第158話 聖帝降臨祭 前編
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あらすじです。
聖帝になったディオスに取材しようと、殺気立つ取材陣が迫る。ディオス、ピンチ! だが、これで終わりではなかった。
ディオスは、ルクセリアの英霊祭が終わって、呆然としていた。
英霊の墓標がある結晶の塔がある高台を、ソフィア達と他の王族達に関係者達と階段を降りていると、地響きがした。
そう、正面の開けた道から、もの凄い人数の…取材関係者が走ってくる。
それは殺気立った戦士の目をしていた。
狙う牙城は、ディオスだった。
ああああ!
と、無数の取材関係者の戦士達に青ざめて絶望するディオス。
彼らの狙いは、聖帝となったディオスの突撃取材だ。
今は、バルストラン国外のルクセリア王国内だ。
バルストランに行くと、国内の法律で、王の臣下である者は、王の許可無しに取材出来ない。
勝手に取材した場合は、厳しい罰則が待っている。
今なら、国外の今なら! その法律が及ばない。
おおおおおお!
取材関係者は、魔導カメラに魔導マイク、魔導ビデオカメラを武器に一斉にディオスへ襲い掛かる。
「ひぃ」
と、ディオスは不様な声を上げたが…その行く手を塞ぐ者達がいた。
今回の英霊祭の警備を任されているロマリアとルクセリアの軍達だ。
警備の軍人達は、全員が防護壁特化型魔導鎧に身を包んでいて、強大なシールドを殺気立つ取材関係者達に展開。
オオオオオオオオオオオ!
合戦さながらの雄叫びを上げて、突進してくる取材関係者達を受け止めた。
その光景、かつてディオスが、勇志郎だった大学生時代に、コミケのアルバイトをした事があった。
夏のコミケ、まあ…大した事はないだろうと、高をくくっていたが…地の果てから同人誌を求める野獣達が攻めて来て、警備員と衝突した場景と、今が重なっていた。
なんとしても取材をしたい取材者達、それを防ぐ警備軍の激しいせめぎ合い。
ディオスは、顔が真っ青になって事態を見つめるしかなかった。
取材者達が
「ディオス様ーーーーーー 何か一言をーーーーー」
「聖帝になった事についてーーーーーーーー」
「ウチの取材に答えてくださーーーーーい」
取材者達が怒声という質問を叫び、魔導カメラ達がまるで一斉攻撃のようにフラッシュを焚く。
それを見て傍にいるナトゥムラが「マジか…」と殺気塗れの取材者達にドン引きだった。
ディオスがオロオロとしていると、隣にアインデウスが来て
「来い!」
と、ディオスの右に来て、ディオスの右手を取って、取材者達を少し見上げる階段に来させる。
おおおおおお! うおおおおおおお!
もう、飢えた野獣の如き、取材者達に、アインデウスが
「聞けーーーーーー」
声を張り上げ、取材者達が止まった。
静かになるその場。
そして、アインデウスが
「嘗て、五千年前にいた聖帝ディヴァスは、ディオスと同じ別の場所から来た男だった!
つまり!
ディオスには、初代聖帝と同じ資質があったいう事だ!
これは成るべくして成った。必然である!」
そう声を荒げて大声で放ち、ディオスの聖帝の証、聖印が右腕を捲って聖印の右腕を高々に掲げさせた。
一斉連続掃射の如き、フラッシュと大多数の魔導ビデオカメラの視線光線が、ディオスとアインデウスのツーショットを捉える。
正に、万年皇帝と聖帝との腕を取り合っている最高のショットを逃さないと、取材者達は攻めた。
ディオスは、意味が分からず呆然と為すがままだ。
アインデウスが
「こういう場合は、煽って相手が燃え尽きるのを待つまでだ。直ぐに終わる」
二人のツーショットが三分も続き、取材者達の熱が冷めて来た。
そうなると、警備の部隊が上手く取材者達を分けて誘導させ、ディオスとアインデウスは並んでその場から離れ、同じく止まっていた各国々の王族達も続いた。
上手く、取材者達が並び、警備の軍人に抑えられ、何とかディオスは、帰還が出来た。
その後、直ぐに魔導列車に乗ってロマリアへ行き、飛空艇に乗ってバルストランへ向かう。
その最中、ディオスはズッと頭を抱えていた。
どうして、こうなった!
そればかりが頭を行き交い、バルストランに帰国すると、空港内を怯えて進む。
もしかしたら、取材者の誰かが…。
ビビっているディオスに、一緒に来たソフィアが
「ここは、アタシの国なの。大丈夫よ」
空港内はいたって、何時もの状態だった。
それにディオスは胸をなで下ろす。
「ああ…良かった」
ナトゥムラが
「一応…お前の家まで護衛するよ。何かあったら面倒だし」
「ああ…はい。お願いします」
と、ディオスは頼んだ。
何時もの様に魔導タクシーを拾って、屋敷に帰る。
本当に何時もの感じだ。
ディオスは魔導タクシー内で、ホッとして座席に背中を預ける。
だが…屋敷に近付くと屋敷の前で多くの人達がいる。
フェニックス町の人達だ。
町の人達の前に魔導タクシーが止まり、ドアから出るディオスに町の人達が
「おめでとうーーーー ディオスさーーーーん」
拍手と喜びの声をディオスに送る。
ディオスは顔を引き攣らせる。
ヒロキと町の人達が、ディオスが聖帝となった事を祝いに来たのだ。
ディオスは額を抱えるも、まあ…確かに後で一杯やりましょうって約束したし…。
そのまま町の人達の祝福を受けた。
屋敷では、町の人達がお祝いの料理とお酒を持ち寄り、広間でパーティーを行う。
そこには、息子達と妻達もいた。
クレティアは微妙な笑みで
クリシュナは、はぁ…と呆れ
ゼリティアは、まあ…よいか…という諦めの顔だ。
だが、町の人達だけの祝福では終わらなかった。
後で、オルディナイトの人達も来て、ゼリティアの伯母ゼルティオナに守護のフランギル達も合流して、屋敷は入りきらない程の、大きなパーティーとなった。
更に更に、ヴォルドル家、レディアン達も加わってデカい事になってしまった。
もう、事態が制御不能な状態となってディオスは呆然として、考えるのを止めた。
ディオスは、広間の奥、主賓席で町の人やオルディナイトの人達からお酌をされていると、町の人で赤ちゃんを抱っこする母親が
「この子にディオスさんの祝福をくれませんか?」
ディオスは戸惑い
「ど、どうすれば…」
「額にキスをしてください」
「ああ…うん」
と、一歳の赤ちゃんをディオスは抱えて、額にキスをした後。
「あ…そうだ…」
ディオスは右腕を握り、聖印の力を放ち集めて一握りの黄金の結晶を作った。
「これ…どうぞ」
多分、天麒馬が降り立った時に発生させていた黄金の草と同じ物体だろう。
母親は嬉しくて驚く顔をして
「ありがとうございます」
感謝を告げた。
その後、同じように額にキスの、祝福をしてくださいと、子供を抱える母親達が来て、ディオスは、子供を抱えて額にキス後、同じ黄金の結晶を子供の母親にプレゼントしていた。
聖帝からのお守りのようなプレゼントに、母親達は喜んでくれた。
ディオスの聖帝記念のパーティーは真夜中を過ぎて、午前三時に終わった。
後片付けをオルディナイトの人達と一緒にするディオス。
その背中にクレティアが
「ダーリン、お疲れ」
「あ…うん。クレティア…何故、こんな事になったんだろう?」
疑問しかないディオス
クレティアは
「人の噂も七十五日っていうじゃん。大丈夫だよ」
「う…ん」
と、ディオスはちょっと凹んでいた。
こんな事になって欲しくなかった。
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