脇には、警備でいるナトゥムラと部下達、後ろには子供達、三人の妻達。
妻達、クリシュナ、クレティア、ゼリティアは、人寄せパンダとなっているディオスが心配と、あまり、良い気分ではなかった。
そして、昼から始まったお祭りは、夜七時半となり、ディオスから人を離して、ディオスの提案した魔導花火の打ち上げが始まる。
ディオスの周囲に幾つもの花火の魔法陣が展開され、夜の空へ花火が昇る。
十キロ近い王都を包む程の花火の連打と、大きなナイアガラの滝の花火、王都の大きさに匹敵する大きな花火。
お祭りは、大いに盛り上がった。
花火が終わったのは、九時、色々と仕舞い事して、十一時。帰宅は、十二時だった。
クレティアとクリシュナにゼリティア、アイカにゼティアとティリオにリリーシャと家族達は、九時に帰っていて、十二時に帰宅したディオスだが…屋敷の前にもの凄い大量の警備の軍人達がいた。それも全員重装備の魔導騎士装甲で、ゴーレム軍団さえいた。
「なんだ?」
と、ディオスは首を傾げ屋敷の玄関を潜り
「ただいま…」
入ったそこには、多くの人で埋め尽くされていた。
ディオスは、その人達にうわ…と顔を引き攣らせる。
そう、皆、王族の衣を纏っている。
アインデウス、ソフィア、ライドル、ヴィルヘルム、ヴィクトール、フィリティ、他アーリシア十二王国の王、アフーリアの王達、ナイトレイドの皇帝ガルザルと王達にククルク。
大多数の王達と、次期王候補達の大集団に、ディオスは頭を振る。
「やれやれ…」
屋敷の厳重警備は、この王達と王族達を守る為だ。
「はぁ…」とディオスがそこに入る。
その様子を屋敷の二階の影に隠れて見守るレベッカ、ユーリ、チズ、ココナ、信長、ユリシーグ。
クレティアとクリシュナにゼリティアは王達の中にいた。
子供達は、部屋でグッスリで、その傍にセバスとオルディナイト守護達が付いていた。
彼らも、広間の様子を持っている魔導端末で見ていた。
この世界の王達を集めての広間で、万年皇帝でアインデウスが
「ディオス。聖帝となったお前の意思を確認したい」
ディオスは、頭を掻いた後、一階にある書斎に行ってとあるモノを持って来る。
それは、ウソを見抜くマジックアイテム、トゥルーベルだ。
それを、広間のテーブルに置き、ディオスが
「オレは、ウソを言いたくない。本心を言います。
正直、聖帝とかそんモン。どーでもいい。
オレは、そんな大したタマじゃない!
この世界に来た時に、自分の力を知って。どれだけ、自分の力があるのか、見てみたいと、色々とやりました。
でも…今は、違う!」
ディオスは真っ直ぐとした視線で
「オレは、ディオス・グレンテル。こことは違う別世界の杉田 勇志郎は終わって、ディオス・グレンテルという新しい人生を生きています。
妻が出来、子供が出来て、仲間や、友、親友、この世界との繋がりが出来た」
グッとディオスは右拳を握って上げ
「オレは…オレは! 妻達や子供達、仲間や、友、そしてそれに繋がる者達、世界に生きる人達を守る。それがオレの意思だ! 愛する者達の為に戦う!
そんな程度の男です。
ですから…皆さん…どうか、こんなちっぽけな男に皆さんのお力を貸してください」
ディオスは、頭を下げた。
ウソを見抜くトゥルーベルは一切、鳴ることはなかった。
正に、心の真実を告げたのだ。
ヴィルヘルムはフッと笑む。
全く変わっていない。シンプルで最も納得する理由で生きている。
ただ、家族と友、仲間を守りたい。
その為に世界を守るのだ。
何とも、納得するしかない理由に、ヴィルヘルムが動くとライドルも動いた。
二人は顔を合わせフッと笑み合って、ディオスの下へ行く。
それにソフィアも来る。
頭を下げ続けるディオスに、ソフィア、ヴィルヘルム、ライドルの三人が来て
「全くアンタは…仕方ないわねぇ…」
と、ソフィアは微笑む。
「ああ…その通りだとも」
と、ヴィルヘルムも微笑む。
「どうしようもない。貸してやるか…」
と、ライドルも微笑む。
そこへ、アインデウスも
「私も、貸してやるか…」
フィリティも
「僕もです」
ヴィクトールも
「私も…」
ククルクが
「仕方ないヤツじゃ。ティリオの事もある。貸してやるかのぅ」
全員がディオスの下へ来る。
そして、「やれやれ」と他の王達が同じくディオスに集まり囲む。
ディオスが頭を上げ
「すいません。オレのワガママに…」
ヴィルヘルムが
「ああ…お前のワガママに、呆れてしまった。つき合ってやる」
ライドルが
「さあ、皆の者よ」
と、右手を挙げると、王達も右手を挙げて右手を輪のようにさせる。
加わっているアインデウスが
「ディオス、お前も」
「はい」
ディオスは、その輪に自分の聖印がある右手を挙げて重ねる。
万年皇帝のアインデウスが
「皆よ! この男のワガママに乗ってやるぞ!」
『オオオオ!』
王達とディオスの円陣に掛け声が響いた。
それを遠巻きに妻達クリシュナ、クレティア、ゼリティアと、二階で見ていたレベッカ、ユーリ、チズ、ココナ、信長、ユリシーグ達は、皆、同時に同じ事を思った。
伝説が始まると…自分達は、今、世界の伝説が作られた場所と同じ時間にいる…と。
王達とディオスの円陣が終わった後、アインデウスが
「さて…」
と、指を鳴らした次に、空から重低音が響く。
戸惑うディオスにアインデウスが
「こっちに来い!」
と、玄関を開けて外に出ると、屋敷の上空から全長千メータの巨大戦艦が出現する。
紅葉型の白く輝く巨大戦艦にディオスは驚きを向けると、アインデウスが
「これは、嘗て世界を守護する者達に与えていたグルファクシ型超弩級戦艦、エルディオンだ。これをお前に授ける」
ディオスはフッと笑み
「はぁ…超弩級艦に重いモノを…」
「お前が望む。世界の平和の為に使え」
アインデウスが頷く。
ディオスは、アインデウスを見て
「ええ…存分に使わせて貰います」
こうして、聖帝として権能がディオスに加わった。
だが…
「パパ…このウルサいの何?」
音で起こされたアイカが、同じく起こされたティリオとリリーシャにゼティアを連れて、姿を見せた。
「ああ…ゴメン」
ディオスは子供達に駆け付ける。
ソフィアは、千メートルの超巨大紅葉型戦艦エルディオンを見上げ
「まあ…ウルサいわなぁ…」
と、つぶやいた。
ディオスは、起こされて不機嫌な子供達を抱っこしたりして、何とか曲がったヘソを治そうと奮闘している。
そんな暢気な光景に、集まった王達は朗らかな笑みを向けた。
その後、エルディオンは、上空二万メータまで上昇、ディオスの屋敷がある王都の周囲を周回しながら待機という状態で収まった。
因みに、子供達の曲がったヘソは、ディオスが一緒に寝るという事で収めてくれた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。