第151話 ルクセリア奪還作戦 その二
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あらすじです。
遂に、ルクセリアをエニグマから奪還する作戦が開始して、大混戦が始まった。
その数分前、マッドハッターはルクセリア王宮にて、ディオスの奇妙な放送を聞いた。
「はあ?」
と、マッドハッターは首を傾げた次に、ガキンと背後で、何かが切断された音がした。
振り向くと、後ろで警備をさせていた黒騎士ゴーレム達が、剣を抜いた騎士達によって、倒され首を飛ばされた光景があった。
「はぁ?」
騎士達は漲る殺気を伴ってマッドハッターににじり寄る。
確実に殺しに来ていた。
そして、王宮の上空に艦隊を運ぶマーカーの信号魔法が弾け開いた。
マッドハッターはそれを見て、驚愕に顔を染め、次に閉じられている王宮の正面門が開いて、膨大な数のルクセリアの兵士と騎士達が突入してくる。
そう、それで察した。
反乱が起こった。
マッドハッターは袖に手を入れて、閃光弾を落とした。
強い閃光と音で狙う騎士達が怯み、その間に、マッドハッターは背中にある漆黒の翼を伸ばしその場から脱兎した。
そして、向かう先は人質がいるユリアの部屋だ。
ユリアは部屋がある塔の上から、騎士や兵士達が、マッドハッターの黒騎士ゴーレム達を倒している姿を見た。
そして、王宮の上空にレド・ルーダによって到着したロマリアの国旗を持つ戦艦飛空艇の艦隊を見た。
「始まった!」
ユリアは、部屋から逃げようとベランダに出て
「ここでーす」
と、手を振ると、その傍に戦艦飛空艇からロープが下りて、魔導騎士達がロープを伝って降りてくる。救出者達だ。
だが、ユリアの背後を掴み、部屋に戻す者がいたマッドハッターである。
「ああ…」とユリアは驚愕に顔が染まる。
同時に、ロマリアの魔導騎士達が降りて
「キサマ―――― その汚い手を離せーーーー」
全魔導騎士が剣と魔導銃が合体した特殊銃剣を握り、ユリアを引っ張るマッドハッターに迫る。
マッドハッターは渋い顔をして、次に背中にある翼を伸ばす。
それは漆黒の翼で、その翼から鋭い羽が飛び出し、魔導騎士達を襲う。
それを防戦している間に、マッドハッターはユリアを抱えてその場から走る。
「離してーーーーー」
と、ユリアが暴れるも、マッドハッターはユリアを拘束するガイバードコアに痛みを放つよう命令して、ユリアが痛みで止まる。
そして、アーヴィングに連絡を入れるも
「やあ…」
出たのはアーヴィングではない。
声で分かった。
「キサマかぁぁぁ ディオス・グレンテル!」
『そういう事、諦めて投降しろ』
マッドハッターは通信を切り、とある装置のスイッチを押した。
「出し惜しみなしだ!」
ルクセリアの首都ブエナの周囲の上空が歪み、そこから巨大なエジプト文明の象形文字のような、全長二キロの巨大戦艦達が出現する。その数、五隻、マッドハッターが魔獣を量産するに使用した製造戦艦群である。
その戦艦達から、無数のドラゴン魔獣が放出される。
ブエナを覆うドラゴン魔獣軍勢だが…それへ、強力な光線が走る。
一瞬にして光線の射線にいたドラゴン魔獣が蒸発した。
その光線を放ったのは、全長40メートルのロマリアのゼウスリオン五機だ。
前方にアルミリアスとヴェルオルムのゼウスリオン、後方にロマリア皇家兄弟の三機のゼウスリオン。
アルミリアスは怒っていた。自分の弟妹のように可愛がっていたユリアが、外道な目にあっていたのだ。
「全部、潰してやる」
マジな殺気の目だった。
それを象徴するように、アルミリアスのゼウスリオンはドラゴン魔獣達を殲滅しながら、放出した二キロの巨大戦艦に突進、穴だらけにして破壊した。巨大戦艦は爆炎に包まれ、人のいない場所に墜落した。
更に、ブエナの中心に転移魔法陣が出現、そこからアインデウスの巨城式飛空艇が出現し、そこからアインデウスの部隊であるドラゴニックフォースがドラゴンのオーラを纏って出撃、ロマリアのゼウスリオンと合流して、ドラゴン魔獣を殲滅する。
中でも、赤姫と黒姫が乗るコアである20メートルのコア・ゼウスリオンがむき出しの機体に、駆逐艦サイズにもなるバックパックが装備され、戦艦のようになったゼウスリオンが、その余すことのなくバックパックの兵装を使う。
凶悪な魔導光線ミサイル、繋がっている帆走型のゴーレム機体達、ドラゴン魔獣と同等の30メータ幅もある極太光線砲を放ち、圧倒的魔導物量の限りを尽くす。
それを下で見ていたディオスは
「ああ…あれは…」
ちょっと青ざめた。
となりにいる信長が
「知っているんですか? あのデカい兵器装備…」
「いや…前に、ゼウスリオン、ヴォルガのバックパック装備を元にして、更に発展させたゼウスリオンの多目的統合兵装を設計して…。コストが見合わないから…データとして保管していたんだけど…」
「ああ…」
信長は察しである。
つまり、データを抜かれて使われたと…。
そうしている二人の上に、漆黒の鋭い船首を持つ飛空艇が降りてくる。
その下部カーゴハッチが開いて
「お待たせしました」
ディウゴスが姿を見せる。
そこへ、ユリシーグが荷物を持って現れ
「荷物、持って来たぞ」
「ああ…すまん」とディオスは礼を言い、ユリシーグが
「良いのか? ナトゥムラさんだけにアイツの見張りをさせて…」
ディオスはフッと笑み
「ああ…大丈夫。そういう手筈だから」
ユリシーグは肯き
「そうか…」
ディウゴスが眼鏡の付け根を上げ
「では…グルファクシで参りましょう」
ディオス達を戦艦グルファクシに乗せた。
王宮内で、ユリアを連れて逃げるマッドハッターは、王の間にいる筈のカイドの所へ行く。
王の間ではカイドが剣を抜いて
「もう、逃げられないぞ。観念しろ!」
マッドハッターが渋い顔して
「妹がどうなってもいいのか?」
カイドが、う…と引き下がる。
そこへ、マッドハッターの黒騎士ゴーレム達がなだれ込み、その後、ルクセリアとロマリアの混合部隊の騎士と兵士達が入る。
「王子!」
「カイド王子!」
味方の騎士と兵士達が叫ぶ。
マッドハッターがそれを睨みカイドに
「オレと来い」
マッドハッターは鋭く騎士と兵士達を睨むと、背中から漆黒の翼が伸び、それが巨大化して騎士達と兵士達を吹き飛ばした。
騎士達と兵士達は、持っている魔導武器で応戦するも、それが全てそれより強度がある漆黒の翼に弾かれ、一団は吹き飛ばされた。
そして、巨大化した漆黒の翼は、王の間の壁を壊し、そこからマッドハッター達は空へ逃れた。
黒騎士ゴーレム達は背中や、ふくらはぎからブースターを伸ばして、ロケットのようなフレアを噴出させ飛び、マッドハッターは、伸ばした翼を使って飛ぶ。
ユリアとカイドは、飛翔する黒騎士ゴーレム達に連れて行かれる。
外は、放出されたドラゴン魔獣と、ロマリアにアリストスのゼウスリオンと、ドラゴニックフォースによる大混戦で、何とか避けながら進むも、応戦と攻撃によるとばっちりが酷いので、ブエナの外に出た後、陸地に着地した。
そこは、小高い丘だった。
マッドハッターは丘の先端に立ち、ブエナでの大戦闘を見ながら、右腕にある通信端末の手甲を操作する。
逃げる為の戦艦の手配をしていた。
だが、逃げ切れるものではない。
多くの魔導操車達と、魔導騎士達がその丘に集まる。
チィとマッドハッターは舌打ちして
「カイド…応戦しろ」
カイドは困惑を見せる。臣下達に刃は向けられない。
マッドハッターがユリアの髪を掴み引っ張り上げ
「ああ…」と痛みでユリアが唸る。
「どっちが大事だ?」
マッドハッターの言葉に、カイドは悔しさで口を噛み締め、助けだそうとする臣下の魔導騎士達と対峙した。
カイドの全身から、王家の秘儀ライジンの力、青きのオーラが昇る。
カイドの頭上で、青い魔神が出現する。
助けに来た者達は、カイドの痛く悔しそうな顔で察した。
妹を人質にされて、戦うしかないと…
「卑怯者がーーーーー」
一人がマッドハッターに叫ぶ。
マッドハッターには全くこたえていない。
だが、ユリアが懐にある小刀で、掴まれている自分の髪を切って、マッドハッターから逃れる。
そして、丘の先、崖に立つ。
カイドが
「ユリア…」
ユリアは微笑み
「お兄様。今まで、ありがとう」
そう言い残して、自ら崖から落ちた。
そう、人質である自分が死ねば、カイドは解放され、事態は解決する。
それを選んだ。
「ああああああああああああ」
カイドの悲鳴が響いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
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