第152話 真実とは…
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
マッドハッターの暴挙、そして、アーヴィングの真実とは…
「お兄様、今までありがとう」
と、言葉を残してユリアは崖に飛び降りた。
彼女は…兄の足手まといとなるのを防ぐ為に、自ら命を絶つ。
マッドハッターは呆然とする。
カイドは、自失した。
唯一の肉親を失った。
助けに来た騎士達も、余りの事に驚愕して動けなかった。
カイドは、その場に膝を崩し、俯いた。
その目は、死んでしまった。
だが…崖から轟音が響く。
重音を響かせて、一隻の漆黒の戦艦が浮上する。
その甲板には、信長、ユリシーグ、ディウゴス、ディオスがいた。
そして、ディオスの腕の中にユリアがいた。
そう、飛び降りたユリアをディオスがキャッチしていた。
ユリアは無事だった。
どうしてだ?
それは、カイドとユリアを連れて逃げるマッドハッターを、ディオスはアインデウスが用意してくれた戦艦グルファクシの飛翔で追っていた。
そして、マッドハッター達が、崖で構えた時に、背後から挟撃する為に、グルファクシを崖に回した。
そして、崖の下からゆっくりと浮上して、甲板に戦闘態勢を取っていたら
「ディオスさん! 上!」
信長が叫ぶ。
「え?」
と、ディオスが上を向くと、丁度、飛び降りたユリアが落ちてきた。
「ええええええええ!」
ディオスは驚愕しながら、ユリアを両手でキャッチした。
まさに、とある天空のなんたらにあった。
親方、空から女の子が!
という勢いだった。
生きていたユリアにマッドハッターは、まだ…利用価値がある…として
「カイド王子! 分かっているなぁ!」
そう、ユリアの胸部にはユリアを苦しめるガイバードコアがある。
助かったユリアは瞬きしてディオスを見つめる。
「やれやれだぜ」
と、ディオスは呟き、次に…
「信長…ユリシーグ…」
「うっす」
と、信長は右腕を気合いを込めて翳した。
ユリシーグは、その右腕に自分の左手を重ね。
「信長、やるぞ!」
信長はグッと右手を握り締め
「ああ…いくぜ、ユリシーグ!」
ユリシーグは自身のスキルの力、神操りの舞、神格を操作できる能力を信長に接続させた。
信長は、自身のスキル、神格召喚の中でも創造に特化した神格、ジェネシスを自身にエンチャンさせる二式で発動。
ユリシーグのスキルと混ざり
「行くぞーーーーーー」
「ああ!」
信長とユリシーグは呼吸を合わせる。
『ゴット・クリエイト・メイカー』
信長の右手とそれに重なるユリシーグの左手が光に包まれ、白光と輝く魔導の甲冑手を作り、その魔導手甲でユリアの胸部にあるガイバードコアを掴む。
これは、ディオスの考案だ。
ガイバードコアと持つ信長なら、同じコアを持つユリアのガイバードコアに接続出来る筈だ。
だが、それでは力が足りない。
物理法則や魔法法則に大きな力を発揮する神格の力を纏わせ、融合させる事で…。
ユリアのガイバードコアに、神格の力と融合した信長のガイバードコアの力が接続される。
そして、ユリアのガイバードコアの浸食を切断、分解して、ユリアから拘束に使われたガイバードコアを分離させた。
信長は、ユリアから無事に切り離したガイバードコアを握り潰し
「やったぞーーーーーーーーー」
そう、救った。
かつて、救えなかった彼女、玲奈のようになった乙女を助けた。
ユリアの拘束を解除した様子に驚愕するマッドハッター。
ディオスは、ユリアを抱えたまま瞬間移動のベクトで、カイドの前に来た。
カイドは立ち上がると、ディオスから降りたユリアが
「お兄様…」
と、カイドに抱き付いた。
「あああ…あああ」
涙してカイドはユリアを抱き締める。
ディオスは微笑み、二人を守る為に背を向ける。同時に救出に来た騎士達がカイド達を包む。
カイドは見た。ディオスの圧倒的に大きな強い背中に、感動を禁じ得なかった。
マッドハッターは事態の悪化に、付いて来た黒騎士ゴーレム達を、暴れさせようとしたが、信長がマハーカーラ二式、ユリシーグがオーディン二式で神格武装して、黒騎士ゴーレム達を粉砕、ドラゴンのオーラ、ドラゴニックフォースを纏ったディウゴスが、マッドハッターの左に来る。
「く…」とマッドハッターは右へぶれるも、右に信長が、正面にユリシーグが、背後にディオスが、四人がマッドハッターを完全包囲した。
マッドハッターは前後左右を見回す。
四人に隙は一切無い。
ディウゴスが
「降参した方が得策ですよ」
信長がボキボキと指を鳴らす。
ユリシーグが神格の力で出来た光槍を握る。
ディオスは、指を鳴らしながら
「期待しているぞ。お前は…こういう時には、面白い行動をしてくれると…」
要約すると、ボコボコにしたいから暴れろという、無慈悲な期待だ。
マッドハッターは動きを止め、慎重に周囲を伺う。
ディオスはニヤリと笑う。
そうだよなぁ…。お前は、そういう男だ。
自分が無駄死にするなんて許せないタイプだ。
モルドスの時に、そういう行動をしたのを分かっている。
ディオスは注意深く見ていると、マッドハッターの両手の指先が微妙に動く。
「気をつけろーーーー 何かやったぞーーー」
ディオスが声を荒げる。
そう、マッドハッターはやった。
空から轟音と共にドラゴン魔獣を製造する超弩級戦艦がそこへ落ちてきた。
「野郎ーーーー」
信長は吼える。
そして、マッドハッターは背中から漆黒の翼を伸ばして広げると、その翼から全方位にガトリング砲の如く、漆黒の羽を放った。
それに、防護するディオス達、その間に超弩級要塞戦艦が落ちてくる。
ディウゴスが「お任せを」と深紅のドラゴニックフォースを全開にして、超弩級要塞戦艦へ突進する。
ディウゴスの突撃で、超弩級要塞戦艦が歪み跳ね返った。
大質量を押し返したディウゴスのドラゴニックフォースの力に、マジで…とディオスは驚く。
だが、跳ね返った瞬間、超弩級要塞戦艦が大爆発して、周囲に燃える破片をバラ撒いて、混戦状態にさせた。
その隙に、マッドハッターは逃走した。
マッドハッターは漆黒の翼を使って超音速で何処かへ飛んでいった。
ディオスは、後ろにいるカイド達を守る為に、巨大なシールドを張っていた。
そこへ、ディウゴスが来て
「逃がしてしまいましたね」
ディオスは、事態が落ち着いた後、シールドを解除して
「なぁ…に、予定通りですよ」
と、懐からとある魔導端末を取り出す。
その画面には、地図が映り、何かの点が何処かへ移動していた。
マジ、チョロいわ…とディオスは思った。
その動く点は、アーヴィングである。
ディオス達からマッドハッターが逃れる数分前、剣の館のソファーで眠っているアーヴィングが目を覚ました。
アーヴィングの監視をしているナトゥムラが何処かと通信して、アーヴィングから目を離していた。
「ああ…うん。そうか…で」
と、ナトゥムラは通信しているフリをして、アーヴィングが行動するのを待つ。
アーヴィングは、袖に隠したナイフで、両手を拘束する能力制御手錠を壊し、シャドウ・クリエイトでナトゥムラに攻撃、ナトゥムラはそれに余裕で応戦する。
その間にアーヴィングが脱兎する。
それを確認したナトゥムラは
「さて、ディオスの予想通りになるのかどうか…」
その後、ナトゥムラはディオスと連絡を取り、予定通りにアーヴィングが逃げたと伝え、ディオスと合流した。
アーヴィングは、マッドハッターがさし向けたドラゴン魔獣と超弩級要塞戦艦達が敗戦する場所を、影から作った魔獣に乗って飛翔して駆け抜ける。
自分達が劣勢の状態に驚愕するも、アーヴィングの脳裏にあるのは
「マッドハッター、マリファス…どういう事なんだ?」
そう、生きていた妹の疑問の答えを求めて、本陣がある場所を目指した。
恐らく、そこにマッドハッターが逃げていると。
ディオス、ナトゥムラ、信長、ユリシーグは、ディウゴス指揮の戦艦グルファクシの飛翔航行にてアーヴィングの見えない背中に仕掛けた小型発信器の反応を追う。
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