第157話 天かける星
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あらすじです。
ルクセリアの慰霊祭に出席するディオス。十万人と多くの王族と共に、二千年も続く慰霊祭にディオスは
ルクセリア王国にある、かつてドラックールの慰霊場とされた白磁器の広場は、今や大怨霊から英霊となった彼らの英霊祭壇となった。
ここに嘗て、二千年前に当時のアインデウスが、持っている秘儀を使ってドラックールの霊達を封印した。
だが、それが現代に復活して、再びロマリアへ向かう事になったが…ディオスの観察と指摘によって説得が出来るのでは?と、ロマリア皇家の皇帝達を呼び、見事に説得出来て、大怨霊の軍団は、その汚れを禊ぎして、英霊となって天に昇り、世界を見守る事となった。
その英霊祭壇には、多くの人達が集まった。
その数、十万。祭壇の周囲は人々で埋め尽くされ、大地が見えなかった。
祭壇の最上位段の広場、広さ五十メータ前後の高台に、巨大な結晶の塔があり、その周囲に出席してくれた王族達と、その結晶の塔の前に、アインデウスが厳かな白と黒の重厚な清め専用の王衣を纏って待っている。
その周囲、王族達がいる場所、ソフィアの傍にディオス、ナトゥムラ、スーギィ、マフィーリア、信長、ユリシーグもいる。
ディオスは喪服の礼装の上に魔導士のローブを纏っている。
他の者達もそれ専用の喪服の礼装である。
ディオスは、周囲を見渡す。
十万人といるのに、全く声がしない。
そこは厳かで、空気が清らかな雰囲気に包まれている。
そして、始まった。
琴の音のような響きが周囲の魔導スピーカーから広がり、太鼓の厳かな音が響く。
ヌエドリという、悲しみを現した鳥の鳴き声の意味をもじった歌が響く。
これは、かつて大怨霊となってしまった彼らを思い悲しみに暮れているという、謂わば、相手を思う歌だ。
ヌエドリよ。その鳴き声を聞き。貴方を思う。
その厳かな歌と共に、祭壇の真ん中を行く道の奥から、礼装をした多くの兵士達を背に、白と黒の厳かな王衣を纏ったライドルとカイドが、並んで歩いてくる。
二人の歩は、全く同じタイミングで、同じ歩数で、綺麗に並んで歩いてくる。
それに合わせて、後ろにいる兵士達が持っているロマリアとルクセリアの国旗槍を、二人の歩に合わせて地面に突き、槍と国旗の先にある鈴を鳴らす。
その動きに一切の乱れがない。
それを見てディオスは思った。
こうして、二千年の間、彼らはズッと慰霊を続けて来たのだと…。
美しく、相手への気持ちが、それでだけで伝わる。
心がこもる彼ら、英霊を思う歩は、アインデウスがいる祭壇の中心、結晶の塔へ到達する。
祭壇の中心、彼らの大墓標を背にするアインデウスの前に、ライドルとカイドが並び立つ。
アインデウスの左にいるカイドが三度、アインデウスに頭を下げる。
アインデウスは結晶で出来た禊ぎの小刀を何かを描くように振り、カイドを清める。
カイドが跪き、脇に携える二千年ぶりに帰って来たルクセリア王の神器、黄金剣を取り出し両手に乗せて、アインデウスの前に向ける。
アインデウスは、脇にいる補助者から、清めの聖水が入った器を受け取り、その聖水が入る器にある純白の葉に聖水を付けて、黄金剣に聖水を飛ばして清める。
ディオスはそれを見つめる。
万年皇帝とされるアインデウスは、その万年の歴史を持つ故に、清めの祭事者としての権威を持っている。
これは、万年の歴史ある皇帝が受け継ぐ、清めの儀式である。
清めが終わり、カイドが立ち上がると、今度はライドルが、カイドへ跪き両手をカイドに向けると、カイドはその両手に黄金剣を乗せる。
ライドルは頭を下げ、受け取ったとして、立ち上がり、両手に黄金剣を持つと、胸中に柄を位置させ、刃を空へ向ける。
そして、黄金剣を持つ腕を上下させる。
その上下に合わせて、厳かな太鼓の音と、階段下にいる国旗槍を持つ兵士達が、鈴を鳴らす。
本当に一糸乱れぬ動きだ。
ライドルの上下に合わせて鈴が十回鳴る。
それが終わると、ライドルは結晶の塔の墓標に来ると、結晶の塔の真ん中が開く。
そこには黄金剣を治める結晶の鞘がある。
そこへライドルが黄金剣を収めると、開いた場所が閉じて、結晶の塔の大墓標の中で黄金剣が浮かぶ。
ライドルはそれに三度礼をした。
これにて、英霊達の慰霊祭が終わった。
十万人を見下ろす英霊祭壇では、始めにカイドが演説する。
「皆様、我らルクセリア王家ドラックールの英霊達の慰霊祭に来て頂き、ありがとうございます。色々な事がありました。多くの悲しみがありました。ですが…ロマリアとルクセリアはそれを乗り越えて、そして…それを見た英霊達は、天へ帰りました。きっと、ロマリアとルクセリアの未来を見守り続けてくれるでしょう。皆様、再度ではありますが…ありがとうございます」
次にライドルの言葉が、ライドルは涙しながら
「この慰霊祭に来て頂いた皆様に感謝を。そして…ロマリアの民よ。ルクセリアの民よ。二千年と続いた我々の絆によって。彼は、英霊として空へ帰った。我々は彼らを失望させてはならない! この先も、未来永劫、ロマリアとルクセリアは兄弟である! 空にいる英霊達に、我らの絆を示し続けようぞ!」
おおおおおおおおお!
ライドルの演説に、十万人の来客達が高らかに声を上げた。
ヒートアップする会場に、ライドルは隣にいるカイドの肩を持ち共に手を取って空へ伸ばした。
それに同じ高台の周囲にいた王族達が拍手した。
そんな時だ。
ひぃぃぃぃぃぃぃぃん
馬が高らかに鳴いた声が響いた。
えええ? ええええ!
会場は混乱して熱気が収まる。
「アレはーーーーー」
会場の人々が、結晶の塔の上にいる存在を指さす。
高台にいた王族達、そこにいるディオスが、それを見る。
そこには、黄金に輝く翼を持つ一角の馬がいた。
「え?」
ディオスは戸惑い、隣のスーギィに
「スーギィさん。こんなの予定にありますか?」
「いいや…ない筈だが…」
ディオスは一気に集中を高め
「ナトゥムラさん! 信長! ユリシーグ!」
声を荒げた。
そして、ディオスは飛び出し、カイドとライドルの前で盾になる。
それに、呼ばれた三人は反応して
「敵襲の可能性あり! 構えろーーーー」
ナトゥムラが叫ぶ。
王族達の前に多くの兵士達が雪崩れ込み盾になる。
ナトゥムラと信長、ユリシーグは飛び出し、ディオスの隣に立つ。
ナトゥムラが
「野郎…こんな所を襲いやがってボコボコにしてやる!」
四人は警戒態勢へ移行。慰霊祭が騒然とする。
だが、アインデウスが
「待てーーーーーー」
声を張った。
え?と全体が戸惑う。
そこへ、結晶の塔の上にいる黄金の翼を持つ一角の馬が結晶の塔を下ってくる。
蹄が叩いた場所に、黄金の結晶の草が生える。
黄金の翼の一角馬が、アインデウスの隣に降りる。
ディオスが
「アインデウス皇帝陛下ーーー」
逃げろと…。
アインデウスは微笑み
「大丈夫だ。久しぶりだなぁ…」
黄金の翼の一角馬が、アインデウスにお辞儀して、ゆっくりとディオス達の方へ近付く。
ディオスの警戒がマックスになる。
黄金の翼の一角馬が歩いた場所に黄金の結晶の草が生える。
ナトゥムラがハッとして
「もしかして…天麒馬…」
「え?」とユリシーグが驚きを見せる。
ディオスは「はぁ?」と訝しい顔をすると、その天麒馬が、ディオスの目の前に来る。
ディオスが鋭い視線を向けていると、天麒馬は頭にある一角を下げ、ディオスに頭を垂れる。
「ええええ? え?」
ディオスは全く意味が分からない。
アインデウスが
「ディオス。彼に触れてみよ」
ディオスは警戒しながら、恐る恐る天麒馬に触れると、天麒馬が黄金の風に変わり、ディオスを包むと、その黄金の風がディオスの右腕に流れ込む。
「な! ちょ!」
ディオスは、黄金の風が浸透した右腕の袖を捲ると、黄金の電子回路で編まれた剣の意匠がある呪印のようなモノが刻まれた。
「なんだコレ?」
ディオスは困惑していると、その黄金の呪印が刻まれた右腕から、黄金の光粒子が溢れ、会場を包み、地に落ちた黄金の粒子から天麒馬が歩いた時のように黄金の草が生える。
ええええ! ええ! えええ?
全く理解出来ないディオスにアインデウスが近付き跪き
「ひかえおろう。聖帝の降臨ぞーーーーー」
そう、万年皇帝がディオスに跪いている。
えええええええええええ!
ディオスは内心で狼狽する程、驚愕していた。
アインデウスの言葉を聞いた王族達とその周囲は、アインデウスと同じく跪きディオスを見つめる。
呆然とするディオス。
そして、会場から
「聖帝ディオス! ばんざーーーい」
それが一気に広まり。
聖帝ディオス。ばんざーーーい!
聖帝ディオス。ばんざーーーい!
その大合唱が始まった。
ディオスは、アーリシアの大英雄から、伝説の聖帝へ…。
その奇跡が、全世界に放映された。
ディオス本人は、真っ青になって倒れそうなくらい、ショックを受けていた。
なんで、オレが!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話は完成次第あげます。
ありがとうございました。